捻くれ者の最弱最強譚   作:浦谷一人

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長い間投稿できずにすみませんでした……
いや、本当にすみません……
仕事や、なんやらで全然書けなかった(´×ω×`)


捻くれ者の最弱最強譚#30

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、界人。今日から3年生のクラス対抗戦だろ?」

「へぇ~……」

「……興味なさそうだな……」

「まぁ実際、興味ないしな……」

「見に行ってみようぜ!って誘うと思ってたんだけど……」

「…………横にいるこの二人をどうにかしてくれたら、その誘い乗ってやってもいいぜ?」

「…………マジ?」

「…………マジ」

「…………やめておくよ」

「そうか…………」

「あぁ……」

 

 6月の2週目の月曜日。つまり、6月13日の月曜日。

 今日からの5日間、3年生のクラス対抗戦が行われるらしい。

 らしい。なぜ、自分が通っている学園の行事を、らしい、曖昧な言い方で言っているのか……まぁさっきの御子柴との会話からでも分かったと思うが、全くもって興味がないからだ。

 興味が無いものにはとことん興味が無い。この性格は治さないといけないとは思っているのだが、なかなか治らない……というか、性格って治せるのか?

 まぁそんな事は置いておくとして……話を戻すとしよう。

 クラス対抗戦がある時は、すべての闘技場がクラス対抗戦のために貸し切りになる。その上、対抗戦の立ち会いや、その他にも色々あるため先生が総動員で動く。そのおかげで、クラス対抗戦がない学年もその1週間は授業がお休みなるのだ。

 それだったら、学校自体を休みにしてもいいんじゃね?……とも思うのだが、先生いわく、「対抗戦の見学をしろ。それだけでも色々勉強になる」と言うことらしい。

 そういう訳で、俺たちは授業もないのに学校に来て、こうしてダラダラとしているというわけだ。

 

「ちょっと、高原先輩!界人くんが嫌がってるでしょ!離れなさいよ!くっつき過ぎだから!」

「なんでぇ~?それを言ったら水戸ちゃんの方がくっついてるじゃない。それに、界人くんは私じゃなくて、水戸ちゃんの方で嫌がってるんじゃないの~?それに、私の方が先に界人くんの隣に座ったんだから、退くなら水戸ちゃんだと思うけど。」

 ………………まぁ、見ての通り、ダラダラとしているのは俺と御子柴の二人だけで……いや、俺もダラダラはできていないな……俺の両脇にいる水戸と先輩は現在進行形で、俺を引っ張り合いながら言い争いをしている。そして俺はされるがままにされている。

 目の前の椅子、つまり、御子柴の隣の席が空いているにも関わらず、なぜ俺の両脇に座っているのか、そして、なぜ俺の腕を取り引っ張りあっているのか分からないが、とにかく狭い……そして、俺を挟んで言い争いをしているため、うるさくて仕方がないのだ。

 

「……あの…二人とも……よくわかんないけど、言い争いは……」

 このままだと、耳も痛いし引っ張られている腕も痛い。その上、他の生徒から注目されるといたたまれなくなる為、これまで穏便に抑えたことは一度もないのだが、なんとか頑張って穏便に収めようとしてみた。

 

 ………………のだが

 

「なによ!離れなさってばっ!」

 -----------フニフニ

 ……………………

「……えっと、だから……」

「嫌よ!私じゃなくて、水戸ちゃんが離れなさい!」

 -----------ポヨンポヨン

 ……………………

「………………………………………………ゴ、ゴホッゴホッ………………えっと……」

 「なんなのよ!」

 「なによ!」

 -----------フニフニフニ

 -----------ポヨンポヨンポヨン

 ………………………………

 「……えっと……あの……」

 -----------フニフニフニ

 -----------ポヨンポヨンポヨン

 ……………………………………

 「……そろそろ……」

 -----------フニフニフニ

 -----------ポヨンポヨンポヨン

 「……やめて……」

 -----------フニフニフニ

 -----------ポヨンポヨンポヨン

 「……欲しいんだけど……」

 -----------フニフニフニ

 -----------ポヨンポヨンポヨン

 …………………………

 -----------フニフニフニ

 -----------ポヨンポヨンポヨン

 「………………………………」

 -----------フニフニフニ

 -----------ポヨンポヨンポヨン

 -----------フニフニフニ

 -----------ポヨンポヨンポヨン

 -----------フニフニフニ

 -----------ポヨンポヨンポヨン

 

 -----------フニフニフニフニフニフニフニフニフニ……

 -----------ポヨンポヨンポヨンポヨンポヨンポヨンポヨンポヨンポヨン……

 

 ………………………………

 

 ……諦めよう。この2人を相手に穏便に済ませるなんてこと、これまでできただろうか。いや、できてない!

 ………………反語を使ってしまったが、とりあえず、俺ではこの2人を止めることをできたことがないし、止めることはできないだろう。

 うん、そうだな。それにもう少しすればこの2人も飽きて大人しくなるだろう。

 そーとなれば、もう少しこのままで…………いや、放っておけばいいだろう。

 …………いや、勘違いしないでほしいのだが、別にこのままいたいとか、もう少しこの感触を楽しみたいとか、そんな事は全くもって思っていない。

 ただ……そう、ただ、それが一番の手だから、そうしているだけであって……………………

 

 …………というか、誰に言い訳してるんだ俺は……

 

 

 

 ………………………………

 「ハァ~……」

 こういう時、自分の事が心底嫌いになる。

 水戸や高原先輩、それに御子柴。この3人は中学の時に起きた出来事によって、人を疑うことしか出来ず、信じることも出来ない、そんな事をほざいている、捻くれ、捻れた俺に出来た唯一の友達と言っていい存在……なのだと思う。

 こいつらと居ると楽しいし、心から笑えてる時もある。こんなこと中学の時では考えられなかったことだ。

 でも、俺はこんな楽しい時でさえ、1歩引いて観てしまう。その時は楽しく笑えていたとしても、今みたいに急に冷めてしまうのだ。

『この笑顔は心の底からなのか?』、『こいつらは俺に合わせてくれてくれてるんじゃないのか?』、なんて事を知らず知らずの間に心のどこかで、頭のどこかで考えてしまう……

 唯一の友達と言ってもいい存在なのに、そう言える存在かもしれないのに、そう思っている俺自身がこいつらを……水戸と御子柴、そして高原先輩の事に対し一歩踏み出すのではなく、一歩引き、逆に線を引いてしまう。中学の時のトラウマだと言えばそうかもしれないが、そんなのは結局ただの逃げの言い訳なのだ。

(…………最低だな俺は)

 水戸に、御子柴に、高原先輩にカッコイイ事を……分かりたい、分かりたいなんて事を言いながら、俺自信がそれをしていない。相手をわかろうとしていない。分かってほしいと心の底から思っていない……のだろう。

 結局、俺は変われないのだろうか……いや、どこかで変わろうとしてない……のかもしれない……

 

 とにかく俺はこんな自分が…………嫌いだ。この世界の、腐った世界の人々の中で、嫌いな者や嫌いな物、嫌な事が沢山ある。

 でも、俺は俺自身が1番、どうしようもなく…………

 

 

 

 

 …………………………大嫌いだ。

 

 

 「……ハァ~」

 いちいち数えてないから分からないが、何度目かになる溜息をつき、なんとか落ち込んだ気持ちを元に戻そうと、リセットしようと試みる。

 「どうしたんだよ、界人。テンション下がってたと思ったら、鼻の下を伸ばしたり、それでテンションが上がってるのかと思えば、急に下がるし……それにため息もいつもより多し……」

 目の前に座っていた御子柴が少し心配そうに声をかけてくる。

 そりゃ目の前で、盛大にため息をついたり、テンションが急に下がったりしている時になるものだろう。

 「別に……なんでもねぇよ。あと、鼻の下は伸ばしてない!決して、絶対に!」

 「ハハッ、そうかい」

 「…あぁ」

 御子柴の笑いにつられそうになるのを我慢しながら顔を逸らすと、次は横にいた水戸が心配そうに俺のことを見ていた。

 いや、水戸だけじゃなく、高原先輩も……

(…………俺そんなにやばかったのか?)

 「大丈夫?界人くん」

 「何かあった?それともどこか痛い?…調子が悪いとか?」

 「え、えっと……」

 「クッ……フフッ」

 先程まで心配そうな顔をしていたが、今は笑いを堪えている御子柴。

 それに対し、水戸と高原先輩は御子柴以上に心配そうな顔で俺のことを覗き込んでいた。

 ……今の御子柴は何故か腹が立つためほっておくとして、こんなに心配そうに見られるというのはなんだがむず痒い。

 「本当に大丈夫?」

 「界人くん保健室行く?」

 「あ、いや、大丈夫だよ。ちょっと考え事してただけだから。」

 「そうなんだ~。良かったよ!急に大人しくなるんだから!」

 「そう。よかった……でも本当にしんどかったら私が保健室連れて行ってあげるよ?先輩として!」

 俺が大丈夫だと、作り笑顔ではあるが笑顔でそう言うと、水戸も高原先輩も安堵したように胸を撫で下ろしていた。

 しかし、2人が俺の腕にしがみついているという状況は何も変わっておらず、柔らかいものが俺の腕に当たっているというのも変わっていない。いや、むしろ先程より押し付けられているような気もする……

 「えっと……本当に大丈夫だから。だから、そろそろ離れてくれるとありがたいんだけど……」

 「「先輩が(水戸ちゃんが)離れたらね!」」

 「……ハァ~……」

 どうやら本当に俺ではどうすることも出来ないらしい……

 いや、まぁ分かっていたことだけど……

 

 なんで、無理やり引き剥がないのかって?

 まぁ……なんだ…………察してくれ……

 

 「フフッ……クッ、クフフッ…お前ら見てると面白いよ!なぁ界人!」

 「うるさい御子柴!」

 「へーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それで、どーする?これから」

 「あー、………………」

 「いや、なんか言えよ!?」

 「いや、対抗戦見に行くのはいいけど、3年生のだろ?見ても意味無い気がするし……てか面倒臭いし……」

 「絶対最後のが本音だろ……」

 あれから、次の休みの日にそれぞれ買い物に付き合うという条件で水戸と高原先輩には離れてもらったが……これって俺にいいことがないような気がする。

 なぜ離れてもらうのに、わざわざ俺の休みをしかも土曜日日曜日の2日間ともがそれによって休みじゃなくなってしまうのか……

 「…………ハァ」

 まぁ今更言ってもどうしようもないのだが……

 それにしても、水戸も高原先輩もそんなに荷物持ちが欲しかったのだろうか?俺がこれを提案した時、2人はすぐさま離れてくれた。その上テンションが少し……いやかなり上がっていたような……

 まぁ考えても分からないだけどな。

 

 とりあえず、今は暇なこの状態をどう打破するかだな……

 「まぁ、意味無い気もするし、面倒臭いが……本当に面倒臭いが対抗戦見に行くか…」

 「……本当に嫌なんだな……まぁ、その手しか俺らには選択肢はないんだけどな……」

 「まぁな」

 選択肢がそれしかない、それしかやることが無い。クラス対抗戦のおかげで授業がないからといって、勝手に帰ることは出来ない。その上、全部の闘技場が対抗戦で使っているため、自主練みたいなことも出来ない。

 つまり、どれだけ嫌だろうと、面倒くさくてもこうするしかないのだ。

 「ねぇねぇ!」

 「ん?」

 「対抗戦って全ての闘技場でやってるんでしょ?」

 「まぁ、そうだな」

 「どれだけ全部見たくてもひとつしか見れないってことだよね?」

 「普通に考えたらそうだな」

 「じゃあさ、じゃあさ!」

(……嫌な予感が……)

 俺と御子柴が闘技場に対抗戦を観に行くという結論を出し、重い腰をあげようとしていた所に、水戸が元気よく、それはもう元気に声をかけてきた。

 それだけなら、俺も嫌な予感なんてしなかっただろう。でも、水戸は俺が答える度に元気が増し、目をキラキラさせて来たのだ。

 そんなに長い付きあいじゃないし、むしろ短いのだが、この学園に入学してからずっと一緒にいるからなのか、なんとなく分かるのだ。

 

 この後、めんどくさい事が起こると……

 

 「水戸ちゃん、溜めてないで早く言いなさいよ~」

 「フフン!えっとね…」

 高原先輩に対して水戸が何故か、胸を張り、勝ち誇ったかのような顔付きになる。

 「なによ……」

 「1つの闘技場にみんなで行くよりさ、せっかく4人いるんだから、2人づつにわかれて、それぞれ闘技場に観に行くってゆうのがいいんじゃないかなと思って!私と界人くん。御子柴くんと高原先輩、って感じで!」

 「な、何よそれ!そんなのおかしいでしょ!それなら私と界人くん。水戸ちゃんと御子柴くんでしょ!?」

 「なんでよ!なんで、先輩と界人くんなの?ありえないから!」

 「それなら、水戸ちゃんと界人もありえないからね!」

 「フフッ……モテモテだな界人……フフフッ」

 「………………」

 ほらな?面倒臭いことが起きただろ?

 さっき落ち着いばかりだと言うのに、また言い争っている水戸と高原先輩。なんかもう止めに入ることすらも無駄に思えてきた……

 「まぁまぁお二人さん。別に2:2で分かれなくても4人で観に行けばいいじゃん?2人より4人の方が色々な視点から試合を観れるしさ」

 「「でも!」」

 いつも言い争っているのにこのように結構息のあっている2人……

 本当に仲悪いのだろうか?

 「それに、2:2で分かれるって言うなら、俺と界人、水菜さんと先輩。って感じでもいいってなるわけだしさ!な?」

 「「う~ん……しょうがないわね。4人でいいわ」」

(また息ピッタリ……)

 「よし!決定!じゃあ行くか、界人」

 「え!?……あ、あぁ」

 俺がどうでもいい事を考えている間に御子柴がなんとかこの場を収めてくれたみたいだ。

 この場を丸く収めた御子柴に感心しながら後をついて行こうとすると、御子柴に対しある疑問が浮かんだ。

 「なぁ御子柴」

 「なんだ?」

 「さっきに限ったことじゃないけど、御子柴ならこれまでも今みたいに穏便に収めることが出来たんじゃねぇの?」

 「……さぁな?」

 そう。今御子柴は自然に2人をいい感じに誘導し、この場を収めていた。自然に、だ。

 つまり、これまでもそのように出来たんじゃ?と思って聞いてみたのだが……返ってきたのは、ニヤリといったような悪い笑顔だった……

 「………………」

 「何してんだよ?早く行くぞ、界人」

 もうなんて言うか……呆然と立ち尽くすしか出来なかった、

 「……ハァ~」

 もう本当に何度目かわからない溜息をつきながら……

 

 そうしていると、水戸が痺れを切らしたのか、俺に駆け寄り腕をとってくる。

 「おーい、界人くん!早く行くよ!」

 「お、おう……」

(御子柴!許すまじ!)

 そんなことを考えながら、御子柴達に追いつくため歩いていく。

 そう、歩いていけたらよかった。そのまま何事もなく、御子柴達と合流し何事もなく対抗戦を観て、何事もなく今日1日が終わってくれると思っていた。いや、そう願っていたのだが……

 

 どうやらさっき感じた嫌な予感というのは、今から起こることも指していたようだ……

 

 

 

 「よう!元気そうだな?弱虫な弱菜(よわな)さん」

 「三雲……才斗……」

 水戸の前に立つ3人。そのうちの一人が水戸に声をかける。そいつの声も、顔もすごく気持ち悪く、嫌な感じがした。

 でも俺の目に、耳に残ったのは……水戸の苦しそうに歪めた顔と、泣いてしまうんじゃないかと言うほどの弱々しい声だけだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




捻くれ者の最弱最強譚#30いかがでしたでしょうか。
全然話進まない……
でも頑張りますよ!
次回もよろしくです!

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