捻くれ者の最弱最強譚   作:浦谷一人

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4ヶ月近くも投稿できずにすみませんでした!!!

言い訳になってしまいますが、ここ3ヶ月とても忙しかったり、入院していたりなどで全く小説を書くことができませんてました。
本当に申し訳ございませんm(_ _)m

前まではある程度ストックがあったので、一応スラスラと投稿できていたのですが、今はストックが全く無い状態です……
ですので、投稿頻度は少しの間少なくなると思いますが、途中で投げ出したり、辞めたりすることは絶対にないので、これからもよろしくお願いします!
絶対に完結させます!
ですのでこれからも読んでくださるとありがたいです。

では、4ヶ月ぶりですが、捻くれ者の最弱最強譚#29
どうぞ!


捻くれ者の最弱最強譚#29

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう、界人くん!」

「よう、界人!」

 次の日の朝、つまり6月7日の朝。時間は8時前。

 今ではもう日課となっている三人での登校のため、いつも通りの時間にいつもの待ち合わせ場所に着いたのだが、これまた、いつも通り水戸と御子柴の二人はもう着いていて俺を待っている状況だった。

 俺がこの二人より早く着いたことがないのだが……この二人はいったい何時にここに来ているのだろうか?

 待ち合わせ時間は8時のため、俺も遅れたことは無い。いや、10分前行動しているのだから、逆に俺でも早い方のはずなのだが……

「おう、おはよう。なぁいつも思うんだけどさ、二人はいったい何時にここに来てるんだ?俺も結構早く来てるつもりなんだが、二人はいつも俺より早いよな?」

「「私は(俺は)7時半だよ(だぜ)!」」

「いや、御子柴くんは7時40分くらいでしょ!いつも私より遅いじゃん!」

「いやいや、水菜さんのこそ7時40分くらいじゃねーか!いつも俺より遅いだろ!」

「……………………」

 なんて程度の低い言い争いなのだろう……

 俺は、どちらが待ち合わせ場所に早く着いていて、どちらが遅かったのか、いつもは………………などと言い争っている二人を呆れた顔で見てしまう。

 8時集合なのに、なぜこの二人は30分前に来ているのだろうか。

 というか、今思えば……いや、毎日思っているのだが、待ち合わせする度にこの会話を繰り返している気がする……

 

 俺が、そんな事を思っている間でも二人は向かい合って、言い争っている。どうでもいいことを、とても真剣な顔で……

「いやいやいや、御子柴くんの方が遅かったじゃん!それにいつも御子柴くんの方が遅いよ!私の方がいつも早く着いてるし」

「いや、いやいやいやいや、水菜さんの方が遅かったって!いつもだって、水菜さんの方が遅い!俺の方がいつも早く着いてるっての!」

「………………おい、二人とも……」

「いやいやいやいやいやいや!御子柴くんの方が!」

「いやいやいやいやいやいやいや!水菜さんの方が!」

「……おい、おいって!二人とも!」

「なに?界人くん。」

「なんだよ、界人。」

「なぁ、毎日、待ち合わせする度にその言い争いするのやめないか?というか、俺からすれば、なぜ二人がそんなに早く来ているかが不思議で仕方ないのだが……」

 俺は呆れた顔で、二人に対しため息混じりの言葉を口にした瞬間、二人は先程までの言い争いが嘘だったかのように静かになる。

 そして、二人揃って、俺の事をなんとも言えない顔で見ている……

 ………………それはもう、優しく、でも悲しげな雰囲気を漂わせるかなような…でも、慈愛に満ちた、母親が子に見せるような……そんな良くわからない顔。

 なぜ、そのような顔を向けられなければいけないのだろうか……

 「……な、なんだよその顔は……」

 俺がそう言うと二人は、やれやれと言ったような感じに首を振りながら俺の方へと近づいてくる。

 目の前まで来ると、俺の右肩には水戸の手が、左肩には御子柴の手が置かれる。

 もちろん、二人の表情はさっきから変わっておらず、相変わらず俺の事をよく分からない顔で見てくる。

 「ハァ……全く。界人くんは、鈍感だね……」

 「ハァ……全く。界人は鈍感だな……」

 「……はぁ?ど、鈍感?何が?ってか、どういう事だよ?」

 本当に、全くもって意味がわからない。

 俺は疑問、もとい正論を言ったつもりだったのだが、俺のその言葉に対しての答えがよく分からない表情にため息、そして、鈍感という言葉。

 「ハァ……これだから界人くんは…もう呆れるのを通り越して、凄いとすら思えてくるよ、私……」

 「全くだ。これだとまだまだ先は長そうだな」

 「そうだね」

 「「ハァ……」」

 「は、はぁ!?っ、おい!ちょっと待てよ!!」

 御子柴と水戸の二人は、俺の質問に対しては何も答えず、二人だけで会話を進め、最後にやれやれといったよう溜息をつく。

 そして、俺から手を離しても二人してよくわからない会話をし、何に対してかは分からないが二人で共感しながら、俺を置いて歩いていってしまう。

 

 「……………………」

 本当に、本当の本当に、全く意味がわからない……

 理解できない俺がおかしいのだろうか?

 もしこの場に俺以外の人がいたとしたら、その人はあの二人が言っていることを理解できたのだろうか?

 まぁこんな事、考えるだけ無駄なのだろう……

 

 そうこうしている間……まぁ、そうこうしている間、と言ってもただただ呆然と立ち尽くしているだけなのだが、御子柴と水戸の二人は歩みを止めることなく、どんどん先に行ってしまっている。

 「……ハァ~」

 このまま止まっていると置いていかれそうなので、俺は深い溜息をつきながら止まっていた足を前に向け動かし歩き始める。

 「………楽しそうだな…………学校に遅刻するかもしれないし、早くあいつらに追いつくか!そうだな、うん!それがいい!」

 ……決して、置いていかれるのが寂しいとか、置いていかれるのが嫌だとか、目の前で二人が俺抜きで楽しそうに話してるのが羨ましいだとか、決してそんなことは思ってはいない。

 ただ、本当に学校に遅刻するかもしれないから、ちょっとだけ早歩きをし、二人に追いつこうとしているだけだ!

 本当にただそれだけ!本当だぞ!俺は嘘つかないからな、多分……

 

(というか、こんな事を頭の中で考えてるってだけで、前の俺では考えられないよな……俺も変わったということなんだろうか?)

 多分、というかほぼ確実に前を歩いている二人に出会ってから、俺は変わったのだろう。

 それがいい事なのか、それとも悪いことなのか……変わったということが俺にとって、これからプラスになるのか、それともマイナスになるのかなど、そんな事は分かるはずもないのだが…

 …………それでも今言えることは、

(嫌な気分じゃ、、、ない、な……)

 そんな考えに至った俺は歩いている足を早め、二人に追いつくのに専念する事にした。

 ……まぁ、専念したと言ってもすぐに追いついたため、専念という程でもないが、、、

 

 「やっと追いついたか界人。」

 「二人が早く歩きすぎなんだよ……」

 「そんなことより、界人!俺と水菜さん、どっちが界人の事よく知ってると思う?どっちの方が分かってると思う?」

 …………………………

 追いついたと思ったら、御子柴はまたおかしなことを言い出した。

 「……はぁ?何言ってんだ?」

 「いや、だから!どっちが界人の一番友達だって聞いてるだよ!?」

 「………………」

 「ちょっと、御子柴くん!界人くんが困ってるじゃない!」

 良かった……この感じだと、水戸は御子柴のように変なことは言い出さないだろう。現に今、暴走状態の御子柴を止めてくれている。

 「そんな事、聞かなくても分かるでしょ!私が一番に決まってるじゃない!ずっと一緒に居てくれるって言ってくれたし!」

 …………………………

 「……えっと、水戸?」

 「界人くん!そうだよねぇ?私が一番だよね!」

 「…………あ、いや、」

 「何言ってんだよ!水菜さんは分かってない!男女の友情より、男同士の友情の方がデカいに、一番に決まってるだろ!」

 「はぁ?今どきそんな考え古いでしょ!常に新しくなっていかないと!」

 先程まで、厳密に言うと俺が追いつくまで、二人して楽しそうにワイワイ話していたのに、今はその面影すらない……

 それとも、ワイワイ話していたように見えただけで、実際は今のように言い合っていたのかもしれない。

 いや……かもしれないではなく、言い合ってたと言い切っていいのではないだろうか?いや、言いきっていいだろう。そう思えるほど、そう断言できるほど目の前の二人は今もなお、激しく言い争っているのだ。

 

 「はぁ?古いって事はつまり昔からそうだったってことだよ!そう受け継がれてきてるんだよ!何もかもが新しくなった方がいいとは限らないだろ!」

 「何言ってんの?古いままじゃダメだからこそ、今新しいのがたくさんできているんでしょ?それってつまり、新しいのがいいって、一番ってことでしょ!」

 「はぁ!?なんだと!!」

 「なによ!?」

 「…………えっと、おい二人とも、言い合いはそのk」

 「「これは大事なことなんだから、界人(くん)は黙ってて!」」

 「………………はい」

 なぜ俺が怒られなければいけないのだろうか。俺、怒られるようなことしたか?したのだろうか?無意識の間にこの2人に怒られるような事をしたり言ったり、などの可能性が…………どうしよう、大いに有り得る話だ。

 

 まぁ今はそれは置いとくとして、言い争いをしながら歩いていたため、歩くペースは遅いと言っても、もう学校の近くまで来ている。

 周りには、学校の近くということもあり、多くの三日月学園に通っている生徒達が沢山、いや、うじゃうじゃといる。

 その中でこの二人は大きな声で言い争っている。しかも、俺を挟んで、だ。

 つまり、俺が何を言いたいかというと…………

 周りからの視線がとてつもなく痛いのだ。それはもう俺の体のそこら中にグッサグサと視線が突き刺さってくる。その上周りの人たちは俺たちの……いや、俺のことを見てヒソヒソと小さな声で話している。

 そのヒソヒソと話している状況が合わさることにより、余計に視線の攻撃力が増しているのだ。

 なぜ、言い争いをしている御子柴と水戸の二人に視線が行くのではなく、俺に来てるのか、と疑問に思うだろう。

 しかし、答えは簡単だ。

 二人が俺を真ん中に挟んだ状態。その上、言い争っている内容が俺についての事だからだ。

 まぁ、俺が最弱者のEランクだからというのもあると思うが……

 この事から御子柴や水戸ではなく、俺になんとも痛い視線が注がれているというわけだ。

 

 「水菜さんは本当に分かってないわ!界人がそんなにやわなわけないだろ!界人はここにいる誰よりも強いんだぞ!」

 

 ヒソヒソヒソヒソ……

 グサ、グサグサ、グサグサグサ……

 

 「はぁ?界人くんは強いことは私が一番よく知ってるわよ!実際戦って来てるんだから!ここにいる誰よりも強いって言うのは共感するけど、それでも完璧ってことはないでしょ!」

 

 ヒソヒソヒソヒソ、ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ……

 グサグサ、グサグサグサグサグサグサグサグサグサグサ……

 

 「完璧じゃない、ってのはそうだろうな。界人も弱ってしまう時もあるだろう……だからこそ、そういう時は男同士の友情の方が役に立つし、力になるんだよ!」

 「はぁ?そんなの男女の友情でも同じじゃない!私だって界人くんの役に立つわよ!それに、男同士の友情はそれ以上進展はなくても、男女の友情は……それから恋愛に発展したりして……界人くんと恋愛……エヘ、エヘヘヘヘ…………」

 「はぁ?何言ってんだよ!!」

 「なによ!」

 

 ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ……

 グサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサ……………………

 

 …………………………………………………………

 

 痛い……痛すぎる……

 これ以上このたくさんの視線に晒されると死んでしまいそうだ。

 そう思えてしまえるほど、今この状況は俺にとって、生きている心地が全くしない。

 

(視線ってのは、こうも集まるとこんなにも攻撃力があるんだな…………こんなのほぼ凶器じゃねーか……ハァ~~~…………あ、空青くて高いくて、、綺麗だなぁ~……)

 周りからの視線を一身に浴びでいる俺は、視線という武器が持つ高い攻撃力から少しでも逃げるかのように、最後は心の中で深い深い溜息をつきながら、遠くの空を見上げ、現実逃避を開始しようとしていた。

 

(…………って現実逃避をしてる場合じゃねーよな……)

 学校まであと少しなのだから、このまま現実逃避をし、知らぬ存ぜぬといった感じのまま学校まで向かってもいいのだが……現実逃避をしているからといって、ダメージが全く無くなる訳ではないのだ。

 大事な事なのでもう一度言おう!

 現実逃避をしているからといって、ダメージが無くなる訳では無いのだ!

 ただ、視線を集めている、ダメージを受けているというと事実から、目を背けているだけで、視線を、ダメージを受けていないというわけでない。

 そう!つまり、ただただその現実から逃げたいと望み、知らぬ顔をしているだけ。ただそれだけなので痛いものは痛いのだ…………

 

 「……な、なぁ、二人とも……学校も近くなってきた上に人も増えてきたわけだし、そろそろ言い合いはやめないか?」

 現実逃避をしようが何をしようが、今この状況の中に、この沢山の視線の中にいるという事実は変えられない。

 なら、現実逃避をするのではなく、少しでもこの状況が改善するように動いた方が得策だ。

 だから俺は動き、二人にそろそろ言い合いをやめるように言った。それも優しく、だ。

 この俺の行動は成功でなくても間違いでもないはず……

 

 間違いないはずなのだ……

 

 「界人はちょっと黙ってろ!」

 「界人くんはちょっと黙ってて!」

 「……えっと……」

 

 なのに…………

 

 ヒソヒソヒソヒソ……

 グサグサグサグサグサグサ……

 

 なぜ俺が学校もまだ始まっていない、登校の時点でこんなにも精神的に疲れないといけないのだろうか……

 

 

「あ~もう!本当になんなんだよ!!!」

 

 ……………………………………

 

 この状況に我慢しきれなかったのだろう。気がつけば俺は今日1番…いや、今年1番…いやいや、多分生まれてからの人生の中で、1番大きな声で叫んでいた。

 

 「「………………」」

 「か、界人……?」

 「界人、くん……?」

 「…………ハッ!?」

 人間というのは、一時期の感情で流されたりテンションが上がったり、爆発したりなどすると、その後何故かはわからないが急に自分の今の状況を冷静かつ迅速に分析する。

 そして、分析するが終わると決まって自分のした事を後悔したり、テンションが上がっていたのに、次は逆にテンションが極端に下がったりなどするのだ。まぁ所謂、賢者タイムというやつだ。

 

 「………………」

 今の俺の状態がその賢者タイムなのか、なんなのかは分からないが、とりあえず、冷静になり周りを見渡してみると、水戸や御子柴そして、周りにいる生徒全員が驚いたような顔で俺を見ていた。

 「……あ~……え~っと……」

(これ……余計に酷くなってないか?余計に気まづくなってないか?)

 先程まで言い合っていた御子柴と水戸、周りでヒソヒソと話していた生徒達でのガヤガヤした雰囲気はどこにもなく、静寂に包まれていた。

 先程までは静かな方がいいと思っていたのにも関わらず、静かになっている今は、逆に少しガヤガヤしている方がいいと思ってしまっている。

 

 「……えっと……あ、あぁ~。いい発声練習だったな~……な、なんてな……」

 「「…………」」

 

 ……………………………………

 

 静かすぎるのは嫌だったため、少し冗談を言ってみたのだが……

(………もう、どうすることもできねーよ……)

 状況は変わることなく……いや、静かは静かなのだが、周りの目が驚いたような表情から、俺を哀れんでいるような表情に変わっているのだ。

 いい方に変わったのではなく、余計に酷くなってしまった……

 「……えっと……」

 「界人。もういいよ……もう大丈夫だから…」

 「そうだよ、界人くん。私たちが悪かったから落ち込まないで?早く学校行こ?」

 「………………」

 「水菜さん。もしかしたら体調が良くないのかもしれないぞ?」

 「あ、そっか!だから急に大声で叫んだってこと?それなら学校じゃなくて、病院に行ったほうがいいのかな?」

 「………………」

 「学校にも保健室はあるからそこでいいんじゃないか?水菜さん、急ご!」

 「そうだね!……あっ!でも界人くん、体調悪いのなら急ぐことってできないんじゃ……」

 「そ、そうか……あ!なら界人を担いでいこう!」

 「えっ!?ちょっ、お、おい!なんだよ!」

 水戸と御子柴は勝手に話を広げた上に、俺が叫んだのは体調が悪いからだとよく分からない誤解をしている中、俺はその誤解を解こうともせず二人の展開する会話に呆然としていると、急に水戸と御子柴の二人が俺を担ぎ始め、そして俺を担いだまま学校に向けて走り始めた……

 

 「お、おい!水戸、御子柴!降ろせよ!降ろしてくれ~~……」

 

 …………………………

 一人の男と一人の女が、じたばたしながら叫んでいる一人の男を担ぎ全力疾走をしているといる状況がそこには出来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このあと、担がれたまま学校に登校してきた俺が、先生が来るまでの間クラスの奴らの笑い者になったのは言うまでもないだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ、ちなみにこのようなことが毎日行われていると言えば、あなたは驚きますか?

 「その……ごめんな、界人……」

 「ご、ごめんね。界人くん……」

 「……ハァ~…………」

 ……まぁ想像にお任せします…………

 

 

 

 

 




今回初めて、1話まるまる使って界人、水戸、御子柴の三人の登校の様子を書いてみました!

楽しんでいただけたのなら幸いです。

これからも投稿は辞めることはなく、頑張るので応援よろしくお願いします!

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