前の投稿から1週間経ってしまい、申し訳ありませんでした……
一週間ぶりですが、捻くれ者の最弱最強譚、これからも温かい目で見守ってくださるとありがたいです。
よろしくお願いします!
ではどうぞ!
「ただいま~」
坂本先生の所に代表を辞退させてもらうために相談に行っていたので、今日はいつもより帰ってくるのが遅くなってしまった。
いつもなら、夕方の6時くらいには家に帰ってこれるのだが、今日はそのこともあり、7時半を過ぎている。
「お帰りなさい、兄さん!今日は少し遅かったですね?」
俺が挨拶をしながら、玄関を開けると、凛がすぐにリビングから出てきて、出迎えをしてくれる。
いつもなら晩御飯を作ってくれている時間なので、今日は出迎えは無いだろうな、と思っていたが、まさか音を聞きつけて、すぐに出迎えてくれるとは……ほんと俺は、優しくて、いい妹を持ったものだ。
「すまねぇな、凛。ちょっと今日は色々あって、遅くなった。晩御飯作ってたのか?そんな時くらい、出迎えはいいんだぞ?てか、毎日の出迎えもしなくていいんだけどな。」
俺は、靴を脱ぐため、凛に背を向け玄関に腰を下ろしながら、話す。
そして、そのあと靴を脱ぎ、立ち上がりながら振り向くと、凛はエプロン姿で立っていた。もう見るからに晩御飯を作っていました、と言わんばかりの格好だった。
まぁ、出迎えてくれるのは凄くありがたいし、嬉しい。
しかし、凛は晩御飯を作っている時に出迎えてくれたり、毎日欠かさず出迎えてくれる。自分が何をしていても、俺が帰ると必ず出迎えに来てくれるのだ。
凛は家のことをほとんどやってくれている。凛も学生なのに、だ。だから、凛は家に帰ってからは結構忙しいのだ。まぁ俺が手伝えばいいのだが、手伝わせてくれない。
だから、せめて出迎えは大丈夫だぞ?と凛のことを思って、言ってみたのだが……
「なんで遅くなったのかは、後で教えてください。とりあえず、お風呂の準備出来ているので、風呂はいってしまってください。その間に晩御飯を作っておきますので。」
凛は俺の気持ちとは裏腹に、笑顔で、そしてすごく楽しそうに俺の背中へと回り込み、背中を押しながら風呂場へと俺を誘導してくれる。
(まさか、風呂まで用意してくれていたとは……)
本当に凛には頭が上がらない。多分俺は凛がいなかったら、しっかりとした生活が出来ていなかっただろう。……いや、多分じゃないな。絶対出来ていなかった。
「凛…ありがとう。」
「いえいえ!……あと、兄さん。私が兄さんを毎日お出迎えをしたり、家事をしたりしているのは、私が好きだからです!私が兄さんの役に立ちたくて、やっているのです!兄さんの事が大好きだからしているのです!なので、やめません!」
本当に感謝している。
改めて、凛は俺にとって大切な存在だと認識することが出来た。だから、俺はリビングへと戻ろうと俺に背を向け歩き出していた凛へと、心の底からお礼を言った。
すると、俺のお礼を聞いたあと、凛は勢いよく振り返り、自分が好きだから、俺の役に立ちたかったから、俺の事が大好きだから、やっていたのだと…やっているのだと、とてもいい笑顔で言ってきた。
そんないい笑顔で言われたら……
「……お、おう。そうか。な、なんだ、その……ありがと?」
俺は、そう返事するしかない。
俺は凛のその笑顔を見た瞬間、ドキッとし、とても照れくさくなった。妹の凛の笑顔は何度も見てる。それなのに、なぜドキッとしたのか、なぜ照れくさくなったのか、わからない。
でも、一つだけ言えることがある。
(やっぱり、女性の心の底からの笑顔は、男にとっては破壊力があるな……)
俺は照れている顔を凛に見られないように、顔を逸らしながら返事をし、風呂へと入るため、風呂場のドアをゆっくりと閉めた。
「クラス対抗戦、ですか?」
「そうそう、それが来週からあるらしいんだが……あぁ、俺ら一年のクラス対抗戦は6月後半らしいからまだ先らしいけど。」
「へぇ、そうなんですね……でも、その事と、兄さんが帰ってくるのが遅くなったのと、どのような関係が?」
凛は可愛く首をこてんと傾げながら俺に問いかけてくる。
「あー、えっとだな……」
あれから、俺はお風呂から上がり、そして凛もお風呂に入ったあと、、時間では夜の8時半となっている。
今、机に向かい合って座り、二人揃って凛の作った晩御飯を食べているところだ。
今日の献立は、サラダと凛の得意料理の肉じゃがだ。
とても美味しい。もう、ほっぺが落ちてしまいそうなほど…
あ、今はどうでもいいか……
まぁ、とりあえず俺は、ご飯を食べながら、凛になぜ帰るのが遅くなったのか、その原因を説明していた。
「まぁ簡単に言うとだな……」
「はい、簡単に言いますと?」
「簡単に言うと、俺がそのクラス対抗戦の代表に選ばれていてだな……俺はそれが嫌だったんだよ。だから、辞退してもらえるように、先生に相談しに行っていたら帰ってくるのが遅くなった……って感じだ。」
「……………………」
俺が簡単に説明し終わると、凛は持っていた箸を手から落とし、目を見開き、呆然とした顔で俺の事を見ていた。
「?……うん!美味いな、この肉じゃが。」
俺はなぜ、凛が箸を落とし、呆然とした顔で俺のことを見つめているのか、疑問に思った。しかし、凛の作った美味しい肉じゃがを食べていると、その疑問も一瞬のことで、すぐ、気が肉じゃがの方へと移ってしまう。
だが、このあとすぐ、凛が机を両手で叩きながら勢いよく立ち上がったことにより、俺も驚き箸を落としてしまうことになった……
---------バァァァァン!!!
「うおっ!?……ビ、ビックリした~……どうしたんだよ、凛。急に……」
「なんで……」
「?」
凛は机を叩き勢いよく立ち上がってから、下を向き、怒っているのか…体をプルプルと震わせながらなにか小さな声で呟き始める。
しかしその凛の声はよく聞こえない上に、なぜ怒っているのかもよく分からない。
なにか凛を怒らせるようなことを、俺は言ったのだろうか?
凛がなぜ怒っているのか。その理由を探るため、俺は先ほど自分が言った言葉を思い出していく。
しかし、どれほど思い出しても、なぜ怒られたのか、俺のどの言葉で凛を怒らせたのか、全くわからない……
そうこう考えている間でも、凛は相変わらず、体を震わせ、小さな声で呟きながら怒っている。
「えっと……凛?どうした?……な、なんで怒ってるんだ?」
「……なんで、なんで、辞退しちゃうんですか!?」
「へっ!?」
どれだけ考えても、凛が怒っている理由が分からなかったため、直接、凛になぜ怒っているのか、と聞いた瞬間、凛は急に大きな声を上げる。
つい先程までは、近くにいるのに何を言っているのか分からないほどの小さな声だったのに、急に大きな声を上げたため、またまたビックリしてしまう。
「り、凛?……と、とりあえず落ち着け」
「無理です!なんで、そのクラス対抗戦の代表を辞退しちゃうんですか!」
俺がクラス対抗戦の代表を辞退した。どうやら凛はそのことに対して、怒っていた……というか、なにか思うところがあるのだろう。
しかし、こんな状態ではしっかりと話ができない。だから、凛に落ち着いて貰おうと思い言ったのだが、凛はそれでも落ち着かず、声を荒らげたまま言葉を続けていく。
「クラス対抗戦の代表に選ばれたと言うことは、兄さんはそのクラスの人達に強いと、そのクラスの中で一番強い存在だと認められたとゆうことですよね!?」
「?えっと……そ、そういう事になるのか?」
「それなら、なんで辞退しちゃうんですか!せっかく、認めてもらっているのに!兄さんがもっと認めてもらえれば、兄さんを最弱者だとバカにする奴らも減るのに!」
「凛、落ち着けって!」
クラス対抗戦の代表、それは言わばクラスの中で一番強い人、クラスの中で一番強いと認められた人がなれる者だと、それに俺が選ばれたのだと、俺がクラスのみんなから快く選ばれたのだと、凛は思っているのだろう。まぁ、確かにクラス対抗戦の代表と言うものはそのクラスの中で一番強い者がなるのが、選ばれるのが普通だろう。
しかし、俺はクラスのみんなから快く選ばれてなどいない。
「私は兄さんが強いってことを知ってます!この世の誰よりも強いってことを!兄さんは私がそれを分かってくれているならそれでいいって言うかもしれませんが、私は嫌なのです!兄さんが他の奴らに弱いと蔑まれるのが、ランクだけで……Eランクってだけで、兄さんを最弱者だと決めつけ、バカにしてくる奴らが許せないんです!……兄さんは強いんです……中学の時、あんな奴らさえ……」
「凛!!!」
「ッッ!?」
「凛、落ち着けって……それに今更中学の時のことを言ってもどうにもならないだろ?それにあの時は力を暴走させた俺が悪いんだから……」
「でも!」
「とりあえず、中学の時のことは関係ないよ。今回、俺がクラス対抗戦の代表を辞退したのは、みんなに迷惑をかけるからだよ。」
「みんな?迷惑?」
そう、学校で先生にも言ったが、俺が今回辞退したのは、その理由が大きい。
「そう、迷惑。俺はEランクだ。それは事実なんだよ。凛の言う通り、俺が強いとしても、Eランクという事実だけは消えない。確かに俺はAランクの水戸に勝った。その噂も学年中に出回ったさ。でもな、その事によって、クラスのみんなや水戸、御子柴に迷惑をかけたんだよ。『EランクがAランクに勝てるわけないだろ!』ってな。」
「それなら、余計にクラス対抗戦に出た方がいいじゃないですか!そこで兄さんの強さを見せつければ……」
凛の言っていることは正しいだろう。噂を信じていない奴らにどう信じさせるか、それは実際に見せつけるのが一番手っ取り早いのだろう。
だか、人間というのはそんな簡単なものじゃない。見せつけられたからといって、人間は、認めたくない事実に対し素直に信じることが出来ない。見せつけ、証明したとしても、次は新しいイチャもんをつける。仮説を持ってくる。ズルをしていたのではないか?などと……
そうなれば、また4月の時の繰り返しになる。いや、もしかするとあの時よりひどくなるかもしれない。そうなると、クラスのみんなに、迷惑をかけてしまう。水戸と御子柴に迷惑をかけてしまう。
それは俺が嫌なのだ……
「確かにな……確かに凛の言う通りかもしれない。クラス対抗戦に出て、俺が強いってことを見せつけ、認めてもらう。それが一番いいのかもしれない。でもな、そんな簡単な事じゃない。人間はそんな簡単じゃない……その事は凛も知ってるだろ?」
「そ、それは……」
「もし、俺がクラス対抗戦に出て、優勝したとしよう。そうなったとしても、次はどんなズルをした!なんてことになるのがオチだ。優勝した奴がEランクの最弱者なら尚更だ。そうなった場合、クラスのみんなや水戸、御子柴に必ず迷惑がかかる。それは俺が嫌なんだよ……俺は、Eランクの最弱者だ。その事実は変わらないし、受け入れてる。だから、別に他の奴らに最弱者と罵られようと、蔑まれようと俺はどうだっていい。なんとも思わない。その中で、たった数人俺の事を知ってくれている人がいれば俺はそれでいいんだ。凛や水戸、御子柴。あと、高原先輩もか。その人達が分かってくれているだけでいい。それだけでいいんだよ……凛、俺は。その人達に迷惑をかけるのが嫌だった。だから辞退したんだ。分かってくれるか?凛。」
俺が、そう真剣に言うと、凛は頬を膨らましながら少し拗ねたような顔になる。でも、先程までの怒っているような感じはない。
どうやら凛を落ち着けさせることが出来たようだ。
「むぅ~……わかりました……兄さんはこうと決めたらもう何を言ってもダメですもんね。私も熱くなって、ごめんなさい。でも、私がなぜこんなに熱くなったのか、っていうのは理解してくださいね!私だって、兄さんが罵られたり、蔑まられたりするのは嫌なんです。納得いかないんです。そこは分かってください……」
「あぁ、分かってるよ。ありがとう凛。」
「ならいいのです。ご飯冷めちゃいましたね。温め直してきます。」
頬を少し膨らませ、少し拗ねたような顔だった凛だったが、俺の返事を聞いた後、咲いた花のような華やかな笑顔を、とてもいい笑顔を見せてくれる。
そして凛は、冷めた俺の器と自分の器を持ち台所の方へ向かって歩いていく。
「ほんと、いい妹を持ったよ。……幸せものだな、俺は。……ありがとな、凛。」
俺は、台所の方へと行こうとする凛の背中を目で追っていく。そして、その凛には聞こえないであろう小さな声で、そして笑顔で、そう呟やいた。
感謝の気持ちを込めて…………
「では、私は先に寝ますね!兄さんは、今日もまだ寝ないんですか?」
「ん?あぁ、もう少ししたら俺も寝るよ。」
「そうですか。それでは、兄さん。おやすみなさい!」
「あぁ、おやすみ。」
あれから、温め直したご飯を食べ、二人でちょっとした雑談をした。
時間はもう夜の11時近くになっている。いつもなら凛と一緒に二階に上がり、寝ている時間だろう。
しかし、ゴールデンウィークのあの闇市場の一件から俺には日課になっていることがある。
それは……
『今日のニュースです。………………』
ニュースを見ること。なぜニュースを見ているのか、それは俺がぶっ壊した関東地方中央5番地区の闇市場本拠の所が、あの日からニュースに上がり流れているからだ。
それを確認するのが俺の日課となっている。もちろん、あの日、助けた人達には闇市場のことは言わない方がいいと言ってあるので、ニュースでは闇市場、という言葉は出てきていない。ただ、廃工場からの辺り一帯が瓦礫と化している。と言うようなニュースが流れているだけ。
ただ、俺はもしかしたら、あの日から姿を消している、俊の手掛かりとなるような物が見つかりニュースにならないかと期待を込めて見ている。
『えー、続いてのニュースです。ゴールデンウィークの時、突如として瓦礫と化した廃工場とその辺り一帯。あの日から調査隊が原因などを調べて来ていましたが、今日も何も進展がなかったとのことです。…………………………』
「今日も、何も情報なし、進展なし、か…………ハァ…寝るか……」
あの時倒したはずの俊。その俊がまだ見つかっていない。早く見つけないと、また俺の大切な人達が、危険にさらされるような事が起きるかもしれない。だから、ニュースなどを見て少しでも情報を得ようとしているのだが、なかなか上手く事が進んでくれない。
「ニュースだけじゃなくて、俺が実際に動いて情報を集めた方がいいのか?でも、その事を俊に勘づかれるわけにはいかないしな……ハァ~……」
俺は溜息を一つだけつき、テレビを消してから、寝るために二階へと向かった。
もうこの時には、俊がとんでもない事を実行しようと動いていたことを、その事がキッカケで、のちのちに俺の大切な人達が、危険にさらされる事になるということを、もちろんこの時の俺は知る由もなかった……
一週間もあいだを開けてしまい申し訳ありませんでした……
これからも頑張るのでよろしくお願いします!!!