捻くれ者の最弱最強譚   作:浦谷一人

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すみません、今回は少し短いです(^^;
次回の分を入れちゃうと、すごく長くなりすぎたので、分けることにしました。
すみません。

では、どうぞ!


捻くれ者の最弱最強譚#19

「先輩……その前に一ついいですか?……なんで、いたんですか?……昨日。闇市場の連中の中に、先輩がなんでいたんですか?教えてください。高原美咲さん」

「………………………………」

 

 5月4日の朝、10時15分。人通りの少ない通りにあるカフェ。店の中には人はほとんどいなく、静まり返っている。

 そんな中、店の一番奥の端の席。そこに座っている二人が真剣な顔で見つめあっていた。

 見つめあっている。そこだけを聞けば、すごくいい感じに聞こえるが、今、俺と先輩の間には、いい雰囲気なんて微塵もない。

 

「よく気がついたね。なんで私だってわかったの?」

「まずは声ですね。よく聞けば、あなたの声そのものだった。あとは、あなたがこちらに向けた、よく分からない視線や感情。まさに、仮面をつけている時あなたそのものだった。だからですかね……」

「そっか。日々八神くんに見せていた仮面が仇になっちゃったか……」

 先輩はもう仮面をつけていない。素顔の状態で虚しい表情を浮かべている。

 そして、高原先輩はその表情のまま、こちらを向き弱々しい声で俺に問いかけてくる。

「私が、闇市場の一員だと分かった八神くんはどうするの?私の事を、……どうするの?昨日の他の四人のように私のことも退治する?」

 

 俺はどうするか……闇市場を潰す?闇市場の一員だった先輩を潰す?

 そんなことはしない。

「そんなことはしませんよ……する理由も今はありません」

 

「ッッ……八神くんは闇市場というものを許せるの?人の命を簡単に売りさばき、奪う。自分の私利私欲のために。そんなものが、この世界にあってもいいって言うの?その人たちを、この世界を許せるって言うの!?」

 

 俺が何もしないという意見を言った瞬間、目の前にいた高原先輩は、先程まで見せていた虚しい表情ではなくなっていき、怒りを含んだ顔へと変わっていく。

 そして、声を荒らげ机を叩きながら勢いよく立ち上がり、俺にすごい剣幕で問いかけてくる。

 

 しかし、先輩がそんな剣幕で問いかけてきたとしても、俺の意見は変わらない。俺の答えは変わらない。

 

「先輩、落ち着いてください。それに、ここはお店ですよ?大きい声を出すのは控えてください。」

「ッッ………ごめんなさい」

 俺がそういうと、先輩は落ち着きを取り戻したのか、謝りながら席に座る。

 そして俺は、先輩が座ったのを確認してから、俺が先程最後まで言えなかったことを口にしていく。

 

「先輩、俺はこの世界になんて興味はみじんもないんですよ。この世界がどうなろうと、どうでもいい。知らない人達がどうなろうと、どうでもいい」

「なっ……!?」

「俺はただ、身近なものを、身近な人を、大切なものを、大切な人を守れれば、護ることができればそれでいいんですよ……いや、違うな……俺にはそれぐらいしかできる力がないんですよ。たがら、それだけを必死に守って、護っているんです。他のことに、人に、ものに、気を向けていられるほど俺は強くないし、良い奴じゃないんです。」

 

 俺の言葉を聞いている先輩は、怒りをあらわにしたり、驚いたり、悲しそうな顔をしたりと表情を二転三転させていく。

 俺はそれを確認しながらも、言葉をとめない。まだ、言い切っていないから、聞きたいことがあるから。

 

「俺が昨日、手を出したのは闇市場の連中が許せなかったからじゃないんです。妹や水戸を護るためなんですよ。凛や水戸に、気持ち悪い視線や悪感情を向けてきたから、商品だと言ったから、俺の前から連れ去ろうとしたから。二人を護るためにあの四人を蹴散らした。ただそれだけです。」

 そう、ただそれだけ。俺は、凛と水戸の二人を護るのに必死だっただけ。二人に、気持ち悪い視線や悪感情を向けてきたこと、商品だと言ったことが許せなかった。ただそれだけ。

 たがら、その四人を蹴散らした。潰した。

 でも、一人だけその四人とは違うやつがいた。そいつは、気持ち悪い視線も悪感情もない、よく分からない視線や感情を最初から最後までこちらに向けていた。

 

「でも、残りの一人は、ほかの四人と違った。よく分からなかったんです。視線や感情が……」

 そう。だから、不思議だった。なぜそこにいるのか。何をしているのか。なにをしたいのか。たがら………

「だから、聞きたいんです。高原先輩。なんで、あそこにいたんですか?なんで、闇市場の連中としてあの場所にいたんですか?」

 俺は、昨日からずっと疑問に思っていたことを本人に、高原先輩に問いかける。

 

「わ、私は…………」

 ────ピロン♪メールだよ♪

 

 高原先輩が真剣な顔つきになり、ゆっくりとだが話始めようとした瞬間、俺の携帯がメールを受け取った時の着信音を鳴らす。

 今、真面目な話をしているため最初はそのメールを無視しようと思ったのだが、なぜか胸騒ぎがしたのだ。

 俺の携帯には水戸、御子柴、凛の三人しか登録していない。つまり、メールがくるとすれば、この三人の内の誰かということだ。

 もしも……、この三人のうちの誰かに何かあったんじゃないか?それを知らせるために、なんとかメールをしてきたんじゃないか?などと考えてしまう。

 

「メール、見てもいいよ八神くん。」

 俺がそわそわしているのが見てわかったのか、高原先輩はそう提案してくれる。そんなにわかりやすかったのだろうか。

 でも、この提案は正直、ありがたかった。こんな気持ちで先輩の話も聞けないだろうし、メールが急ぎの用だったら、俺は後で後悔することになっていただろう。急ぎの用でなければ、それはそのときだ。

「すみません。ありがとうございます。」

 俺は先輩に、謝罪とお礼を言い、ズボンのポケットから携帯を取り出し待受画面を見る。

「ッ!?」

 すると、そこに表示されていたのは”凛”という名前。つまり、妹からだった。

 

 今日の朝、凛は用事があると言っていた。用事がある凛がその途中に俺にメールすることはこれまでなかった。

 

 鼓動がどんどん速くなっていく。変な汗が噴き出してくる。あってほしくはなかった勘が当たりそうで怖くなってくる。

 震える手で、携帯のロック画面を外し、メールの画面を開き、そして、凛からのメールを開く。

 

「ど、どうしたの八神くん!?」

 先輩が慌てた様子で俺に声をかけてくる。その声がしっかりと聞こえてくる。夢だと思いたいのに、それを、先輩の声がしっかりとハッキリと聞こえてくるという事実がそれを否定してくる。

 

 俺は椅子をガタッと鳴らしながら勢いよく立ち上がる。

「や、八神くん!?落ち着いて、しっかり呼吸をして!」

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……………」

 なんで息苦しいのだろうか。なんで、変な汗が出てくるのだろうか。そう思っていた。

 その答えが、先輩の言葉によってわかる。どうやら俺は過呼吸になっていたようだ。

 

「八神くん、どうしたの?」

「凛が……”助けて”って………」

 俺の手元にある携帯電話。そこには、凛のメールの内容が映し出されている。

 

『勝手なことをしてすみません。兄さん。…………助けて』

 

 凛からのメールの内容はそう映し出されていた。

『助けて』その部分だけが、頭の中で反芻(はんすう)される。それだけで、思考ができなってくる。頭が真っ白になる。

 

(凛を……助けないと、でもどこに、どうやって……どうすれば……)

 

「八神界人!落ち着きなさい!!」

「せ、先輩……?」

 少しではあるが、先輩の大声のおかげで、少し落ち着き、考える余裕ができた。

 

(そうだ、凛がなんの意味もなくこんなメールをよこすわけがない。もし、本当に助けてほしいのだとしても、凛は何かしらの手がかりも一緒に送ってきてるはず)

 

 その答えにたどり着き、もう一度メールをよく見返していく。

 どこだ。どこに手がかりがある。どこに。そう考えに考えながら、隅の隅まで目を通していく。

 すると、メールの最後の最後に、なにかファイルが添付されているのが目に入る。

 落ち着きながら、そのファイルを開く。

 

「これは、どこかの位置情報か……?」

 ファイルを開くと、携帯の画面にはマップが映し出され、その真ん中に何かが刺さり、マッピングしてある。

 しかし、住所も何もわからないため、マップで追跡ができない。

 中央区だというのはわかる。でも、どこかわからない。

 こっちに来てから約3ヶ月。自分の家の周辺だけ知っていればいいだろうと思い、他のところを知ろうとしてこなかったのが、今、仇となり現れたようだ。

 

『後悔先に立たず』今思えばよく出来た言葉だ。

 でも、今は後悔している時間さえおしい。俺はこの場所かどこなのか、わからない。でも、今の俺の目の前にいる先輩なら、ここがどこなのか知っているかもしれない。

 

「先輩。このマッピングされている場所がどこなのか分かりますか?わかるなら教えてください!」

「え?えっと……ここは…?中央5番地区の……15丁目の……廃工場……………ッ!?」

「どうしたんですか!?」

「こ、ここ、中央区闇市場の本部のある場所……」

「なっ!?」

 先輩が急に驚いて声が詰まったと思ったら、とんでもない言葉が先輩の口から飛び出す。

 

 聞こえた。確かに聞こえたのだ。

『闇市場』と。

 

 つまり、今凛は闇市場にいるということ。俺に助けを求めるほどの状況だということ。

「先輩!!ここはどこですか!!」

「中央5番地区15丁目なのは確かだけど、私も詳しい住所は……」

 そこまでわかればなんとかなる。

 先程の先輩の廃工場という所が頭の中で、リピートされる。

 俺は急いで、マップアプリを起動させ、中央5番地区15丁目と打つ。すると、昨日水戸と行ったジムがマップに映し出される。

 そして、その近くにある工場を手当り次第探していく。

 すると、凛の送ってきたマップデータと同じ所が見つかる。

 

「ここか……」

 たしか、ジムまでは駅からバスで30分ほど……しかし、信号などにつかまればその分時間も延びる。

 そうなると、俺が、元素を使い全力で走る方が速いかもしれない。

 運良くジムからそんなに離れいないため、ジム付近なら昨日の今日なので、詳しくないがわからなくもない。

 不幸中の幸いというやつだろう。

 

「すみません、先輩、話の途中なんですが、この話はまた今度にしてもらえませんか?俺は用事ができたので。」

「よ、用事って、どこに行くの?まさか、一人で闇市場本部に乗り込むつもり!?無理だよ!!どれだけあなたが強くても一人では絶対に!!」

「だから、なんだって言うんですか!!あなたには関係のないことです。すみません。でも、凛は今俺に助けを求めています。それなら、俺は行かないといけないんです。」

「ま、待って!!罠だったら?どうするの?昨日の出来事は報告してるのよ?つまり、闇市場があなたを潰すための罠だったらどうするの!?」

 罠。まぁ、その可能性もあるかもしれないだろう。

 でも、そんなことはどうでもいい。

 

「罠ならそれでいい。でも、もし本当に凛が助けを求めていたら?罠ならその時に考えればいい。今は1割でも凛がピンチだという可能性があるのなら俺は行きます。では………」

「ま、待って八神くん!!」

 

 俺は、先輩に一礼だけをし、その場を去る。後ろから先輩の声がするが、もちろん立ち止まっている時間はない。

 そして俺は、店を出たあと簡単にストレッチをして、腰を落とし足に元素を集めていく。

「さて……トレーニングの成果を出す時がきたぞ。………フッ!!」

 そして俺は、走り出す。もちろん元素を解放して。

 でも、ただ集めた元素を解放しているだけでは一時的で一瞬な加速しかできない。だから、集めた元素を一気にすべて解放するのではなく、少しずつ解放していく。

 そらなら、加速速度はいつもより少しは遅いが、それでも長時間加速していられる。

 

「待ってろ、凛。今行く!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「水戸ちゃん。私。高原です。もし、今日か明日に八神くんから電話かメールがあったら、私にもその内容を教えて!!お願い。………詳しいことは、その時に話すから………全部、包み隠さず……」

 




捻くれ者の最弱最強譚#19
いかがでしたでしょうか。
今回は短い上に、話が全く進んでないですね……申し訳ございませんm(_ _)m

やっぱり、文章を書くのは難しいですね……

ですが、これからもめげず、頑張っていくので、これからもよろしくです!

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