大変申し訳ありません……
でもこれからも頑張りますのでよろしくお願いします!
俺は間違えたのか?
俺が悪かったのか?
自分を犠牲にしても、"正義"を貫いてきた。
ずっと、ずっと、道を歩いてきた。走ってきた。"正義"という明るい光に向かって。
なのに…………それなのに…………
今はもう何も見えない。ずっと目指していた光は見えない。
「真っ暗だ……なにも見えない。俺はどうしたら……」
これまで歩いてきた。走ってきた道が、
『歩き続けて……』
「無理だよ……なにも見えないんだ……」
『走り続けて……』
「怖いんだ……光という目印がないから……」
道は今も俺の前に広がっているのだろう。なにも見えなくても、それは分かる。
ただ、明るい世界から、暗闇の世界へと反転しただけだ。
だから道はある。
それでも、どちらに進めばいい?どう進めばいい?
…………分からない
『生きるためには、歩き続けるしか、走る続けるしかない……』
「もう……無理だ……」
『大丈夫。私があなたを護る。あなたが私を護ってくれたように。私は感謝してる。あなたは優しい人だと、強い人だと、護ることができる人だと私は知っている。分かっている。』
「なにも見えない。真っ暗なんだ……」
『真っ暗だからこそ、暗闇にいるからこそ、見えてくるものがある。分かるものがある。だから、探して。見つけて。あなたの答えを。あなたにとっての本物を。』
「俺の答え……俺にとっての本物……俺にそんなことできるのかな?」
『大丈夫。あなたは私の
「………………」
なぜかは分からない。
この声の人が、大丈夫だと言うと、勇気がわいてくる。元気が出てくる。
どこに向かうのか、何が見えてくるのか。今は何も分からない。
でも、生きるためには歩くしかないのだ。この道を、この人生を。
「いってくる」
『いってらっしゃい。-------さん。私の
「-------さん。------いさん」
誰だろう……何も見えない。暗闇のどこから、声がする。
「------いさん。兄さん!」
暗闇なのも当たり前だろう。俺は目を閉じていたのだから。
昔、いつだったかはよく覚えていないが、一度だけ見た夢を、今もう一度見ていた。
あれはいつ見たんだろうか。本当に夢のことだったのだろうか。
それは今でも分からない。
でも、とりあえず、今は目を開け、凛の呼びかけに応えるとしよう。
「…り、凛か…………俺、どのくらい意識を失っていた?」
「10分ほどよ……大丈夫?界人くん」
凛の横から声がする。
そちらを見ると、心配そうな顔をした水戸がこちらを見ていた。
なぜ心配そうな顔をしているのか、よく分からない。
元素枯渇状態で今倒れているので、先ほどまで、戦っていたことは分かる。
でも、五人組の内の一人が水戸や凛のことを『商品』と言ったのを聞いた瞬間から、もう一人の自分が自分の体を使って、戦っているのを遠くから見ている感覚だったのだ。
だから、どうなったかは覚えてはいるのだが、よく分かっていない。
「あ、あぁ……大丈夫だ。俺が倒れた後は何もなかったか?」
「はい、兄さんが吹き飛ばした四人は、まだ意識が戻っていませんので。」
「そうか……」
凛が、俺の問いに対し、俺から目を離し答えながら周りを見渡していく。
それもそれに釣られ、同じように見渡すと、四人がそれぞれ違う離れた場所で倒れていた。ピクリとも動かないため、凛の言った通り、まだ意識が戻っていないようだ。
「一人は逃げられてしまったけど……それでも、界人くんが無事でよかった。」
「…一人?…………ッッ!?」
『君はそんなに強かったんだね……八神、界人くん……』
『一人は逃げた』そう言った水戸の言葉を聞いた瞬間、最後の一人になった時の女の声が頭の中で再生される。
「どうしたの?界人くん。」
「どうしました?兄さん。」
「……いや、……なんでもないよ」
(なんで……あんたが、そんな所にいたんだよ……)
最後の女の声は凄く聞き覚えのある声だった。
それに、女がずっとこちらに向けていた、なんとも言えない視線や、よく分からない感情は、今思えばあの人そのものだった。
今になって思っても遅いことだが、もっと早く気づくべきだった。
「兄さん。動けそうですか?」
凛が不安そうな顔をして聞いてくる。
その横にいる水戸も、声には出していないが、不安そうな顔をしているのが分かる。
自分自身がよく分かっていないと言っても、この二人には本当に心配をかけたようだ。
だから、『大丈夫』だとハッキリと言いたいのだが、体が重く、力が入らない。動いて、不安そうな顔を向けてくる二人に安心してもらいたいのだが、どうやら無理なようだ……
まぁ、元素枯渇状態になっているのだから、当たり前だと言えば、当たり前なのだが……
「すまん。どうやらまだ動けなさそうだ。力が入らない……」
「分かりました。では、私が肩を貸しますね。……という事で、水戸さんはもう帰ってもらって結構ですよ?」
「すまないな、水戸。最後まで送れそうにない。」
「そうです。そういう事です。では、さよなら水戸さん。もう兄さんには近づかないでくださいね?」
「な、なんでそうなるのよ!!」
「なんですか?」
先ほどまで、二人とも元気がなかったのに、急に元気になり、言い合いを始める。
まぁ、今のは凛が始めたことだから、水戸は悪くはないと思うが…
「…わ、わわ私も界人くんを送っていく!凛ちゃん一人じゃ界人くんを支えきれないだろうし…だから私も肩を貸して、家まで送っていってあげる!」
「バカなんですか、アホなんですか、あなたは!!私がそんな事を許すわけないじゃないですか!さっさと帰ってください!この雌豚!害虫!」
「バッ……バカ!?…アホ!?……それに、雌豚に害虫って……あんたね、言っていいことと悪いことっていうのがあるでしょ!!」
「事実を言って何が悪いんですか?そもそも、兄さんが今こうなっているのは、水戸さんあなたの所為でもあるんですよ?闇市場の連中なんかに狙われるから!」
「それを言ったら、凛ちゃんの所為もあるでしょ!」
また言い合いが本格的に始まってしまった。
ファミレスにいた時でさえも、精神的に疲れ果てたのに、元素枯渇状態で力も入らない上に、ヘトヘトな今の状態で、この言い合いを聞いていると、余計に疲れ果ててしまう……
「お、おい二人とも、言い合うのはそこまでにしてくれ……頭に響く。それに疲れる。」
「だ、そうですよ。水戸さん!」
「みたいだよ。凛ちゃん!」
この二人はなぜ、こうなってしまうと俺の言う事を聞いてくれないのだろうか。
俺はどちらか、ではなく、二人に言ったつもりだったのだが……
とりあえず、いつまでもここにいる訳にはいかない。それに、まだ周りに倒れている四人をなんとかしないといけない。
「俺は二人に言ったんだよ!凛。お前は水戸にケンカを売るな。水戸も水戸で、いちいちケンカを買うな。」
「なんで兄さんは、水戸さんを庇っているんですか…………?」
「なんで界人くんは凛ちゃんを庇っているのかな?妹だから?ねぇ」
「いや、だから……」
次は一人一人に注意をしたはずなのだが、それでも分かってくれなかったようだ。
やはり、二人は俺の言葉をしっかり聞いてくれないようだ。
その上、凛は目のハイライトが消えている。
いつもなら可愛く見える、首を少し傾げている格好も、今の凛がやると、それはもう怖すぎる。変な笑みを浮かべているし……
夜ということもあり、余計に顔に影が落ち、いつも以上に怖い……
水戸は水戸で、いつもなら声を荒らげて怒っているはずなのに、今はただただ笑顔で近づいて来る。そして、水戸も、凛と同じで夜ということもあり、顔に影が落ちているので笑顔なのに怖い。
「え、……っと……あの……ごめんなさい」
なんで俺は謝っているのだろうか……本能的に勝てないと判断したんだろう……
というか、なぜ、女というのは笑顔なのに、笑っているはずなのに、怖い雰囲気を、オーラを出せるのだろうか。
あんな事をされたら、怖くて仕方がないし、勝てるやけがない。
(やっぱり、男は女には勝てないんだな……女は強し…その通りだな)
俺が謝り、いろいろ考えている間も、水戸と凛は火花を散らして、言い合っている。それも笑顔のままで。
「凛、水戸。こんなことしている場合じゃない……と思います。とりあえず、警察に電話して、そこに気絶している四人をどうにかしてもらおう。二人の話をどうするかはその後だ……でいいと思います……」
怖い怖いよ……なんで二人ともそんなに笑顔なのに怖いんだよ。
しかも、こんな時は二人とも息ピッタリで、しかも、同時に同じ顔で、雰囲気でこっちを見てくるのだ。
仲がいいのか悪いのかよく分からなくなってくる。
「兄さんの言うことも一理ありますね……水戸さん、このはなしはあとで、という事で……」
「そうだね……それじゃ私が警察に電話するね。」
「そうですね。お願いします。その間私は兄さんの様子を見ておきますね。」
「……なんで、今は息ピッタリなんだよ……初めからそうしといてくれよ……」
水戸は、警察に電話をかけるため、携帯を取り出し、少し俺の側から離れたところで電話をしている。
凛は、俺の側に来て、『大丈夫ですか?兄さん』と言いながら、膝枕をしてくる。
俺は凛に『ああ、ありがとう』と一言だけ俺も告げ目を瞑る。
-------------警察が来るまでの間に、歩ける程度でいいので、回復していますように------------
そう心の中で何度も願いながら……
「じゃあな、水戸。また学校でな」
「う、うん……またね。……本当に送らなくて大丈夫?」
「大丈夫です!早く帰ってください。兄さんには私がいれば大丈夫なのです!」
「凛。また言い合いになるからやめろ……大丈夫だよ水戸。もう夜遅いから水戸も帰れ。悪かったな。遅くなってしまって。今日は、まぁ……楽しかった。」
「ッ……う、うん!私も楽しかった!じゃあまたね!」
水戸はそう笑顔で言い、手を振りながらはしりさっていく。
俺と凛は水戸の背中が見えなくなるまで見送った。
結局、あれから、30分ほどで警察は到着し、気絶している四人を連行していった。
まぁ、その時に『何があった』か『詳しくその時の状況を…』など言ってきていたが、そういうのは全て、凛や水戸が相手をしてくれた。
その後、また二人が言い合いを始めそうになったが、俺が立ち上がり歩いて帰ることを伝えると、二人は納得いかなそうな表情をしていたが、しぶしぶ納得してくれた。
もちろん、そんな短時間で、回復する訳もなかったので、無理はしていたが…
それでも、二人が言い合いをしなかったので、無理をしたかいがあったというものだ。
「兄さん、水戸さんに言った最後の言葉は何ですか?楽しかったってなんですか?私というものがいながら…」
「ま、待て待て、落ち着け、目のハイライトを消すな、怖い笑みを浮かべるな。ハァ……なんだかんだ楽しめたからお礼を言っただけだよ。」
「兄さん。楽しかったって、あれがですか?兄さんを無理矢理ショッピングに連れ回し、そのあとは、ジムに行って試合……それのどこが楽しいんですか?あれのせいで、水戸さんは纏いができなくなるほど疲れて、兄さんも、いつもより元素枯渇になるのが早かったんです……」
「まぁ……それもあるかもしれないけど……………ん?」
待て。今、凛はなんて言った?今日、俺と水戸がやったことを細かく言ったよな?
俺は、凛に今日のことは詳しく言っていない。何をしたか、なんてこと口にすら出していない。
もちろん水戸も話していない。なのになぜ凛はそれを知っているのだろうか……
「なぁ凛。お前、今日俺を、俺たちをつけたな………」
「いえ、つけていたのではなく、ついていったんですよ?」
「それは同じことだよ……妹がストーカー……」
「ストーカーではありません!!兄さんの追っかけです!!」
「だから、それも一緒だっつの……」
(妹がストーカー。洒落にならない。しかもまだ中学3年生なのに……)
俺はため息をつきながらポケットへと手を入れる。すると、ポケットの中になにか、箱のような物が入っている。
なんだろう、と思いながらその箱について考える。
「……………あああああああ……………」
「キャ!?………ど、どうしたんですか兄さん!?」
ポケットの中に入っていた箱。それは水戸に渡すため買っていた物だった。
ショッピングの最後の方、アクセサリーショップに行った時に、水戸が興味津々に見ていた物だ。
今日、一応楽しめたし、それに案内してもらったお礼ということで買っていたのだか、どうやら渡すのを忘れていたようだ……
「まぁ……渡すのはまた今度でいいか……」
そうこうしている間に、家の近くまで来たようだ。今も無理をして歩いて入るため相当しんどい……
「フゥ……帰ってきた……今日はもう風呂入って寝るか、明日も用事あるし……」
家の前につき、玄関を開ける。
その時後ろから急に凛から変な質問を投げかけられる。
「兄さん……闇市場っていけないものですよね?あってはいけないものですよね?」
「ん?……まぁ、あっていいものではないだろうな……急にどうしたんだ?」
「いえ、そうですよね。あってはいけないもの…………私が……待っててね、蓮ちゃん……私が助けるから」
最後の方、何を言っていたのか全く聞こえなかったが、なぜか決意のこもった表情をしていた。
俺はその決意のこもった表情が何を意味するのか、気になったが、疲れが上回り、何も聞かず風呂に入り、寝ることにした。
その時、凛に何かしら問いかけていれば、次の日に起こることを止められたかもしれなかったのだが、俺はもちろん知る由もない……
「お待たせしました。高原先輩。」
「ううん、待ってないよ」
今日、5月4日、時間は9時45分。
昨日、どこで俺の携帯を入手したかは分からないが、先輩が電話をしてきた。
内容は水戸と同じで、中央5番地区の駅に10時集合とのことだった。
なので、昨日と同じように6時に起き、トレーニングをして、9時15分に家を出てここまで来た。
服装も昨日と同じような感じだ。ただ、色合いが違うだけ。
ファッションに興味がなかったので、服の種類が少ないのだ。だからそこは許していただきたい。
まぁそんな訳で、今駅に着いたのだが、高原先輩はもういた。
一瞬、昨日の水戸のように『遅い』と言われるだろうと思ったのだが、言われなかったのでよかった。
高原先輩の服装は、黒のTシャツに白のテールカットのニットカーディガン。下は紺のデニム。といったなんとも大人っぽい感じだった。
「どう、八神くん。私に合っているかな?」
「そうですね。大人っぽくて、よく似合っていると思いますよ。」
「そかそか、よかった。それじゃ行こっか!今日は話をするつもりでいたから、人の少ないカフェに行こうと思っているんだけど……それでもいい?」
「はい、良いですよ……仮面はつけていないんですね……良かったです。」
「うん。仮面はとるって私が言ったからね。君の前では付けないことにしたよ。意味ないしね。」
そう言いながら、先輩は歩き出す。俺をその人の少ないカフェに案内してくれるのか、俺の前を先行して歩いている。
俺は今から起こるであろう事を想像し気合を込める。
そして、遅れないように、先輩の後ろをついていった。
駅から歩いて約10分。
人通りの少ない通りへと出る。
そして、その一角にあるカフェへと俺と高原先輩は入る。
カフェの中は思った通り、人はほとんどいなく、シンとしている。
その中で、俺たちは、店の1番奥の端の席へと向い、座る。
「さて、じゃあお話しようか、八神くん。いろいろ聞かせてね?」
「そうですね…いいですよ、仮面は外してくれていますし…聞かれたことにはなるべく答えましょう。答えられない事もありますが、そこは許してください。」
「うん。いいよ。出来る範囲で。それじゃいろいろ質問していくね。」
さて…ここからが勝負だ。
これをすれば、必ずめんどくさい事になる。
でもやると昨日から決めていた。
そして俺は、先輩が質問はじめる前に割り込み、俺の聞きたかった事を率直に聞く。
「先輩…その前に一ついいですか?…なんで、いたんですか…昨日。闇市場の連中の中に、先輩がなんで居たんですか?教えてください。高原美咲さん。」
捻くれ者の最弱最強譚#18
いかがでしたでしょうか。
一日一話投稿が難しくて、これからは2、3日に1話投稿になりますが、これからも応援をよろしくお願いします。