捻くれ者の最弱最強譚   作:浦谷一人

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すみません……
仕事の関係で、投稿するのが遅くなってしまいました。
もう少し遅かったら、一日一話投稿の目標が早くも崩れるところでした。
本当にすみません……
では、捻くれ者の最弱最強譚#15
スタート!(*゚▽゚)ノ


捻くれ者の最弱最強譚#15

 ピピピピピピピピピピピピピピ…………

 

 俺の頭元で目覚まし時計の無機質な機械音が部屋中に鳴り響く……

 朝が弱い人や、嫌いな人からすれば、この目覚ましの無機質な音は天敵中の天敵だ。

 だが、俺は朝が弱いというわけではないし、嫌いというわけでもない。毎日朝早く起きてトレーニングしているから、朝早く起きるには慣れているはずだった。

 ただ今日はなぜかとてつもなく眠いのだ。

「………………眠い」

 

 ピピピピピピピピピピピピピピ…………

 

「う、うるさい……」

 

 今日はなんだか、起きる気が出てこない。

 いつもなら目覚ましがなる10分前には起きている。だから、目覚ましの音を聞くなんて、すごい久さしぶりなのだ。

 今日はこのまま寝ていたい気分なんだが、どうもそれは許されないらしい。

「……今何時……」

 俺は今も元気に鳴り続けている目覚まし時計を止め、そして時間を見る。

 時計の針はちょうど縦真っ直ぐになっていた。つまり、6時だ。

 

「いつもより起きるの遅いのに、なんで今日はこんなに眠いんだ?ゴールデンウィークだからか?……ハァ~…トレーニングするか。遅れるわけにはいかないし」

 

『明日、朝の10時に中央5番地区の駅前に集合ね!遅れたらダメだから!』

 昨日の夜、水戸からそう電話がかかってきたのだ。

 メールでいいのに、なんでわざわざ、電話なんだ?と言ったら怒られてしまった。俺が悪いのだろうか?

 

 まぁとりあえず、そういう訳で、駅まで30分程かかるため、余裕を持って9時過ぎくらいには家を出ないといけない。

 トレーニングはだいたい2時間半ほどかかる。今の時刻は6時。トレーニングをすると、だいたい8時半。そこから、ご飯を食べたり、汗を流したり、などのことを考えるとそろそろトレーニングを始めないと、待ち合わせの時間に遅れてしまう。

 

「フゥ……体重い……」

 そんな事を言いながら、トレーニングをするために、ベッドから立ち上がり、着替える。

 着替え終わると、静かに部屋から出て、そして静かに階段を降りる。そして、最後は静かに玄関のドアを閉める。

 

 今日からゴールデンウィークだ。そんな日の朝早くから凛を起こすわけにはいかない。

 もしかすると、先程の目覚まし時計の音で起きてしまっているかもしれないが…………まぁ二度寝してるだろう。

 

 

「……寒いな……」

 そう呟きながら、空を見上げる。

 空は雲ひとつない。今日は快晴になるだろう。

 かと言って、まだ5月の朝6時だ。当然まだ肌寒いし、空もまだ明るくなりきってはいない。

「さてと……今日も行きますか」

 空を見上げながら、トレーニングをする前のストレッチを行い、そして俺は、いつものコースを走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 9時45分。中央5番地区の駅前に一人の男が息を切らしながら走って現れる。

 その男は、白が基調のVネックの長袖ニットソーの上に黒のパーカーを羽織り、ズボンは紺色のデニム、を着ている。

 そして、鋭い目付きに、寝癖のかかった髪が特徴的な男だ。

 

 ……まぁその男というのは俺なんだが……

「ハァ…ハァ…ハァ……なんとか間に合ったか?」

 そう言いながら、近くにある時計に目を移す。

 時刻は9時45分。なんとか間に合ったようだ。走ってきて正解だった。

 

 トレーニングが終わり、汗を流す、までは順調だった。

 しかし、朝ご飯を食べるところで、時間がかかった。凛がまだ起きていなかったのだ。いつもなら、休みでも8時には起きるはずなのだが、今日に限って起きなかった。

 まぁ朝ごはんくらい自分で作れよ!と思うかもしれないが、最近は凛が全部やってくれていたため、凛に作ってもらう、というのが癖になっていたのだろう。

 

 部屋の前で声をかけても返事がなく、結局凛は起きてこなかった。

 そして、そんな事をしていると、気づけば9時15分を過ぎていたのだ。

 だから、必死に走ってきた。

 

 

「遅いよ!界人くん!」

「!?」

 走ってきた。しかも、15分前に間に合うようにだ。

 つまり、今はまだ待ち合わせの10時にはなっていないし、その上、15分前なのだ。

 なのに関わらず、俺は名前を呼ばれた方へ振り向くと、そこにはもう水戸がいたのだ。

 服装は白のニットワンピース。服が白いため、水戸の綺麗な水色の髪がよく映えている。その上、いつもはツインテールにしている髪を下ろしているからか、いつもより大人っぽく感じる。

 しかし、その水戸は俺のことを見て少し怒ったような顔をしている。

 

「お、遅いって……まだ15分前だぞ?俺は早く来た方だと思うんだが?」

「そんなの関係ないの!それでも、男の子は女の子をまたせたら行けないんだから!」

 そんなことを言われても……そもそも水戸が来た時間が分からないのだから、それよりも早くというのは、ほぼ無理だ。

 これでも早い方だと俺は思っているのだが、一体何時に来れば正解だったのだろうか。

 

「そんなこと言われてもな……水戸が来る時間なんか分からねーし……何分待ったんだ?」

「………1時間」

「……は?」

「1時間!」

「………………」

 15分前に来たからと言って待たせたのは事実なのだろうから、どれくらい待ったのか、聞き、その上で謝ろうと思っていたのだが……

 まさか、1時間という答えが帰ってくるとは思わなかった……

 

「えっと、じゃあ、あれか?水戸は9時前にはいたってことか?」

「う、うん……」

「じゃ俺は、水戸を待たせないためには8時半過ぎ位には来ておかないといけなかったと……」

「うっ……」

「それは……ちょっと理不尽過ぎるぞ、水戸」

「だ、だって……」

 俺が状況を整理し、そして、正直に思ったことを伝えていくと、水戸はみるみるうちに元気がなくなっていき、顔も下を向き、うつむく。

 

「ハァ……そもそも何で1時間前なんかに来たんだ?自分で10時って昨日言ったのに。」

「そ、それは……、……………………から……」

 俺がなぜ早く来たのかという質問に対して、水戸は答えているのだろうが、声が小さすぎて全く聞こえない。

「え?水戸、小さくて聞こえない」

「だから、デートが…………………………から」

「デートが……?聞こえないって」

 いつもはハキハキと言うのに、今はその面影すらない。

 それに、下を向いていて、表情はわからないが、耳まで顔を赤くしている。

 

「だ、だから!界人くんとのデートが楽しみすぎて、寝れなかった上に待ちきれなかったの!だから、……無意識に……早く来てしまって……」

「お、おう……なんかすまん」

 水戸は一瞬大きな声で喋ったが、まただんだんと小さくなり、終いにはまた声が聞こえなくなってしまった。

 でも、なぜ早く来たのかは聞けた……

 聞かない方が良かったのかもしれない。何故かわからないが、俺も恥ずかしい…それに顔が熱い…

 

 

 

「と、とりあえず、行くか……」

「そ、そうだね」

 少しの間俺も、水戸も顔を合わせず黙っていたが、時計を見ると、10時15分になっていた。

 どうやら、俺が来てから30分もここにいたらしい。

 

 そして、歩きだそうとした時に、今日どこに行くかやどうするかなど決めていないことを思い出す。

「水戸、そう言えば今日はどうするんだ?何するかとか……決めてるのか?」

「……え?」

「ん?」

 水戸は俺の言葉を聞いた瞬間、俺の顔見て驚いた顔をする。

 

「決めてないの?」

「え?あ、あぁ」

「なんで?デートなんだから、何か考えててよ!」

 そんなことを言われても……

 そもそも俺は、デートと言うものをしたことがない。その上、妹以外の女の子と二人っきりで出掛けるのも初めてなのだ。

 妹とはあっても、食材の買い出しなどしかない。

 だから、予定を決める。何かを考えるということがこれまで無かったのだ。

 

「俺はデートというか、女の子と二人っきりで出掛けるのは初めてなんだよ。だから、何をしたらいいのかわからねーし、どうしたらいいのかも分からない。てか、デートというそのものが分からないんだよ……」

 これが正直な気持ちだが、言い訳じみたことを言っていると、自分でも思う。

 すぐに謝らず、言い訳じみたことを言ったことに対し、気を悪くしてしまったであろう水戸に謝ろうと、振り返る。

 

「は、初めて!?わ、私が!?初めて……そ、そっかぁ……私が初めてか……えへ、えへへ、えへへへへへへ」

「み、水戸……?」

 怒っているだろうと、気を悪くしただろうと思いながら振り向いたのだが、水戸は笑っていた。

 しかも、顔を真っ赤にし、なぜか、もじもじとしている。

 そして、俺の事をチラチラと見てくる。

 

「ど、どうした?水戸。どっか具合でも悪いのか?顔赤いし、さっきからなんか……もじもじしてるし……」

「え?あ、……えへへ、何でもないよ!気にしないで!」

「お、おう」

 何でもないわけないだろうし、気にしないでと言われても、気になるのだが……まぁ水戸がそういうのだから、気にしないようにしよう。

 

「それじゃ行こっか!今日は許してあげるけど、今度は界人くんが考えてきて、私をリードしてね!」

「……おう。ありがとう?」

 まだ謝っていなかったのだが、どうやら許してもらえたようだ。

 なぜかは分からないが、すごく機嫌がいいような気がする。だから、本当に大丈夫そうだ。

 

 今度、という言葉が出てきたのは気になったのだが、今度があるのだろうか。

 いや、気にしないでおこう……

 

「じゃあ、行こう!」

「了解…」

 結局どこに行くのか分からないままなのだが、まぁ水戸について行けば大丈夫だろう。

 

 そんなことを思っていると、水戸は思い出したかのように、「あっ」と声を出し、こちらに振り返ってくる。

「そうそう、何か私を見て言うことない?界人くん」

 笑顔でそして、両手を広げ、くるりと一回転してからそんなことを言ってきた。

「何か、とは?……えっと綺麗な一回転でした!とか?」

「は?」

「あ、いや、嘘です……」

 

 考えろ。俺がまだ言っていないこと………水戸を見て思うこと、言う事……

 いや、待て待て。そこから考えるんじゃなくて、さっきの水戸の行動から予測してみよう。

 水戸は両手を広げ、くるりと一回転した。

 髪と服が程よくヒラヒラと舞っていて……ん?……髪と服……?

 ………髪と服!

 分かった、髪と服だ。

『女性がいつもと違う髪型にしていたり、服装だったりしたら、褒めること』と、昔に凛から言われたことがあった。

 

 そんなことを考えている間に、また水戸の顔がどんどんと暗く、沈んだものになっていく。

「あ、えっと……水戸!」

「……なに?」

「その、なんて言えばいいのか……うまく言えないが、今日の水戸大人っぽいと俺は思うぞ!髪もいつもと違って、下ろしてて良いし、服も似合ってて可愛い……と思う……」

「………………」

「み、水戸?」

「……ッッ!?」

 

 今日の水戸はいつも以上に忙しいな……

 怒ったり、元気がなくなったり、顔を赤くしたり、呆れたり、笑顔になったり、固まったり……そして、また顔を赤くしたり。

 

 さっきの褒め言葉の後、固まったと思うと、顔を真っ赤にして慌てだしたので、何か俺はいけない事を言ったのか、間違ったことを言ったのか、と心配した。

 しかし、その心配はなさそうだ。

 

「お、大人っぽい……か、可愛い……えへ、えへへ……可愛い…」

 何言っているかは分からないが……すごくいい笑顔で笑っている、いや、ニヤけているので、多分心配ない。

 ほんとにいい顔をしている。いつまで見てても飽きないくらいだ。

 

 しかし、いつまでもこの駅にいるわけには行かない。

 時計を見ると、10時半を過ぎている。もう俺がここに来てから、かれこれ、1時間近くこの駅にいるのだ。

 そろそろ移動したい。

 

「おーい、水戸!そろそろホントに移動しよ。デートするんだろ?早く行くぞ」

「うん!行こう!今思ったんだけどね…界人くん、関東地方来たの今年の3月って言ってたでしょ?てことはここら辺ほとんど知らないってことだよね?」

「まぁそうだな。」

 俺がこの関東地方に来たのは、今年の3月。

 家の周辺のことはなんとなく分かってきたが、それ以外はほぼ知らない。

 その事を2週間ほど前に水戸や御子柴に教えたのだが、それを覚えてくれてたようだ。

 

「うん!じゃあ、色々案内してあげる!」

「そか、ありがとう水戸」

 あまり遊びに行ったりなどはしないため、家の周辺だけ知っていれば後はどうでもよかった。

 しかし、水戸が教えてくれると言うのであれば、ありがたく教えてもらうとしよう。

 

「とりあえず、バスに乗ろ!目的地までちょっと遠いし!」

「了解。で、まずはどこに行くんだ?」

「ららぽーと!」

「らら、ぽーと?」

 ぽーと……PORT……港……

 今から港にでも行くのだろうか?

 

「そうそう、ららぽーと!」

「港にでも行くのか?」

「違うよ!ショッピングモール!」

 

 どうやら、今から港ではなく、ショッピングモールに行くようだ。

 うん、まぁ分かってたけどね…

 

「ほら、行くよー」

「へいへい」

 水戸が俺の手を取り、歩き出す。

 手を握られた瞬間、ドキッとするが、顔には出さないようにする。

 

「どうしたの?」

「なんでもねーよ…」

「そか!」

 そして、俺がこの駅に来て約1時間。やっと俺と水戸はこの駅を離れるためバス停へと向け歩き出した。

 

 

 

 この日のデート中に起こったある事がきっかけで、俺は意図せず、めんどくさい事に巻き込まれていくことになるのだが…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄さん……み~つけた……」

 

 

 

 




捻くれ者の最弱最強譚#15
いかがでしたでしょうか。
前書きでも言いましたが、投稿遅くなりすみませんでした!

今日の話はこれまでの中でいちばん進まなかった……
文字数はあるのに、話が進まない……なんだこれ……

でも頑張るしかない!いや、頑張ります!

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