捻くれ者の最弱最強譚   作:浦谷一人

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捻くれ者の最弱最強譚。少しづつ、ホントに少しづつではありますが、着実にUAとお気に入りが増えてきています。
とても嬉しいです!ありがとうございます!!
これからも面白いと思ってもらえるように、楽しんでもらえるように頑張ります!!!
捻くれ者の最弱最強譚#14 スタート!


捻くれ者の最弱最強譚#14

 実技の授業が終わり、帰宅するために、水戸と御子柴と一緒に教室を出る。

 明日からゴールデンウィーク。その上、もう今日の授業は全て終了している。

 つまり、もう、今この時から学生にとっては休みでゴールデンウィークなのだろう。昼休みの食堂の時よりも周りが賑やかだ。

 

 

「なぁ界人、ゴールデンウィーク、暇だろ?俺は寮で、界人は中央5番地区。近くにいるんだしさ、遊ばないか?なぁ?いいだろう?俺たち友達だろう?だからさ、頼むよ!」

「なんでそんな必死なんだよ……逆になんか怖えーよ」

 

 御子柴は、賑やかな周りをキョロキョロと忙しく、見渡したかと思うと、とても必死な顔で俺の肩を掴み、遊びに誘ってくる。

 そもそもなんで学生というのは、休みになると遊びに行くのだろうか。それも、それが使命かのように必死に友達の誰かしらと遊ぶ約束を取り付けようとする。

 休みという意味を知っているのだろうか。

 休みというのは日々の疲れを取るためにあるのだ。

 それなのに、なぜ遊んで余計につかれようとするのだろうか。その意味が俺にはよくわからない。

 俺が、休みの日でも、トレーニングをしてしまうのとおなじなのだろうか。ということは、休みの日に遊ぶというのは、癖ということになるのか?よく分からない。

 

 そうこう俺が考えていると、御子柴は俺の方から手を離し、次は水戸の方に手を置いて、俺と同じように必死にみとのことも遊びに誘っていた。

「なぁ、水菜さん、遊ぼ。もちろん二人でとは言わねーよ。界人もいっしょにだから。だから、遊ぼうぜ。頼むよ、休みの日にずっとひとりっていうのは嫌なんだよ!寂しくて、俺死んじゃうから、だから頼むよ」

「ちょっ、ちょっと、痛いんだけど。肩痛い、力入れすぎだってば。どんだけ必死なのよ。引くわ……まぁ、陽くんと2人というのはちょっと嫌だけど。界人くんも一緒だったら、別に悪くは無いわね。」

「ほ、ほんとか!?遊んでくれんの!?」

「え、ええ……界人くんもいるのなら、だけど……」

 

 俺の了承も得ずに、なに勝手に話をすすめているのだろうか、この二人は。俺は遊ぶとは一言も言っていないのに、遊ぶ前提になっている。

 それに、さっきから本当に御子柴が必死すぎるのだ。

 俺はもちろんなのだが、水戸も、そして、周りにいるこの会話を聞いている生徒たちも、ドン引きしている。

 まぁ、その中の一握りの生徒たちは御子柴の言葉に頷いていたが…水戸と、周りにいる女の子たちに至っては、少しだが冷たい目で御子柴のことを見ていた。

 

「お、おう、界人も来るから遊ぼう。よし!これで一人で寂しくというのは回避できた。じゃあ、明日はどうだ?」

「明日は無理ね。界人くんとデートがあるから」

「デ、デート?界人と?…………どういうことだ界人!!デートは別にいいが、なんで水菜さんとの予定は入れるのに、俺との予定は入れないんだよ!!」

 

 水戸が明日の3日は俺と先約があるからと、御子柴の誘いを断ると、次はまた、俺の方へとすごい勢いで、そして、泣きそうな顔で俺の肩を揺らしてくる。

「ま、待て。そもそも、なんで休みの日に遊ばないといけないんだよ。疲れるだけだろ。それとも、それは友達なら普通なのか?俺はそんなに友達いなかったし、俺は誘われたことねーから知らねーけどよ。」

 友達がいなかった訳では無いし、遊びに誘われなかったわけでもない。

 ただ昔から、誘われてもほとんど断っていた。そうすると、いつしか誘われることがなくなっていた。

 まぁ、俺はそれでも別にきにしてはいなかったし、中学3年生のときは、友達という人がそもそもいなかった。

 

「界人……お前……俺たちは界人の友達だぞ。今も、そしてこれからも、ずっと。だから…元気だせ」

「そ、そうだよ、界人くん。私と界人くんはずっと一緒なんでしょ?だから……ね?元気だして」

 水戸と御子柴はなぜか、俺のことを悲しい目で見てくる。そして、肩をポンポンと叩きながら、励ましてくる。

「なんで悲しそうな顔してんの?なんで励ましてくるの?俺、別に落ち込んでないんだけど……」

 

 

 そうこう話していると、校門が見えてくる。

「あれは………先輩か?」

 

 校門がみえてくるだけならよかったのだ。

 しかし、その校門のところには、ここ最近よく見かける人が寄り掛かっていたのだ。

 校門に寄りかかっていた先輩は俺のことを見つけると、手を振りながら走ってこちらに向かってくる。

 

「あ、八神くん、はっけ~~ん!!偶然だね!!」

 

(どう見ても偶然じゃなくて、待ってただろ)

 

 まぁ、昼休みの最後の時に『詳しいことはまた後でね~』なんてことを言っていたので今日中にまた会うことになるとは思っていたが、まさか、校門でまちぶせているとは……

 周りにいる生徒たちが一斉にこちらに振り向く。

 

 まぁ、この目の前でニコニコしている先輩は誰から見ても、綺麗で美人に映るだろう。

 だから、目立つのもおかしくはない。

 しかし、これは、俺が逃げられないようにするために作戦であり包囲網だろう。

 

「ハァ~。どうしたんですか?先輩」

 俺は、ため息をつきながら、俺の横で「ガルルルルる……」と威嚇しながら先輩を睨みつけている水戸に軽くチョップをかまし、先輩に問いかける。

 その時に水戸の口から「あう。」という声が聞こえた気がしたんだが……一瞬、ほんと一瞬だが、不覚にも可愛いと思ってしまった。

 

「昼休みの時言ったでしょう。デートの件よ、デートの。明日はどう?」

 やはり、その件だったか。予想はしていたので、別に俺は驚いたりはしない。

 だが、周りににいる生徒たちが驚き、ざわざわと騒いでいる。

 

「すみません。明日は水戸との用事があるんです。」

「ふふん!!」

 

 俺の言葉を聞いた後、水戸はなぜか先輩に対し勝ち誇ったような態度をとり、胸を張っていた。

 ほんとなぜかはわからないが、嬉しそうな顔もしている。

 

「なぁ、水戸……なんでそんな勝ち誇ったような態度をとっているんだ?」

「そうそう。八神くんの言う通りだよ。それに、胸は張れても、無い胸は張れないのよ?」

 先輩もなぜかわからいが、少し不機嫌になっている気がする。

 そして、先輩はそう言いながら自分の大きな胸を見せつけるかのように胸を張る。

 

「うっ……なんですって!?胸なんてただの脂肪の塊じゃないのよ!!そんなのがあったって戦いの上では邪魔なだけよ!!」

 水戸は威勢よく言い返しているが、目には涙を浮かべ、泣きそうな顔をしている。

「あら、負け惜しみ?」

「なんですって!!」

 

 本当、毎回毎回この二人は会うたびにいい争いをしている。

 別に喧嘩をするなという訳ではないのだが、場所は選んでほしい。

 人が少ない場所でなのならまだいい。だが、今は校門の近くで周りにはうじゃうじゃとたくさんの生徒がいる。

 その中で、火花を散らすかのように向かい合っていい争いをするのはやめてほしい。

 

「まぁまぁ、水菜さんも高原先輩も、そこまでにしなよ……周りにこんなに人がいるんだから、落ち着いた方がいいと思うけど」

 御子柴も、俺と同じことを思っていたのか、二人の仲裁に入ってくれる。

 水戸と先輩も、たくさんの生徒に見られていることに気づいたのか、お互い顔を赤くしてから落ち着いていく。

 

 その後、少し時間が経ち、完全に落ち着いたのか、先輩が俺の方へ向き直り話を戻してくる。

「ごほん。……えっと、それで、デートの件なんだけど、明日が無理なら4日はどうかな?八神くん」

「え、あ……えっと、その日もちょっと用事が……」

 もし、4日に先輩との用事を予定に入れてしまうと、俺のゴールデンウィークの5日の休みのうち2日が連続で潰れてしまう。

 それだけは阻止しようとした。

 

「嘘だよね?」

「え、い、いや……だから……」

 同じようなやり取りを、ほんの2時間程前にやったような気がする……

「嘘、なんだよね?」

「は、はい………」

 

 休みの5日のうち2日間が連続で潰れるのを阻止しようとしたのだが、水戸と同様、先輩にも勝てなかった。

 やっぱり、女の人は強い。ということなのだろう。

 もう諦めることにしよう。

 

「じゃあ、先輩命令ね!!4日は私とデートすること!」

「ハァ~、わかりました。」

 俺が了承したのを確認すると、先輩は素の笑顔でニコッと笑い、そして、「ありがとう」と言ってから去っていく。

 

(なんだよ……仮面外せるじゃないか……)

 先輩の素の笑顔を見てドキッとした。ドキッとしてしまった。

 そして、俺が、去っていく先輩の背中を見ていうと水戸に声をかけられる。

「ねぇ、なんで鼻の下伸ばしてるの?」

「?別に伸ばしてないだろ?」

「あっそ……別にいいけど。じゃあ私、今日は先に帰るから。明日のデート、絶対だからね!電話するから。」

 水戸は、そう俺に言うと、早歩きでそそくさと帰っていってしまう。

 

「なぁ、御子柴。なんで女子は用事のことをデートっていうんだろうな。なんで、わざわざ自分から用事を作って嬉しそうにするんだ?」

 本当に心の底からそう疑問に思ったから、御子柴に聞いたのだか、御子柴は昼休みの時と同じように、俺のことを呆れた顔で見ていた。

「ほんと、界人って鈍感だよな………チッ、リア充め!!」

「お、おい!?御子柴!?」

 そして、これも昼休みと同様に、俺を置いて先に歩いて帰ってしまった。

 

 …………………………………

 

「ほんと、なんなんだよ……」

 そして、今日はじめて、俺は一人で帰ることになった。

 

 

 

 

 結局、今日は最後まで一人で帰ってきた。

 一人には慣れていると思っていたのだが、急に一人になるというのは、慣れていても、少しは寂しさを感じる。

 

「ただいま~。」

 そんなことを考えながら玄関を開け、帰宅した時の挨拶をする。

 いつもなら、ここで、妹の凛の声が聞こえるのだか、今日は聞こえてこない。

「?いないのか?……いや、でも、玄関は開いていたしな」

 

 凛の声が聞こえてこないことを疑問に思いながら、家の中に入りリビングのドアを開ける。

「凛~?いないのか?」

「に、兄さん!?ご、ごめんなさい、今終わるので……」

 リビングに入り、部屋を見渡すと、凛はソファに座り、電話をしていた。

 そして、リビングに入ってきた俺を見て驚く。

 

「うん…うん…ごめんね、未来ちゃん。また詳しいことは5日に遊ぶ時に聞くよ……ごめんね、じゃあね」

 電話も慌てて切ってしまう。5日に遊ぶ約束はしていたみたいだが、なんか、悪いことをした気分になってしまう。

「そんなに慌てて電話を切らなくても良かったんだぞ?」

「いえ、私にとっては兄さんとお話する方が大切なので!!」

 それもそれで、どうなんだ?と思ってしまう。

 でも、妹にこう言われ、心の中では少し嬉しく思っている俺も充分おかしいのだろうか。

 

 俺がそう思いながら、制服を脱ごうとしていると、急に凛が近づいて来て匂いを嗅いでくる。

「なんだよ……どうかしたのか?」

 一瞬ドキッとしたが、大丈夫だ。

 なぜなら、家に入る前にファフリーズをしたからだ。

 

 学園生活二日目、水戸と初めて試合をした日、凛が匂いを嗅いで大泣きしたのだ。

 あの日、凛を、宥めるのはとても時間がかかった。それに、今ではたった一人の家族なのだ。泣いてほしくなかった。

 だからと言って、友達の水戸と接することをしない、というのもできない。

 だから、俺は、その日から匂いがわからなくなるようにファフリーズを家に入る前に全身にかけている。

 だから、匂いは大丈夫なはずだ。今の俺はファフリーズの匂いしかしないはず。

 

「う~~ん。ここ最近、また違う女の匂いが増えている気がするのですが……」

「なん……だと……」

 大丈夫じゃなかった。バレていた。しかも、ここ最近と言っているということは、それは先輩のことだろう。違う女の匂いが増えているというのも当たっている。

(なんでわかるんだよ……怖いよ…)

 

 なんとかして、誤魔化さないといけない。

「し、知らねーよ。ファフリーズだよ、きっと。違う匂いのやつを買ったんだよ。多分それだよ。」

「そうですか、ならよかったです。………ん?なんでファフリーズを買う必要があるんです?」

 …………墓穴をほった。

 

「…………やっぱり、女が兄さんに近づいて……」

 凛はどんどん目のハイライトが消えていき、声も小さくなり、ブツブツ言い出す。

「ち、違う違う!!えっと……あれだ……実技の時に汗かくし、それで汗くさいと思われるのが嫌だから、ファフリーズを買ったんだよ。うん。そうだ。」

 とっさに言い訳を取り繕った。

 普通なら、制汗剤だろうと思うかもしれないが、これしか思い浮かばなかったのだ。

 

「う~~ん。……そうですか。それならいいんです。人を殺さなくて済んでよかったです!!」

「………………………」

 凛をそろそろどうにかして更生させないと、思うのは俺だけだろうか。

 ほんと、どうにかしないと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、兄さん。」

「ん?」

 今は、もう夜ご飯も食べ、そして、風呂も入った後で、ソファで凛と雑談していたところだ。

 

「兄さんは闇市場ってきいたことありますか?」

 そのときに、凛の口から闇市場という言葉が出てきて驚いた。

 噂になっているくらいだから、知っていてもおかしくはないのだが、それでも驚いた。

「き、聞いたことがあるかくらいだな。詳しくは知らない。」

「そうですか。兄さんなら何か知っているのでは、と思ったのですが……」

「すまんな。じゃあ俺は明日用事があるから、もう寝るよ。」

 

 この話題は長く続けてはいけない。なぜかわからないが、このまま、話を続けると凛がその闇市場に不覚に関わっていくような感じがしたため、無理矢理に話を終わらせる。

 

「はい、それで兄さん、用事ってなんですか?」

「えっ……いや、用事って言ったらあれだよ……ただの用事だよ」

「へぇーそうなんですか……じゃあもう寝ないとけないですね。」

「お、おう……そうだな。じゃあな、おやすみ」

 なんだろうか、なんでこんなに汗をかいているのだろうか。

 

「はい、おやすみなさい兄さん。私も、明日は用事ができたので」

 凛はそう言うと、ハイライトが消えた目をこちらに向け笑っていた。それを見た瞬間、なぜか嫌な予感がしたのだが……

 俺は勘違いだと思い込むことにし、二階へと上がっていった。

 

 

 

 




捻くれ者の最弱最強譚#14
いかがでしたでしょうか。
これからも毎日頑張っていくので、これからも応援よろしくお願いします。
暖かい目で見守ってくださいね(´∇`)

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