仕事の関係で投稿時間は定まらないかもしれませんが、それでも1日1話は投稿しようと思っています。
なので、これからもよろしくお願いします!
ではでは!
捻くれ者の最弱最強譚#9 スタート(*゚▽゚)ノ
「どこだ?ここ……」
ただただ白い世界。
一言で表すと、そんなところにいた。
どこかは全くわからないが、現実じゃない。そのことだけは何故か分かった。
「俺何してたんだっけ?……確か、友達になるために、分かり合うために、その第一歩として、水戸と闘って……それからどうなったんだっけ?」
そう、確かに闘っていた。その後どうなったのだろう。うまく思い出せない……
「………………ハッ~、ダメだ。うまく思い出せない。思い出せないのはこの場所が関係しているのか?」
どれだけ考えてもうまく思い出せないため、とりあえず、ここがどういう場所なのか探索してみることにした。
……した、のだが、何も無い……本当に何も無い。
どこに行っても、どこまで行っても、白。白。白。それしかない。
「マジでなんなんだよ、ここ……距離感掴めねーし、時間感覚もおかしくなりそうだ……てか、俺どれくらいここにいる?」
そんな事を考えていると、後ろからなにかの気配がした。
「ッ!!!?」
俺の後ろには、さっきまでは無かったはずの黒い何かがあった。
何か……そう、何かがあった。いや、いたと言うべきなのだろうか。
気配的に人ではないのはわかるのだが、それ以外はわからない。人ではなく、ただの
その何かはそこにいるだけなのに、これまで感じたことのない、確かな、そして、不気味な存在を醸し出していた。
とりあえず、その黒い靄のような何かから離れようと、それから目線を外した時、突然声が聞こえてくる。
『力とはなんだ?』
…………………………は?
どこから聞こえてきた?後ろ?いや、でも俺の後ろにはあの、黒い何かしかない。
……てことは、今の声はこれからしたのか?黒い何かが言葉を話したのか?
『お前にとっての力とはなんだ?』
「ッ!?」
やはり、この黒い何かから声が聞こえてくる。この黒い何かは俺に話しかけてるのか?よくわからないが、でもこの空間にはこの黒い何か以外俺しかいない。
つまり、………………やはり俺に対し話しかけているという事になるのだろう。
てことは、今の質問……力とはなんだ?か……
食堂でも言ったように、俺は力とは色々あると思っている。その時々で求められる力が変わって来ると思っている。
『お前はこの残酷な世界で、何のために力を使う。』
残酷……確かにそうだな。欺瞞に満ちていて、偽物だらけで、嘘だらけ。そんな残酷な世界。
ならその残酷な世界で、俺は何のために力を使う?
何のため…………正直その事も、これまでに深く考えたことは無かった。
だけど………………
「何のためか……まだしっかりとは決めてない。でも、守るために使うとは決めた。」
『…………………………………………お前は、世界を裏切ることは出来るか?何かを守るために世界を、そして、何かを犠牲にする事が出来るか?』
こいつは何を言っているんだろうか……裏切る?犠牲にする?
なんでそんな話になっているのか全く見えてこない。
「お前はなんなんだ?なぜ俺にそんなことを聞く?それはどういう意味なんだ?しっかりと説明しろ!」
『自分の思うがままに生きろ。思うがままに力を使え。そうしていれば、いずれ……………………』
そう言うと、黒い何かは俺から遠ざかっていく。
「おい、待てよ!どういう事だ!?おい!!…………ッ!?」
(なんだ……急に目の前がボヤけて……)
黒い何かが遠ざかるにつれ、目の前がボヤけ、意識も曖昧になっていく。
いや、黒い何かが遠ざかっているのではなく、俺が離れていっているのか?わからない……
(ダメだ……意識が……)
『お前は将来どんな風になりたい?』
僕?僕は大きくなったら父さん見たいになりたい!
『俺のようにか?』
うん!僕も大きくなったら父さんのように強くなるんだ!それが僕の夢。
『俺は強くなんてないぞ?』
そんなことない。父さんは世界で一番強いんだ!だって、僕と妹と母さんを守ってくれてるから。父さんは正義だから!
『そうか……お前にそう思ってもらえるのは嬉しいよ…』
うん、僕さ!将来父さんのように強くなってそして、正義になってこの世界を守るんだ!
『この世界を守る正義……か…』
どうしたの父さん?何でそんな顔してるの?
『いいか、この世界を守ることが正義なんかじゃない……』
どういうこと?守るから正義なんじゃないの?強いから正義なんじゃないの?
『今はそれでいい。でもいつか本当の意味でこの世界を知り、人を知った時、お前にも本当の正義がわかる時が来る』
分からないよ!父さん!
『いずれ分かる……思うがままに生きろ、そして、自分だけの正義を見つけるんだ。"界人"』
「………………知らない天井だ……」
意識が覚醒し、目を開けたところで、どこかの天井が目に入る。
そして、人生で一度は言ってみたかった言葉を口にする。まぁ言ったところで何も無いのだが……
「てか、ほんとにどこだココ?」
ベッドの上で寝かされていたのは分かったのだが、ここがどこなのか全くわからない。この部屋に誰もいないため、説明してくれる人がいない。
「なんで誰もいないの?普通、誰か入るだろ?……まぁ知らない人に寝顔見られるのは嫌だから別にいいんだけどさ……」
ベッドから体を起こし、部屋の中を見渡す。
いち早く、目に入ってきたのは包帯や傷薬などの治療器具。
まぁ大体予想はしていたが、どうやらここは学園の保健室のようだ。
「まぁ、学園の中でベッドがある場所と言えば、保健室しかないよな…」
そう、当たり前なようなことを呟きながら、次は部屋の端から端までを見回す。
すると、
「やっと起きた?八神くん」
俺の左横から女性の声がする。
この部屋に俺以外にいたことに少しびっくりしつつ、声がした方へと振り向く。
「試合で私に勝った八神くんがなんで私より目覚めるのが遅いのよ…」
「水戸……いたのか」
まぁ声から予想はできていたが、そこには俺のベッドの横に置いてある椅子に座っている水戸の姿があった。
「うん。八神くんの最後の攻撃で吹っ飛ばされたでしょ?その時のダメージで今さっきまで私も寝てたの。ていうか、何なのあの技!
「えっと……なんか、すまん……」
水戸の剣幕に押されとっさに謝罪の言葉が出てくる。
でも、とっさの謝罪だったとはいえ、本当に悪いとこしたと思っている。
最後の攻撃、実は水戸を攻撃するつもりはなかった。ただ水戸の技を打ち破るだけのつもりでいたのだ。その後、教室で水戸と話し合うつもりでいたのだから。
しかし、やり過ぎてしまい、水戸にまで攻撃が及びこんなことになってしまっている。
そして、俺もやりすぎの所為か元素の使い過ぎで元素枯渇してしまい、気絶してしまったという感じだ。
「謝らなくていいよ。それで?なんで、八神くんも寝てたの?」
「ん?あ、あぁ……まぁなんて言うか、最後張り切りすぎてな、体内にある元素のほとんどを使ってしまったから、元素枯渇で気絶した。」
「フフッ……なにそれ……アハハ、あはははは……面白い」
笑っている。それも飛びっきりの笑顔だ。人を信じることが出来なくなってしまった俺でも、この笑顔は心の底からのものだと分かるし、確信を持つことが出来る。
(今しか……ないんじゃないか?)
水戸と分かり合うチャンス。水戸と友達になるチャンス。それは今何じゃないか?
水戸と分かり合うための、そして、友達になるための第一段階は先程の試合でクリアしている。
あとは、水戸と本心で話し合うだけ。
まぁ最初の予定していた場所や、状況とは違っているが、そんな些細なことはどうでもいい。
今この保健室には運よく俺と水戸しかいない。こんなチャンス逃す手はない。
「なぁ、水戸」
「ん?なに?」
水戸は俺の表情の変化に気づいたのか、笑顔だった顔を、真剣なものに変え、返事をする。
「試合の最後の時、俺が言ったこと覚えてるか?今その時間をもらってもいいか?」
「……うん。いいよ」
「ありがとう」
今、お互いが向き合うように、俺はベッドに腰掛け、水戸は椅子に座わっている。
あれから、どれくらい経っただろうか。数秒、数十秒、いやもしくは、数分経っているかもしれない。そう思えるほど俺は緊張していた。
(どうやって切り出せばいいんだ?)
こんなふうに二人きりで、誰かと、しかも女性と面と向かって話すのは妹以外初めてなのだ。緊張してもおかしくはないだろう。
「……それで?なに?八神くん。」
俺がいつになっても話さないのがおかしいと思ったのか、それとも耐えきれなかったのか、水戸の方から話を切り出してくれる。
(なに今更、ビビって緊張してんだよ……決めただろ、水戸と分かり合うって。友達になるって。ならもう止まるな!)
自分にそう言い聞かし、喝を入れる。
「えっと、さ……その、水戸と話し合いがしたかったんだ。」
「話し合い?」
「あぁ……話し合い。食堂の時話した事覚えてるか?」
俺がそう言うと水戸は顔を少し暗くし下を向いたまま静かに頷く。
それを確認した俺は、あの時の情景を思い出しながら話し出す。
「あの時、水戸とてもつらそうな顔してた。苦しそうな顔してた。悲しそうな顔してた。……涙、流してた。その時さ、その顔みた時、俺もつらくなった。苦しくなった。悲しくなった。胸が痛くなったんだよ。」
「えっ!?」
水戸はその言葉を聞いた瞬間、勢いよく顔を上げ俺の顔を見た。水戸は驚いたような顔をしていた。
「その時、思ったんだ。ただ一緒にいるだけなのに、こんな気持ちになるのなら、友達なんて、いない方がいいんじゃないか?いらないんじゃないか?って。友達、なんて言っても、結局は仮面のつけたピエロ達の集まりだ。本心を隠し、本性を隠す。そして、信じる、信じてると言って相手を縛り繋ぎ止める。そんな、俺が嫌った世界と同じ、欺瞞に満ちていて、嘘で塗り固められた偽物だ。そう思ってた。いや、今でもそう思っている」
「…………八神くん……」
水戸の悲しそうな、か細い声が聞こえてくる。
それでも俺は続ける。
「でもさ、その時、御子柴が言ったんだよ。それは、世間一般の友達、有象無象の友達だって。だから、俺たちは俺たちの友達を作ればいいって。信じるなんてこと出来なくてもいい。ただ分かり合うことの出来る友達を作ればいいって。」
「……信じる、じゃなくて分かり合う。」
「そう。信じ合うんじゃなく分かり合うっていう歪な形だけど、俺たちだけの友達。…………水戸。俺は水戸ともその友達になりたい。俺が思う本物の友達に」
「わ、私……と?」
そこまで言うと俺は水戸の方へ視線を移す。
そして、もう一度話し出す。次は水戸から目を離さないように。
「水戸。水戸は食堂で言ったことは、今でも間違ってないって思ってるんだろ?正しいと思ってるんだろ?」
俺が真剣な顔をしているからだろうか、水戸も真剣な顔で頷いてくれる。
「俺はそう思ってない。その事はもう分かってくれてるよな?」
「うん、試合の時に思ったよ。八神くんは体を使って私に教えてくれてるんだなって。確かに八神くんの言いたいことは分かったよ。私の言ってる事は間違っていて、正しくないって、思っている事が分かった。でも、それでも、私は……」
そうだ……これだ。これがしたかった。この話し合い、言い合いがしたかった。
「分かってるよ。」
そう、分かった。いや、分かることが出来た。見とも俺の言いたいことを、考えてる事を分かったと言ってくれた。それでいい。
「分かってる。水戸は俺の考えを分かっている。俺は水戸の考えをわかっている。それでいいんだよ。水戸は間違っていて、間違っていない。正しいけど、正しくない。そして、俺もそうだ。それでいいんだよ。無理に相手に自分の考えを押し付けることは無い。ただ分かり合えばいい。それが俺が作りたい友達なんだから。俺が水戸となりたい友達なんだから。」
「……八神、くん……」
「確かにまだ水戸については分からないことの方が多い。水戸がなんでそんな考えに至ったのか。なぜあの時水戸はつらそうな顔をしたのか。なぜ、苦しそうな顔をしたのか。なぜ、悲しそうな顔したのか。なぜ、涙を流していたのか。まだ分からないことだらけだ。でも、今はそれでいい。これから先少しづつ今日みたいに水戸のことをわかりたい。そして、水戸にも俺のことを分かってほしい。だから、これからずっと俺は水戸のそばにいる。つらい事があったのなら、話を聞いてやる。苦しいことがあったのなら、その苦しみを一緒に背負ってやる。悲しいことがなったのなら、支えてやる。涙を流した時は一緒に泣いてやる。もし、水戸に何かあった時は俺がそばにいて護ってやる。」
その時水戸は泣いていた。涙を流していた。なんで泣いているのかは分からない。でも、これだけは分かる。
つらくて、苦しくて、悲しくて、泣いてるのではないと。
泣いているのに、涙は流れているのに、笑顔だから。
「そうやって、一緒にいて、分かりたい。分かっていきたい。わかって欲しい。だから、水戸……」
「……は、はい……」
「俺と友達になってください!」
「もちろんだよ…八神くん!喜んで!」
…………良かった。
放課後。夕日によって照らされた保健室には、涙を流しながら笑顔で笑い合っている、二人の少年少女の姿があった。
捻くれ者の最弱最強譚#9
いかがでしたでしょうか?
ちょっとベタな展開すぎたかな?
まぁ何がともあれ、自分だけの友達が2人もできた主人公。
良かったね、と書きながら思ってしまいました。
さてさて、学園生活2日目で出来ないと思っていた友達ができた主人公。それにより、これからの学園生活はどうなっていくのか……
分かりません……ww
でも、これからも楽しいと、面白いと思ってもらえるように頑張りますのでよろしくお願いします。