キスから始まる異世界百合色冒険譚   作:楠富 つかさ

3 / 15
第三話 下着事情

 レリエと出逢い、一週間くらいが経った。この一週間はレリエに知識を口移ししてもらうことと、そうして得た魔術の知識を自ら実践すること、そして旅支度を整えることに使われた。その中で分かったことがいくつかある。まず、レリエの持つ知識は魔術と歴史に偏っていて、一般常識がかなり抜けている。特に、人里離れた山奥で今は亡き師との二人暮らしが長かったからか、男性というものを全然理解していない。当然、性的な知識なんて皆無だ。あの時の絶頂も、レリエからすれば何が起きたか全く分からなかったのだろう。次に、彼女のすごさだ。13歳という若さにして世界屈指の空術使いということだ。魔術の細やかな属性については後でレポートにまとめるとして、空術というのは空間を司る属性であり、大きな特徴は二つ。使用者専用の空間を生み出せるということ。これを、支配領域テリトリーというらしい。いわゆる四次元ポケットだ。私にも作れるようになったが、小さなリュックほどの空間もなさそうだ。もう一つの特徴が、物体の移動だ。私がここにいるのも、巨大な魔法陣を描いた祭壇で、空術の秘伝を行使したものによる。その知識を知ったとき、私はレリエに神様のような存在に出会ったと言ったのだが、半信半疑という表情をされてしまった。何故なのだろうか。

 

「お姉ちゃん! これでどうでしょうか?」

 

この一週間における最大の変化はレリエの私に対する呼び方がお姉ちゃんになったことだろうか。それで、

 

「ちょっとだけ大きいかなぁ」

 

今、何をしているかというと、私の身につける下着をレリエが作っているのだ。謎技術なのだが、この世界―名前はないらしい。まぁ、他の世界が認識されていないのだから当然か―にはブラジャーがあるのだ。レリエはまだ幼いから着けていないのだが、私には必要なのだ。そのため、レリエの師匠のものをベースにレリエが作っているのだ。ちなみに、レリエの師匠は享年33だったらしい。魔法を教えるような女性というのは、老齢な魔女だという固定概念をブレイクされた。母親のような存在だと言っていた。のような、という部分にどうしても引っ掛かったが、詮索はしないことにした。

 

「今度はどうでしょうか?」

 

そう言いながら手渡された赤い下着。ブラジャーというよりビキニタイプの水着に近いかもしれない。後ろの紐を結んでみる。

 

「うん、いい感じ」

「じゃあ、このサイズでいくつか作っておきますね」

 

ちなみに、この試着をスムーズに行うために今の私は上半身裸。なんというか……いろいろアウトな気がするのは気にしない。ただ半裸で佇んでいるわけではないからね。生活魔術と呼ばれる各属性の基礎中の基礎に取り組んでいる。火属性ならライターとかマッチくらいの火を指先から出したり、水属性なら水道のように水をだしたり、風属性は扇風機のやさしい風くらいの風を吹かせたり、土属性は土を生み出したりと……戦闘では絶対に使えない魔術を行使している。じゃなきゃ、各属性の魔力が成長しないのだ。取り敢えず、能力が貰える勇者の力で、レリエから空属性―水と風の複合属性―の魔力を少しだけ貰っているとはいえ、筋肉と一緒で使わないと成長できないのだ。……キスで少ししか貰えないのは、私の魔力容量が全然追いついていないからだ。あぁ、勇者なのに弱すぎる。確かに持っている力はずるい気がする。とはいえ、初期ステータスが低すぎやしないだろうか。……頑張って成長しよう。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。