淀んで染まるシリーズ   作:RASN_Pixiv1本になります

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(こちらは2016年9/7に投稿です、当日は佐久間まゆの誕生日なのです。)


カスミ編

ここは茶熊学園…少し前まで茶熊学園は夏休みであり皆が苦労して夏休みの宿題と戦ったり、皆で海やお化け屋敷やコミケに行ったりなどして楽しんでいた。そしてそんな時期が終わって登校日となった。

 

「全く登校初日から業務なんてね…」

 

「いいじゃないですか、皆の為になりますし。」

 

早朝の茶熊学園校舎廊下にはカスミとフローリアが歩いていた。

 

「それよりも早く生徒会室に戻りましょう?RASNさんも待ってますしね?」

 

「なっ…何でそこでRASNが出てくるのよ?!」

 

RASNとは…もうこれの注釈とかいいよね…?

 

「またまた…カスミったら、夏休みの間RASNさんに中々会えなくて寂しかったくせに…」

 

「そんな事は無いわ!…ほら、さっさと戻るわよ!」

 

するとカスミはフローリアを追い越してズガスガと進んで行った。

 

「あぁ、待ってくださいよー?」

 

そして二人はとある部屋の前を過ぎようとしていた、するとカスミの目の前で扉が吹き飛んで色んな物が飛び出したのであった。

 

「…っ?!なっ…何なの?!」

 

「おっ…おっほー…久々に爆発薬作ったら途中で爆発しちゃったわー。」

 

飛び出した物の下からムクリと起き上がったのは科学担当の先生のカティアであり、紫色の髪が少し黒ずんでいた。

 

「もしかしてカティア先生ですか…?大丈夫ですか?」

 

「おほっ?これはこれは生徒会のカスミにフローリアね?」

 

「…ええそうだけど?」

 

カティアが煤とかを振り払って二人を視線に定め、カスミは一歩後ろに下がっていた。

 

「こんな朝早く何してるのかしらん?」

 

「生徒会の活動ですね、中庭の清掃と花壇の手入れを…」

 

「ふーん…ところで、今あなた達は暇かしら?」

 

「…別に暇じゃありませんけど…」

 

「えぇ、カスミは生徒会室に戻ってRASNさんに甘えるんですよね?」

 

「違うわよ?!」

 

「ふむ…ということは暇ね…だったら…」

 

するとカティアは懐をまさぐり両手にアンプルシューターを構えたのであった。

 

「夏休みろくに生徒と会えなかったから投薬させなさーいー!」

 

そしてそれに謎の薬を詰めるとカスミとフローリアに向けて撃ち放って追いかけていた。

 

「おっほー!逃がさないわよー!?おっほー!」

 

「あんな訳の分からないのに当たるわけにはいかないわよ!?」

 

「とりあえず早朝ですから被害は無さそうですね、でもどうしましょう…?」

 

「…仕方ないわね…こうなったらあの曲がり角で鳴弦をして姿を眩ますわよ!」

 

「分かりました。」

 

カスミがそう言うと二人は色違いで付いてる花も違うが、お揃いの弓を取り出して速度を上げたのであった。

 

「ムムっ…当たらないわね…だったら…!」

 

一方カティアは別のシューターを1本取り出してSKM-MYと書かれている小型のアンプルを一本はめ込み針を先に付けるとカスミに狙いをつけた。

 

「考えてみたら被検体は少数…だったらね…こうねぇ!」

 

カティアが放った小さな針は物凄い速度でカスミの首元に刺さった、だがカスミはそれに気づかずに曲がり角を曲がった。

 

「行くわよ…!祓いたまえ…」

 

「清めたまえ…!」

 

そして二人は弓の弦を鳴らし始めた。

 

「おっほー!逃がさないわよ…って…あら?」

 

カティアも二人と同様に曲がり角を曲がるとそこには逃げていたはずのカスミとフローリアがいなかった。

 

「おっほ…?おかしいわね…?まぁいいわ、適当に探して手当たり次第試そうかしらん…おっほー!」

 

そしてカティアは雄叫びならぬ雌叫びを上げて走っていった、その後そこにはカスミとフローリアがスッと姿を現した。

 

「ふぅー…何とかやり過ごしましたね…」

 

「えぇ、何とか誤魔化せたわね…早いところ生徒会室に戻りましょう…」

 

「はい、誰か先に部屋にいたらいいんですけどね。」

 

「…そうね…」

 

そうして二人は生徒会室へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

一方生徒会室にはすでに先客がおり、そこには生徒会長のシャルロットとその友人のメグとマリがいたのであった。なおこの二人はゼロキス同様に正式な生徒会メンバーではない。

 

「はぁ~学校かよ…かったりぃ~」

 

「シャル…朝のHRまであと15分だから早くいこうよ?」

 

「んぁ~…代返してくれるー?」

 

「それは無理だお、だってオウガ先生はシャルたんを気に入ってるからいなかったらすぐ気づくお。」

 

「そうだね、ほらシャル行こ?」

 

「嫌だー!私は行きたくなーい!」

 

マリとメグはシャルロットをどうにか生徒会室から連れ出そうとしていた、だがシャルロットは意地でも出ようとはしなかった。

 

「どうしてこんなにも意固地なんだお…もしかしてまだ夏休みの宿題終わってないとか…?」

 

「いや、宿題は夏休みが始まってから私がシャルを缶詰めして終わらせたから大丈夫だけど…?」

 

「むー…だったらなんだお?」

 

「いやさ…もっと夏休みを味わいたいんだよー?ねぇ?」

 

「えぇ…でもプールにも行ったし海でスイカ割りもしたじゃない?」

 

「そうだお、それに花火大会もお祭りにも行ったお?」

 

「そうだけどさー?けどもっと欲しくね…?あと…5日…いや2週間ぐらいはさ?」

 

「ダメだお。」

 

「そうよ、ほら?行くわよ!」

 

「いーやだー!はなーせ!?」

 

二人は持ち上げて連れ出そうとしたがシャルロットは自分の机にへばりついて抵抗していた。

 

「何やら騒がしいですね…?どうしたんですか?」

 

すると生徒会室の扉がガラリと開きそこにはカスミとフローリアがいた。

 

「おっ!フロたんにカスミたん!ちょっと手助けしてほしいお!」

 

「手助けって…またあの癖ね…?」

 

「とりあえずどうすれば…?」

 

「えっーと…とりあえずシャルの掴んでる手を緩めてくれる?そうすれば行けると思うから。」

 

「分かりました…ちょっと待ってくださいね…?」

 

するとフローリアは学生服のスカートのポケットをまさぐると先程カティアが撃ち放ってたアンプルを取り出した。

 

「フ…フローリアさん?」

 

「おー?!何かヤバそうな薬だお?!」

 

「ふぎぎぎ…」

 

シャルロットは踏ん張ってアンプルには気付かないがマリとメグはそのアンプルに驚いていた。

 

「では少し失礼しますね…?…ぷすり…」

 

「ふぎぎぎぎぎ…ぎぃぃ……ぃ…」

 

そしてフローリアはシャルロットの首元にぷすりとアンプルを打ち込み、打ち込まれたシャルロットは徐々に力が抜けていったのであった。

 

「おっー!すごいおー!?」

 

「でもこれ大丈夫なの?!」

 

「大丈夫よ、多分。カティア先生は変な薬は作りはするけどそれで命を落とすようなものは作らないわ。」

 

「そうですよ、それより早くシャルロットさんを運びださないと…?」

 

「はっ…!そうだお!マリたん頼むお!」

 

「分かってるわ!」

 

マリはダランと垂れているシャルロットを抱えると生徒会室を立ち去ったのであった。

 

「ふぃー…二人とも助かったおー、感謝するお!」

 

そしてメグは息を吐くと机に腰を着けたのであった。

 

「…。」

 

「ふふ…大変ですね?」

 

「でも大切な友達だから、大変と言うより楽しいお。」

 

「そうね、でも…机に座ってるのはいただけないわね。さっさと降りなさい。」

 

「お?これはすまないお…」

 

メグはカスミの指摘を受けて申し訳なさそうに机から降りた。

 

「あっ、そろそろHRですね…私達も教室に戻りましょう?」

 

「そうだお、シャルを行かせたのにメグ達が遅れたらカッコ悪いお!」

 

「そうね…あっ…ごめんなさい、私ちょっとまだ用があるから先に行ってくれる?」

 

「そうですか…、では遅れないようにしてくださいね?」

 

「おっおー!」

 

そうしてメグとフローリアは生徒会室から立ち去ったのであった。

 

「それにしても休み明けなのにカスミたん相変わらずツンツンだお…」

 

「…。」

 

「おりょ?フロたん?」

 

「あっ…、すみません。」

 

「どうしたお?考え事かお?」

 

「いや…何かおかしくて…」

 

「おかしいって…なにがだお?カスミたんはいつも通りなツンケンさだお?」

 

「…いえ…私の気のせいですね、何でもありません。」

 

「んー?そうかお。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-茶熊学園 タラコ組の教室-

 

タラコ組の教室はHR開始前で慌ただしく生徒のほとんどは席に着いてなかった。

 

「オーララ?シショー達は学長殿と一緒に旅行でござったか?!」

 

「…!」

 

「えぇ?!あの人気アイドルのモノクロームさんやアーモンドピークさんとも会ったんですか?!」

 

「羨ましいです!私達も行きたかったです!」

 

RASNらが夏休みの事を話しており、回りにはスイカやカモメやメア等が囲っていた。

 

そしてRASNはカムイ学長に連れられて南の島にバカンスに行っていた事を話していた。

 

「でも私達運動部は一斉合宿で行けなかったじゃない?仕方ないわよ。」

 

「でも楽しかったねぇ?肝試しじゃあたしが逆に化かしてやったしね?」

 

「そうだね~?アマタ君ったら花火玉がないからって分裂して花火になっちゃったりしてたね~。」

 

「あぁ!でもスッゲー楽しかったぜワッショーイ!」

 

「…というか分裂ってなんだよ…?おっと、先生がやって来たぜ?」

 

ソウマがそう言うと教室の戸が開いて担任のエドガルド先生が入っていった。そしてそれと同時に学校内にチャイムが鳴り響き生徒達は席に着いた。

 

「よォ!お前ら、久し振りだなァ、宿題はちゃんと終わらしたかァ?」

 

座る生徒の数名は少し冷や汗を垂らした。

 

「まァ…明日の授業開始から提出だからなァ…今日必死に頑張れば良いんじゃねぇか?まァそれはともかく…新学期にもなるし、席替えでもすっかァ!」

 

すると静かだった教室が沸き上がった。

 

「よし、席はお前らに任せるぜェ?帰りのHRまでに替えとけよ、そんじゃァ始業式に向かうかァ。」

 

こうしてタラコ組の面々は始業式へと向かった、道中マスコ組の教室から轟音とシャルロットの叫びが木霊した。

 

 

 

 

 

 

そして体育館で行われた始業式ではカムイ学長の長々とした話があった。

 

「うぅ…キツいぜ…!」

 

「どうしたザックもうへばってんのか?」

 

「これぐれー余裕だ…こっちとら最近テニスを…うぁ…」

 

「へっ…テニスなんぞ俺も…ぐぁ…」

 

その長々とした話で次々と脱落者が続出していった。

 

「…!」

 

「シショー?大丈夫でござるか?」

 

そしてRASNも目眩がするのか頭に手を当てていた。

 

「…!」

 

「平気だって…でも半目じゃない?!無理しない方が…?」

 

「…!」

 

「オララ?!シショー大丈夫でござるか?!」

 

するとRASNは糸が切れたかのように崩れ落ちたのであった。

 

「おっ…おい?!早くRASNを保健室につれていった方が…!」

 

「そうね…私が保健室に連れていくわ。」

 

そしてカスミがRASNの腕に組みつくと引っ張るように体育館から抜け出した。

 

「およ?RASNも脱落かお?マリっちにフロたんは大丈夫かお?」

 

「私は平気だけど…?フローリアさん?」

 

マリがそう答えるとフローリアは先程出ていったカスミとRASNの方に顔を向けていた。

 

「フローリアさん…?」

 

「あっ、すみません。私は…いえ少し気分が優れないみたいですね…下がらせていただきますね…」

 

「大丈夫かお?メグたんが付き添いするお?」

 

「大丈夫です、一人で大丈夫ですよ…?」

 

そう言ってフローリアはカスミの後を追った。

 

そしてカムイ学長の長々しい話はお昼頃まで続き、本日の学校は始業式だけで終わったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-茶熊学園 第二保健室-

 

「…?…?!」

 

「あら…起きたのRASN?」

 

RASNが目を覚ますとベッドの上であり目の前にはカスミがおりRASNの赤い髪を撫でながら見下ろしていたのであった。

 

少し当惑しつつもRASNは辺りを見渡し保健室である事は分かったが、何故か照明が消されており明かりは窓からの光だけであった。

 

「大丈夫?倒れちゃったから心配したけど…ちょっと見るわね…?」

 

するとカスミは自分の顔をRASNの顔に近づけてデコを当てた。

当てられるRASNは驚いていた。

 

「………そんなに熱くないわね…?……………。」

 

「……。」

 

そして暫くカスミはそのままデコを当て続けていた。

 

「…!」

 

「あっ…ごめんなさい、でもね…」

 

するとカスミは頭を下げてデコをRASNの胸へと動かして目を閉じて顔を埋めた。

 

「こうやってRASNと距離を縮めてるののが心地いいの…」

 

「…?!…!?」

 

そしてそうされているRASNは目を白黒させて困惑していた。

 

「えっ…何かおかしい?そんなことは無いわよ。それよりRASNお腹空いてない?…ちょっと待っててね…」

 

そう言うとカスミはベッドから席を外して保健室の出入口にある鞄をまさぐっており、それを見ていたRASNは何か奇妙さを感じていた。

 

そしてカスミはタッパーを取り出したのであった、中は唐揚げや卵焼きやらと弁当と変わりない内容であった。

 

「これね、さっき寮に戻って作ってきたの…食べてくれる?」

 

「……!?…。」

 

RASNは差し出されたそれに少し迷いつつもタッパーに乗ってる箸を取った。

 

RASNはとりあえず近場の唐揚げから箸で 取り口へと運んだ、そしてその間カスミはその様子をじっと見ていた。

 

「…どう?美味しい?美味しい?」

 

「…!!」

 

RASNは穴でも空きそうな視線を突きつけながらそう問うカスミの声に頭を横には振れなかった。

 

「そう…良かったわ、ふふっ…隠し味が良かったのかしら?」

 

「……。」

 

「あら、箸が止まってるわね?…貸して?」

 

RASNが唖然としていると止まっていた箸をカスミに取られた、そしてカスミは箸で卵焼きを摘まんだ。

 

「ほら、あーん?」

 

「…?!」

 

カスミはベッドに座りかかると卵焼きを摘まんだ箸をRASNの口へと運ぼうとしていた、そして運ばれて半ば無理矢理口にねじ込められRASNの目線はこちらを見つめるカスミと箸を持つ手の首に巻かれている包帯ぐらいであった。

 

「どう?甘くしてみたけど…口に合ったかしら?」

 

「…!」

 

「良かったわ…それじゃそれじゃ次はねお料理の本で習ったんだけどね八宝菜っていうのかしら?食べてみる?」

 

次にカスミは野菜が多めな八宝菜を箸で摘まむとRASNの答えを待たずに口へと運ばれ、RASNは八宝菜を食べさせられた。

 

「どうかしら…?美味しい?美味しくできてるよね…?」

 

RASNは突っ込まれた八宝菜を咀嚼しながら、首を縦に振ったのであった。

 

「そうよね。ふふっ…それじゃもっと食べてね?あっいや食べさせてあげるね?あーん…」

 

「……(汗)」

 

そうしてRASNはカスミよってタッパーに入ってた料理を食べ切ったのであった。

 

「どう?お腹いっぱい?」

 

「…!」

 

RASNは少し苦しそうに頷いた。

 

「ふふっ御粗末様。…あら?ちょっと動かないでね…」

 

「…?!」

 

カスミはそう言うとRASNの顔に自身の顔を寄せた、RASNは無論驚き退こうとしたがカスミの手によって動けなかった。

 

「ぺろり…頬に八宝菜のソース付いてたわよ、どうしたのRASN?顔が青いわね…?」

 

「……」

 

RASNはカスミの言うとおりに顔を真っ青にしていた。

 

「まさかまだ体調が悪いのかしら…?…そうだ良くなるように添い寝してあげるわ…」

 

そう言うとカスミはシーツをめくるとRASNのいるベッドへと侵入してきた、RASNは驚きながらベッドから離れようとしていたがカスミの腕から逃れられなかった。

 

「駄目よ…行っちゃ、夏休みの間いなくて寂しかったんだからね…」

 

「…?!」

 

そしてカスミはRASNの体に乗っかかって見下ろす形になった。

 

「そういえばRASN、夏休みの間カムイ学長達とバカンス行ってたのよね?…楽しかった?」

 

「…!」

 

RASNは頷いた。

 

「…そう、それでね一年の子達に聞いたんだけど…随分その時エスメラルダさんと仲良かったそうね?」

 

「…!」

 

「色んな事やったんじゃない…?…だったら…」

 

するとカスミはスルッと胸元のリボンをほどいて上着のボタンを外し始め、RASNは焦りながらそれを止めようとしていたが止めきれずにカスミの上半身は脱ぎかかったブラウスだけになった。

 

「止めないで…!」

 

「…!?」

 

「…どうしてって…?…こうでもしないと先に越されちゃうのよ…!」

 

そうしてカスミは涙を溢しながらRASNに抱きついた。

 

「だから…こうするの…カモメやフラン達に先を越される前に刻みつけなきゃいけないの…」

 

今度は髪を結ぶリボンもカスミはほどいてRASNの顔前に顔を寄せた。

 

「…?!」

 

「RASN…す…す…きゅぅ…」

 

そしてカスミは淀んだ目をしながら顔の距離を狭めていった。

 

だがその距離が目と鼻の先なった時ガラリと保健室の扉が開いて急にカスミはフラりと倒れてRASNの胸に顔を突っ伏した。

 

「間に合いましたか…!」

 

「…!?」

 

扉の先にはアンプルシューターを構えたフローリアがいたのであった。

 

「…!」

 

「RASNさん…すみませんが貴方も眠って下さい…!」

 

「…?!」

 

するとフローリアはシューターを一発撃ち放ってRASNもカスミ同様に寝かせたのであった。

 

「ザザッ…もしもしー?ターゲットは確保出来たのかしらん?」

 

「はい、ねむねむ草を調合した睡眠薬は効果抜群ですから。」

 

そしてフローリアは耳に取り付けてる無線に耳を傾けていた。

 

「そうよね、なんたってこの私が直々に調合した睡眠薬よ?効果が無いのは有り得ないもの!」

 

「そ…そうですね…」

 

「そんじゃさっさと寝かした二人を運搬用ルーちゃん量産型に乗せて早く研究室に来なさい。」

 

「はい、分かりました。」

 

すると保健室に二機のルーちゃんがやって来てフローリアは二人をそれに乗せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-茶熊学園 カティアの実験室-

 

ここはカティアの実験室であり朝方爆発によって入り口の方は簡易的に直されている。そして室内は様々な実験器具に溢れかえっているがその中にカティアとフローリアがおりベッドにはカスミが寝ており、ソファーの方にはRASNが寝ていた。

 

「どうでしょうか先生?」

 

「大丈夫よん、カスミに投薬してあったSKM-MYは中和してあるわん。」

 

「それにしてもそのSKM-MYって何なんですか…?」

 

「これ?まぁアナタには試料の提供を十二分に手伝ってもらったし教えてあげても良いわよ。」

 

そう言うと椅子に座るカティアはSKM-MYと書かれてあるアンプルを取り出した。

 

「これはね、パルメって子いるじゃない?その子の血液を検査してた時に発見したのよね。」

 

「それで効力は?」

 

「効力ねぇ…まぁ一口で言えば執心っていったところね、今回の実験で確証したわ。」

 

「執心ですか…そうなると一種の惚れ薬みたいなものですか?」

 

「それは前の実験のデータから違うと思うわよ?ちょっとこれをご覧なさ…ってアナタは目がアレだったわ。」

 

そうするとカティアはモニターを取り出そうとしたがすぐにしまった。

 

「すみません。」

 

「いいのよ、まぁとりあえず口頭で説明してあげるわん。まずは結果からで言うと一回目は失敗して二回目は成功したのよねん。」

 

「そうですか…」

 

「そうよ、それで学校にいたネモに二回目の実験に手伝ってもらったわん。」

 

そうしながら机上の紙の束をぺらぺらとめくっていた、そこには様々な観察の経緯やら結果が書かれており付箋のように貼られてる写真しにはネモがクラゲの入った水槽を愛おしくじっと見つめてる姿が撮られていた。

 

「そっ…そうなんですか…そうなると一回目はどうなんですか?」

 

「あっ、そうね。一回目はーどれかしらん?」

 

カティアが我に返るとめくった紙を戻して紙束の頭の方まで戻った、そこには大量の生徒の名前が書かれていたがどれも斜線が架かっていた。

 

「一回目の方は夏休み前にまぁとりあえずそこら辺にいた生徒が対象ね、とりあえず手当たり次第に投薬していったわ。でもねーどれもこれもほぼ無反応でお手上げに近かったのよねん。」

 

そう言ってカティアはボンと紙束を机の上に放り投げた。

 

「でも今回のカスミとRASNさんとの実験の結果で分かったんですよね?」

 

「そうよ、でもまぁ正直なとこ二回目が終わって色々探りを入れたら執心ってのは分かっちゃっているのよね…まぁ確証が欲しかったのよ。」

 

「確証ですか…一体どんな…」

 

「まぁまずね、ネモはあんなだけど自分の部屋にクラゲのアクアリウムの部屋を作るぐらいクラゲ好きなのよね。」

 

「そっ…そうなんですか…。」

 

「それでこれが今のネモよん。」

 

そう言うと先程しまったモニターを取り出してリモコンで操作をした。

 

そして映し出されたのは右下にLIVEと書かれて暗く部屋でアクアリウムの光で照らされて踞るネモがいた、そしてそのネモの手には『のあ』と書かれた紙が貼ってある金魚鉢があり中にはクラゲが1杯ぷかぷか浮いていた。

 

『ふふ…可愛い…可愛いよノア…ふふふ…』

 

「この声はネモさん…?!」

 

「そうよ、多分もうこんな感じなのが一週間ぐらいは続いてるわね。」

 

「いっ…一週間ですか…恐ろしいですね、ところでそのネモさんは何に執心を…?」

 

「クラゲよ他のクラゲより何かと彩り鮮やかな感じのクラゲにご執心なのよねん、しかもノアって名前まで付けてるしね。」

 

「……。」

 

(この頃にはノアは居ませんでした、夏で結構狙いましたが中々…)

 

「更にね ネモはそのクラゲのノアってのに首ったけで投薬してから二・三分姿を眩ませただけでヒステリー起こしてちょっと大変だったのよねん。」

 

「…。」

 

「それじゃフローリア、詳しい薬の効能は何でしょう?」

 

「ネモさんがクラゲが好きで投薬されたらそのようになり、そしてカスミはRASNさんに迫るように距離を縮めてきた…つまり執心と言うより執心の強化という所ですか?」

 

「んーそうなるわね、あたしの考えでは効果効くのは被験者が心の奥底で思ってる異性の相手だけだと思うのよね。まぁ後はこれを元にルーン化するのを試みるのみね。」

 

「そうですか頑張ってくださいね。」

 

「ありがとねん、そういえばもうその二人は良いわよさっさと持ち帰んなさい。」

 

「あっ、はい。二人とも起きて下さい?」

 

そうしてフローリアは二人を起こして研究室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-茶熊学園 テニスコート-

 

始業式から数日後学園の生徒皆で体育をする日であり各生徒様々な場所に散らばっていた、そしてここテニスコートではダブルスでRASNとバイパーがオズマとヨシュアで試合をしていた。

 

「どうしたオズマ、あと一点で俺達の勝ちだぜ?」

 

「…!」

 

「チッ…舐められたもんだぜ、でもタイブレークだからこっちにも勝ち筋はあるはずだぜ。」

 

「はいっ!オズマさんのマグナムサーブは誰も返せませんしね!」 

 

試合はタイブレーク中でありアドバンテージはRASNとバイパー側であり、サーブ権はオズマが握っていてレシーバーはバイパーであった。

 

「おう!何たって…貯めに貯めて今は絶好調なんだぜっ!!」

 

そしてオズマが打った玉はまた電撃を纏ってネットを越えてRASN達のコートに素早く入るとそのまま抜けようとしていた。

 

「よしっ!貰ったぜ!」

 

「…遅いっ…!」

 

ボールがバイパーの後を過ぎようとしていたがバイパーはボールより素早く動くと捻りを入れながら打ち返した。

 

「なっ…何ぃ?!今まで打ち返せなかったのに打ち返しやがった?!オラッ!」

 

「フッ…打ち返せなかったんじゃない、あえて打ち返さず最後の最後で打ち返すのさ!」

 

「やってくれますね…!でも負けませんよ!」

 

「…!」

 

そして暫くラリーが続いたが最終的にはバイパーがネットの横をすり抜けるような打球をして勝利を収めた。

 

「正に…蛇の横牙だ…!」

 

「…!」

 

「そんな技ありですか…?」

 

「まぁアリなんだよな、歴とした技でボール回しって言うんだぜ?」

 

「そうなんですか…勉強になります!」

 

「ヨシュア、後で教えてやろうか?」

 

「はいっ!是非とも!」

 

「はは…俺は勘弁するぜ?」

 

「…遠慮するなよ?」

 

試合が終わりオズマとヨシュアは負けたのに明るく笑っていた。

 

「それにしてと汗がすげぇな…ちょっと浴びてくるか?」

 

「そうだな、次は泳ぎにでも行くか?」

 

「いいですね!RASNさんはどうしますか?」

 

「…!」

 

そしてオズマらは汗を流すためにも屋内プールに行こうとしたがRASNはもう少しここにいる事になった。

 

「そうですか、では僕たちは行きますので頑張ってくださいね!」

 

「疲れたと思ったらちゃんと休めよ、でねーと倒れるからな?」

 

「済まないな。」

 

そうしてオズマらとバイパーはテニスコートを後にして、残ったRASNは散らかったボールを籠に入れてドリンク片手にベンチで一息付いていた。

 

「あら?RASNじゃないどうしたの一人で?」

 

するとテニスコートに入ってきたのはカスミとフローリアとメアであり、三人共に髪が濡れていたのであった。

 

「まさか一人で練習していたんですか?言ってくれればカスミを貸し出しの致したんですが…」

 

「私はレンタル品じゃないわよ?!」

 

「…!」

 

「あっ、そうなんですかバイパーさん達とダブルスしていたんですかそれはお疲れ様でした。」

 

「そうなると…ダブルスは少し無理そうね、メア私とシングルで…」

 

「メアさん!私と試合しませんか?というかしましょう!やりましょう!」

 

カスミがメアに試合を申し込もうとしたがフローリアが割り込んでメアに試合を申し込んだ。

 

「えっ…でもフローリアさんボールの位置とか分かるんですか?」

 

「大丈夫です、むしろ音や感覚で丸見えですから。」

 

「だったら別にいいけど…手加減しないわよ?」

 

「はい、手加減なしでお願いしますね。」

 

こうしてフローリアとメアはラケットを手にコートに入って試合を始めた。

 

「…私が先だったのに…まぁ良いわ、隣良い?」

 

「…!」

 

そして試合出来なかったカスミはRASNの座るベンチに座ってメアとフローリアの試合を見ていた。

 

「フローリアやるわね…テニス部員のメアを相手に一歩も引いてないわ…!」

 

「…!」

 

「あら、RASNすごい汗じゃない?汗拭いてなかったの?」

 

「…?!」

 

カスミがRASNの額やらについてる汗に気づくとタオルで拭い始めた。

 

「はい、これで終わり。ちゃんと水分補給はしてるみたいだけどちゃんと塩分も取りなさい?はいこれ。」

 

「…!」

 

そして拭い終わるとカスミはポケットから塩キャラメルを取り出すとRASNに渡し、受け取ったRASNはそれを受け取って舐めた。

 

「あんまり甘くはないけど倒れるよりかはましでしょ?」

 

「…!」

 

するとRASNはお返しのようにドリンクをカスミに渡した。

 

「あっ、まぁ丁度喉乾いてたしね…ありがとう。」

 

ドリンク受け取ったカスミは少し照れながらもそのドリンクに口をつけた。

 

「………、…間接キスとか…期待してたのにな……」

 

そしてカスミは飲みながら小声で目を淀ませながらそう呟いていた。

 

 


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