ーーヒロsideーー
「どうぞ、こちらの席へ。」
うさぎを探していた変わったお客さんは僕が相手をしていた。
「もじゃもじゃ…?」
「ティッピーです。うさぎです。」
「うさぎ!?」
おじいちゃんであるティッピーをもじゃもじゃと言っていたのでうさぎと答えると、お客さんはとてもテンションが上がっていた。
「あ、えっと、ご注文は…」
「そのうさぎさん!!」
「…非売品です。」
「…うぅ、せ、せめてモフモフさせて!」
何を言ってるんだろうこの人は。こんな変わったお客さんは初めてかもしれない…
「じゃあ、コーヒー1杯で1回です。」
「じゃあ、3杯!」
…そんなにモフモフしたいのだろうか。
その後、お姉ちゃんにコーヒーを作ってもらい、お客さんに3杯のコーヒーを渡した。
「お待たせしたました。」
約束通り、お客さんにティッピーを渡したら凄く気持ちよさそうにモフモフしていた。
若干おじいちゃんが苦しそうにも見える…そう思っていると、
「ノォォオオ!」
おじいちゃんがいきなり叫びだした。
「わっ!?今ダンディーな声が聞こえた気が…」
「き、気のせいですよ… 」
おじいちゃん、あまり声を出さないで…フォローが難しい。
「ふへへぇ…この感触…たまらないなぁ…!」
「ええぃ離せこの小娘が!!」
ついにおじいちゃんは耐えきれなくなり僕の方へ飛んできた。
「…!やっぱり、ダンディーな声が…」
「い、いや…それはですね…」
どう言おうと迷っていると、
「私の腹話術です。」
といつの間にか隣に来ていたお姉ちゃんがそういった。
「お、お姉ちゃん。流石にその誤魔化し方は…」
「し、しかたないでしょ…。こうするしか…」
2人でこそこそ話しているとお客さんが、
「へぇー!店員さん腹話術上手だね!!」
「「え?」」
何故か誤魔化せたみたい…
ーーチノsideーー
変わったお客さんの相手をしていたヒロに変わって私が相手しようと思います。
「ヒロ、後はお姉ちゃんに任せて。」
「うんっ、分かった。」
ヒロの頭を撫でるとヒロはそう答え、厨房に戻って行った。
ヒロを見送っていると、
「私、この街で下宿先を探していたんだけど道が分からなくて…」
とお客さんはそう言う。
「なんて名前の下宿ですか?」
「えっと、たしか香風さんって所だったよ!」
「香風はうちですよ。」
「ほんと!?凄い!これは運命だよー!」
そう言って私の手を握ってくる。自己紹介しとかなきゃですね。
「私はチノです。マスターの孫です。そしてさっきの男の子は私の弟のヒロです。」
「私はココアだよ!よろしくね!」
「はい。」
そう言って握手を交わす。
「そう言えば、マスターさんに挨拶したいんだけど、今は留守かな?」
「…祖父は去年…」
「!…そっか。いまは1人で頑張っているんだね…」
「いえ、私だけでなく弟もいるので人手が足りてますし、あとバイトの子が1人いr「私を姉だと思って何でも言って!!」…!?」
いきなり抱きしめられてしまいました。…こういう時どうしたら良いでしょうか。いろいろと困っている私に
「だから、お姉ちゃんって呼んで?」
…ただそう言ってほしいだけなのでは…
「じゃあ、ココアさん…。」
「お姉ちゃんって呼んで?」
「ココアさん。」
「お姉ちゃんって呼んで!」
「ココアさん、早速働いてください」
「任せて!」
そんなに姉と呼ばれたいのだろうか。
取り敢えずココアさんを更衣室に連れていき、制服を持ってくるので待っていてくださいと伝えておいた。
「きゃぁ!?下着強盗!!」
いきなりココアさんの叫び声が聞こえた。
何事だと思い、更衣室に向かう。
「ココアさん、どうかしましたか? 」
「ち、チノちゃん!強盗だよ!」
「ち、違う!て言うかほんとにお前は誰だ!」
下着強盗とはリゼさんのことだった。
その後、ちゃんと事情を説明してふたりはしっかり和解し合った。
「ココア、ちゃんとメニュー覚えておけよ。」
リゼさんがココアさんにメニューを渡している。
「…うぅ、覚えにくいのばかり…」
「頑張れよ、ちなみに私とヒロはひと目で覚えたぞ」
「二人共すごい!!特にヒロくんなんてまだ小さいのにすごい暗記力だね!」
「あ、ありがとうございます…」
フレンドリーな人とあまり接さないため、ココアさんの行動にヒロが戸惑っている。
その後ココアさんは才能が欲しいと呟いていたけど私が宿題をしている時に、ココアさんは異常なほどの暗算能力を持っていたことにびっくりしました。それもうちの弟に負けないくらいの。
「あ、いらっしゃいませ!」
お客さんが来た所でココアさんが初めて接客に入る。
「あら?新人さん?」
「はい!今日からここで働かせていただくココアって言います!」
「よろしくね。それじゃあキリマンジャロお願いできるかしら?」
「畏まりました!」
どうやら接客は問題ないようですね。
「お疲れ!」
「お疲れリゼちゃん!」
「お疲れ様ですリゼさん。」
「お疲れ様です。」
今日の仕事が終わり、リゼさんが帰ったころです。
「今日はシチューでいいですか?」
私はココアさんに尋ねてみる。
「うん!野菜切るの任せて!」
「いえ、料理は私とヒロでやるので大丈夫です。」
「えぇー…」
「チーノちゃんっ!」
「はいっ…?」
シチューを作っているとココアさんに声をかけられた。
「ジャジャーン!どう!?」
「私たち…?」
「そうだよ!ヒロくん!どうかな!?」
と、ココアさんは私たち4人の似顔絵が描かれたラテアートの写真をヒロに見せる。
ヒロは一瞬、ビクッとしたが、
「いいと思いますよ。」
と微笑んだ。
「ほんと!?やったー!リゼちゃんにも送信しよっと!」
ココアさんは賑やかですね。
「そろそろかな?」
「もう少しです。」
もう少しでシチューが完成します。
「ねえヒロくん、こうしていると私たち姉弟みたいだね!」
「えっ?」
…今なんて?ヒロとココアさんが姉弟…?
私がちょっと嫉妬していると、ヒロが
「こ、ココアお姉ちゃんですね……」
「…!?」
「うおおおおーー!」
ヒロはそう言った。お、お姉ちゃんってココアお姉ちゃんって……わ、私がお姉ちゃんなのに…。
「ありがとうヒロくん!!」
「ふぇ?」
「!?!?」
するとココアさんはヒロに抱きついた。ヒロはすっとぼけた顔をしている。
私は我慢の限界だった。
「だ、ダメですココアさん!!」
私はココアさんとヒロを引き剥がした。
そして、ヒロを抱きしめてこう言う。
「お姉ちゃんは私です!ココアさんはお姉ちゃんじゃないのでヒロに抱きついたらダメです!!」
「そ、そんなー!!」
その後、夕食を済ませた私たちはお風呂に入ることに。ヒロはそろそろ1人で入りたいらしいが今はココアさんがいるので私と入ることに。私としては別にどっちでもよかったのです。別にヒロと入りたいだなんて思ってません。
風呂から上がって私たちは今日はみんなで寝ることに。
「ねぇ、チノちゃん!ヒロくん!」
「はい?」
「この街、とても素敵な所だね!」
「そうですか?」
「私!チノちゃん達に出会えて良かった!これから頑張るね!」
ココアさんはほんとに明るい人ですね。
「ココアさんこれからよろしくお願いします。」
「よろしくお願いしますココアさん。」
ヒロも後に続く。
「ふふん、2人のお姉ちゃんとして頑張るね!」
「いや、ちょっと待ってください。」
「えー、今日はみんなと一緒にねーる♪」
「…うぅ」
その翌日、ココアさんがヒロに抱きついて寝ていました。
………全然怒ってませんよ。嫉妬なんかする訳ないじゃないですか。
ヒロに抱きつきたいとか全然思ってませんから。
3000文字でも疲れます(; ・`д・´