香風智乃の弟   作:A.K@OMG

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第10羽

ーーチノsideーー

 

 

「そういえば、もうすぐ球技大会だねー!」

 

「私達はバトミントンだねー。」

 

マヤさんとメグさんが球技大会について話し合っている。そう、もうすぐ球技大会があります。運動苦手な私にとっては全然嬉しくありませんが、クラスの人たちはみんなやる気だった。ちなみにココアさん達も球技大会の日程が同じらしい。

ココアさんと千夜さんとリゼさんとシャロさんはバレーボールをするらしい。ヒロはバスケットボールだそうだ。

 

「球技大会…ですか…。」

 

「チノは運動苦手だもんなー!」

 

私のつぶやきにマヤさんがヘラヘラしながら答えてくる。

 

「そうだ!今度みんなでバトミントン練習しようよ!」

 

メグさんがそう提案する。確かにいいかもしれない、練習しておけば本番は恥をかくことはないだろう。

 

「良いですね、今度練習しましょうか。」

 

「じゃあなー!チノー!」

 

「チノちゃん、またねー。」

 

二人の挨拶に私は手を振って応える。

 

「さて、今からヒロのところに行きますか。」

 

ヒロは学校が振り替え休日ということで今、誰でも使用可能な体育館で友達とバスケットボールの練習しているらしく″お姉ちゃんの学校が終わったら一緒に帰らない?僕の所に来てくれるとありがたいけど…″とのことでした。お姉ちゃんとして弟の頼み事は断るわけにはいきません。……別に元々一緒に帰りたかったとかそういう訳ではありません。

 

それにしても、やっぱり球技大会は好きにはなれません。去年の球技大会の時だ。去年はバレーボールをやったのだが、試合終盤で私がミスをおかしてチームは負けとなった。

負けた後のチームの落ち込む様子を見て胸が痛んだ。あの罪悪感はとてつもなく苦しかったです。さっきは運動苦手とかそんなことを理由にしていたが本当はチームのみんなに迷惑をかけてしまうから好きになれないのではないかと思ってしまう時がよくある。

今年のバトミントンは三人チームの団体戦だ。

そして、一番心配なこと。私のチームがあまり話したことのない顔見知りの二人のクラスメイトと同じチームだ。マヤさんとメグさんと組めれば良かったのですが、そこは運が悪かったようです。

 

「と、いつの間にか着いてましたね。」

 

目的地の体育館に着いた。中に入ると体育館でよく臭う汗臭い匂いが漂ってきた。…えっと、ヒロは…

あ、いましt

 

ガコォン

 

「ナイスシューヒロー!」

 

「うん。」

 

「…。」

 

やっぱりヒロは凄いです。勉強もできて、ボトルシップのクオリティも私より凄い、更にはスポーツも万能ときた。完全に私の上位互換とも言える存在だ。姉としては悔しいのだが、ヒロは元々天才なので仕方がないのだろうが、やっぱり羨ましいという気持ちはある。あの時、私もバレーボールが上手だったらあんな暗い空気にはならなかったはずです……。

 

「あ、お姉ちゃん!」

 

とヒロがこっちに駆け寄ってくる。

 

「帰ろうか、ヒロ。」

 

「うん!…あ、凜空、泰介!またね!」

 

「「ばいばーい!」」

 

私達はラビットハウスに向かいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

ラビットハウスに向かう途中。私は、

 

「ねぇ、ヒロ。」

 

「どうしたの?」

 

「私…運動苦手でしょ?それで今度の球技大会のチームがあまり関わったことない人たちなんだけど、私、バトミントンも下手だからもし…失敗したらみんなに迷惑かけそうで凄い怖い……。」

 

私はヒロに心の悩みを伝える。話している時、ヒロはいつもとは違い真剣な表情で話を聞いてくれた。

 

「……。」

 

私は不安で言葉が出なくなっていた。

 

「お姉ちゃん。」

 

「…?」

 

「バトミントンが上手いとか下手だとか関係なく、とにかく一生懸命頑張ればいいと思うよ。」

 

「一生懸命…頑張る? 」

 

「うん!」

 

とヒロは笑顔になる。

 

 

 

 

……一生懸命頑張る……か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー数日後ーー

 

 

 

 

 

「よーし!みんなで頑張ろー!」

 

とココアさんが言う。

今日はみんなで球技大会の練習をする日です。

 

「ほら、チノちゃん!えい!」

 

「!?ちょっと待ってくだ…ひゃ!」

 

いきなりココアさんにボールを投げられ、焦ってしまい変な方向にボールを跳ね返してしまいました。

 

「こ、ココアさんいきなりなにするんですか!」

 

「えへへーごめんね?」

 

「とりあえず各自練習しようか。」

 

とリゼさんの言う通り、私はマヤさんとメグさんと一緒にバトミントンの練習を始めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チノ!」

 

「はい!…あた。」

 

また失敗しました。

やはり私には運動の才能が無いみたいです。

 

「大丈夫かチノー?」

 

「はい、すみません。」

 

「気にしないでー、さっ、続きやろ。」

 

とマヤさんが心配して、メグさんが励ましてくれました。

 

「チノ!」

 

「リゼさん…?」

 

気がつけばリゼさんがドヤ顔で私の目の前に立っていた。

 

「今から私が必殺技を教えてやろう!」

 

「必殺技!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リゼさん、必殺技というのは?」

 

「あぁ、まずはこの技をマスターしてもらう!」

 

どんな技だろうと思っているとリゼさんからいきなり凄いオーラが出ていた。

 

「いくぞ!パトリオットサーブ!!」

 

リゼさんがそう言ってサーブを打つと凄まじい衝撃波が空を切った。

 

「………。」

 

私は思わず固まっていた。誰か殺害するのだろうか。

そんなことを考えているとリゼさんがドヤ顔で、

 

「よし、チノ!これをやってみろ!」

 

いや無理ですよ。あんな技出来るならむしろやってみたいですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、練習を終えてみんなの所に戻るとマヤさんとメグさんは帰っていたらしいのだが、ココアさんと千夜さんが倒れているのを発見しました。

2人が起きたあと、シャロさんも合流して、何故か私もバレーボールの練習をしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー球技大会 当日ーー

 

 

 

 

 

 

 

ついに本番が来てしまいました。

 

「えっと、香風さん。今日はよろしくね?」

 

「よろしく香風さん。」

 

「梨奈さん、玲さんよろしくお願いします。」

 

とりあえず、チームである2人と顔合わせをする。

 

「いよいよ本番だね!」

 

「はー、緊張してきた。」

 

2人が今の心境を語っている。

 

「香風さん大丈夫?もしかして緊張してる?」

 

「…はい。」

 

「あはは!みんなで頑張ろ!」

 

梨奈さんは元気でいいです。私は緊張し過ぎて心臓が破裂しそうです。でもそれ以上にみんなに迷惑をかけそうでそれが怖い。

 

「あ、そろそろ始まるよ2人とも。」

 

玲さんがそう言う。

 

「はい。」

 

「頑張ろー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー試合終盤ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の状況は一勝一敗。

つまり、今試合をしている私によって勝敗が決まるということだ。そして、今は相手がマッチポイント。私がもう1点取れればデュースに持っていける状況だ。

 

「このサーブを使うしか……!」

 

「か、香風さんが凄いオーラを!」

 

「な、何が起こるの…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パトリオットサーブ!!」

 

私はフルスイングでサーブを打った………はずだった。

サーブを打った時にラケットの先の部分に当たってしまい、玉がふわっと弧を描いてゆっくりと相手コートに向かう。やばいです!あんなのスマッシュとか打たれたら終わりです!私は負けを決心した。

 

しかし、相手はこんな状況になるとは思わなかったらしく不意をつかれ、玉を返せず私に点数が入り、同点になった。

 

助かったとも言うべきなのだが、私にとっては不利でしかなかった。明らかに相手の方がバトミントンが上手いので負けたのも同然だ。同点にまで上り詰めれたのは相手がミスを連発したおかげだ。ただの運でしかなかった。

 

 

 

もう、終わりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『バトミントンが上手いとか下手だとか関係なく、とにかく一生懸命頑張ればいいと思うよ。』

 

 

 

「……!」

 

 

 

 

私はヒロが言った言葉を思い出す。そうです。下手でもいいから一生懸命頑張らないと余計にチームに迷惑です!

 

私は全力で試合に集中した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー試合後ーー

 

 

 

 

 

 

 

「梨奈さん、玲さんすみませんでした。」

 

私のチームは負けてしまった。

 

「うん、負けちゃったね…。」

 

「……っ」

 

梨奈さんの言葉で胸がとても苦しくなる。

 

「でも、楽しかったね!」

 

「…!」

 

「香風さんすごいよー!あそこまで相手を追い詰めるなんて!負けちゃったけど、とても熱くなれたしとても楽しかった!」

 

「私も楽しかった。」

 

梨奈さんと玲さんがそう言って私を励ましてくれる。

一生懸命頑張ったからでしょうか……?

 

「わ、」

 

「「?」」

 

「私も…楽しかったです!」

 

ちょっとだけ、球技大会は嫌いではなくなりました。

 

 

 

 

 

その後。

 

 

 

 

「チノー!」

 

「マヤさん、メグさん。」

 

「チノちゃん、どうだったー?」

 

「負けちゃいました。」

 

と私は苦笑いで答える。

 

「そっかー。あ!そうだ!チノ!勝利した時のポーズ考えたんだけど一緒にやろうよ!」

 

とマヤさんが提案する。

 

「え、いや、私負けたんですよ?」

 

「大丈夫だよチノちゃん。私達も負けたからー。」

 

「負けたのにやるんですか!?」

 

 

 

せーの、

 

 

 

 

「「「勝利のポーズ!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、楽しかった!」

 

今はヒロとラビットハウスに帰ってるところです。

 

「そうなんだ。ヒロはどうだったの?」

 

「ふっふっふっ、優勝しました。」

 

とヒロはドヤ顔で答える。なにこの可愛い生き物。

 

 

 

 

 

 

「……ヒロ。」

 

「なに?」

 

「……ありがとうね。」

 

「え?何が…?」

 

「ふふっ、なんでもないよ。」

 

 

 

今日は気分がいいです。


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