銀河転生者伝説~君は生き延びることができるか~   作:高任斎

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少々下ネタな表現があります。
男性としては中学レベルの感覚ですが、女性の方は眉をひそめる可能性がありますのでご注意を。

この、迫り来るマンネリ感よ。(笑)



6:俺は……どこで生まれたんだ?

「40秒で支度しろ!」

 

 親分の言葉を聞いて、俺の頭の中で何かが弾けた。

 足がガクガク震えて、立っていられなくなったところを、姐さんが支えてくれた。

 

 ナイスおっぱい。

 

 俺は、微笑みながら気を失った。

 

 ははは、『バ〇ス』と叫びながら目覚めた俺は、人生初の夢精を……じゃなくて、21世紀に三十路一歩手前で死んだ転生者であることを悟った。

 夢精に関しては、俺を拾ってくれた兄貴分曰く、『10歳ぐらいのはず』だけど、さすが俺、心は大人。

 大人になったお祝いにって、姐さんが祝ってくれた。(意味深)

 下品で悪いね、なんせ俺は海賊の一員だから。

 

 ……一応説明すると、基本的にはお金をもらって星系間を移動する商人の宇宙貨物船の護衛をするお仕事だ。

 

 ははは、物騒な世の中だからね。

 帝国と自由同盟との間で150年ばかりドンパチやってるから、社会的マンパワーがどうしようもなく低下しちゃってるからなあ、治安が行き届かないというか、いつの時代も、悪い奴はいるもんだから。(にやり)

 と、自己紹介はこのぐらい……あ、俺はみんなから『ボーイ』って呼ばれてる。

 大人になったけどね。

 大人になっちゃったけどね、やっぱり『ボーイ』って呼ばれてるよ。

 やめて姐さん、俺の股間を指さしながらそう呼ぶのは。

 子供だから、まだ身体は子供だからぁ!(錯乱中)

 

 はてさて、俺は転生者であるだけじゃなく、この世界のことを……これからこの世界がどう動くかを知っているような気がする。

 つーか、銀英伝の世界っていうか、少なくとも無視できないほどのシンクロ率を感じる。

 

 具体的には、もうすぐエル・ファシルの英雄が生まれると思う。

 

 同盟の魔術師、ヤン・ウェンリーが歴史の舞台へと飛び出す瞬間だ。

 しかしながら、俺に何ができるかというと……何も出来そうにない。

 エル・ファシル星系の産業を調べて、株に手を出す……お金もないし。

 そもそも、帝国軍はどうして攻めてきたのかって話だよな。

 確か、エル・ファシルには1000や2000ぐらいの戦力しかなくて、そこに8000ぐらいの帝国軍が攻めてきたんだったか。

 よく覚えてねえが、軍人が民間人捨てて逃げることを考えるってことは、2~3倍じゃすまねえだろ。

 防衛戦力はともかくとして、帝国軍は半個艦隊レベルで同盟領内に侵攻してきたってことだ。

 それ、戦略的というか、戦術的に何の価値があるんだか。

 一時的に占領したところで、それを恒常的支配へと移行するか、相手の動きを誘発してさらなる戦略への道筋とできなければ何の意味もないよなあ。

 ああ、でも同盟がこの付近の防衛のために大規模軍事基地を建設したら、その維持費なんかで財政的に圧迫できるか。

 

 でも案外、馬鹿貴族の奴隷狩りとかが理由だったら笑うんだけどな。

 300万人の民間人を脱出させた、ヤンはマジ神というか、帝国貴族ざまぁだろ。

 まあ、さすがにそんなアホな理由で戦争をふっかけるとは思いたくない……そもそも俺の原作知識そのものがうろ覚えで、戦力数とかあてにならん。

 んー、どちらにせよ、エル・ファシル方面はこれから軍が行き来するようになるだろうから、同盟が奪還するまでは商船とかの動きは鈍くなる。

 さて、親分に提案は出来るんだが、根拠を尋ねられると困るんだよなあ……。

 

 僕10歳だから、知らね。

 

 いのちだいじにというか、ま、それなりに匂わせるぐらいはするけどさ。

 

 

 そんな俺も、いつの間にやら推定16歳。

 色々と大人の階段は登っているのに、なぜかまだ『ボーイ』と呼ばれるよ。

 まあ、お気楽なこと言ってるけどこの6年で死人なんかも結構出てるからね。

 船も破壊されたり、戦場でドサマギかまして新しく手に入れたり。

 帝国はもちろん、同盟でも逃亡兵ってのはいるからなあ……上官ぶち殺して、クーデター的逃亡とか。

 帝国の補給艦5隻を拿捕したときは、大儲けだったなあ、仲間も増えたし。

 いや、任務不達成なら死罪レベルの帝国よ?

 そりゃ、逃げるでしょ。

 ちなみに我らが海賊一味の戦力は、非武装艦も含めて総数20隻。

 艦種は内緒。

 辺境パトロール部隊が4隻を1つの組で動いていることを考えると、なかなかのもんでしょ。

 まあ、少なければ侮られ、多ければ警戒されて、あることないことでっち上げられて軍の出動待ったなしだからな、加減が難しいみたい。

 維持費もかさむしね。

 なので半数は、商売というか、運輸業を兼務してる。

 戦場跡をせっせとゴミ漁りって仕事もある。

 戦艦の破片とか、特殊金属が含まれてていいお値段するんだぜ。

 俺たちは、真面目な海賊です。

 

 しかしなあ。

 これから帝国の金髪さんが無双しはじめるわけで、海賊としては商売上がったりになるんだよなあ。

 原作小説ではその後について何もかかれなかったけど、どう考えても同盟を潰したことによる社会的混乱と経済的混乱と文化的混乱のトリプルコンボで、人類的には暗い時代の到来ってことになるとしか思えないんだよな。

 数年ばかり息を潜めて嵐をやり過ごし、海賊から運輸会社にジョブチェンジってのが最もリスクの少ない手段と言えるんだろうけど。

 

 金が大事なら、海賊なんかやめちまいな!

 

 の、姐さんと親分だしな。

 俺もそれが嫌いじゃなかったりするし、そういう連中じゃなきゃ俺もこうして育ててもらえることなんてなかったはずで。

 正直、俺にとっちゃこの海賊仲間が家族みたいなもんだと思ってる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 チクショウが。

 悪党の末路ってのはこんなもんなのかねえ。

 俺は、奪ったブラスターを連射しながらジョーの兄貴に声をかけた。

 親分は?

 

「腕をやられただけだ、問題ねえ……が」

 

 俺は何も言わず、ブラスター射撃を一旦とめた。

 そしてバカが顔をのぞかせる直前に撃つ。

 なんだか知らないけど、この間の取り方に関しては才能があるらしい。

 格闘は苦手なんだけどな。

 ジョー兄貴が、親分を抱えて退避していく。

 俺はまた、バカをブラスターで撃ち殺し、足元に目をやった。

 海賊も国も、数が増えると権力争いってか。

 やるなとはいわねえが、姐さん殺してどうすんだよ、ボケが!

 アンバーやルビーまで死んじまって……まったく、潤いのない集まりだぜ。

 やべえ、気分は最悪だが、絶好調だわ俺様。

 あいつらがいつ、どんなふうに動いてくるのか全部わかっちまう。

 ブラスターの3連撃……で、3人。

 やばい、やばい、やばい、死亡フラグ立てすぎだろ、今の俺。

 まあ、もうすぐエネルギー切れるけどな。

 逃げないのかって?

 はは、姐さんかばった時に脚やられてんだよ。

 死ぬような傷じゃないが、走れるような傷でもないんだなこれが。

 1人。

 2人。

 いいかげん、ここは退けよお前ら。

 覚えてるだけで、20人は殺ったぞマジで。

 もう1人。

 次は……あれ、退いた……のか?

 いやっほう、ラッキー。

 念のため、姐さんの身体からブラスターのカートリッジをとって交換しておく。

 と、その瞬間、ズシン、と腹に響く振動が俺を襲った。

 

 おい、マジか……。

 

 見えないが、わかる。

 攻撃を受けている。

 混乱は一瞬……俺は笑った。

 どうやら帝国軍人は、綺麗好きらしい。

 もしかしたら、この件も帝国が糸を引いていたのかもな。

 再びの衝撃。

 だめだこりゃ。

 俺は腰を下ろし、血の気の引いた姐さんの顔を見つめた。

 手を伸ばし、その髪を梳く。

 3度目の衝撃、真横から来た。

 俺の手から吹っ飛んでいく姐さんの身体が、最後に見たものだった。




エル・ファシルの戦力云々は、作者もうろ覚えです。

ラストの帝国云々は、主人公の主観です。
実際は、古参連中と、新しく来た連中との間の権力争いですね。
そして運悪く、本拠地襲撃が重なった、と。

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