銀河転生者伝説~君は生き延びることができるか~   作:高任斎

15 / 24
さあ、みんな大好き地球スタートです。(笑)

設定は、私独自の推測によるものです。
地球にだって、未来はあるはず。


15:私は地球で育ちました。

 生まれ変わったと思ったら、人生ナイトメアモードだった。

 

 汚染された大地。

 地下シェルターの生活。

 これが……今の地球。

 

 与えられた状況に、前世の、子供の頃に読んだ漫画を思い出す。

 確か、小学校の学級が、地下の避難シェルターの見学をしている時に、核戦争勃発。

 教師と子供たちが、死んだ大地を舞台に……。

 あれ、ラストはどうなったんだったかしら?

 兄が読んでた少年漫画だったから、今ひとつ記憶が……なんか、人がポロポロ死んでいったはず。

 怖いなあとか、恐ろしいなあとか、子供心に思った記憶はしっかりしてるんだけど。

 

 ふうん、エネルギーに関してはさしあたっての問題は無く、食料もプランクトン製造ラインが……うわあ、なんか前世での技術とは隔絶した何かを感じるんだけど。

 西暦でいうと、いつになるのよ、今。

 

 学校というか、江戸時代の寺子屋みたいなイメージで、教師のようなことをしている老人に色々と尋ねてみる。

 いろいろ話を聞く。

 色々と聞く……いや、待って。

 

 私は、色々と騒動を起こしたが、残された記録というか、歴史データにかじりつくことに成功した。

 

 

 

 うわ、えぐぅ……。

 

 

 

 ああ、うん……人類は宇宙に向けて飛び立ったのね。

 地球という星に縛られてひっそりと死を迎えつつあるわけじゃなくてほっとしたけど。

 ああ……なんというか、これが地球目線から綴られた歴史だってのを差し引いても、おお、もうなんといっていいのか。

 人って生きものは、ここまで……。

 

 ああでも、ただ単純に殺し合う武器が強力になっただけって冷めた見方もできるわね。

 拳で殴り合えば死ぬのは殴り合った2人だけですむけど、核兵器で殴りあったら、被害はハウマッチ?

 

 ちょっと落ち着いたわ。

 とりあえず、この地球って星には、今私がいる地下シェルターみたいな施設が、世界各地に存在してる。

 基本は、かつての都市の位置。

 良かった、この地下シェルターの人口が地球に住む全てってわけじゃない。

 

 ただし、『おそらく』がつく。

 

 気象条件の問題なのか、通信機器の問題なのか、以前は連絡を取り合うことができてたいくつかのシェルターとの連絡が取れなくなって随分経つらしい。

 正直、記録に残ってる20世紀後半の歴史に違和感ありまくりだから、前世の記憶をそのまま当てはめていいのか不安になるのだけど……この地下シェルターは南半球に存在する。

 そして、地下シェルターの多くは北半球にある……はず。

 かつては地球全体をカバーしていたネットワークは、まあズタボロで、限られた範囲にしか通信できない。

 この時代に比べたらオモチャみたいな前世の記憶から推測するに、通信衛星とかが全部ぶっ壊されちゃったとか、そういう感じなのかしら?

 まあ、今の時点では考えるだけ無駄ね。

 さて、通信が取れなくなった近場の地下シェルターが無事なのか、ほかの地下シェルターが無事なのか、北半球の地下シェルターはどうなってるのか。

 ごめん、ひとつだけ言わせて。

 

 どうしてこんなになるまでほっといたの?

 

 ダメだ、人類じゃなくても、この地球じゃなくても、このままじゃ、この20万人に満たないシェルターは緩やかに全滅する。

 みんな目が死んでる。

 いや、わからなくもない。

 生まれた時からこの状態。

 大きくなってもこの状態。

 過去と未来に変化を見いだせない……いや、緩やかに滅びに向かってる。

 水からコトコト煮られて殺されるカエルみたいになってる。

 

 ああ、わかってる。

 私は特別だ。

 青い空を知っている。

 緑の大地を知っている。

 頬を撫でる風を知っている。

 みんなと違って、知識ではなく、地球という星をこの身体で知っている。

 生まれ変わった身体とか言うな!

 

 進まなければいけない。

 進むべき方向を見つけなければいけない。

 みんなにそれを与えられるのは、この私だ。

 私が前世の記憶を持って生まれたのはきっとそのためだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そうよね、子供の言うことなんか聞きゃしない。

 

 は?絶望?

 この程度で絶望?

 絶望というのはね……

 

 美中年親父の耽美陵辱原稿に突っ伏して、涎を垂らして寝ている娘を部屋で発見した時の事を言うのよ!

 

 ……思い出すだけでも目の前が真っ暗になるわ。

 漫画や小説を書いてるのは知ってたし、ボーイズラブとかいうのも聞いてはいたけど……本命を隠すためだったのね、あれ。

 私が下手に、漫画とかそういうのに理解のある親だったから……。

 娘は娘で、叫びながら窓から飛び降りようとするし……それならちゃんと隠しなさい!

 お父さんは、『お前の育て方が悪かったんだ!』とかわめきだすし。

 息子は、それ以来娘をゴミを見るような目で……。

 

 そんな馬鹿馬鹿しい理由で、家庭崩壊一歩手前まで……。

 

 よし、立ち直った。

 やっぱり、生きていくのに最悪の記憶ってのは必要ね。

 

 子供の言うことなんて聞けないというのなら、私は子供じゃなくなろう。

 

 1970年代、日本中で猛威を振るった硬派や不良などの文化は、漫画などのサブカルチャーにおいて、『ギャグ』『ダサい』などとイメージを世間に流布され、廃れていった。

 元々、硬派、不良の文化は、50~60年代の極道モノの映画によって、若者層の間に広がったのよね。

 そもそも、日本における価値観は、『格好良い』、『格好悪い』で判断されることが多い。

 コマーシャルの、『い〇め、カッコ悪い』なんてのはそれを顕著に表してると思う。

 本来、いじめは悪いことであり、格好良いとか格好悪いとかの話じゃないのに……政府主導のコマーシャルによって、暗にそれを認めたわけ。

 私は、80年代に不良を『格好悪い』としたのは、ある思惑によってなされたイメージ戦略だったと思ってる。

 つまり、『え、不良?ダサ』とか『今頃不良って、ないない』みたいに、教育現場を荒らす不良の存在を、『格好良い』から『格好悪い』モノへと貶めることで、劇的に数を減らそうとした。

 少なくとも、『格好良い』からという理由で大暴れするにわか不良がいなくなるだけで、教育現場の負担は大きく減っただろう。

 そして、80年代後半から90年代にかけて一世を風靡したオバ〇リアン。

 みっともないとか、格好悪いとか、ずうずうしいとか、日本の恥文化だとか、世間的なイメージを流布することで、緩やかに掣肘された。(絶滅はしていない)

 

 つまり、オバ〇リアンは、そうやって撃退しなければいけないぐらいの、驚異だと思われていたのよ!

 

 イメージ戦略における、社会的価値感の誘導。

 卒論で高い評価を受けたわ……教授たちに笑われたけどね。

 

 自分の母を見て、ああはなるまいと思ったものだけど。

 あの母の血を継いでいる……魂を継いでいる私は、立派なオバ〇リアンのはず。

 

 自己中心、声がでかい、他人の目を気にしない(無視する)、目が死んだ集団にとって、私は最強。

 前世の母を思い、それを自己に投影する。

 このシェルターの未来を切り開くため、私はオバ〇リアンになる。

 

 仕事を押し付ける。

 返事を聞かないうちに、了承したものとしてその場を立ち去る。

 迷惑そうにされても気にしない。

 ずうずうしく居座る。

 口を出す。

 都合の悪い話は聞かないふりをして、自分の主張を押し付ける。

 

 ああ、前世の母よ、これ、すっごく気持ちいいですね!

 

 ポケットに飴を装備するようになった。

 事あるごとに渡す。

 今思うと、これって心理的テクニックなのね。

 飴という報酬を手渡すことによって、こちらの要求を受け入れさせるきっかけにしたり、何もないのに渡すことで、お返しをしないと落ち着かない状態を作り出したり。

 

 シェルターの生活を改善する。

 曖昧になりつつあったシェルターの秩序を回復する。

 人に役割を持たせ、動きというか、流れというか、何かを動かす。

 

 別に、すべてが順調だったってわけじゃないわ。

 殴られたこともある。

 腕や脚を折られたことだってあるわ。

 身体が大きくなってからは、暴行を受けたことも何度かある。

 子供2人産んで、帝王切開までした私だけど、まあ最初はきつかったわね。

 

 あの、最悪の記憶を思い返して立ち直ったけど。

 ありがとう、わが娘……複雑な気分だけど。

 

 というか、今世の私の両親って、愛情の結果私が生まれた……ってわけでもないのよね。

 未来が見えない状態での、刹那の快楽に身を任せた結果よ。

 まあ、愛情がないとまでは言わないけど。

 随分ましになったとは言え、以前のシェルターは、言ってみれば、猿の惑星。

 

 あら、今私うまいこと言わなかった?

 

 ……調べてみたら、このシェルターの人口って、緩やかに減少してたのね。

 でも、ほかのシェルターと通信できなくなってから、増加傾向。

 ホント、お猿さんの惑星というか、シェルター。

 それに、私に対する暴行とか……けだものだもの、ってやつね。

 

 と、いうわけで。

 私がオバ〇リアンになって、十数年。

 ついに、通信途絶したシェルターに向かって調査隊を派遣する運びになりました。

 世界は広げるもので、閉じちゃダメなのよ。

 広がるってことは、進んでるって自覚が持てる。

 さあ、行くわよ!

 

 

 

 ……おう。

 簡単に言う。

 全滅。

 というか、自滅、かな。

 いろいろ耐えられなくなってヒャッハーしちゃったのね。

 多分、生き残りはいたけど……耐えられなかったってとこか。

 ま、施設が全部死んでるわけじゃないし……無駄足だったってことはないわ。

 

 

 3度目の正直。

 ……よし。

 感情の、爆発!

 通信が途絶えていた状態での、来訪者の存在。

 私もそうだし、たどり着いたシェルターの住民も、歓喜した。

 色々と問題はあるのだろうけど。

 みんなが、心の底から笑う。

 調査隊のみんなが笑う。

 通信機器を調べる。

 3日。

 私たちのシェルターと、ここのシェルターがつながった。

 

 

 世界は広がった。

 

 

 雰囲気が明るい。

 まだだ。

 これは、ようやくの第一歩。

 あはは、北半球まで何マイル?

 ダメね、私も浮かれてる。

 

 でも、とりあえずここのみんなに未来を、希望を与えられたかな?

 

 

 

 

 ああ、地形が変わるほどの戦争ってマジなのね。

 防護服越しでは、風を感じることもできない。

 ふと、空を見上げる。

 

 この星は今、どんな色をしてるのかしら。

 

 

 

 10年、20年とかけて、絶望と希望を繰り返し、私たちの世界は広がってく。

 そしてついに、北半球に属するシェルターとの通信がつながった。

 もちろん、中継が必要だけど。

 

 ああ、ああ、この星で。

 この星で人は生きている。

 確実に、北半球では多くの人が生きている。

 シェルターの中には、地表に出ることなく行き来できるところもあるらしい。

 うらやましい。

 地表は、地獄だ。

 特に、前世の記憶を持つ私にとっては、すべてが心をえぐってくる。

 でもそうか、シェルターを繋ぐ地下通路建設は視野に入れておくべきだわ。

 やることはたくさんある。

 いや、やることが増えていくのは嬉しいこと。

 北半球に向けての大遠征も考えなければ。

 

 そう、やることがある。

 やらなきゃいけないことが多すぎる。

 私の身体、いつまで保つかしら。

 

 地表は地獄。

 それは防護服を通して、なおも地獄。

 すべての調査隊に参加した私は、もう……。

 この世界、コ〇モクリーナーみたいな便利なものはないのかな。

 

 私は、取りつかれたように仕事に打ち込んだ。

 オバ〇リアンを演じるまでもなく、私はもう指導者だ。

 そんなの創作だと思っていた。

 でも、自分の寿命ってわかるのね。

 

 

 血を吐いた。

 よりによってみんなの前で。

 もうごまかせない。

 遠征には参加できない。

 

 閉じていく。

 私の世界が閉じていく。

 

 

 

 

 北半球まで……ううん。

 日本まで、何マイル?

 それとも、日本なんてちっぽけな島国は、なくなっちゃった?

 

 ねえ、地球は青かったのよって……みんなの子供に教えてあげて。

 ああでも、皮肉なものね。

 私はそれを、映像で知ってるだけ。

 ダメだ、それではダメ。

 

 最後の瞬間まで私はみんなに語ろう。

 青い空を。

 緑の大地を。

 広がる海を。

 風の爽やかさを、激しさを、優しさを。

 

 それが私たちの目標であり、進むべき未来。

 

 私の意志は、どこまで続いていくかしら……。

 

 




北半球にて。
地球教:「やあ!」

しかし、オバ〇リアンって……何もかも皆懐かしい。
この主人公に原作知識があったとしても、それに気づけるかどうか微妙でしょうね。

一応、原作の500年前ぐらいを、ふんわりと想定してます。
ルドルフと同時期ぐらいの感じで。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。