「俺、シグナム先生と結婚する!」   作:Vitaかわいきつら

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今回もだめな仕上がりでした。
だっておっぱいのこと全然でてこないし。
本格的におっぱい戦士になるのは魔法にまきこまれてからです。

第1話です。どうぞ。物語上、別に読まなくてもいいかもしれない。


第1話

「な、頼むよ健! 一生のお願い!」

 

「一生のお願いって、もう10回は聞いたぞ……お前何回生まれかわるんだよ……」

 

大学の食堂内で会話する2人の青年。

1人は健。ここ聖祥大学に入学して2週間が経ち、慌ただしかった生活もやや落ちつけ、のんびりとカレーライスを食べていたところだ。

もう1人の頼み事をしている方は、健の10年来の友人である「相模 彰(サガミ アキラ)」。

ちなみに彼の健に対する「一生のお願い」はコレで16回目である。

 

「頼むよー。もう人数揃ったって言っちゃったし引き下がれないんだよー。健しか頼れる奴がいないんだよー」

 

「イヤだ」

 

彰の頼み事というのは、合コン。

俗語ではあるものの、どういうものであるのか知っている人は少なくないだろう。

知らない人は、男女が集まってワイワイと騒ぐものであると考えてくれれば良い。

一般的には友人同士の男性グループが、初対面のこれまた友人同士の女性グループと交流を深め、友人や恋人を作ることを目的としているものが多い。

早い話、恋人作りの場だ。

 

健には心に決めた女性がいる。

合コンに行ったとしても彼にとっては意味がないし、そもそも興味がない。

故に断っているのだが。

 

「そう言うなよ。相手はあのバニングスさんと月村さんだぜ? 男だったら食い付くってもんだろ」

 

バニングスに月村。

彼女達はおそらくこの大学で一番の有名人だ。

10人が10人、健康な男であるならば思わず道端で振り返ってしまうほどの美貌をもつ。

芸能人であってもおかしくない……いや、芸能人の中でもトップクラスに入るであろう。

それほどの容姿でありながら彼氏は(おそらくだが)いたことがないというのだから驚きだ。

そんな彼女達と恋仲になれるかもしれぬチャンスがあるならば、なるほど、食い付かない男は特殊性癖か何かの持ち主だろう。

 

憧れの女性、シグナム以外には興味を持たない健ですら彼女達については知っている。

知ったのは、彰の口からであったが。

 

 

手を合わせ頭を下げる彰に対し、健は問う。

 

「だいたい、秋本はどうしたんだよ。別れたのか?」

 

「え、ちーちゃんのこと? 別れてないよ、なんで?」

 

頭を抱える健。

秋本というのは、「秋本 千里」。彰の恋人で、かれこれ3年は付き合っている。

恋人がいるはずなのに合コンへ行く。その行動は健には理解が出来なかった。

 

大学生というのは、そういうものだろうか?

 

「……とにかく、俺は行かないからな」

 

「えー! お願いだよー! けーん! けーんちゃーん!」

 

手をバタバタさせる彰。

来年には成人する男が駄々を捏ねるかのような姿は、正直見ていて気持ちの良いものではない。

健が彰のこの姿を見るのは、実に16回目。

そのためこうなった彰が折れることはないのも知っている。

ふぅ、と肺の中の空気を全て出し尽くす。

 

「……今回だけだからな」

 

健が彰の一生のお願いとやらを「今回だけ」と了承するのも、実に16回に及ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

「アリサ・バニングスよ」

 

「月村すずかです。よろしくね」

 

「進藤 健です」

 

 

3日後。

駅前の居酒屋に集まった5人の男女。

うち2人は男性で、健と彰。進藤というのは健の姓である。

 

3人の女性はバニングスと月村。

 

そしてもう1人は。

 

「秋本千里です! ちーちゃんって呼んでね!」

 

彰の恋人である秋本千里。

 

集合場所に彰と秋本が鉢合わせた時、健はどう誤魔化そうか考えたものだったが、秋本は今回のことを知っているようだった。

健の心配は杞憂に終わった。

 

 

健は知らないが実は今回の一件、全て健のために企画されている。

 

どこか遠くへ旅立ち音沙汰もないシグナムを追い求める健を心配したのだ。このまま一生を会えない人の為に費やすのではないか、と。

 

大きなお世話になるかと思ったものの、親友にもっと広い世界を見て欲しかった。

 

彰はシグナムに会っている。彰もかつて同じ道場に通っていたから。

その彰が、バニングスと月村、この2人はシグナムに負けず劣らずの容姿を持っていると知り。

2人ならば健の気を引けるのではと考えた。

 

もっとも、この2人にしても健にとっては高嶺の花である。健とどちらか一方が恋人になれるとは彰は微塵も思っていない。

だがそれでいい。重要なのは健がシグナム以外の、他の女性に目を向けること。

一回でも他の女性に惚れたら後は二回、三回と続くと、そう考えた。

 

 

そしてバニングス、月村に頼み込んだ。

幸い、秋本と2人は友人であり紹介しともらって話まで持ち込むのは簡単だった。

単に「合コンして欲しい」と頼んだのが失敗だったのか、交渉は上手くいかなかった。

バニングス達は秋本から事情を聞いているのだが、出来れば本心を話して欲しかったために断っていた。

 

結局、彰の口から本心が語られることはなく、彰が地面に頭を擦りつけたことで2人は折れる形で了承。

 

「合コンしてください!」と土下座する姿は端から見れば滑稽だったものの、バニングス達はこっそり彰に対する評価を上げた。

 

ただし同時に苦手意識も埋め込まれる。

いくらなんでも人の目が多数あるところで土下座は勘弁願いたかった。

 

 

視点は再び店内。

 

居酒屋というものに初めて来たのであろう、バニングス、月村は珍しげにメニューや店内を眺めている。

 

そんな2人を見つめる健。

確かに2人は綺麗だ。今までモデルやアイドルをテレビで見ていても「綺麗だ」なんて思ったことがなかった。シグナム以来、初めての感情。

 

だが、それでも――。

 

 

「どうだ、健。シグナムさんと比べて」

 

横から小さな声で話しかける彰。口の両端がやや釣り上がっているように見える。

 

「……それが目的かよ」

 

「なにがー?」

 

健は彰の目的をだいたい理解する。鳴らない口笛を吹く姿は、YESと言っているようなものだ。

 

「言っただろ。シグナム先生以外に興味なんて湧かないって」

 

そもそも健が惚れたのは容姿ではなく、竹刀を振る姿だ。

強く、美しい剣技。それに惹かれたのだと。

健の中では『そういうことになっている』。

 

だから誰を目の前にしても心を奪われることはない。

きっと、彼女は世界一だったから。そう思う。

 

 

「でも」

 

と、健は続ける。今回の機会も無駄足に終わるだろう。それでも。

 

「……ありがとな。気、遣ってもらって……」

 

友人の心遣いは、有難いと思う。

 

彰は少し目を開き、驚く。

そしてフッと笑い。

 

「『ありがとな』……じゃねぇよ! お前のおかげで俺までホモ疑惑かけられてんだよ! いい加減にしろ!」

 

「え、ちょ」

 

本気で怒鳴られた。

 

健は女性から人気のあるものの未だに恋人がいたことがないというのは周知であり、同性愛者ではないかと疑惑をかけられている。

 

「ちょっと、声が大きいわよ!」

 

「そうだよ、相模くんも進藤くんも落ち着いて、ね?」

 

「そうそう。だいたい彰くんにはこの私という彼女がいるじゃん」

 

今健と彰を止めた女性達、バニングスと月村も健同様に同性愛者疑惑がかけられている。

ある意味、お似合いの5人組であった。

 

 

ちなみに、彰の言葉は照れ隠しであったりする。

 

 

 

 

 

落ち着きを取り戻し、飲み物、食べ物を注文する。

全員、ノンアルコールビールを頼んだ。

未成年者の飲酒、喫煙は法律で禁止されている。

 

 

先ほどの騒動もあってか打ち解けたように見える5人。

大学での話等で盛り上がっているものの、彰の思惑とは違うようだ。

 

ならば、と話題を変える。

剣道の話をして、健が実力者であることなど。

健がその道で相当な実力者であることはバニングス達も知っている。

甘いルックスに武道の有段者。マスメディアが取り上げたことも幾度もあり、海外の日本好きな人向けの番組にインタビューされていることも。

入学する前の段階でそういう人物が同じ大学に通うと知っていた。

別段興味はもたなかったが。

 

 

 

「それで健の強さの秘密ってのがあるんですよ」

 

健が大会で優勝したとか、そういうことにはバニングス達は微塵も興味は抱かなかったが、次の言葉が少し引っ掛かる。

 

「こいつ、とある女性に『剣道で勝ったら結婚して』なんて約束を取り付けましてね。それをまだ追ってるからここまできたんです。どうです、面白い奴でしょ?」

バニングス、月村はお互いの顔を見合っている。

彰はその様子を見て「引かれてしまったか?」と内心焦る。健にとっては今日知り合った女性に嫌われようと問題のないことだ。

 

バニングス達が戸惑っているのは、似たような話をどこかで聞いたことがあるからだ。

彼女達の親友、「八神 はやて」から。

 

「あの……『とある女性』って……」

 

おずおずと月村が口を開く。その後の言葉は、健の心を大きく揺さ振った。

 

 

 

「『シグナム』って、名前じゃない?」

 

 

 

 

 

以降健、バニングス、月村は友人となる。

主に話題は健の憧れの女性と、その周りの人物。

 

このことが健の運命を変える。

わずか1ヶ月にも満たない未来のこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は日本から遠く離れた、ミッドチルダ。

 

日本から確かに遠い場所ではあるが、あまり適切な表現ではない。

 

「地球から遠く離れた」が良いであろう。

 

 

 

 

――この世界には『魔法』が存在する。

 

地球に住んでいる以上、魔法と聞けば空想の中、あるいは歴史上の事件の「魔女狩り」でのことであるとしか思わず、現実に存在するとは考えないだろう。

一部思春期な学生を除いて。

 

だがこの世には確かに魔法は存在する。

 

事実、地球に住む小さな少女が魔法の事件に巻き込まれて運命を変えている。それも、1人だけではない。

 

1人は「高町 なのは」。

 

ごく普通の喫茶店(とは言えないかもしれないが)の娘として生まれ育った少女。

本来であればその喫茶店を継ぐはずであった。

 

彼女が小学3年の時、後に「ジュエルシード事件」あるいは「プレシア・テスタロッサ事件」と呼ばれるものに巻き込まれ、そこで一生涯の友情を得た。

 

 

事件の詳細は割愛するが、結果として19歳になった今、魔法世界で生きることを選び、懸命に過ごしている。

 

 

 

そしてもう1人は。

 

 

 

「……うん。そんでな、またすずかちゃん家のお庭使わせてもらいたいんやけど……ほんま? ありがとう」

 

部屋に響く1人の女性の声。

一見、特に驚くべき箇所はない部屋だが、注目すべきは女性の目の前にある、モニター。通常、モニターというものは電気で動くものだが、電線は見当たらない。

それどころか、宙に浮いている。

 

これは魔法世界の製作物であるが、どちらかと言えば超科学に近いものだ。

魔法、科学どちらにも特化した世界。それがミッドチルダである。

 

モニターには地球に住む女性、健が友人関係を築いたばかりの、月村すずかが映っている。

 

女性と月村すずかは親友である。

 

女性の名は、八神はやて。

 

かつて天涯孤独の身でありながら、魔法世界の遺産により家族を得た、地球出身の少女。

 

 

 

 

少し会話をしたあと、月村は八神にとあるお願いをする。

 

八神の家族のうちの1人に、会わせたい人がいる、と。

 

会わせたい人というのは、健のことだ。

 

今回、八神が地球へ帰るのは仕事のためだ。もちろん、魔法関連。

そのため八神達の事情を知らない現地人との接触は避けたいところだが……。

 

「……うん、わかった。あんまり長い時間はあかんけど……うん、うん、わかった」

 

ある考えのために、了承する。

それは彼女の家族の為だけではなく、彼女の率いる部隊全体の為に。

 

 

通信を終えると同時に、戸を叩く音。

八神が部屋に入るよう促すと、現れた1人の女性。

 

ストロベリーブロンドの長い髪を後頭部で一括りにした、冗談みたいに綺麗な人。

 

 

八神 シグナム。

 

健の憧れの女性、その人である。

 

 

「主はやて。出航準備完了しました」

 

 

何故彼女が魔法世界にいるのだろうか。

そして八神はやてを「主」と呼ぶ、その理由とは?

 

 

「ん、ほんなら、行こか」

 

 

 

答えは単純。彼女はもとより、こちらの世界出身であり。

八神はやての家族であり。

そして彼女自身が、魔法世界の遺産であるが為に。




彰は別次元ではサッカーをしています。たぶん。

健がおっぱい星人でないのは、彼の思い込みのため。きっかけさえあればすぐに戻ります。……すみません。ご都合主義です。
だって危険度の少ないロストロギアの影響でミッドに連れてくのって私の頭ではこれしか思いつかなかったんです。しかもそれでも批判のありそうな展開。
でもいいよね! ネタタグつけたし!


シグナムってストロベリーブロンドじゃなくね?

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