ソードアート・オンライン 絶速の剣士   作:白琳

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ようやくSAO内(ベータテストであるが)に入ります。


第3話 ベータテスター

和美と共に応募したソードアート・オンラインというゲームのベータテスト。俺も和美もナーヴギアを既に持っている為───俺は譲り受けた物だが───、あとは結果を待つだけだ。

そして今日────夏休みに入り、8月になった今日その結果が届けられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『真一、どうだった?』

「ああ、無事に当選していた。お前は?」

『私も当選していたよ!凄いよね、2人して当選するなんて!』

「そうだな。それで何時から始める?」

『もちろん今からでしょ!電話を切ったら、すぐに始めるよ!』

「分かった」

 

俺は通話を切り、自室のベットに横になる。普段ならば家で触れる事すらないナーヴギア。既にソードアート・オンラインのベータテスト版のソフトは入れてある。あとはいつものようにナーヴギアを装着すればいいだけの話だ。

 

「さて、始めるとするか」

 

俺はナーヴギアを装着し、顎下で固定アームをロックする。仮想空間に行っている間、脳から体に出される命令は全て遮断されると共に回収される。つまり、脳が『走る』という命令をしても、現実世界の体は動かずに仮想空間のアバターだけを動かす事となるのだ。

 

「《リンク・スタート》」

 

そして俺は、開始コマンドである一言を口にした。

 

 

 

 

 

 

視界が暗闇に包まれる。しかし中央から広がる虹色のリングをくぐれば、その先には──────

 

「ここが……ソードアート・オンラインの世界か」

 

俺が降り立った場所は西洋の街と似た場所であった。周囲を見渡せば、既に他のベータテストプレイヤー────ベータテスターが何人かいるのが見える。今の自分達の状況を楽しんでいる姿を見て、俺も自分の姿に視線を移した。

 

「……ふむ」

 

俺は自分が作ったアバターを付近の窓に写して見る。と言っても、それ程凝ったつもりはない。大体こんな感じでいいだろう、という思いで作成したんだから当然だ。

ゲームである以上、現実世界でのプライバシーなどで本名は名乗れない。その為に存在するキャラクターネームは深く考えず、真一から一を取り、シンという名前にした。

 

「しかし……遅いな」

 

すぐに始めようと言った本人が来ないというのはどういう事か。もしかしたらアバターの作成で時間をかけているのかもしれないな。あいつは俺とは違い、このゲームを楽しみにしていたのだから。

 

「アインクラッド……世界に名前があるとはな」

 

アインクラッド────このソードアート・オンラインの舞台となる世界の名前である。全100層からなる石と鉄で出来た城────だというのに、数多の都市や小規模な街に村、森や湖なども存在するという。次の階層に行くには、各層に1つしかない階段を見つける必要があるみたいだが、その全てが危険なモンスターがうろつく迷宮区画にあるらしい。また、階段を見つけ出しても強力な守護モンスターを倒さないといけないとか。

ちなみにモンスターとの戦闘以外にも、鍛冶や裁縫といった製造から釣りや料理なども出来るという。

説明書に書いてあったのをまとめると、こんな感じか。

 

「ん?」

 

再びベータテスターが現れたようだ。そのベータテスターは黒髪をツインテールにし、背丈は俺よりも高めな女性。そして何よりも目を引くであろう胸は和美の中途半端な膨らみとは違って大きい。

 

「…………ふぁぁあ」

 

だが、目を引かれているのは他のベータテスターであって俺はあくびをしてしまう程、興味がない。別に胸が大きかろうと小さかろうと俺はどちらでもいいからな。

 

「その反応……も、もしかして真一……?」

「当たりだ」

 

どこか不安げな女性から尋ねられた俺は、その女性が誰なのか分かっているように答える。いや、実際は本当に分かっていた。この女性が和美が作成したアバターなんだという事に。

どうして分かったのかと聞かれると、仕草がどことなく似ていたからである。

 

「だが、ここではシンって呼べ。お前の名前は何だ?」

「えっと……キリトって名前にしたんだけど、どうかな?」

「いいんじゃないか?」

 

キリトって……まるで男の名前みたいだな。まぁ、自分が名付けたんだから別に否定などはしない。同意もしないが。

 

「そ、そっか……で、これからどうする?」

「どうすると言われてもな……俺はお前と比べたらまだ全然初心者レベルだ。こっちでは先輩のお前に任せる。いいか?」

「う、うん。それじゃあ、まず武器屋を探そっか。私達、まだ武器を持ってないし」

 

和美────いや、キリトにそう言われて俺は気付いた。自分の姿を改めて見る。簡易的な革の鎧を着込んでいるが武器らしき物はどこにも見当たらなかった。

 

「本当だ」

「もしかして気付いていなかったの?」

「てっきり初めからあると思っていたからな」

 

さて、その武器屋とやらはどこにあるんだろうか?と思いながらキリトと同じように見渡していると、裏道から出てきていたベータテスターと他のベータテスターが何やら話しているのが聞こえてきた。

 

「なぁ、知ってるか?この先に安売りの武器屋があるんだぜ?」

「なにっ、本当か!?ありがとな!」

 

なるほどな。あの出てきたベータテスター、先程までこの近くにいた奴で間違いないだろう。そしてキリトを待っている間、奴は安売りの武器屋を見つけて武器を購入したに違いない。現に、先程まで装備していなかった何らかの武器が視界に入ったしな。

 

「キリト、ちょっと来い」

「えっ、どうしたの?」

 

俺はキリトを連れて裏道へと入った。先程のベータテスターは──────いた。おそらくあの店が先程言っていた安売りの武器屋なんだろう。

 

「シン、急にどうしたの?」

「さっき、この裏道に安売りの武器屋があるという話が聞こえたんだ」

 

武器屋の前まで来ると、確かに内装はそれっぽい事が分かる。中に入ってみると、客は先に入っていったベータテスターしかいなかった。

 

「ん?おお、あんたらもここが安売りだと知って来たのか?」

「ああ」

「確かにここの武器は表にある武器屋より安い!だが安くても大事な武器だからな、慎重に選べよ?」

 

そう言うと、ベータテスターは出ていった。とりあいずここが安売りの武器屋であるという事が決まったな。

 

「よし、キリト。ここで武器を買おう」

「えっ?う、うん……今の人も安いって言ってたしね!」

 

さて、となると何を買うとするか……主な武器は片手剣、両手剣、細剣、曲刀、刀、槍などか。現実世界で常に木刀を振るい、使い慣れている俺にとっては刀が一番合っているだろう。

この店で買える刀は……小太刀か石研包丁くらいか。攻撃力は石研包丁が高いし、そっちにしよう。スタート初期から持っている金────コルでも充分に足りる。

 

「シンは刀を買うの?」

「ああ、木刀が使い慣れてるからな。キリトは?」

「私は片手剣だよ。このスモールソードってのを買おうかなって」

 

共に武器を買い、装備する。ついでに刀のソードスキルはどんなのがあるのかと思い、ステータスを確認する。ソードスキルとは、ファンタジー系のゲームならば必ずあるであろうにも関わらず、排除された魔法の要素の代わりとなる、無限に近い数が設定されている必殺技の事である。

 

「……ん?」

「どうしたの?」

「ああ、いや……どうやらこのままだと刀のソードスキルは使えないらしい」

 

刀のソードスキルを使うには、曲刀のスキルを上げなければならなようだ。スキルを使えるようには熟練度を上げなければならない。

 

「なら、曲刀も買ってく?」

「まだコルも残っているし、そうするか」

 

俺は追加で曲刀のラフシミターも購入し、道具屋で回復ポーションも購入した俺達はモンスターと戦う為にフィールドへと出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ!」

「……ふっ!」

 

フィールドへと出た俺達はさっそくモンスターと戦う事にした。俺は刀で、キリトは片手剣で。相手のモンスターの名前はフレンジーボア────これが正式名だが、初めて見た時は名前が分からず、青イノシシと呼んだ。

刀のソードスキルを使える為に曲刀を使った方がいいのだが、このゲーム内の刀が馴染むのかどうか確認しておきたいのだ。

 

「ビギイイイイッ!!」

「……ふむ、この程度か」

 

突進してくるフレンジーボアのHPバーが少ない事にあと一撃で倒せると確信し、俺は一刀両断した。するとフレンジーボアはガラスのように砕け散り、刀を腰に下げた鞘へと戻すと目の前に獲得した経験値が浮かび上がった。

フレンジーボアを3匹程倒して分かった事は、刀は攻撃力が高い上に素早く相手に攻撃できるという事だ。

HPバーを確認するが、まだそれ程減ってはいない。これならばまだ回復ポーションはいらないだろう。

 

「キリト、お前はどう────」

「やあっ!」

 

背後で戦っているキリトに視線を向けると、フレンジーボアへと突進していた。するとスモールソードから放たれるペールブルーの閃光と共に突きを繰り出し────次の瞬間にはフレンジーボアが砕け散っていた。

 

「や……やった!成功した!」

「キリト、今のは?」

「ソードスキルだよ!レイジスパイクって名前で片手剣の基本突進ソードスキルなんだけど……ついに成功したんだよ!」

 

やった!やった!と喜び跳ね回るキリトに俺は拍手する。なるほど、先程から妙に突進が多いなと思っていたが、それを成功させる為だったのか。

 

「ねぇ!夕方までここで戦闘をして、どっちが多くレベルアップしてるか勝負しよっ!」

「……仕方ない、分かった。勝負してやろう」

「よし、決まりっ!絶対に負けないからね!」

 

俺にそう宣言し、キリトは新たに現れたフレンジーボアに突っ込んでいった。

 

「さて……それじゃあ、俺も頑張るとするか」

 

次は曲刀を試してみるか、と思いつつ俺もフレンジーボアに向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果だけを言えば、適当にサボりつつ戦っていた俺がキリトに勝てるはずもなく、勝負には圧倒的な差をつけられて敗北した。別に悔しくも何ともないが、その事にキリトから「真面目にやってよ!」と怒られたのは余談である。




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