RozenMaiden If 〜白薔薇は儚く〜 作:ЯeI-Rozen
果たして、黒き薔薇は何を齎すのか。
運命よりも残酷な現実が今突き刺さる。
失敗した。失敗したのだ。またもや失敗したのだ。
またなの…。私は膝を地に付き一入の絶望感を味わう。
何度この感覚を味わった事だろう。
「お嬢、またもや失敗してしまったのですね?」
そうよ。悪い?
「いえいえ、そもそも、この決められた運命に抗う事こそ無謀その物です故。悪く等御座いません。ただ、わたしに出来る手助けこの程度程しか出来ぬのです。」
…そう。
「また、やり直しますか?」
当たり前じゃない。
「準備は出来ています。何時もの『扉』から始めて下さいませ。…御武運を願ってますよ。」
そう云うテンプレは飽きたわ。二度と言わないで頂戴。
「ははは、相も変わらず手厳しい事です。」
そう云い、私は再びやり直す為に扉を開ける。
大好きな『彼』を助けるが為だけに。
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…き………い……ウ………なさ………シュウ………きな…………………シュウ。
目覚めた。そして真紅の顔が視界にに現れる。
一瞬、ドキッとするが眠さがやはり勝った。
「やっと起きたのねシュウ。さ、モーニングティーを用意して頂戴。」
「今何時なんだ……?」
「朝の4時よ。」
「……寝ていいですか?」
「駄目よ。」
「ええ…。まだ寝たいんですが。」
「駄目よ。」
「寝ますね。」
「駄目よ。」
「……。」
「(べち)」
「……。」
「(ぎゅむ)」
「いててててて!?」
「はい、起きたわね。じゃあモーニングティーの用意をして頂戴。」
「……解りましたよ。」
「理解が良くて宜しい。」
そんなこんなで(無理矢理起こされて)目を覚ました僕は朝食の準備を始めている。料理の品が出来上がるに連れて面々が鞄から姿を現す。真紅の次に起きて来たのは雪華綺晶だった。
「お早う御座います、シュウ様。」
「嗚呼、お早う。雪華綺晶。」
雪華綺晶の頬を優しく撫でてやる。さぞ嬉しそうな表情で喜んでくれている様だ。
続いて起きて来たのは翠星石、蒼星石、金糸雀の3人だった。翠星石は僕が料理をしている行動を見遣り、
「むむ、気が利くですねぇ。人間。」
相変わらずの偉そうな口調で述べる。
「匿われてる人の言い分じゃないぞ、翠星石。」
「そうだよ翠星石。失礼じゃないか。礼儀ぐらいちゃんとしないとさ。」
「蒼星石が言うなら改めるですぅ。」
「あ、思い出したかしら!」
「金糸雀、何をですぅ?」
「翠星石のケツバットかしら!」
「それは忘れてて良かった奴ですぅ!?」
「金糸雀、其れは後日僕が責任を持って執行させて貰うさ。」
「蒼星石までも敵ですぅ!?」
そんな下らない話を聞き、自然と笑みが零れる。相も変わらない普通の日常の風景。こんな穏やかな生活を何時までも続けたい。そう思うのは僕だけではない筈だ。
そして最後に水銀燈、雛苺が起きて来た。
雛苺がまたもや僕に抱き着いてきた。
「おにいちゃん〜♡」
「う、ちょ、雛苺…」
僕が雛苺の扱いに困っていると真紅が制し、
「こら、雛苺。シュウは今料理をしているから危ないわ、此方で遊びましょう?」
然し雛苺は言う事を聞かず、
「ヒナはおにいちゃんと一緒にいたいの!」
と駄々を捏ねる。子供その物だなぁ、と僕は脂汗を滲ませる。何せ僕は子供の扱いが本当に苦手なのだ。困った。どうすれば良いだろうか。困り果てて居ると、
「い、いたい~っ!」
雪華綺晶が雛苺の頬をぶつ。
「シュウ様は私の物ですわ貴方風情がが勝手に触れられるとでも思いですか?其の様な思い上がりを考える等甚だしい程傲慢ですわね今直ぐにでも絞め殺したくも御座いますが今は痛みだけで赦して差し上げますが二度目は有りませんわ良いですわね?」
「…ひっ」
恐怖で引き攣った表情を浮かべる雛苺。うっすらと涙を浮かべて震えている。
それを呆れる様に水銀燈が、
「……雪華綺晶、流石に言い過ぎじゃないかしら。まァ、雛苺にも非が無い訳じゃないから深くは咎める事は出来ないんだけどォ。」
今にも雛苺が泣きそうな状況に水銀燈は庇うでも無く達観した言葉を雛苺に掛ける。……一瞬雪華綺晶が怖く感じたのだが、其れはスルーして置こう。
そんなこんなで料理が人数分(7名は人形なのでサイズも彼女達に合わせている料理)を拵えた。其れを見て非を唱えるかも知れないと思っていた人物とは裏腹の存在だった。因みに僕は真紅かと思っていた。
本当に非を唱えたのは、水銀燈だった。
「ねェ、ヤク○トは無いのかしらァ?」
他愛ない咎めだった。僕は噴き出しそうだったが何とか堪え、冷静に返した。
「ヤク○トは無いけど、マ○ーなら有るよ。」
「なら其れを頂戴。」
「了解、……好きなんだな。」
「ええ。好きよ。唯一じゃないかしら。好きな物なんて。」
「そっか。」
水銀燈が初めて笑顔を魅せる。普段クールな水銀燈がこう、笑顔を魅せると惹かれる物が無い訳では無い。なんと言うか、美しい、や可愛い等では無く。表現しにくいが、そんな笑顔を見ていたいと思えてしまうのだ。と、そんな事を考えていると水銀燈がニヤニヤと僕を見詰め返すのと同時に雪華綺晶からの痛い目線を感じる。そそくさと水銀燈のご所望である飲み物を出す。
「末妹は貴方に御執心なのだから、他の姉妹に目移りしてたらやきもちを妬かれるわよォ?」
水銀燈はクスクスと笑い乍僕と雪華綺晶をチラチラと見やる。さぞ愉快そうだ。
「兎も角、さっさと食事にしましょう。時間は限られているのだから。」
「そうねェ、時間は有限なのだしねェ。」
「僕も同感だよ。成るべく対策は早めに練って置いた方が良いからね。」
食べる前に少し騒がしくなる。然し直ぐに落ち着きを取り戻す。
そしてそそくさと僕達は食事を済ませる。僕は味の感想を試しに聞いてみたのだ。
水銀燈の感想は、
「中々だったわよォ?此からは之以上の物が食べられると良いとかは思ったわねェ。」
との事。普通に嬉しかった。
金糸雀の感想は、
「とても美味しかったのかしら!もう少し量はあっても良かったのかしら!美味しい料理ありがとうなのかしら!」
元気良く、満面の笑みを浮かべ乍褒めてくれた。
和んでしまう。うん。可愛い。
翠星石の感想は、
「ふん、馬鹿な人間にしてはまぁまぁですぅ。褒めてやらんでもないですぅ。感謝するですよぉ!」
うん、分かってた。こう言われるのは。
其の感想を聞いた蒼星石が申し訳無さそうに頭を下げてくる。其処迄畏まらなくとも良いのに。
そんな蒼星石の感想は
「男性なのに随分と達者な腕だと思うよ。モテそうな気もしないでもないかな?」
揶揄い口調では有るが褒めてくれたのだ。
やはり嬉しい。うん。
そして最大のツンデレこと真紅の感想は、
「…とても美味しかったわ。何にメインを持ってくるかは些か気にはなったけれどまさかのホットサンドとはね。紅茶との相性も抜群だったわ。主張し、且つ紅茶を引き立てる後味の良さ。素晴らしいわ。私、感動してしまったわ。前のマスターとは大違いよ。ええ。」
なんと最高の褒め言葉を貰った。圧倒的な安堵と歓びに身体が震えたのだ。解りやすく云えば、メチャクチャ嬉しい。
雛苺の感想は、
「とぉっても美味しかったの!シュウお兄ちゃんの料理もお兄ちゃんも大好きっ!」
うん、尊い。なんと言う妹力。可愛い。愛でたい。
そして雪華綺晶。
「とても美味しかったですわ。2度目とは云え、感動してしまいましたわ。やはりシュウ様は料理を作るのは御上手でしたのね。矢張り私の目は間違いではありませんでしたわ…。ええ、とてもとても感服致しました。勿論シュウ様の事はだいす(以下略)」
との事。以下略の後はあまり必要なさそうだったので省略したのだ。あまり倩々と同じ話題の長文を続けていては流石に飽きるであろう。そう思い省略したのだ。
ともあれ好評で良かった。
食器をさっさと片付け、自身の部屋に赴き気分良く僕が私服に着替えていると、
「お邪魔するわよォ?」
この声は水銀燈だ。唐突な客人に僕は
「唐突にどうしたんだ、水銀燈。」
「ねェ、何処かに出掛けるのかしらァ?」
「嗚呼、そうだな。念の為に食料品の買い出しでも。」
「────駄目よ。少し時間をずらしなさい。」
僕の部屋の扉を開けた真紅が会話を遮る。
怪訝な表情で僕を見つめる。とても心配してくれている様な、そんな表情だ。
「なんでだ?さっさと食料品とか色々買出しに行きたいんだけどさ。」
「駄目よ。【薔薇乙女の禁書綴】が示した未来が有るのよ。貴方は今から昼の13時迄家から出ないで頂戴。理由は…何れ解るわ。」
「真紅がそう言う並ばしょうがないわねェ。それと、出掛けるので有れば私の欲しい物も買ってくれないかしらァ?」
「あ、嗚呼、構わないけど…」
「決まりね。では今は朝の9時半。昼まで待っていなさい。ニュースを見れば理由は分かるから。」
「あ、えっと…解った。」
13時迄暇な間は割と自堕落に過ごした。
ゲームで遊んだり、読書をしたり。
そんなこんなでもう13時になっていた。
ゲームを止め、ニュースを見れば速報が流れていた。ニュースを見ていればそれが近場だと言うのが解った。強盗殺人事件らしい。
…!?
僕は驚いたのだ。そう。驚かざるを得ないのだ。何せ食料品等々を買いに行こうとしたスーパーでその強盗殺人事件が起きていたのだ。まさか。まさか。真紅は【薔薇乙女の禁書綴】から見た未来から之を予想して…!?
「…やはり起きたわね。」
達観する様にニュースを眺める真紅。
まるで必然事項の事柄を連ね眺める管理者の風体で。
…驚いている僕が馬鹿馬鹿しく思える程落ち着き払っていたのだ。
「…出掛けて良いわよ。」
「は……あ、う、うん。えっと、聞きたい事が増えたのだが…」
「そう。でも時間がないのではないのかしら?」
「…確かに。」
他の近場のスーパーは片道30分掛かる場所で、買う物がなければ致命傷だ。僕は真紅の咎めを受け入れ、急いで出掛ける準備をしていると水銀燈が肩に乗って来て、
「ねェ、急ぐのは解るけどォ…私も連れて行くって話は忘れられると困るのだけれどォ。」
「あ、嗚呼…済まない。」
「シュウ様、私も連れては貰えぬでしょうか?」
「雪華綺晶も?」
「私は構わないわよォ。」
「じゃあ、一緒に行こうか。」
「…有難う御座います。」
そんな会話をし、僕は二人を自分の車に案内する。アパートとは言え、割と給料がいい僕は広い部屋に住んでいるし、車もスバルのインプレッサスポーツを買える程だ。ちょいと株を手を出して儲けた結果でもあるのだけれど。
そんな事を考えている暇は無いと思い水銀燈、雪華綺晶を車に乗せる。二人は感嘆の声を漏らしていたが僕は急く様に車を走らせる。だがやはり事件の起きた道を通らねばならない。事件が発生したのだ。案の定、車の通りが規制されていた。だが案外と早く其処を通る事が出来た。そして何時もより10分遅れで目的地のスーパーに着く。二人は大きめのリュックサックに入り、僕に声が聞こえる様に調整までしてくれた。
然し、気になるのは水銀燈の欲しい物。
聞くべきか否かを迷っていれば食料品を買い終えてしまった。ほぼスナック菓子や保存食だったのだか。僕は意を決して水銀燈に問うた。
「所で水銀燈、欲しい物って何なの?」
「嗚呼…良いわよ、また今度で。」
「欲しいなら今買えばいいじゃないか。」
「今度が良いのよ。」
「……??????」
「……運命は巡るのだから。」
ボソリと呟く言葉の意味が解らない僕。
雪華綺晶も困惑を示している様だ。雪華綺晶も疑問を水銀燈にぶつけているがはぐらしているのだ。
そして車に荷物を積み終え、いざ帰ろうとした時に水銀燈が急に車の発進を阻害した。
「…今日は、此処に泊まれないかしら?」
「なんで泊まる必要が有るんだ?」
「…………泊まらないと殺すと言ったら?」
「黒薔薇の御姉様。流石に其れは許容しかねますわ。」
「何よ雪華綺晶。例えばの話よ。んで、答えは?」
「…真紅たちを置き去りには出来ない。」
「……………………そう。」
悲しそうに俯く水銀燈。まるで何かを止められなくて後悔している表情だ。僕自身にやりきれない気持ちが渦まく。然し真紅達に何かあっては遅いのだ。助けられるのであれば僕は助けたい。現状誰が黒幕なのか。其れすらも解らぬ状況下に置いて情報線が絶たれるのは致命的だと思ったからだ。然しなんだ?水銀燈の言葉の意味が良くわからないのだ。そう。色々な意味で。
「…ごめんなさい、私はまた失敗してしまうのね…ごめんなさい……」
俯き顔を隠し乍小さく呟くその声は震えていた。そう。隠している手の淵には涙が浮んでいる。きっと誰かを護りたいのだろう。…にしては少々辻褄が合わないのは確かなのだが誰かの為に動いている事は容易に想像出来た。そんな湿っぽい雰囲気が車内を包んだと思えば家に着いた。その時には水銀燈は泣き止んだ様ではあったが目尻が赤くなったいる。泣きじゃくった後故にだろう。
僕は荷物を持って自分の部屋に駆け上がり鍵を開ける。この時僕は途端に異常さを覚えた。
あまりにも静かなのだ。そう。異常な静寂が部屋を支配していた。玄関に荷物を下ろし様々な部屋を探し回っても何も証拠が掴めない。然し一つだけ確かな事があった。『ローゼンメイデンの待機組が誰一人居ない』事であった。その事に考えを巡らすも何も考えが浮かばない。然し水銀燈、雪華綺晶は鏡に対して身構える。
その行動の真意が何を示しているか僕には考えが至らなかったが恐らく戦闘になる事は間違いないのであろうというのは容易に考えが付く。
そして鏡が、水面の様に歪む。其処から顕れた存在。其れが目に入った時に驚愕に思考が埋まる。
───────それは。紛れも無い、『真紅』だったのだから。
どうも、好きな艦娘は龍驤とGraf Zeppelin
ЯeI-Rozenです。
おまたせ。第6話なんだぜ。物事が遂に動き出すで有ろうお話なんだぜ。とまあここまでゆったりまったり感の有る物語を綴ってきた訳ですがこれから激動の物語を見せることでしょう。ええ。そうしますからね。
今回の悪役って誰?みたいになりますよね?まだ伏せて置きましょう。其れがイイヨネ!的なアレですとも。
ちなみに考察をして下さっていますがとても嬉しいですね。はい。アンチでなければお気軽に感想を書いて下さるととても嬉しいです。それとギリギリセーフで2週間の期限を守れましたとも。やったぜ。
それとご報告を一つ。オリジナルの物語をこのお話と共に同時進行で書き記して行きたいと思っております。どんな物語かは出てからのお楽しみという事で。
そして最近アズールレーン始めましたが良くわからないです。特にやり方。資金がどんどん飛んでいって建造出来ないですはい。
駄弁りはこの辺にしましょうかね。
では、違う物語の後書き、又は第7話にてお会い致しましょう。