RozenMaiden If 〜白薔薇は儚く〜 作:ЯeI-Rozen
其れは黒い羽。不幸の手紙の様な物に近いかもしれない。
然し、此処で起こる事象は果たして不幸か、幸せか…
黒い羽。それに基づくは不幸の具現であろうか。
そんな物を見つければとても厄介な物を感じる。
然もそれが自分の部屋であれば尚更である。
ふと、僕のそんな感情を察してか翠星石と蒼星石、雪華綺晶が一斉にこちらを見やる。そうして今迄豊かだった表情を一瞬にして固くする。そしてぼそりと
「黒い羽…まさか……」
「あら…あら……」
「ちっ、案外早く此処に来る見たいですねぇ。厄介極まりない、ですぅ。」
一同がそんな言葉を述べていると。
頬に手を感じる。小さな手だ。とても小さな手。人の物とは思えぬ程だ。解った。『ローゼンメイデン』だ。思考を回していると、
「くふふ…随分と喜劇を演じる木偶人形となってるわねぇ?其の侭喜劇を演じて居れば良いのにぃ。」
そんな言葉を掛けられ、翠星石、蒼星石が渋面を創る。雪華綺晶は物怖じしてはいないのだが。そんな反応を見てさぞ愉快そうにクスクスと嗤い声を上げる。そうして、
「私は『ローゼンメイデン』第1ドール、『水銀燈』よ。」
銀髪。特徴的なゴシックドレス。頭に拵えたヘッドドレスは銀髪と相まって唆る。紅く光る瞳はまるで紅玉の様。そして背中に生える黒き翼は優雅さを際立たせる。そんな少女は僕を見て軽い自己紹介をした後に、
「さぁ、私と契約をなさい。人間。貴方の力が必要なのよ、アイツを倒すためにはね?」
と雪華綺晶を指差し乍そう続ける。僕が即答で質問に回答しようとすると遮る様に
「それは駄目ですぅ!翠星石と契約するんですぅ!そうして蒼星石とも契約して貰うんですぅ!」
「あ、因みに翠星石だけでも僕だけでも構わないよ。因みに後者を選んでくれると僕的には嬉しいかな。」
「そ、蒼星石は姉不孝ですぅ…」
「あッははは!愉快じゃない!翠星石!愛しの妹に決別を迫られるなんてェ!最高の喜劇じゃないのよォ!」
そんな会話が起こる。
(いや、なんでこんなにも話が盛り上がるんだろ。僕の回答は最早決められてるのか?これ?でも会話の内容的には選択権が有りそうな感じだけどな…)そんな風に思い乍、ガヤガヤとしてきた事の成り行きを眺めていると雪華綺晶がプルプルと震えている。其れを見た水銀燈は、
「あらあらぁ、一人だけ除け者にされてお怒りかしらねぇ?末妹、いえ、雪華綺晶?」
と煽り立てる。其れを聞いて声を荒らげるかと思えば存外な笑顔を見せる。まるで先程の言葉を聞いて冷静になったかの様に。そして端正で、優雅な仕草で僕に近付き、気が付けば僕の頬を優しく触れていた。
「此の御方は私の物…。例えお姉様方が乞い縋ろうとも譲る訳には行きませんわ…。」
「雪華綺晶…」
僕は溜息の様に自然と彼女を、雪華綺晶の名を口で紡いでいた。雪華綺晶は優雅な笑みを浮かべている。そんな状況に僕は思わずにやけてしまった。其の行動に一番早く反応したのはなんと水銀燈だった。
「はァ!?アンタ、殺す宣言喰らったのにニヤけるってどう云う事よ!何、アンタはそういう変態なワケェ!?」
「あ、いや…そう言う訳じゃ無いんだけど……」
「じゃあどう云う意味よォ!?」
「その…雪華綺晶が可愛くて……つい。」
「ふあっ!?」
雪華綺晶が赤面を見せ乍、僕の頬から手を離す。とても乙女らしい反応だ。またもやにやけてしまう。雪華綺晶の行動全てに愛しさを感じてしまう時点で僕は重症だろう。其の行動に一番嫌気を感じて居るのは水銀燈だった。
「アンタ、馬鹿ねぇ!!末妹はねぇ!人間なんか自分の贄としか考えて無いのよ!そんなヤツなんかが好きになるって馬鹿じゃないの!?」
声を荒らげ、僕に訴える。まるで、何かを引き留める様な仕草にも取れた。然し僕の答えは変わらない。
「僕はどの娘とも契約はするつもりは無い。無論、雪華綺晶とも。たとえ誰でも。それは揺るがない…はず。」
「最後の言葉はなんなのだろうか。其処を、詳しく。」
「そうですぅ!詳しく、ですぅ!」
「えっと……」
刺々しく翠星石と蒼星石が質問して来たせいかたじろいでしまう。(やはり、現状誰に付くとかというよりも雪華綺晶と平和に暮らしたいだけだからな…。だからこそ契約なんで物騒な物、したくないだけなんだけど…。)頭の中で意見を整理し、言葉に纏めようとしていれば、
「まァ、今は決めないって事でしょ?それだけ解れば充分よ。深堀りの詮索は野暮ってヤツだしィ?」
水銀燈が二人を窘める。(…ん?なんで水銀燈が二人を窘めるんだ?最初に聞いたのは水銀燈の筈だ。続きが気になる筈…いや、単に後々聞けば良いと云う魂胆かな?)僕はそんな事を思考する。そうして水銀燈は続ける様にこう述べる。
「末妹、アンタがコイツを苗床の糧にしない、そして私達『ローゼンメイデン』の姉妹のボディを奪わないと約束するなら、此処の戦いは私達3人は身を引いてあげるけれど、どうするのかしらァ?」
「こらぁ!勝手に私達も含めるな、ですぅ!」
勝手な水銀燈の提案に、翠星石が異論の声を上げる。
「蒼星石も、何か言ってやるですぅ!」
「……。」
「そ、蒼星石…?」
姉とは違い、聡明な蒼星石は顎に手を当て、何かを考えている。…此の一節を翠星石に話したら憤慨しそうな気はするが。そうして疑問の表情を浮かべたまま、
「…水銀燈、君から和平の交渉とは珍しい。頭でも打ったのかい?悪い物でも真紅に食べさせられた?」
「……ふん、偶にはイイじゃない。今この状況じゃ『アリスゲーム』なんて出来ない訳だしィ?私の目的は『ローザミスティカ』なんだからァ。『アリスゲーム』を続けられない今の現状をどうにかするのが先なのよ。単に其れだけよぉ。」
例外?どう云う事だ?水銀燈の言葉の意味が解らない。僕は水銀燈にその事を問おうとすれば、
「珍しい事もある物だね。成程、節は解った。確かに君らしい答えだ。」
そう蒼星石は首肯してみせる。
どうやら姉の翠星石は僕と同じく頭にはてなを浮かべている。僕より状況は解っている筈なのに。
「さァ、末妹。答えを聞こうかしらァ!」
少々、表情を苦悶に染める。然し答えは決まっていたかの様に雪華綺晶は、
「……約束致しますわ。ただ、シュウ様に触れられる許可は頂きたく思いますわ…。」
と、端的に述べた。其れを聞いてか水銀燈は、愉快そうに、
「ええ、それ位なら問題ないわァ。でも触れる時は私達の監視付きだと言う事を忘れないで頂戴?解ったわねぇ?」
「了承致しました…。」
淡々と了承する雪華綺晶。状況的に提案された要求を呑むしかないと思ったのだろうか。水銀燈は相当の戦闘力があるのか?然し多勢に無勢。例え姉妹の中でもあまり強く無いと言っても業が有れば別問題なのだ。
そんな思考をしていると笑いを創り乍、
「あらぁ、貴方がこの要求を呑むとは思わなかったわよぉ。末妹。断られるかと思ったんだけどぉ。ま、いいわぁ。最終的な論議は姉妹全員が集まってからって事にするわぁ。それなら異論無いでしょ、翠星石。」
「むむむ…それなら文句ねぇですぅ。水銀燈のクセに物事を仕切っていて腹立たしいですけどぉ!」
「姉不孝の妹を持つと大変だからねぇ?大変な姉に変わって仕切ってるワケなのよぉ?」
「うぐっ…」
そんな会話をして水銀燈は再び愉快そうにケラケラ笑い声を上げる。満面の笑顔で。僕はそんな状況を見てい乍、雪華綺晶の髪を撫でていた。雪華綺晶は恥ずかしそうに顔を伏せる。(可愛い…)そんな思考が過ぎる。そんな楽しい時間を過ごせるとは思わなかった。
何時までも、こんな時間を過ごせれば。僕は理想論で且つ平凡な考えをしていた。穏やかな時間。其れは僕にとって一番の幸せなのだから。
どうも、好きなFGOキャラは加藤段蔵ちゃん。
ЯeI-Rozenです。さてさて、早々に第4話を仕上げました。物事が動き始めると思いきやまだまだ動きませんね。まあまあ、結末とそれに至る過程の物語はこんな物にしようかみたいな事はもう決めているので書くだけなのです。そう。書くだけ。やる気下さい。
にしてもアレですね。此処でのきらきーめっちゃチョロインみたく見えますね。それもまた尊いって奴なのですがね?蒼星石とサンドしてたべちゃいたい。(おい)
残り出ていない姉妹は二人ですね。
…ん?あと一人?雛苺?知らない子ですねぇ…(おい)
まあまあ、雛苺は出てるじゃないですか。ほら。…え?『そんな出し方するな?』大丈夫ですよ。雛苺も大切なキーパーソンなので後々働いて貰いますとも。
実はTwitterで友人に創作小説とかの部類は書かないのかと言われましたが、僕はそう言う物を書くのがあまり好きでは無いのであります。それとか非公式チートでとか、異世界転生とか。FGOのスカサハ師匠が別世界行ってしまったら公式チートだから無双しちゃう的なアレなのでつまらないのではと。…師匠の珍道中なら書きたくは有りますけどね?
さてさて、今回はこの位で切り上げと致します。
では、第5話の後書きにてお会い致しましょう。