RozenMaiden If 〜白薔薇は儚く〜   作:ЯeI-Rozen

4 / 9
雪華綺晶の本性。
それは人を道具としか思わぬ事。

―――然しそんな彼女に異変が訪れる。

まるで、仕組まれた様に訪れる『痛み』。

其の痛みは一体何なのか。彼女が理解出来る刻を刻む歯車は静かに、正確に、無垢に廻り始める。












第3話 〜烈しさと切なさの双対〜

突然だった。

そう。文字通り唐突に。

普通の生活を送る人間には至極突飛な話なのだろうが僕は何となく起こるのでは、と察した様な冷めた態度でその事象を眺める。恰(あたか)も荒唐無稽な出来事かの様に。そうしなければ頭が追い付かないのだ。

 

何せ、二体の人形が僕の家の窓を突き破って侵入して来たのだから。

 

「やっと見つけたですよぅ……」

「お疲れ様、翠星石。」

「撫でて欲しいですよぅ、蒼星石ぃ〜……!」

「全くもう……」

 

そんな行(くだ)りをする二体の人形。

恐らく、雪華綺晶と同じく『ローゼンメイデン』の人形なのだろうと容易に察しが付く。そんな思考の最中唐突に甘えていた長髪の……『スイセイセキ』であろう人形はこう言い放つ。

 

「人間!末妹を捕まえたままにするですよぉ!絶対に逃がすな!ですよぉ!『ヒナイチゴ』のボディを取り返すんですぅ!」

 

驚いた。

それはそれは驚いた。

まさか雪華綺晶のボディは他の姉妹から奪ったボディなのか、と。目が点になったのだから。そうして続ける様に『ソウセイセキ』はこう続ける。

 

「僕からも宜しく頼むよ。で無ければ『シンク』の依頼は、借りは返せないからね。それに『スイギントウ』が来る前に何とかしなければならないからね。」

 

『真紅』?『水銀燈』?

恐らくまた『ローゼンメイデン』なのだろうと。

然し相変わらず突飛な話ばかりだ。理解するのに一々冷静な思考判断を入れなければ状況に呑み込まれる。そんな僕は思考をしながら雪華綺晶をちらと眺めた。

彼女は震えていた。恐れ?畏れ?慴れ?将又過ちを犯してどうしようもない事象に対しての嫌悪感?……いや、違う。此の表情はそんな物じゃない。そんな単純な物では無いのだ。彼女は此の状況に対してなにも思っていないのだ。単に『感情論』ではの話なのだが。

そんな事を察していると今迄伏せていた顔を上げる。

その顔を横目で覗いた時にはおぞましささえ覚えた。何故なら、追い詰められている事に対して、『笑って、嗤って、嘲笑って』居るのだから。クスクスと、そんなお淑やかな可愛らしい声で。

そんな状況を見てもたじろぐ事無く双対性を持つ二体の人形は疎ましそうな表情を浮かべ乍雪華綺晶に対峙する。

そんな静寂を打ち破る様に口を開いたのは『スイセイセキ』だった。

 

「相変わらず、気持ち悪い笑顔ですねぇ!末妹!そんな表情しか出来ないのですかぁ?まるで人形の皮を被った悪魔ですねぇ!」

 

まるで雪華綺晶を煽る様に述べる。

それに続く様に『ソウセイセキ』も、

 

「…不本意乍、僕も翠星石に同意の意見だよ。だからこそ、其の悪魔の様な所業は断じて許せないね。此処で、君を止める。」

 

そう言い、金色に照り光る園芸用であろう鋏を構える『ソウセイセキ』。それに倣う様に『スイセイセキ』も金色の如雨露を手にして構える。そんな状況を一通り眺めて居ると気付かぬ内に僕の身体には白い荊が絡み付いていた。僕が驚いた声を上げると『スイセイセキ』はそれを眺めて、

 

「あ〜っ!何やってるですかぁ!おマヌケ人間っ!早く振り解くですよぉ!死にたいですかぁ!」

 

非常に厄介な悪態を付かれた。そう思い乍、僕は荊を振り解こうとする。然しそんな力さえ込められない。何故だ?こんな物、普通に振り解ける筈なのに……。

混乱した頭を巡らせて居ると『ソウセイセキ』が『スイセイセキ』にこう諭し始めた。

 

「起きてしまった事を咎めても仕方無いんだ、僕達が助けてあげようじゃないか。彼は末妹の力も、此の状況にも良くは解らないだろうし。」

 

確かに、『ソウセイセキ』の言う通りだと自身乍も首肯してしまう。首は縦に振っていないが。

そんな事を考えて居ると二人は何かに頷く。

その刹那、『ソウセイセキ』が前に出て、僕を捕らえていた雪華綺晶の荊を切断していく。そんな『ソウセイセキ』を捕えまいと雪華綺晶は荊を使い、『ソウセイセキ』を捕らえに掛かる。それをさせまいと『スイセイセキ』は如雨露から水弾を飛ばして荊を近付かせない。そんな状況を眺めて居ると早々に白い荊の枷は解ける。

全身の力が元に戻った様な感覚だ。また囚われまいと早々に立ち上がり、戦いの場から退こうとする。然し部屋の扉は白い荊が生え蔓延り出られない様にされていた。無論、窓も。完璧に密室状態で逃げられる場所すらない状況だ。一先ずは書斎に逃げ込んだ。其処に隠れてやり過ごそうという魂胆だ。丁度隠れるに良い押し入れの中に這入り、静寂を噛み締めて、ほっと溜息を付く。……違和感。背中辺りだろうか。小さな人型の感覚だ。Tシャツを脱ぎ、確認してみる。暗闇故、良く分からない。目を慣らそうとしていれば唐突に、

 

「ふふふ…連れ去るならお姫様抱っこくらいして欲しかったかな?でも、ちょっと嬉しくはあるね。」

 

そんな声が聞こえた。

……恐らく『ソウセイセキ』だろう。

随分と肝の据わった人形だと、そう感じた。

はっと思い出し英国紳士の様な仕草で、

 

「僕は『ローゼンメイデン』第4ドール。名を『蒼星石』と言う。因みに一緒に来たのは第3ドールの『翠星石』と言うんだ。此れから宜しく御願いするよ。」

 

丁寧に自己紹介をしてくれた。

そんな行動に一入の安心をしている中、「さて、と」と一息付いた蒼星石はゆっくり立ち上がり、押し入れから出ていってしまった。然し外から、

 

「君は此処で隠れているんだ。末妹が此処から消える迄出てきては駄目だよ。絶対だからね?」

 

そんな諭しを受けた。現に雪華綺晶に命を狙われている僕がみすみす出ていく訳には行くまい。何せ何も理解しても居ないのに、雪華綺晶の元に往くのは自殺行為だと簡単に思考できる。然し考えて見ればかなり癪に障る物だ。此処は僕の家で部屋なのだ。自由を奪われる事はかなり癪に障る。だが、そんな子供の様な文句は言える状況でないのは歴然なのだ。

 

「見つけましたわ…。」

 

途端に雪華綺晶の声が聞こえて僕は驚き跳ねてしまい、押し入れから飛び出す。勢い良く飛び出した拍子に尻餅を付いてしまい、尻を摩る。光が差し込んだ押し入れの布団から白い荊が現れ蠢いていて。その中の一つから白薔薇が実り現れたかと想えば雪華綺晶の姿が現れる。そして少々哀しそうに、

 

「あらあら…哀しいですわ…私を優しく匿って下さった御方の反応とは思えませんわ…」

 

そう言い、右頬に手を当てる。

本来の主人公ならきっと此処で怯えるべきなのだろうが僕は此の状況に置かれて尚も、

 

「綺麗だ…雪華綺晶……」

 

と半ば自然に口走ってしまった。

それを聞いてか雪華綺晶は表情が見えぬ様に俯き、頬を紅くし、少々の時間を押し黙った。おや?これは?と思った途端、勢い良く扉が開く。

 

「させませんですよぉ!末妹っ!」

「今度は逃さないからね、末妹!」

 

決めゼリフらしき言葉を放つが雪華綺晶の状況を見て、

 

「「……あっ。」」

 

そんな呆気に取られた声が漏れたかと思えば、

 

「お、お邪魔しました、ですぅ…」

「済まない、野暮だったね…」

 

そう言い、ゆっくり扉を閉める。

…其処から数秒も立たない内に再び扉が勢い良く開く。

 

「お、思わず身を引いてしまった、ですぅ!何でこんな事になってるですかぁ!人間っ!白状するですぅ!」

「…うん、それは僕も気になるかな。」

「えっと、普通に『綺麗だ』と…」

「みなまで言わないで下さいまし……」

 

再び雪華綺晶は顔を伏せる。頬を紅潮させながら。

非常に気まずい空気。どれだけ過ごしただろうか。

そして気を取り直して再び戦闘に入る所を見ると『ローゼンメイデン』は律儀と言うか乙女というか……そんな事を感心しつつ見ていると手元に何かを感じた。

 

ふと手を持ち上げてみると黒い羽根。

 

嫌な予感しかしない物だった。

まるで絶望を告げられ、抗えぬ人間の様なそんな感覚に陥ったのだから。




どうも、好きなガンダムはX0とウイングガンダムゼロEW、ЯeI-Rozenでございます。
さてさて、第3話を読んでくださり有難う御座います。
いやぁ、3話目からもう大興奮しながら書かせて頂きました。何、きらきーと蒼星石のダブルサンド。なにそれ最高。もう死んでもいい。(おい)
とまあ冗談は置いといて。
今回はちょっとしたネタを入れてみました。
これでローゼンメイデンと言う作品に親しみやすさを持って頂ければ幸いで御座います。
きらきーは純真です故、こんな表情してくれるんじゃないかと。そんな妄想を織り込んだ話となっております。

さてさて、次回のお話で誰が出てくるか、そんな事はもうお解りの方はいらっしゃるかと思いですがネタバレはお止め頂きますよう御願いします。

ローゼンメイデンØ、読んでて死にそうになりました。
蒼星石、尊い。きらきーも好きだけど同じくらい蒼星石尊い。此れの出筆終わったら自己満足で蒼星石とひたすらイチャイチャする小説書こうかな(適当)。

とまあこの辺で切り上げましょう。
では、第4話にてお会い致しましょう。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。