RozenMaiden If 〜白薔薇は儚く〜   作:ЯeI-Rozen

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そんなこんなで手紙の内容はよく分からない内容。

『まきますか』


『まきませんか』


乱雑に『まきますか』を選んだ、
彼の運命の歯車は静かに動き出す。








第1話 〜非日常への扉〜

謎の手紙を乱雑に処理し、僕は近場のゲーセンに立ち寄る。

様々なゲームをやり、暇な時間を潰す。ハッキリ言って格ゲーは負け続き。それもそうだ。

僕は『彼女』に目を奪われて以降、何も彼もが手に付かない程、心を囚われていた。

 

「『彼女』が欲しい。」

 

ただ只管の願望が僕の思考を過ぎる。

言葉に出る程の願望だった。

それが邪魔をしてゲーム所では無かったのだ。

少々早めにアーケードゲームを切り上げ、昨日行ったアンティークドールの店に向かった。半ば本能の赴くままに歩を進めた様な物だった。その店に行く道中も、『彼女』の事が片時も頭から離れない。

そうして昨日『彼女』を見た店に辿り着いた。

足早に『彼女』の置かれたショーケースに着き、一心に見詰める。それだけで、欲望が満たされる様な感覚にさえ陥る程だ。そして閉店の時間まで、僕はへばりつく様にそのショーケースから離れなかった。否、正しくは離れられない程、『彼女』の虜になっていたのだ。

チリンチリン、と心地良い鈴の音が閉店の時間を促す。

然し僕は離れたくなかった。

そんな僕を見つけてか、店主が話し掛けてきた。

 

「お客さん、その人形がお気に召しましたか?」

「あ、えっと……はい。」

「…実はその人形、倉庫で見つけましてね。私はこんな人形、取り寄せた記憶が無くて……」

「そ、そうなんですか…」

「値段も何も分からない人形で、とても困っていまして…。」

 

店主が困った仕草で頭を軽く搔く。

そして少し思考を巡らせたした後に、店主はこう言ってきた。

 

「良ければ…この人形を引き取っては下さいませんか。勿論、御不満や不都合が御座いませんでしたらのお話しですが……」

「勿論です!昨日、此処に来てからと言う物の、『彼女』の事ばかり考えて居ましたよ……!」

 

そう言い、僕は子供の様に喜んだ。

玩具を買い与えられる子供の様に。

 

「有難う御座います…どうか、その人形は大切になさって下さい……」

 

そう言い、微笑みながら釘を刺すように告げる店主。

少しの時間を待っていると店主はショーケースの鍵を持って来てそそくさと鍵を開ける。そうして重厚な鞄と共に『彼女』を鞄に優しく仕舞う。その手付きは手馴れた職人の様だった。

然し僕はそんな動きよりも彼女を引き取れた事への喜びが圧倒的に勝っていた。

店主から『彼女』の入った鞄を受け取り、鼻高々で家路に就く。何時もなら途中の公園で珈琲を飲むが、あまりの喜びのせいか、そんな事も忘れていた。

 

そして自分の部屋に帰って来た。

一人暮らしにはピッタリの1LDKの部屋。リビングに拵えて有る簡素なテーブルの上で鞄を開ける。一目惚れした『彼女』が目の前に居る事への喜びがじわりじわりと滲み出て来る。笑顔が隠しきれないのだ。

そうして彼女の身体を眺めていると、金色の凸状螺子を見つけた。恐らく、螺子巻きを使えばなんらかの動作をするのだろうと察した。

螺子巻きを咬ませ、ゆっくりと螺子を巻く。カチカチと音が鳴る度に『彼女』の身体はカクカクと動く。そして最後にカチリ、と音が響いた。

 

────その瞬間、一際彼女の身体が跳ねた後に、僕は目の前に起きた事が信じられなくなった。

 

 

なんと、人形がひとりでに『立っている』のだ。

余りにも驚き過ぎて声すら出なかった。

『彼女』は辺りを見回した後、僕のほうを向いて

 

「貴方様が、私を目覚めさせてくれた方ですか…?」

「あ…え…?」

 

思考が追いつかなかった。どういう事?何故人形が喋れるのか?何故ひとりでに立つ事が出来るのか?と、頭の中をグルグルと様々な思考が回る。

 

「私はローゼンメイデン…第七ドール。名を【雪華綺晶】(きらきしょう)と申します……」

 

御丁寧に自己紹介までされた。理解出来ない目の前の事象にますます思考がグルグルと回る。

 

「貴方様の御名前を聞いても宜しかったでしょうか…?」

「あ…えっと……僕の名前…?」

「はい…左様に御座います…。」

「えっと、僕の名前は…『四方木シュウ』(よもぎ しゅう)って言うんだ。」

 

何を普通に答えているんだ、と半ば軽く絶望しながら頭を掻き毟る。此から何か起こるのでは無いのか、そんな不安と得体の知れぬ何かに押しつぶされそうになる僕を尻目に彼女はこう続ける。

 

「では、シュウ様……」

「───私の契約者(マスター)となって下さいませ。」

「ゴメン、その、『マスター』って何…?」

「マスターとは簡潔に申しますと私達、『ローゼンメイデン』の『力の媒介たる存在』。」

「『私達』、って事は他にも姉妹がいる訳か…。」

「左様に御座います…。そして貴方様には、私のマスターになって頂きたいのです…。」

「は、はぁ…」

 

戸惑った。焦った。困った。そして悩んだ。

そりゃあそうだろう。今、僕は現実離れした存在から、あまつさえ僕は普通の会社勤めの1社畜なのだ、そんな僕に突飛な出来事が起こるで有ろう事の兆しの目の前に居るというのだ。

僕は小さく溜息を付く。今までが平凡そのものの日常だったのだ、様々な考えで一杯になる。然し、深く考えてもしょうがない。物事の最優先は『契約するか、否か』

なのだ。

 

「御決断を聞いても宜しかったでしょうか…?」

 

雪華綺晶は可愛らしく儚い声音で僕に答えを聞いて来た。

僕はゆっくりとその口を開き、雪華綺晶にこう告げた。

 

「僕は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────僕は、君のマスターにはならない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そう、ですか。」

 

雪華綺晶は顔を俯き、哀しげな表情を見せる。俯いているせいか、その表情は一層の翳りを帯びて感じる。

そんな風に思っていると雪華綺晶は震えた声で、恐る恐るこう言葉を掛けて来た。

 

「理由を聞いても、宜しかったでしょうか…?」

「理由…か。」

 

僕は少し言い留まる。果たして言って良い物なのか 然し、僕は僕の思いを止められなかった。

 

「…僕は君に目を奪われた。一目惚れだ。けれど僕は君のマスターにはなれない。僕は君を道具扱いしたくは無いし、そんな関係は嫌なんだ。だから……」

 

言葉に詰まった。自分の心情が言葉にできなかった。どうしようもない感情が流れ出て止まらない。自分の表情が次第に険しくなるのが解る。きっと僕の表情は皺くちゃなのだろうと思考が過ぎるがそんな事よりも、そんな事よりも。雪華綺晶の哀しい表情に突き動かされる様に僕の手がゆっくりと彼女に引き込まれて行く。そうして彼女の頬を触れた時に、はっ、と我に返る。恐る恐る彼女の見せる表情を眺めた時の彼女の表情は、鮮烈に焼き付いた。

頬を紅く灯らせ、儚い瞳は潤みを帯び、泪を流していた。

雪華綺晶はそんな表情をしながら、

 

「…私、そんな事、ッ…言われたの、ッ、ッ、初めてッ…」

 

言葉に詰まりながら言葉を紡ぐ雪華綺晶を、僕は気付けば懐で抱き締めていた。優しく、穏やかに。左手で背中を擦り、右手で頭を撫でてやりながら。

 

そんな時間がいくばくも過ぎた後に、『ローゼンメイデン』と言う人形の全てを雪華綺晶は分かりやすく話してくれた。そうして雪華綺晶はこう続けた。

 

「…私達は、惹かれ合う運命。私とて、戦に身を落とす事になるでしょう。」

 

寂しそうな、申し訳無さそうにそう呟く。そんな彼女の頭を僕はくしゃくしゃと撫でる。

 

「君は、君の望む時に僕を使ってくれ。君の事情は解った。けれど、『今』はマスターにはなるつもりは無い。君たちの『アリスゲーム』と言う物がどんな物か分からない時点ではそうとしか言えないんだ。でも君がもし、危険な立場だと解れば、僕は君に惜しみ無く力を貸そう。───────約束する。」

 

そう、彼女に告げた。その時の彼女の表情は僕の決意を揺るがぬ物とするには充分すぎる物だった。

 

 

それは、泣きじゃくった紅い目尻に残り泪を浮かべ、目一杯に微笑む、雪華綺晶の笑顔。

 

僕の掛け替えの無い宝物なんだと。

 

 

 

 




好きな人形は雪華綺晶と蒼星石。
身体を奪った奪われたの関係の二人が好きな、
ЯeI-Rozenで御座います。

さてさて、
一話目にしてもうエピローグで良いんじゃね?
的な雰囲気を醸し出してますが残念、此から続きます。

そうですね、まず僕が何故この物語を書いているか。
皆様に雪華綺晶の可愛さ、愛らしさを知って欲しいからなのです。アニメのみをご覧の方は雪華綺晶、と云えば悪い娘と言うイメージが強いそうで。然し知って欲しい。雪華綺晶は悪い娘じゃないんだよ、って。単に一途な一人の至高の少女の形なんだよ、という事をですね。

簡単に言えば雪華綺晶大好きな作者が雪華綺晶をプレゼンする様な小説ですね、はい。

此から物語が白熱していきます。読んで下さってる御方は誠に有難う御座います。趣味丸出しの僕のこの小説を読んでくれるの、めっちゃ嬉しいです。

さて、今回はこの辺で。
2話の後書きにてまたお会いしましょう。

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