終始お姉ちゃんのフルスロットル回です。
―あいつは…あいつは!
『約束約束!僕はまほと一緒にいるよ!』
―あいつは、私を裏切った!!
『まほ。黒森峰、無事に合格したぞ。一緒にやっていけるな』
『ああ、お前がいれば百人力。みほが来れば千人力ってところだな』
『ははっ、なんだそれ』
―信じていた!信じていたのに!お前は、私を置いて!!お前は!!
―壊してやる。お前がいた場所も、何もかも。
「整備を2日繰り上げて終わらせろだと!?無茶苦茶にもほどがあるぞ!!」
「黙れ。それがお前達整備班の役目だろ。言われたとおりにやれ」
「ふざけんな!?俺たちはお前の都合のいい手足じゃないんだぞ!!まおがいなくなったからって俺たちに当たるな!」
「なんだと。誰が……!!」
裏切ったのはアイツだ!!
そうだ。悪いのは私じゃない。アイツが悪いんだ。アイツが私を裏切ったからだ!!
だからお母様も、切り捨てたんだ。
「師範代。西住流のためとはいえ身内をも切る精神は、正直尊敬に値にしますよ。今後も西住流を含め、日本戦車道を牽引していくのはあなたを置いて他にはいないのですから」
「え、ええ……」
何を躊躇う必要があるんだ。まおを勘当したのは、お母様。あなたでしょう?あいつは西住流の恥晒しだと。裏切りものだと断罪したのは。
「それは…」
「あいつは西住流の恥晒しです。いなくなって清々しています」
躊躇う必要はない。あいつは裏切りものだ。
「流石は西住師範代、しほ殿のご令嬢だ。実の兄であっても、断罪する精神はまさに鋼の心ですな」
「やはり、西住流の教えを想定より早くしたのは間違いなかったな。これで西住流は盤石だ」
そうだ。私はお母様の時よりも早くに西住流を教えを受け、ここまでやってきたのだ。
「当然です。私は西住流の後継者。私の精神は西住流そのものです」
私は幼少期からそれを教えられてきた。
いつも見てくれていたお父様に縋るような自分は捨てた。
捨てたんだ。
「黒森峰は強者のみを必要とする、ついていけない弱者は邪魔なだけだ。エリカ、中等部から共にやってきたからと言って、お前でもそれは変わらない」
「は、はい」
情など西住流には必要ない。例えそれがかつて共に戦った
"だから、アイツは私にとっては何でもない"
『必要以上に攻撃を加えるのは王者の戦い方ではないわ。あれではただの無法者の戦い方よ。西住流とは…』
だからお母様も黙って見ていてください。
私が西住流の戦車道を知らしめる。
そのためには、ついてこれない者は切り捨てる。
「みほ。私達で黒森峰を勝利に導き、西住流戦車道が王者だと言うのを知らしめるんだ」
「……うん」
だが妹のみほは違う。みほはずっと私と一緒に西住流戦車道を極めてきた。
中等部のような、チームによる勝利などではなく、強さによる勝利こそが西住流なんだ。
だから、そんな不安な顔をするなみほ。お前ならわかるはずだ。
今のお前に必要なのは裏切った"アイツ"じゃない。
この私のはずだ。
だからこそ、西住流を"理解"しているはずのみほを再び副隊長に据えた。
お前は西住流の娘で、私の妹だ。
そして戦車道を共にやってきた。
勝利こそが西住流の全てだ。
向かってくる敵は全て叩き潰す。例え、一台のみであろうが容赦はしない。
黒森峰女学園の10連覇は私が成し遂げなければならない。
上役たちのように、西住流という強さを示しさえすれば、きっと誰かが私を"西住まほ"を認めてくれる。
そうでなければ私は…私は…
『隊長!副隊…が飛…出して……私達ど…動けばいいんですか!?』
悲鳴にも近い、声が無線機から聞こえてくる。その言葉を聞いた瞬間、私の頭が焦りと恐怖で塗り替えられていく。
「っ…動くなみほ!フラッグ車を離れるな!!みほ!!」
マイクに向かって叫ぶも、聞こえてくるのは雑音と豪雨による轟音だけ。
『戦車―川…落ち……』
無線からの声が雑音が酷く何が落ちたというのかよく聞こえない。ただわかるのは、みほがフラッグ車を放棄したということだ。
『プラウダの……車が…!!た…長!」
やめろやめろ。
「みほ!!勝手に動くな!私の指示を聞け!!」
なぜ、勝手に動くんだ。
なぜフラッグ車を離れるんだ。
行くなみほ!
なんで、なんでお前まで行くんだ!
頼む行くな!!
勝たなければいけないんだ!勝たなければ!!
どうしてわかってくれないんだみほ!!
どうしてだ!"アイツ"は私を、私を理解してくれたのに!!
頼む―――
『く、黒森峰女学園!フラッグ車!行動不能!』
頼む――
私を……一人にしないでくれ……
頼む…助けて……まお
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