いずれ投稿しようと考えていましたが、書き溜めはあまりありません。かなり気まぐれな投稿ペースになると思いますが、よければお楽しみいただければ幸いです。
東京行きの飛行機がまもなく羽田空港に着陸しようとする。
着陸までもう少しとのとこでトラブルは起きた。
「お客様、もうすぐ着陸となりますのでシートベルトを締めてください」
「…………」
キャビンアテンダントが老人に言うが、老人は反応を見せない。
実はこの老人、裏社会の大物である。目立たないようにあからさまなボディーガードは着けず、一般人に偽装させた部下を何人も自分の周りに配置している。怪しい動きをする者がいればさりげなく邪魔をし、いざとなれば持ち込んだ拳銃も使う。そのガード体制は大統領のボディーガードをも上回る安全性。それほど敵が多い人物でもある。このキャビンアテンダントも実は彼の息がかかっている。
例えこちらの手の者だとしても警戒は怠らない。怪しい動きが無いか目を光らせる。例え仲間であろうと警戒を緩めない。簡単にスパイや裏切り者が入れるほど軟な裏組織ではない。裏切ったりすれば酷い罰が待っている。それでも裏切りやスパイがないとは限らないため、全員が全員を監視しあう。
キャビンアテンダントの女性が老人に触れ、揺さぶってみる。
「お客様……?」
ボトリ
すると、老人の頭部が床に落ちた。
「キャ―――――――――――――!!」
キャビンアテンダントよりも先に近くの席の一般人女性が悲鳴を上げた。その声を聞いてなんだなんだと周りの乗客も現場を見る。遠くの席の人はシートベルトをしてる状態なので見えないが、近くの席の人は不幸にもその生首をみてしまった。
「く、く、く、首が、首が切断されてる!」
「一体どうして!?」
「おい! 一体どうなってるんだ!?」
着陸直前だと言うのに機内はパニック状態。プロのキャビンアテンダントたちはこの事態を収拾するため、一度乗客を落ち着かせとりあえず着陸できるようにした。
着陸した空港に警察が駆けつける。そして、被害者および乗客の手荷物検査を再度行った。が、誰一人として凶器になりそうなものは所持しておらず、乗客はひとまず解放された。
その事件が起きた飛行機の乗客のうちの一人、中学生くらいの男性は空港を出ると、乗客の出待ちをしているタクシーを一台つかまえ乗り込んだ。
◆◇◆◇◆◇
俺の始まりはごくごく普通の一般家庭だった。
ただ一つ違うのは、生まれた時から不思議な能力を持っていたこと。この能力は可能な限り俺に危険が迫ると自動で守ってくれる。頭で動きを命令して手動でも動かすことができる。むしろそっちがメイン。
とても便利なものを神様は授けてくださったようだと思った。だが、この能力は俺に幸福ばかりをくれるものではない。
さっき言った通り、この能力は生まれつき。能力は俺の一部と言っても過言ではないため、俺であれば赤ん坊でも扱える。つまり、赤ん坊の俺が危険や嫌と感じるものすべてに反応してしまうのだ。
例えば、怖い顔の人に会った時、親にダメと言われた時、同じ赤ん坊と玩具の取り合いをする時などちょっとのストレスで動いてしまう。
果てには俺の命令に従うものだから、ほしいと思ったものを無理やりとってきてしまう。小さな子供はそういう加減を知らないから。
赤ん坊にとって嫌と思うような事は多々ある。それこそ王様の子供でもない限りすべてを取り除くなんて不可能。そのためこの能力は多くの人を傷つけ怖がらせた。
そしてついに、俺は親に捨てられ施設に入れられる事に。子供だてらこの事実を知ったのは幼稚園に入るか入らないくらいの年だったっけ。
俺の預けられた施設は最悪の場所。表向きは普通の孤児施設を装っているが、実際は悪徳親父が国、民間から金を巻き上げるだけの隠れ蓑。子供たちは園長にコキ使われ、ストレス解消のためにいじめられた。俺も同じくな。
物心ついたころには俺は園長に逆らうのも嫌になるくらいの恐怖心を抱いていた。きっと、赤ん坊の頃から恐怖を刷り込まれていたんだろう。赤ん坊は嫌と言う感情は強くとも、これが危険と言う事はイマイチわかりにくい。そのため能力で傷つける事もなかったのだろう。運の悪いことに、園長は顔だけは善人に見える。反撃するより前に恐怖を埋め込まれてしまったんだろうな。
この環境から逃げ出すこともできず、ひたすら耐え続ける日々が何年も続いた。
そんな劣悪な環境を飛び出したのは七歳の時だった。
あの日は特に園長の機嫌が悪く、酒をがぶがぶ飲んでいた。警察か民間が怪しんでその隠ぺいに苦労させられたりしたんだろう。
その日の、運悪く園長に目をつけられたのが俺。個室で園長から執拗なまで殴られたりして痛めつけられた。
その時俺の怒りが限界を迎え、初めて園長にこの能力を使った。園長の皮膚を切り刻み舌を引きちぎる。園長は痛みで狂いもだえる。そして最後には体内に侵入して死ぬまでグチャグチャにかき混ぜたのを覚えてる。こうして園長を殺し施設を飛び出した。
施設を飛び出したのはいいが、俺にはまともな金がない。七歳の子供に自力で金を得る手段なんて無きにひとしい。これが俺の能力の悪用の始まり。
俺は金を持ってなかったが、周りの人たちは持っている。だから能力が他人から見えない事をいいことにスリを働いた。小さな子供が一人で大金を持っていれば悪い兄ちゃんが寄ってくる。俺はそれを容赦なく半殺し。柄の悪い大人も病院送り。俺の金を奪おうと本気で殺しに来た大人は逆に殺してやった。誰も俺が殺したなんて思わない。俺は既に殺しすら平気になる程狂っていた。
そんな俺の前に現れたのが俺の師匠でありお父さん。お父さんと言っても血のつながりもない赤の他人だけど、俺にとっては本当の父親。
初めて会った時、父さんは俺をじっと見つめ続けた。俺の心の内を見通すかのようにじっくりと。その目が何となく頭に来たから、俺は能力で殺そうとした。殺気が強すぎて傷を負わせる程度で済んでしまったが。
その後は殺すか殺されるかの大バトルに発展。勝負の結果は、傷の具合では俺の負け。でも相手の殺傷権利を勝ち取ったのは俺。なんせ喉を掻っ切る事が出来る位置まで近づけたからな。父さんも喉元に当たる刃を感じ取り攻撃を止めた。俺はボロボロで、父さんは数カ所の深めの傷だけ。
すぐに殺せる。でも、俺は殺せなかった。かなり長い時間躊躇してしまい、先に体の限界が来てしまったから。
倒れた俺を安全な所に運び、治療してくれたのは父さん。それが俺が父さんの息子、弟子になったきっかけ。父さんからはたくさんの事を教えてもらい、学校にも行かせてもらえた。本当に感謝してる。
主に父さんから教えてもらったことは能力の使い方。これは正直なんの参考にもならなかった。他にも魔法に関する知識と技術、日本の呪術や札術など普通では触れる事もない事ばかり。
父さんは昔、関西呪術協会という所の幹部をしていたらしい。関西呪術協会とは、京都に総本山を置く古くから日本を守ってきた陰陽師や剣士などの退魔師の組織。言ってみれば日本の魔法使いの組織。
その関西呪術協会は昔、魔法使いが現れて居場所を奪われた。そして父さんは、その魔法使いの魔術を熱心に学んでいたため追放されてしまったと。
「お客さん、どこまで?」
「麻帆良学園までお願いします」
そんな父も、数年前に亡くなった。亡くなったって言い方は穏やか過ぎるかもしれない。そんなまるで“寿命で死んだような言い方は”
『魔法使いは敵だ。だが……敵から身を守るには『敵』の文化をよく知らなくちゃあならないって考え方もあるんだ』
お父さんがそう俺に言ったことは今でも覚えてる。今での毎日俺の耳元でささやくかのように、俺の脳内に響いてる。
「残念ながら父さん、俺の敵は魔法使いじゃないんだ」
「え? 何かおっしゃいました?」
「いや、なんでもない。明日の授業に間に合うかなと思っただけです。まあ、元々明日は休む予定だったので安全運転でお願いします」
独り言が運転手のお兄さんにも聞こえてしまったか。一仕事終えた後はどうも油断してしまう。俺の悪い癖だ。早急に治さないと。
だけど、陽気になってしまうのも無理はない。なんせ、久々の大きな依頼。入る金額もドデカイ。今頃俺の口座に8桁の数字が更新されているだろう。確認が楽しみだ。
もう誰もがわかる通り、飛行機内であの裏社会の老人を殺したのは俺。だけど、俺が殺したなんて誰がわかるか。いや、想像すらつくまい。
(フフフ、誰も気づきやしない。俺に辿り着くことなど決してありえない。大抵は事故、もしくは今回のように未解決事件として処理される。
どんなに厳重な警備を敷こうが無駄だ。俺だけが持つこの力、『
俺以外には誰にも見えぬそのクワガタは、おぞましい口を開いて俺の傍に控える。
灰の塔
主人公 攻撃力C スピードA 射程距離A 持続力B 精密動作性D 成長性C
原作 攻撃力E スピードA 射程距離A 持続力C 精密動作性E 成長性C