東方転神録   作:どこにでもいる平凡人

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ある人物と会います


31話 高天ヶ原との会談

大和につき、高天ヶ原に通じる祠がある洞穴まで来た漣。

 

「そういえば・・・」

 

諏訪神社を出る前諏訪子は

 

『高天ヶ原をしきっているのは天照様だから注意してね』

 

と言っていたことを思い出した。

 

「もしかしたら俺の事がばれるかもしれないな・・・、よし」

 

漣は右手を顔に霊圧収束させる。そして収束した霊圧を当て引っ掻くように下すと白い兎の仮面が現れた。

 

そうこれは虚化である。しかし、霊圧は放出しておらず、ただ正体をばれないようにするための変装のための仮面なので強化はされていない。

 

準備もできたことで漣は祠の中に入っていく。

 

祠の中に入るとそこは別世界だった。さっきまでの洞穴のじめじめした感じはなく、道も整備されており、その横は色鮮やかな花畑というファンタジーの世界だった。

 

そのまま進んでいくと塀で囲まれた領地らしきものと、道の延長線上には門と門番らしき人物が門の左右に1人ずつ槍を持っていて立っていた。

 

門番らしき人物も漣に気付き、

 

門番「何奴!」

 

門番は構えるがそれにかまわず、近づいていき、

 

「洩矢の使者です。天照様に洩矢の意思を伝えに来ました。」

 

門番「そうか・・・」

 

ひそひそと話している。やがて話終わったのか

 

門番「ここで少し待っておれ」

 

そう言われたのでここで待つことにした。門番の一人が門の中に入り、漣が来たことを伝えに行ったのだろう。

 

およそ10分ほどたったところだろうか、中に入っていった門番が戻ってきて、

 

「これから天照さまの所に案内する。ついてこい、それとその背中の剣はこちらで預からせてもらう。」

 

漣は何も言わず、鞘についている留め具を緩め、門番に渡す。

 

門が開き、漣と門番は入っていく。建物内に入ると別の人が待っており、そこからその人に案内され、一つの大きな部屋の前にたどり着いた。

 

そこで一度止まるように指示され、先に案内人が中にはいる。

 

すぐに案内人は戻ってきて、部屋に入るように伝えられた。どうやら部屋に入ってもいいかの確認だったのだろう。

 

漣は部屋に入るとそこは立派な部屋であり、中央に座っている女性は一段高くなっておりその横にも女性がいた。その女性たちは漣のよく知る者たちだった。

 

中央に座っている女性は天照、その横に座っている女性は月読である。

 

また漣と同じ高さの横にはその天照・月読の家神なのだろうか、男性や女性が一列に漣を見る形で正座していた。

 

中央には座布団が一枚敷かれており、そこに座るよう指示され座る。

 

漣は座りいよいよ、洩矢の意思を高天ヶ原に伝える会談が始まる。

 

家神「それで、洩矢の意思はどうなんだ?」

 

家神たちは初めから返答の内容が分かっているのか薄汚い笑みを浮かべる。大方、信仰を明け渡し、従うと思っているのだろう。

 

だが、漣の回答は、

 

「断る」

 

その一言だった。

 

予想外の返答に戸惑う家神だったが天照は極めて落ち着いた様子で

 

天照「なぜ断るのですか?」

 

理由を聞いてきた漣は回答をする。

 

「その理由はこれです。」

 

羽織の内側にしまっていた、洩矢に届いた手紙を見せる。

 

手紙を前に置くとそれを回収し、天照に渡す。

 

その手紙を確認するとそれまで落ち着いた様子の天照も驚愕の色示した。

 

「このような手紙を出されてはいそうですかと従えません。」

 

家神「黙れ!弱小洩矢に従うよう文を送っただけでも感謝するのだ。滅亡しなかっただけでも良かったとおもえ!」

 

予想を斜め上に行く、野次に若干イラっと来るが何とか耐える漣。しかし、その家神が引き金となり、

 

家神「そうだ!そうだ!文を送っただけでも感謝しろ!」

 

家神「お前ら洩矢は我々の軍事力をもってすれば一瞬だぞ!」

 

などといったことを次々に行ってくる。流石にイライラがたまり、ついに限界に達したのか、

 

「黙れ」

 

それはドスの利いた声でさらには無意識にはなった神圧で反論していた家神たちを黙らせた。

 

全員が黙ると天照が口を開いた。

 

天照「ではこうしましょう。私たち高天ヶ原とそちらの洩矢の代表を1人ずつ選び、その代表者同士が一騎打ちをして勝ったほうが従えるというのはどうでしょう?」

 

天照が提案を出し、それに考える漣は、

 

「その代表者は…」

 

天照「此方はそちらの八坂神奈子に任命します。洩矢からは洩矢諏訪子を任命します。お互い力は同じくらいなのでいいでしょう?」

 

女の神が一人驚いている。おそらく任命された八坂神奈子だろう。

 

「いくつか質問が」

 

天照「何でしょう。」

 

「まず一騎打ちということはその八坂神奈子と洩矢諏訪子の一対一の戦い、もし、援軍などが入った場合はどうなるのでしょうか?」

 

天照「その時は無条件で援軍が入ったほうが負けとなり、負けたほうが勝った方に従うという形になります。」

 

「ふむ、では2つ目勝敗の判定は?」

 

天照「それはどちらかが戦闘不能となったとき、殺すことは認めません。」

 

「分かりました。それでいいでしょう。」

 

天照「では日時については後日文にてお伝えします。」

 

こうして会談は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮面の少年が去った後、天照は2つの疑問点を思い浮かべた。

 

1つ目は、誰が別の手紙を洩矢に送ったのか。

 

この手紙により、高天ヶ原と洩矢の戦いが起きたといっても過言ではない。

 

本来は穏便に済ませたかったがそれもかなわない。ここは代表者に頑張ってもらうしかない。天照のやることは、誰が別の手紙を送ったのかを探すことだけなのだ。

 

予想としては最初に声を荒げた者だと思われるが、多分違う。あれはもともと平和的にいこうというのをよく思っていなかったのでそれに便乗しただけだろう。

 

2つ目はあの少年は誰なのか。

 

あの少年がもし約束を破って戦いに参加してきたら、普通にこちらは負けるだろう。その為にもあの少年が誰なのかわかっておく必要がある。

 

だがこれは大体推測がついている。あれほどの神圧を飛ばすことができるのは天照たち三貴神やその親、伊弉諾・伊弉冉、それか龍神クラスだろう。そうなったらもう結論は1人しかいない。

 

(ふふ)

 

天照は次に会えるのが楽しみだった。




というわけで宣戦布告した漣君。
次回は諏訪子の修行が始まります。
ちなみに最初に出てきた兎の仮面、あれは大筒木カグヤからとってます。カグヤは民からは兎の女神といわれていたのでそうしました。

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