災厄の大悪魔の異世界転移奇譚    作:水城大地

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漸く、加筆が終了したので投稿します。
小さな姿になったウルベルトさんと、その時事実を前に驚く面々。(-フォーサイト)
ちょっと、仲が良過ぎないですかねと、嫉妬もメラメラ?


第二話

こうして彼らの事を良く見てみると、本当に彼らはウルベルトと仲が良いらしい。

特に良く気付くのが、ウルベルトの隣に座った神官の男性で、何かをしたそうにウルベルトが身を捩るだけですぐに察するらしく、いまもあの外見のせいでちょっとだけ手が届かないテーブルの上のカップをとると、彼に対して手渡している。

ギルメンの中でも、ウルベルトさん相手にあんな風にやり取り出来た人は、多分いないんじゃないだろうか?

少なくても、二人の間にはそれ位の強い信頼がある事が窺えた。

 

この緊張すべき空気の中、どこかウルベルトさんの気配が浮かれているような気がするのは、もしかしたら彼らが理由なのかもしれない。

 

そう思うと、ついつい嫉妬めいた感情が浮き上がるが、これは大切な仲間であり友人であるウルベルトを、彼らに取られてしまったような気持ちになるからだろう。

それでも、アインズとウルベルトの間にも長年培った友情がある。

少なくても、あの頃のお互いに【親友】と呼べる域だった彼との付き合いを考えれば、そう簡単にアインズを含めたこちらを切り捨てると言う判断はしない筈だ。

 

さくさくと思考を纏める事約三秒。

 

アインズは、のんびりと喉を潤す為にお茶を飲んでいるウルベルトに視線を向けた。

先程は、色々と混乱していた事もありきちんとその姿を観察している余裕などなかったが、こうして改めて確認してみると、ねんどろいどゴーレムのボデイと言う割には、今の彼の姿は五歳前後に見える位には大きい。

多分、何らかのアイテムを使用しているのだろうとは思うのだが、認識阻害の指輪を使用しているらしくはっきりとは断言出来なかった。

とは言え、仔山羊の姿は愛らしく見える。

そのモフモフな姿を、この状況でなければ思い切り抱き込んだ上で、両腕で思い切りモフモフして堪能してやりたい位には愛らしかった。

角の下に生えた形の薄く長い耳が、ピルピルと機嫌に併せて動く様は、アインズの中にある癒しが欲しくて仕方がない衝動を強く掻き立てて仕方がない。

 

本音を言えば、何とか上手く周囲やウルベルトを丸め込んだ上で、自分の膝の上に彼の小さな身体を抱き上げてしまいたい気分だった。

 

もちろん、実際にはそんな行動をしないだけの理性はアインズに残っているが、その分もウルベルトがどことなく甘える雰囲気を見せるあの神官が羨ましくて仕方がない。

これは、アインズだけではなくアルベドを除いた他の守護者たち同じ身持ちじゃないだろうか?

出来るだけ気付かれない様に、アルベド越しに他の守護者たちの様子を伺ってみれば、微妙に顔を引き攣らせている姿が見える。

 

やはり、アインズが睨んだ通り彼らもあの神官の事が羨ましくて仕方がないのだ。

 

彼らにとって、自分たちギルメンはそれこそ自分が仕えるべき【至高の存在】と言う位置付けなのは間違いない。

だが、現時点ではウルベルトの側に寄る事も許されず、全く知らない自分よりも下等だと思っている人間に対して甘える様子すら目の前で見せられたら、確かに羨ましいやら悔しいやら色々な感情が渦巻くのも仕方がないだろう。

だが、彼らはそれを必死に押し殺している。

 

全ては、折角ウルベルトがこうして目の前に居て、このままナザリックへ戻って来てくれそうな状況だと言うのに、自分の嫉妬からくる発言によってその可能性を潰すなどと言う事態を避けたいから。

 

そんな彼らの心境が、アインズにも手に取る様に良く判った。

自分だって、彼らと同じ様な気持ちだからこそ、ウルベルトが完全にナザリックに戻って来る事が決まるまで、下手な事が言えないのだ。

特に、ウルベルトが先程までの強い怒りを引っ込めているのは、フォーサイトの面々を怖がらせない様にと言う思いもあると判っている以上、下手に彼の機嫌を損ねる発言はしたくない。

折角、彼らが上手く怒りを鎮めてくれてたお陰で、それなりにウルベルトの機嫌が直っているのだ。

このまま機嫌の良い彼と、上手く話し合いで事を収めてしまいたいとアインズが思うのも、仕方がない話だろう。

 

何となく、話し合いが決裂する事態になるとしたら、そうなる原因はこちら側にありそうな気もするので、その辺りも含めて気を引き締めておく必要はあるだろう。

 

そんな事をつらつら考えつつ、そろそろ話を促すべきだとアインズはウルベルトに視線を向ける。

丁度、ある程度御茶を飲んで満足したらしいウルベルトが、隣の神官にカップを渡した所だった様だ。

こちらの視線に気付いたらしく、アインズが視線を向けた意味を察したウルベルトは、コクッと小さく頷いてからゆっくりと続きを語り始めた。

 

******

 

正直、予想すらしていない自分の状況を幾つも連続で目の当たりにした事で、暫く呆然自失になっていたウルベルトだが……我に返ると頭を抱えていた。

この際、どうして【ユグドラシル】での自分のアバターが氷漬けにされた揚げ句、自分はこのねんどろいどゴーレムの中に入ってしまったのか、その原理そのものはいまいちよく判らない。

確かに判らないが……正直言ってあまりうれしくない話ではあるものの、残念な事に今自分が使っているこの姿そのものに関しては、実は一つだけ心当たりがあったりするのだ。

 

「……これって……確か、モモンガさんの所のパンドラが、るし☆ふぁーさんの姿とその能力を最終調整する際、ゴーレム作成能力のテストの一環で作ったヤツ、だよな?」

 

ウルベルトが頭の中で思い出すのは、かつてまだ仲間一人として欠ける事無くで賑わっていた頃のナザリックだ。

宝物殿の領域守護者で、モモンガが手掛けたNPCであるパンドラズ・アクターの設定は、色々と問題が発生し難航を極めていた。

その理由の一つが、ギルメン全員の外装と共に持たせる能力配分だった。

なにせ、互いに拘りを多く持つ濃いメンバー構成であるが故に、弐式炎雷の様にピーキーな能力設定の奴が他にいない訳じゃなくて。

 

その中で、能力面だけの割り振りが問題なら割と調整が楽だと、早い段階で組み込まれた者達もいる。

 

その中の一人が、【ギルメン一の問題児】として他の仲間から認識されている、るし☆ふぁーだった。

本人の性格や行動の面から、ギルメン共通の認識で【問題児】として扱われているが、彼がパンドラズ・アクターに持たせる主軸として主張したのは、ゴーレム関連の製作能力である。

まぁ、本人的にも【ゴーレムクラスター】として、色々な意味で名を馳せているのだから、パンドラズ・アクターが変化した自分にも、それを踏襲させたいらしい。

 

まぁ、それはさておき。

当然だが、るし☆ふぁーがプロデュースしてモモンガが設定したコンセプト通りに能力が使用可能になっているか、その能力を確認するのは当たり前と言う話になった。

それで、パンドラズ・アクターの外装をるし☆ふぁーに変えさせて、実地試験として何を作らせるかと言う話になったんだ。

幾つか提案があって、どれにするかその場にいた面々で多数決を採った結果、誰かをモデルにしてゴーレムを作らせようという事になって。

 

そのモデルに選ばれたのが、俺、ウルベルトだったのである。

 

最初は、パンドラズ・アクターがどんなゴーレムを作るのかと、凄く気になった。

なんと言っても、初めてのゴーレム作成だったから。

暫くして彼が完成させたのは、掌に乗る位まで小さな二頭身のディフォルメされつつ、その癖特徴は良く捉えられている素晴らしい出来映えの人形タイプのもので。

目の前に、それを完成品として差し出された時は、流石に対応に困ったものである。

 

≪あー……ついでにムカつく記憶まで出てきたぞ。

あの時、モモンガさん以外のその場にいた奴等は、全員その完成したゴーレムを見て笑い転げやがったんだよ。

……あぁ、思い出した。

あんまり皆が笑う事にムカついたから、その場でパンドラに対して、

 

「これと同じタイプのゴーレムを、ギルメンの全員分作る様に」

 

って、俺が命じたんだっけ。

確か……掌に乗る位小型の割に高性能で、一発だけなら超位魔法や高位戦闘スキルも扱えたんだよな。

折角全員分作ったし、ディフォルメされている事さえ除けば、出来もかなり良いものだからって話になって……最終的にモモンガさんが管理する事になったんだよ。

あぁ、そうだよ……それで間違いない奴だ。≫

 

つらつらと、このゴーレムが作られた当時の事を思い出していくうちに、いくつかの点がその頃と違っている事があるのに気付く。

まず挙げるなら、今の己の身体の関節などの動きだ。

精巧な人形タイプとは言え、あくまでもゴーレムである以上、人間などの様にしなやかな動きの再現に関しては、かなり難しかった記憶がある。

実際に、完成したゴーレムを動かしてみたら、どこかぎこちなく微妙な動きをしていた事を、ウルベルトもきっちりと覚えている。

にも拘らず、目を覚ましてから今までそんな不自由を感じた事は一度もない。

 

それこそ、最初は自分の姿がこうなっている事すら気付かない程の、滑らかで自然な動きだったのだから。

 

次に挙げるとすれば、ゴーレムの全身は固い金属系素材から産み出されており、それこそ柔らかい部分など髪の毛一つ存在していなかった筈なのだ。

それなのに、今の自分の身体は触れて確認してみれば柔らかな体毛に覆われ、ふさふさでモコモコとしているのが良く解った。

つまり……その辺りに関しては、本来のアバターである種族に合わせたものに変化しているといっていいだろう。

そう考えれば、己の身体が柔らかな毛に覆われた山羊の姿をした悪魔だと言う点から、現在のふさふさもこもこの状況には納得はいった。

むしろ、そうじゃない方が逆に違和感がある位だったのだ。 

多分、自分の存在の魂(だと思いたい)が中に入った事で、それに併せたカスタマイズがなされたのだろう。

 

残念ながら、どういう原理でそうなったのか、ウルベルトにはその辺りの理屈はいまいち良く解らない。

こういう事に関して、どうしてそうなるのか立証するだけの知識がウルベルトにはないからだ。

判らなくても、この身体そのもの不都合点が解消されただけなので、特に気にしない事にしておく。

 

多分、下手にこの件を突き詰めると、ウルベルトに理解出来る範疇を越えている気がするからである。

 

ついでとばかりに、自分の身体に解析魔法を掛けて必要な情報を抜き取っていく。

今の自分のこの身体は、本当に小さな掌サイズのゴーレムベースなのだ。

いち早く危険を回避する為にも、今の自分に出来るだろう正確な能力把握は、ごく当たり前の話だった。

 

そうして判明したのは、予想よりもまともだったこの身体の能力とレベルだろうか?

 

まず、やはりこの身体はパンドラズ・アクターが習作として作ったゴーレムをベースにしているのは間違いないようだ。

幾ら高性能と言っても、持たせられる能力は第十階位魔法やそれに相当する戦闘スキルだけだったのだが、今は違うらしい。

あくまでもベースにしているだけで、一部のどうする事も出来ない能力制限を除けば、ウルベルト・アレイン・オードルそのものの能力値なのである。

レベルに関しては、本来のウルベルトの姿の時と同じ百。

ただし、この姿になってしまった影響を受けたからなのか、使用出来る超位魔法は一日に四回から一回に変化していた。

使用する場合、発動する為の「ため」の時間は変わらなかった癖に、使用した場合は強制戦闘不能……簡単に言うなら、器となったゴーレムボディの方が持たないらしく、強制クールダウンの為の気絶と言う落ちが付く。

似た理由で、【大災厄(グランドカタストロフ)】も使用可能魔法として使える事にはなっているが、使ったらMP不足による一発気絶になるらしい。

 

つまり、誰かしらサポート要員の前衛が居なければ、ウルベルトの最強魔法は使用不可能な状況にされているのも同然という事になる訳で。

 

本当に、これはこの世界全体の戦闘能力次第では、何ともならない状況である。

一応、この姿になっても使用可能な魔法の種類そのものは、殆ど本来のウルベルトの時と変わらないが、それより問題なのがHPとMPだと言っていいだろう。

幾ら見た目より優秀とは言え、やはり手のひらサイズの小さなゴーレムがベースである。

元々、攻撃専門の魔法職を選択している事から、低めのHPは本来の四割弱しかない。

それに対して、MPは本来のもの六割と割と高めではあるが、多分無理にゴーレムの身体にウルベルトの魂を取り込んでいるからか、本来の姿の時よりもMPの消耗率が高いので、実際にHPよりも少しだけ高い程度になってしまっている。

ただ、攻撃魔法の威力そのものは弱まる事なくそのままだと言う事を考えれば、良いのか悪いのか良く判らなかった。

 

《……やはり思った通りだ。

このゴーレムボディは、予想以上に能力値が高い。

MPに至っては、ゴーレムではあり得ないレベルだと言っても良いんじゃないか?

それでも、超位魔法には身体の方が耐えられなくて、使用出来るものの一発気絶じゃ使えないと考えた方が良いだろうし、【大災厄(グランドカタストロフ)】は使用すると同時にMP切れになる事を考えたら、ほぼ使えないに等しくて微妙なラインだけど。

更に言うなら、根本的に元のゴーレムのサイズが小さすぎた影響なのか、俺が入った事による異常が起きたのか、MPが高い割に魔法に対する消費割合も高くなっていて、折角の高性能を生かし切れないのがまた性質が悪いな。

これに関しては、手持ちのアイテムで改善が出来る可能性があるから、今の時点ではまだ保留案件だと思うとして、だ。

一応、使える魔法の中に戦闘時の撹乱用に取得した第九位階の実体を伴った幻覚系もあるけど、その魔法の使用可能な回数か一日に一回のみ、しかも効果時間が三十分とかふざけてるのかよ!

これじゃ、街の中に潜り込んでも情報を探り出すどころか、殆どまともに動けないじゃないか!》

 

もちろん、これに関しては幻覚の効果延長のマジックアイテムを入手出来れば話が変わるのだろうが、今の自分にはその手立てすら目処が立たない。

こちらの世界に、そんな都合のいいアイテムが存在しているか判らないのだから、ある意味当然だろう。

それに、この世界にそのアイテムがあったとしても、それを手に入れられるかどうかと問われれば、かなり難しいと思うべきだ。

 

どうしてそんなものが必要なのか、それを納得させるだけの理由が必要になる。

 

その為に、自分のこの姿を人前に晒すつもりは、ウルベルトにはない。

見せた時点で、周囲からどんな扱いをされるか判らないからだ。

正直、こんな姿でも生きていると言う事実を、この姿を知った相手に納得させるのは、かなり難しいだろう。

不気味がられた挙げ句、殺されそうになるか実験体にされそうになるか。

とにかく、この身体では他人からまともな扱いを望むのは難しい気がした。

 

《ただ……この世界が【ユグドラシル】じゃない事は、まず間違いないだろう。

あの時、最終日の終了時間が過ぎるのをこの目で見ているだから、今更延期するとはとても思えない。

それを見せ付けられた俺は……あの時、()()()()()()筈なんだからな。

ゲーム用のヘルメットを付けられ、その横から頭を撃ち抜かれて確実に即死させられたはずだから、まだ生きているとはとても思えない。

だからこそ、この状況に困惑しているんだが……》

 

自分の中にある、最後の記憶を思い出しながら少し思案する素振りを見せるウルベルト。

ここで意識を取り戻す前の、リアルの一件は色々と自業自得な部分もあるので、ひとまず先送りにする事にして。

ある程度、自分の今のこの身体のスペックの確認が済んだ所で、再びこの姿になってしまった要因は何だろうかと、心当たりを思い浮かべていったウルベルトは、ハッと一つ思い当たる事を思い出した。

 

そうだ、このゴーレムをパンドラズ・アクターが作った後、ウルベルトが全員分を作るように指示した事によって、一つこの姿になる要因になりそうな馬鹿な事を言い出した奴がいたじゃないか。

 

先程は、この状況に対する動揺が余りに酷くて、あの時の事を思い出せなかった。

だが……こうしてある程度まで冷静になってから良く思い返せば、パンドラズ・アクターが作った全員分のこの人形タイプのゴーレムを前に、変な事を提案した奴がいなかっただろうか?

そう、確か、あれは……

 

「あぁ………そうだ、タブラの奴だよ!

あいつ、全員の分のこの掌ゴーレムが完成したのを確認した途端、平然とした顔で【罰ゲームの一環で、全員で臨むクエストに向かう場合、予定外のところで死んで迷惑を掛ける行為をしたら、条件達成までその姿でいるのはどうでしょう?】とか抜かしやがったんだ。

しかも、条件付きとはいえ本当に復活先をこのゴーレムの中へ固定して、憑依状態にしようとしやがったんだよ!

あぁ……それで間違いない。

だけど、実際にその設定を組むには流石に色々とこの小さなゴーレムの方のデータ容量的に無理があったのと、下手をしたら繰り返し死ぬ事によるデスペナが大き過ぎると言う事を、モモンガさんが懇切丁寧に説得してくれたんだった。

おかげで、【そんな無理を可能にする為に課金して金を突っ込む位なら、もっとギルドの為になる様な他の使い道の方が良い】って声がほぼ全員から上がったから、タブラさんも渋々納得してくれたんだよ。

でも、まだどこか自分の提案に未練が残っているタブラさんの為に、最終的には課金アイテムを幾つか組み込んだ上で、一回だけ経験値未使用でクエスト中も復活出来る、セーブポイント兼特殊な復活ポイントにしたんだよな……」

 

懐かしい、【ユグドラシル】時代の一幕。

あの時の騒動は、ギルド一の問題児であるるし☆ふぁーですら反発するほどの厄介さだった記憶がある。

結局、実際にはどんなに課金しても流石に手のひらサイズのデータ容量をそこまで増やすのは技術的に実行不能だった事と、流石に「一クエストの罰ゲームとしては様々な点でギルメンへの負担が大き過ぎる」と言うギルメンの主張を、モモンガが上手く纏めながら時間を掛けてタブラへ説得するのがどれだけ大変だったか。

しかも、何とか納得させたもののまだ何か言い出しそうな気配が見えた事で、「それならセーブポイントとして利用したらどうか?」と、別のギルメンが慌てその場で提案し、タブラが反論する前に賛成意見多数で話で纏まったのだ。

その翌日、掌サイズのゴーレムに関する追加案件として、単なるセーブポイントとして利用するだけではなく、課金して一回だけ経験値未使用の復活ポイントにしたらどうかと、再度タブラさんから提案があった。

 

これに関しては、ギルメンたちも「悪くない提案だ」と納得した事で了承されたのである。

ただ、実際に課金した上で蘇生アイテムを組み込んでみたら、予想以上に課金額が嵩んだので「とても勿体なくて使えない」と言う事になったのは、同時のギルメンたちのちょっとした笑い話だ。

それを使う位なら、それこそワールドエネミー相手の戦闘中でもない限り、そのまま素直にデスぺナを受けると言う位だから、どれ位掛かったのか想像が付くんじゃないだろうか?

 

そこまで思い出したウルベルトは、その内容に頭を抱えた。

 

≪もしかして……その、タブラさんの提案でゴーレムに付けた効果が、最後に終了した後の【ユグドラシル】に繋げるなんて馬鹿な真似をされた事から、リアルでの死亡とゲーム内の死亡を混同して、このゴーレムボディの中で復活させる結果になったのか?≫

 

正直、出来れば正解であって欲しくない内容だが……どう考えてもこれが正しい気がするウルベルトだった。

 

************

 

 

「__と言う感じで、俺は自分の本体が封印されている事と同時に、本体から精神だけが分離されてこのゴーレムボディで復活した存在だって事に気付いた訳さ。」

 

まるで何でもない事の様に、軽く首を竦めながら言うウルベルトに対して、逆にアインズやこの場に居る守護者たちの方が慌てふためいていた。

今の話の流れだと、現時点でもウルベルトが小さな姿をしている以上、本体は封印されたままだと考えて間違いないだろう。

そんな、危ない状況で放置しておく事を許容出来る者など、この場にはそうそう居ない筈だ。

 

「ちょっと待ってください、ウルベルトさん。

それじゃ、あなたの本体はまだ封印されたままだって事ですか?

と言うより、あなたの姿はとてもねんどろいどゴーレムって感じじゃないですよね?

あれは、二頭身の掌サイズですから。

どうやって、その五歳児の外見まで成長させたんですか!?」

 

アインズが、思わずウルベルトに対して突っ込みを入れるのだが、その直後に興奮しすぎた影響で精神の鎮静化が掛かり冷静になった。

すると、つい先程までの軽い興奮状態では浮かばなかった手段を幾つか思い付く。

同時に、ウルベルトがまだ来ていた頃にあった一つのイベントを思い出し、それに使用していたアイテムが丁度その条件に当てはまる事も思い出した。

 

「……もしかして、【巨大化の指輪】ですか?

確か、ウルベルトさんがまだナザリックにいらっしゃっていた頃、何かのイベントで大量に必要で持ち歩いていらっしゃいましたよね?」

 

アインズがアイテムの名前を挙げ、ウルベルトに確認する様に静かに問い掛ければ、それこそ「正解」と言わんばかりに嬉し気な笑みを零す。

そして、スッとアインズの前に片手を見せると、もう一方の手でそっとその指に填まっていた指輪を掴み、スッと丁寧に引き抜いた。

次の瞬間、それまで五歳字程度の大きさだったウルベルトの身体が、一気にその場で縮んでいく。

ものの数秒で、アインズの言う通り小さな手のひらサイズの姿になったウルベルトの姿を見て、フォーサイト御面々や指摘した本人であるアインズ以外……そう、その場にいた守護者たちは全員二の句が付けられないほど驚いたのだった。

 




一応、この姿になるまでのウルベルトさんによる考察。
この話でも、このねんどろいどゴーレムの作り手は、パンドラズ・アクターです。
因みに、現時点ではこの話し合いの場に居ませんけど、アインズ様の指示でラウンジの様子を【遠隔視の鏡】でちゃんと伺ってます。
ついでに、魔法でウルベルトさんに起きている状況の確認もしています。
なので、自分の作ったゴーレムだと一発看破し、その状況による現時点での問題点の洗い出しまでしていたりします。
この場に居ないけど。(笑)
そして、どことなく不穏な影がちらつく彼の思考の部分は、もちろん話していません。
今の段階で彼らが知ったら、それこそ騒動なんてレベルで済みませんから。


実は、本当ならメールペットの方が先に更新出来るはずでしたが、諸事情によりこちらが先になりました。
その理由は、活動報告に書きました。
ついでにご意見を求めてますので、良ければ活動報告にコメントください。

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