その頃、エグゼイドはひたすら階段を走って、登っていた。
回りは一面、剥き出しのコンクリート。階段は12段ごとに折り返すようになっていた。そのため彼はその度に、敵が潜んでいないかどうか、神経をすり減らす。
途中、何度か踊り場もあった。彼は時折、そこになにかがいる気配を感じていたが、敵は現れない。
今までよりも広い踊り場に、エグゼイドは辿り着いた。そこであるものを発見する。
「お前はこの前の!」
そこに待ち受けていたのはギンガた。待ち受けるといっても、威風堂々に佇んでいたわけではない。
彼は奥の冷たい階段に、ちょこんと座っていた。
「うわっ!? またでた!」
「道を開けな。そうすれば、痛い目を見なくてすむぜ」
「逃げない! 怖いけど……僕は戦う!」
声高らかにギンガが宣言した。しかし言葉とは裏腹に、その足下は震えている。
エグゼイドは一瞬でギンガとの間合いを詰め、パンチを繰り出す。その結果、エグゼイドは吹っ飛ばされた。彼は勢いそのままに、壁にのめり込む。
「あれあれ? どうしたの?」
「どういうことだ?」
エグゼイドは壁を壊して脱出した。
ガシャコンキースラッシャーを召喚すると、スロットにマキシマムマイティXを挿し込む。
キメワザ! マキシマムマイティー! クリティカルフィニッシュ!
「リプログラミングしてやるぜ」
キースラッシャーから光線が放たれる。それがギンガに直撃した。そしてエグゼイドがダメージを受ける。
「なんで?」
「これで僕の勝ちが確定した」
ギンガはエグゼイドに近づくと、回し蹴りを仕掛けた。まるでリンボーダンスのように、エグゼイドはかわす。
天井まで飛び上がったギンガ。彼のクリスタルが青く発光を始める。ギンガが腕をL字に組むと、ギンガクロスシュートが発射された。
撃たれたエグゼイドは傷つき、その場に座り込む。
「ハイパームテキ攻略にあたって、一番ネックになったこと。それが"どんな攻撃も効かない"ことだった。そこで僕は考えた。それをリプログラミングすれば良いと」
「そういうことか……でもそんな能力があるのならば、あのときに倒せば良かったんじゃないのか?」
「確かにそれも出来た。だけど、どうしてもここに来て欲しかったんだ。仲間と一緒にね」
「まさか、何か罠でもあるのか!?」
「そこから先は自分で見つけな。天才ゲーマーさん」
エグゼイドが今、疑問に思っていることは二つ。
何故最初に出会ったときに戦わなかったのか。どうやって攻撃を反射させているのか。
しかし、その謎を落ち着いて解く時間は与えられない。
ギンガの徒手空拳での攻撃をいなしながら、エグゼイドは思考を巡らす。
そのとき、パラドクスが現れた。彼はギンガの拳を、エグゼイドの代わりに受ける。
「大丈夫か? らしくねぇぜ、永夢」
「パラド……」
エグゼイドとブレイブ達の距離は、大きく離れていた。だが、パラドクスは永夢に感染するバグスター。エグゼイドの身体を乗っとる要領で、今のような登場を可能にした。
「そういうことか! わかったぞ、お前の攻略法が!」
突破手段を閃くエグゼイド。彼はパラドクスのゲーマドライバーから、ガシャットギアデュアルを奪った。
そしてそれを、ガシャコンキースラッシャーに差し込む。
キメワザ! パズルファイター! クリティカルフィニッシュ!
「やめろ!」
ギンガが明らかに困り果てている。足下はガタガタと震え、腰も曲がっている。
そんなギンガ目掛けて、エグゼイドは走り出す。その刀身で敵を斬り捨てた。
エグゼイドもいくらかのダメージを負ったが、ギンガのダメージ量はそれ以上。男は元の姿に戻され、彼のガシャットも壊された。
「お前の跳ね返せる攻撃は一種類のみ。つまり、二種類以上の異なる攻撃を同時に与えれば、お前は完全には跳ね返しきれない!」
「見事だ……」
ギンガに変身していた男は、それを最後に目を閉じた。気を失い、全身の力が抜けた。
「なるほど……だからこいつはあのとき、俺とのバトルを恐れたのか」
「あぁ。かなり一か八かの賭けだったけどな。ところでパラド、皆は無事か?」
「ゲンムが使い物にならなくなった」
「えっ!?」
「操られた原因は一部のガシャットにあるみたいなんだ。タドルレガシーと二本目の爆走バイク、ゲンムのドライバーは使えない」
「そんな……それじゃあ、さっさと俺たちでクリアしてやるぜ!」
一方、こちらはブレイブ達。彼らも一向に景色の変わらない階段を、ひたすら登っていた。
現在、彼らは一部のガシャットが使えない。そのため、ブレイブはレベル50、レーザーはレベル3、黎斗神に至っては生身だ。
ここに乗り込む前、彼らは二人一組で行動するとこを決めていた。ところが、ガシャットに制限がかかったため、戦力的に不安はペアが現れる。
そのため、パラドは永夢と一緒に行動させ、残りは全員で固まることになった。
「自分だけレベル低くない? ねえ、低いよね」
「私は変身すらできないんだぞ!」
「仕方ないでしょ。黎斗はどのガシャットを試しても暴れちゃうんだから! ゲーマドライバーが原因としか思えないよ」
「監察医、これを使うか? 今よりは多少ましになるだろう」
ブレイブはレーザーに、ドラゴナイトハンターZを手渡した。
「これ使って暴走しない?」
貴利矢がフルドラゴンを見たのは、永夢が使った時のみ。その後は消滅してしまっていた。復活後にはもはや誰も使っていない。
そのため貴利矢にとって、ドラゴナイトハンターZを一人で扱うということは、見境もなく暴れまわる危険性を考えずにはいられなかった。
「嫌なら返せ」
「使う! 使うから! 5速!」
ガシャット! レベルアップ! バクソウドクソウゲキソウボウソウバクソウバイク! アガッチャ! ドドドラゴナーナナナー! ドラドラドラゴナイトハンターゼット!
「案外良い乗り心地じゃん」
その後も階段をひたすらに登り続けていた一行。
数十分が経った頃、新たな敵が彼等の視界に入り込んだ。
「来たか仮面ライダーども」
踊り場に待ち受けていたのはウルトラマンマックス。
最強最速の戦士の力が宿ったガシャットによって、変身した姿だ。
「ここは自分が引き受ける。試し乗りも兼ねて、こいつは自分が倒す」
「いいだろう。他の奴等は先に行け」
マックスが道を開ける。ブレイブ達は、罠があるかもしれないと疑ったが、そんなものはなかった。レーザーを除いた一行は、そのエリアを楽に突破する。
「永夢はここを通らなかったのか?」
「エグゼイド攻略には他に適任がいる。だから彼に任せて、俺は隠れていた」
「なるほど。つまり確実に戦力を減らすために、仲間は先にいかせたってこと?」
「そういうことだ。さあ、そろそろ始めよう」
その瞬間、レーザーの視界からマックスが消えた。
レーザーはあちこちと、辺りを見回す。右後方から気配を感じた彼は、そこに向かって、ドラゴンの脚で蹴りこんだ。
しかしそれは残像だった。
「なに!? 本体はどこだ?」
レーザーは辺り一面にドラゴンガンを連射し始めた。一見すると宛もなくやっているように見えるが、敵の動きに見当をつけるという意味では、効果的だ。
マックスはレーザーの首下を目掛けて、飛び蹴りを放つ。彼はドラゴンブレードでそれに応戦した。二つの攻撃は正面衝突する。
速度と破壊力はマックスが上回る。レーザーは吹き飛ばされた。
「何て強さだ」
「レベル5で挑むのは悪手だったな」
「それならこれだ!」
ブンシン!
レーザーがエナジーアイテム・分身を使用する。彼の体は八人に増えた。
レーザーは数で対抗しようと考えたのだ。ところがマックスも分身し、同じ数になる。
一対一で勝てないのだから、それは八対八でも同じこと。分身はすべて、あっけなくやられてしまった。
「これで終わりだ」
マックスの下にマックスギャラクシーが飛んで来た。色は黄色で、姿は鳥のようである。圧倒的な攻撃力を持ち、遠距離も近距離も可能な万能武器だ
レーザーは咄嗟に、混乱のエナジーアイテムを投げつけた。
「そんなの当たらねえよ」
「目的はあんたじゃない。その武器だ」
マックスギャラクシーはアイテムの効果を受けた。ふらふらと、酔っぱらいのような動きをしている。
マックスはエリア内のエナジーアイテムを眺めた。あったのは透明化、高速化、ジャンプ強化、暗闇。
いずれもマックスの武器を、レーザーが奪うために使えそうなものばかり。
レーザーは高速化を使った。彼は猛スピードで、マックスギャラクシーとの距離を詰めていく。盗られるのを防ぐため、マックスは間に割って入った。
キメワザ! ドラゴナイト! クリティカルストライク!
レーザーは思いっきり、マックスを蹴り飛ばした。
「なんだと!?」
マックスのガシャットが破壊され、人間の姿に戻る。
「あれ? のせられちゃった?」
「くっ……なるほど。マックスギャラクシーを奪おうとしていると俺に勘違いさせ、がら空きの俺を倒したのか」
「そういうこと。じゃあね」