監視カメラ越しに、白スーツの二人は一連の流れを見ている。
仮面ライダー達の声は彼らに聞こえているが、彼らの声は仮面ライダーには聞こえない。
『おい! 早く兵を出せ! 奴等がすぐそこまで来てんぞ!』
『安心しろ。手は打ってある』
小太りの男が、胸ポケットから直方体を取り出した。大きさは10cmほどで、青く塗装されている。つまんでONとOFFを切り替えるスイッチが、取り付けられていた。
『なんだそれは?』
『これを作動させると、私が改造したバグスターウイルスが活性化される』
『改造バグスターウイルス? それを使うとどうなるんだ?』
『まあ見ていろ』
変身を完了させた一同。突然ブレイブが、スナイプに斬りかかった。
ゲンムとレーザーターボも、見境をなくして暴れ始める。
『そういうことか。財団X製のタドルレガシー、二本目の爆走バイクには例の改造バグスターウイルスがつまっていたのか』
事実を唯一知っていた檀正宗が死亡したために、あやふやになっていた二本のガシャットの出所。
なんとそれらは、財団Xが正宗に提供した物だったのだ。
なぜ彼らが、ガシャット開発のノウハウを手に入れられたのか。その答えは過去に幻夢コーポレーションから盗まれた"ナイトオブサファリ"にある。
彼らはこのガシャットを徹底的に分析した。その結果、外側を作る技術を得ることは出来た。
しかし、ガシャットの肝となる要素。つまり、中のデータを一から作ることは出来なかったのだ。
タドルレガシーと爆走バイクはそれぞれ、タドルファンタジーや一本目の爆走バイクのデータを、改造して作られた。
ウルトラガシャットはデータとして、ウルトラフュージョンカードが使われている。
数ヵ月前に事件を起こしたあの少年。彼に与えられた任務は、ガシャットとウルトラフュージョンカードを奪うことだったのだ。
『いつか、こんなこともあるかもと思ってな』
『ゲンムはどうしてだ?』
『忘れたか? 少し前に、奴のドライバーに細工を施しただろ』
『あのガキにウルトラマンのデータを盗ませたときのことか!』
──────────
「なんだ!?」
思いがけない事態が起こったことに、頭の整理が追い付かないエグゼイド。
そんなエグゼイドに、冷静さを取り戻させたのはスナイプ、ポッピー、パラドクスだった。
自我を失ったブレイブ達をおとなしくさせるため、その三人がこの場に残る。彼らはエグゼイドに、先に行くよう伝えた。
エグゼイドはその場を仲間達に任せると、敵のアジトへ乗り込む。
「ブレイブ! お前がなぜ操られているのか、俺にはわからない。だがそんなもの断ち斬れ!」
スナイプが説得を試みる。しかしブレイブはまったく反応しない。
ブレイブの斬撃を、避けたり両手の砲台で受けるスナイプ。
彼は必死に訴えるが、効果はなかった。
スナイプは、ブレイブを倒す覚悟を決める。彼はすべての砲台から、光線を発射した。それらは的確に、ブレイブの身体に命中する。
しかし、ブレイブは無傷だ。ブレイブが接近してくる。それを防ぐ手段を、スナイプは持ち合わせていない。
ブレイブの斬撃が、スナイプを襲う。ガシャコンソードによって、投げ飛ばされたスナイプ。変身も解除されてしまった。
「レベル差がありすぎる……それならば」
大我は白衣のポケットから、二本のガシャットを取り出す。それらは仮面ライダークロニクルだった。
以前ゲムデウスクロノスと戦ったとき、大我はクロノスの力を使いこなせず、敗北してしまった。
それ以来彼は、クロノスの抗体を手に入れるため、何度もそのガシャットを起動している。しかしまだ、抗体の獲得には至っていない。
「スナイプ! それを使うのはやめとけ」
「そのガシャットは危ないよ!」
パラドクスとポッピーは、大我に注意を促す。
「黙れ。お前達は目の前の敵だけを見ていやがれ」
だが、大我は聞き入れない。彼は銃を構えるように、ガシャットを構えた。起動し、ゲーマドライバーに挿し込み、レバーを開く。
「変身」
ガシャット! ガッチャーン! レベルアップ! ライダークロニクル アガッチャ テンヲツカメライダー! キザメクロニクル! イマコソトキハキワマレリ!
大我は仮面ライダークロノスに変身した。ゲーマドライバーでの変身のため、ポーズを使うことはできない。それから身体にかかる負担も大きい。
しかし大我がブレイブを倒す術は、もはやこれしか残っていなかった。
クロノスは二振りの剣─ガシャコンブレイカーとガシャコンソード─を召喚した。二刀流を巧みに操り、ブレイブと互角に渡り合う。
互いの得物が、火花を散らしてぶつかった。衝撃の余波で二人の身体が吹き飛ぶ。
間合いが空いた隙に、彼らはベルトからガシャットを抜いた。
ライダークリティカルフィニッシュ! ライダークリティカルフィニッシュ!
ブレイカーとソードにクロニクルガシャットが装填される。
タドルクリティカルフィニッシュ!
ブレイブも必殺技を発動した。
「はぁぁぁぁぁ!!」
クロノスはジャンプして、二本の剣を振り下ろす。ブレイブは、それの接近をギリギリまで待った。左から右へと剣を横に振るう。
背中合わせに、向かい合う両者。数秒の沈黙のあと、クロノスはその場に倒れる。
その手にはタドルレガシーと、ドライバーが握られていた。
「俺はなにを?」
変身が解け、飛彩は正気に戻った。彼が振り向く。そこには安堵の表情を浮かべた大我が、白衣に手を突っ込んでいた。
大我は飛彩に、次のことを話した。飛彩が操られていたこと。しばらくの間、タドルレガシーを使わないこと。
大我の活躍によって、ポッピーとパラドクスも攻略の鍵を掴む。二人も彼と同じ方法を使った。
それによって、貴利矢と黎斗神を元に戻すことにも成功した。