とある病室に、数人の患者が眠っている。その中には永夢と、先の戦いでゼロになった男もいる。
男は、外で繰り広げられている激戦の音によって、目を覚ました。彼は懐からゼロガシャットを取り出す。それから、ガシャットのスイッチを起動させようとする。
「何してるんですか?」
同じく起きた永夢が問いかける。
「外が騒がしいだろ? 恐らく戦っているのは君の仲間と、我々をそそのかした元凶だろう」
「元凶? どういうことですか?」
男の説明が始まる。
「そもそも、ウルトラガシャットを作ったのは、奴に唆されたからなんだ。我々はそれを本部に贈るつもりだったが、奴はそれを自分のためのみに使うと言い出した」
「その後、奴は試作品のガシャットを使って君達と交戦。生き残ったあいつは一度自分の世界に戻ると、奪ったカードを我々に改造させてガシャットとした」
「我々は本部にガシャットを贈ろうとした。だがその途中で奴に大半を奪われたようだ」
「君でなければ、ガラを倒すことはできない。ゼロガシャットを使い、君がもう一度戦えるようにする」
「どうやるつもりですか?」
「私がシャイニングゼロになり、シャイニングフィールドを展開する。それの内部は外界と時間の進みが違う。だから仮に君がフィールド内で一週間過ごそうと、本来の世界ではほんの数秒にしかならないということだ」
「やめてください。そんなことをしたら、あなたの体がもたないかもしれません!」
「だがこのままでは……私達は全員奴に殺されてしまう!」
「僕はもう大丈夫なのでいきます。あなたはそこで休んでいてください。あとそれを僕に渡してください」
永夢は男から、ゼロガシャットを受け取った。傷ついた体をおして病室を出る。
彼が男に伝えた自身の体調はもちろん、すべて嘘だ。
「あれ? ハイパームテキはどこだ?」
──────────
巨大な手に、握りつぶされそうになるポッピー。ガラは徐々に力を強めていく。じわじわとなぶり殺すつもりだ。
ブレイブとスナイプはそれぞれ、無数の光の剣と砲撃で相手の右肩を狙う。だが、ポッピーが解放されることはなかった。
「ポッピーを放せ! ドドドドド!」
キメワザ! ドラゴナイト! クリティカルストライク!
「紅蓮爆龍剣!!」
赤と白の長い双刃、グラファイトファング。駆け付けたパラドクスはそれを振るい、ガラの手首に打ち込む。その威力は非常に高く、ガラは思わず手を放した。
落ちたポッピーは無事に、パラドクスによって助けられる。役目を終えたグラファイトファングは、すぐに消えた。
「ありがとな……グラファイト」
「ありがとうパラド! 永夢に頼まれた仕事は終わったの?」
パラドの仕事とは、永夢が患者の子どもと交わした、"一緒にゲームをする"という約束のことだ。
「あぁ! あのゲームは初見だったが、ぼこぼこにしてやったぜ!」
その場の仮面ライダー達が一斉に巨大化する。パラドクスの"エナジーアイテムを自在に操る能力"で全員に巨大化を与えたからだ。
「これなら対等にやりあえる!」
そう言うと、スナイプは砲撃を繰り出す。先程までとはうって代わり、ガラを怯ませた。
「俺に切れないものはない」
ガラが砲撃に浴びせられていた間に、ブレイブが近づく。彼のガシャコンソードが、ガラを縦に斬り裂いた。
ハイパームテキ!
ゲンムがハイパームテキを起動する。
戦闘不能の永夢が持っていても宝の持ち腐れだと考えた彼が、こっそり奪っていたのだ。彼はそれをドライバーに挿す。ムテキモードになった。
「ハイパームテキは主人公最強の無双ゲーム!」
ゲンムは飛びかかり、ガシャコンブレイカーを振り下ろす。ガラがそれをかわした。ゲンムに背を見せながら、走って逃走を図る。ゲンムがあとから追いかけた。
「まずい神! 奴の攻撃に備えろ!」
レーザーは空から唯一、ガラを追跡していた。彼がゲンムに忠告を与える。しかし、ゲンムの足は止まらない。
タイムアップ!
「まずは貴様からだ!」
ムテキモードの制限時間が過ぎる。ガラは振り向くと、ゲンムにパンチした。ゲンムは胸を貫かれる。
ゲンムの姿は消えた。彼の残りライフは1のため、ゲームオーバーになればもう復活できない。
「やってくれたな!」
レーザーは左腰にプロトジェットコンバットを入れる。ボタンを二回押し、キメワザを発動させた。
キメワザ! ジェット! クリティカルストライク!
レーザーは上空から一斉砲火を浴びせる。ガラは煙の中から勢いよく飛び出した。
レーザーに頭突きが与えられる。彼の攻撃はほとんど効いていなかったのだ。
彼は墜落し、アイテムの効果も切れ、変身も解かれた。
「てめえは俺がぶっ潰す!」
キメワザ! バンバン! クリティカルファイア!
スナイプの、一点に集中された光線が敵に炸裂する。
「もっと頭を使え。こんな攻撃、俺にはのーぷろぶれむ」
「頭を使うべきはお前だ」
スナイプの必殺技は、敵を欺くための囮だったのだ。本命は二筋の斬撃。スナイプの砲撃に身を隠し、ブレイブとパラドクスが接近する。
ブレイブが左の方から、炎を纏わせたガシャコンソードを斜め下に切り下ろす。
パラドクスは右側から、地面と平行にガシャコンパラブレイガンを斬り払った。
「オペを完了させる!」
キメワザ! タドル! クリティカルフィニッシュ!
「俺の心をたぎらせるな」
キメワザ! ノックアウト! クリティカルフィニッシュ!
二人の必殺技が、ガラを縦に切り裂く。その直後、アイテムの効果がきれる。仮面ライダー達は元の身長に戻る。
「生きてやがったか、ゲンム……」
「私は決められたライフ数すらも超越する! 神は不滅だからな……」
こう叫ぶ彼だが、それは事実でない。咄嗟にブレイブレガシーゲーマーが、ゲンムのライダーゲージを回復していたに過ぎない。
もしもこれがなければ、彼は今度こそ完全に消滅していたかもしれない。
「パラド、もう一度だ……」
再び巨大化させるよう、促す貴利矢。だがパラドは体力を酷く消耗していた。
パラドだけではなく、他のライダー達も同様である。これらはいずれも、巨大化による影響だ。
「トリニティウム光輪!」
先程は出し損ねた、オーブトリニティの必殺技。彼がオーブスラッシャーを高く上げる。武器を中心とした、大きな円盤が現れた。
オーブはそれを、敵目掛けて投げつける。その攻撃は、ガラに深い傷を作った。
「調子に乗るな!」
ガラは両手を十字に構える。そこからまるでスペシウム光線のように、光の粒子を発射された。色は禍々しい紫に染まっている。
「標的はお前じゃない」
ガラが急に方向を左に変える。そこにいるのは仮面ライダー達。先に彼等を倒すことで、オーブに精神的なダメージを与えること。それが彼の作戦だ。
変身を保てない彼らに、耐えきる事は出来ない。
「ん? どうやってやがる……あっ!」
大我を含めた全員が、自分達の敗北を覚悟していた。しかしそれは防がれる。
オーブが彼らを庇ったのだ。彼は両手を大きく広げて自らのみに当たるようにしていた。
力尽きた彼は、ガイの姿に戻る。
「残りのカードも貰ったぞ。これで俺は更なる高みへ!」
折角回収したカードも、再び奪われてしまう。
彼はそれにより、より凶悪な姿へ進化した。ガラがガイに話しかける。
「馬鹿な奴だ。そんなゴミを守る理由があるか?」
「別に理由なんてない……ずっと昔から先輩達がそうやってきたことを俺もする! ただ、それだけの事だ!」
ガイが倒れそうになるのを、ポッピーが支える。彼女はそのまま、ガイをゆっくりと座らせだ。
「俺達にはもう、奴の治療法は残されていないのか?」
「みんな!」
外の様子に気付いた永夢がやって来た。もちろん体力は回復していないため、少し動いただけでもう息切れを起こしている。
「休んでろ永夢! お前はまだ戦える状態じゃない」
「それは貴利矢さんだって……皆さんも同じじゃないですか!」
彼はゲーマドライバーを取り出す。しかし無理が祟り、倒れ込んでしまった。とても戦える状態にない。
そのとき彼は、全身の妙な温もりを感じた。というよりも、何かが熱を持っているようだ。
「マイティアクションXが光っている?」
それに気付いた永夢が、ガシャットを取り出す。
絵柄がそれまでのマイティから、仮面ライダーエグゼイドレベル2に変わった。
同じことがタドルクエスト、爆走バイク、プロトマイティアクションXにも起こる。それらのガシャットは持ち主の手を離れると、ガイのもとに送られた。
同様の現象を受け、ガラの下から去るバンバンシューティング。
ガイは集まった5つのガシャットを、次々とオーブリングにかざしていく。
「永夢!」
カメンライダーエグゼイド! ノーコンティニューデクリアシテヤルゼ!
「飛彩!」
カメンライダーブレイブ! コレヨリセツジョシジュツヲカイシスル
「大我!」
カメンライダースナイプ! ミッション カイシ!
「貴利矢!」
カメンライダーレーザー! ノリノリデイッチャウゼ!
「黎斗!」
カメンライダーゲンム! コンティニューシテデモクリアスル
「ゲームの力、お借りします!」
ネオフュージョンアップ! ウルトラマンオーブ! エクストリームエイド!
超絶進化を遂げるオーブ。
顔とアンダースーツはオーブオリジン、胸はエグゼイドライダー共通のもの、右肩はスナイプの黄色いマント、左肩はブレイブ、両腕はエグゼイドで、右足はゲンム、左足はレーザーターボだ。
「なに!? カードをすべて失ったというのにまだ立ち上がるのか!」
「俺はウルトラマンオーブ ライダーゲーマー。五つの光と絆を結び、今、立ち上がる!」
オーブはガシャコンマグナムを召喚した。両手で構え、撃ちながら近づく。
「大我達の武器が使えるの!?」
接近したオーブが、銃から左手を放す。代わりに彼は、その手にガシャコンソードを握った。斜め上に斬り払う。
あまりの素早さに、ガラは対応できない。
ガラが遥か上空に投げ飛ばされる。オーブはガシャコンマグナムをライフルモードに変形させると、それを狙い撃った。
落下するガラ。オーブは両手を空けると、ジャンプした。ガシャコンブレイカーハンマーモードを右手に持ち、ガラに強く叩きつける。ガラは打ち落とされて、地面にクレーターが作られた。
「なんて強さだ……すべてのウルトラフュージョンカードを吸収した俺をまるで赤子のように......」
「当然だ。先輩方がお前のような奴に、力を貸し与えてくれるわけがない!」
オーブはガシャコンスパロー鎌モードを、両手で構える。疲労した敵を何度も斬りつけた。
「ガシャコンスパローは爆走バイク由来じゃない。なのに何であいつは使えるんだ?」
「オーブは単に、私達のガシャットによって強化されているわけではない」
「どういうことだ? 神」
「私達のこれまでの戦闘データと、本来はあり得ない異世界からの異物混入。それらが合わさり、何らかのバグを生み出しているのだろう」
「よくわからないってわけか。まぁ今は細かいことを四の五の言ってる時じゃない。頑張れオーブ!」
貴利矢の叫びを皮切りに、応援を始める永夢達。
オーブはガシャコンブレイカーブレードモードと、オーブカリバーを召喚。
ガシャット! キメワザ! マイティ! クリティカルフィニッシュ!
ガイはブレイカーにガシャットを挿入。
トキハナテオーブノチカラ
さらにオーブリングの中に、カリバーをかざす。
「オーブスプリームカリバー!」
両方の剣を天に掲げ、回転させる。いつもであればこのまま発射するのだが、今回は違った。
オーブは両腕を後ろに下げて疾走する。二本の武器で挟み込むように、剣を横に払った。
斬撃によるダメージと、傷口から入り込む膨大なエネルギー。
「諦めきれるかぁぁぁ!!」
ガラは断末魔をあげながら、爆死した。
結末を確かめたニコが、院内から出てくる。永夢もなんとかして近づいてきた。
オーブがガイの姿に戻る。それと同時にガシャットの絵柄は戻り、持ち主のもとにふわふわと帰っていく。
「厄介なものを持ってきて悪かったな、おつかれさんです」
「まったくだ」
ガイの発したことに対して、こう返す飛彩。
「でもガイさんがいなかったら、僕達は勝てませんでした。ありがとうございます」
永夢がガイにお礼を言う。そして次にゼロガシャットを手渡した。
「そうか、じゃあな。悪いが、いつまでもここにいるわけにはいかないからな」
ここに来る前に、ジャグラーから教えられたことを思い出すガイ。彼はガイに、強く念じさえすれば元の世界に帰れる、と言っていた。
彼はその言葉を信じ、実行に移す。すると彼の姿が瞬時に消える。
「それじゃ自分達も帰るとするか」
今回の事件を起こした財団Xの団員は末端でしかない。彼らは衛生省経由で逮捕され、しかるべき処置を受けた。当分の間、彼等が刑務所から出てくることはできないだろう。
当然ながら、中央は彼等を見捨てた。なので結局財団Xについての、更なる詳しい情報を得ることは叶わなかった。
一方で永夢達は、今日も終わりなきゲームに挑んでいく。患者の笑顔を取り戻すために。
「ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!」
ここまで駄文に付き合っていただきありがとうございました