「永夢! やっちゃって!」
「フィニッシュは必殺技で決まりだ!」
ハイパークリティカルスパーキング!
飛び上がり、キックの体勢を作るエグゼイド。
「シャイニングワイルドゼロショット!」
ゼロが腕をL字に組むと、そこから金色の光線が放たれた。
エグゼイドは瞬間移動でゼロの背後に回り、それをかわす。それから、ゼロの背中に一撃目をいれた。
その後も彼は、ゼロを翻弄しながらキックを打ち込む。
最後の一発─合計して100発目─が入ったとき、ゼロに無数のヒットが浮かび上がった。
キュウキョクノ....イッパッ! カンゼンショウリ!!
激しいダメージに苦しむなか、ゼロは元の人間の姿に戻る。
「これで終わったと思うなよ……仮面ライダー。我々はお前達を倒すために、お前達をここに誘き寄せていたのだ」
「この事は誰にも話していなかったのだが、私のガシャットが壊されると、自動的に建物内の爆破システムが作動される」
「傷ついた貴様らを殺すくらいは出来るだろう……」
それを最後に、彼は言葉を発しなくなった。体力の限界を迎え、力尽きたようだ。
「なるほどね。それで自分達をここに誘きだしたわけか」
「壁をぶち破ってここをあとにする。お前達は俺とレーザーに掴まれ」
スナイプはジェットコンバットを起動。そのとき彼は、バンバンシューティングをニコに預けていたことを思い出した。
そこで彼はガシャットをキメワザスロットに挿し込み、ゲーマを呼び出す。これに乗って帰るつもりだ。
ブレイブ、ゲンム、ポッピー、パラドクスはキメワザによって、壁を破壊した。
彼らはそこから吹き荒れる風に、若干姿勢を崩されるが、特に何も起こらない。
「人数が多いからな……神とポッピーはガシャコンバグバイザーⅡに、パラドは永夢の中に入ってくれ」
レーザーが指示を出す。彼はポッピーからバグバイザーを預かり、彼女とゲンムをその中に入れた。
パラドクスも、エグゼイドの中に。
飛び立つ準備が完了する。そのとき唐突に、エグゼイドがこんなことを言い出した。
「皆さんは先に行っていてください。僕は後から行きます」
「何を考えている? 研修医」
「ここには患者さんが残されています」
ここで言う"患者さん"とは、永夢達と戦った白スーツの男達を指す。彼らは今も傷ついたまま、階段や踊り場に倒れている。
「永夢らしいな。いいぜ、そこの二人は自分達が運んどいてやるよ」
レーザーはそう言うと、太り気味の男と痩せ形の男を回収する。彼らはそのまま、地上へ向かった。
エグゼイドは猛スピードで、来た道を戻る。
爆発は少しずつ起こるように調整されていた。そのため、至るところで道が塞がれていたり、足場がなくなったりしている。
彼はそれを乗り越え、どんどん奥へと進む。
幸いにも道は一本だったので、すんなりと敵を回収することができた。
────────────
黎斗達は、ビルから少し離れたところに降り立った。ビルが壊れゆく様を眺めている。
時刻はすでに午後七時。辺りはもう真っ暗だ。彼らが脱出してから既に七分が経っている。
「建物はもうもたない……何をしている! 研修医!」
「自分は永夢を信じる」
「永夢……早く来て!」
「まずい! 伏せろ!」
大我が叫んだ次の瞬間、建物から大量の炎が吹き出す。轟音が鳴り響き、ビルは木っ端微塵に粉砕された。
「永夢……私に許可なく消滅することは許さない……」
「すみません。遅くなりました」
彼らが諦めかけたそのとき、永夢とパラドは患者を連れて跡地から歩いてくる。
二人は、レーザーとゲンムが戦った男を助けるために、下へ下へ向かっていた。最下層に辿り着いたとき、ようやくその男を見つけることができた。
そこは地下だったので、爆発の影響を受けない。そのため、彼らは爆発が治まるまで、そこに身を隠していたのだ。
「ここがあの世なのか……? 違うまだ生きてる」
太りぎみで白スーツの男が、意識を取り戻す。辺りを見回しだ彼は、状況を理解できずに悩み始めた。
「なぜ俺がまだ生きている?」
「お前達に聞きたいことがある。どうしてこんなことをした?」
飛彩が尋ねた。すると男が、口元をにやけさせながら話始める。
「貴様らを誘き出した理由は二点。一つめは貴様らの抹殺、もう一つめは……」
「もう一つめは、本部に大量のウルトラガシャットを届けるまでの時間稼ぎだ!」
「不正なガシャットが他にもあるというのか!?」
バグバイザーⅡの中にいた黎斗神が激昂。
やや高くなったその声は、周りに騒音として受け取られた。
「その力を使って、自分たちにリベンジってわけ?」
「自惚れるな。そのガシャットはもっと壮大な計画のために使われるのさ」
言い終わると、彼は再び口を閉じた。
「本部ってのはどこだ? 答えろ!」
大我の訴えもむなしく、男は喋ろうとしない。
「早くなんとかしないと……」
言いかけたとき、永夢は倒れた。体力の限界に達していたからだ。
明日那は救急車の手配を始める。しばらくすると到着した。彼らはその中に、財団Xのメンバー八人と永夢をいれる。
言葉には表していないが、大我にニコを心配していた。彼は飛彩の機転もあり、一足先に根城に戻る。
貴利矢と明日那はバグスターであるため、CRまでワープした。
残された飛彩はタクシーを呼ぶと、それに乗って聖都大学附属病院に向かう。
永夢を含む患者の手当ては、総出で対処がなされた。何時間もの間一切気を抜くことなく、激しい戦いに身を投じた後にも関わらずだ。重傷者が一人もいなかったのが唯一の救いか。
処置を終わらせた後、ドクター達はしばし休憩を取っていた。顔には疲れがはっきりと見られる。
彼らは出前でケーキとロコモコを頼んだ。それが届けられるやいなや、彼らは一斉にがつがつと食べ始める。
大我もクリニックに帰ってきた。だが電気はすべて消えている。彼はスマホを取り出すと、その光を頼りに院内を進んだ。
「ニコはもう寝たか……」
「お帰り! 大我!」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
大我は廃病院を根城にしているにも関わらず、幽霊の類いが苦手だ。
それが発覚したのは、ニコと二人で遊園地に遊びに行ったとき。なので当然ニコもその事を知っている。
「お帰り、大我。驚かせてごめんね」
「あ……あぁ、怪我はないか?」
「はぁ? 私が雑魚相手に傷つけられるわけないじゃん!」
再び平穏な日々に戻る。
しかしこれは、一時的なものに過ぎなかった。まもなく、別世界からの来訪者がやって来るのだから。