のんびり口調の可愛い妹   作:ブリザード

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題名だけ見るとラテの話、みたいな感じですけどそんなことはありませんので。


第7話 こき使われるラテと弄ばれるラテ

俺の妹、モカには幼馴染がいる。それも4人も。気が強い蘭、頑張り屋さんのつぐちゃん。甘いもの大好きひまりちゃん。姉貴気質な巴。モカも含め5人はバンドを組んでいてとても仲良しだ。軽い言い合いをしてるところを見た事があっても喧嘩をしているところなど見た事がない。

まぁ、そんなことはどうでもいい。この5人が揃うととても賑やかだ。笑いが絶えない。それは俺が一緒にいたとしても同じだ。でも……

 

「ねぇねぇお兄ちゃん。これ持って〜」

 

「これもお願い、ラテ」

 

「あ、これもお願いしますラテさん!ほら、つぐも持ってもらいなよ!」

 

「いや、でもラテ君大変そうだし。よかったら手伝おうか?」

 

「つぐは本当優しいな。あ、ラテ。これもお願いな」

 

でも、この5人と買い物に行くのはとても辛い。何故なら、1人だけ男である俺がいつも荷物持ちをさせられる事となるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、お前ら。これはいくらなんでもやりすぎじゃねえのか?いじめだよな?なぁこれいじめだよな!」

 

「いいじゃないですかラテさん!こんなに可愛い女の子と一緒に買い物に行けるんですよ!」

 

「ばっか!モカが可愛いのは認める!モカの荷物を持ってやるならいくらでもしてやるが他のやつの荷物を持ってやる義理はない!」

 

「あいっかわらず、引くレベルのシスコン。しかも遠回しにモカ以外の私達は可愛くないって言ってるように聞こえます」

 

俺の両手には10を超える紙袋を持たされている。今日は全員休日でバンド練習も休みという事で6人でショッピングに来ているわけだが。まぁ当然のごとく俺は荷物持ちをさせられている。

 

「もうみんな。ラテ君がいるからって頼りすぎだよ。ラテくん貸して。私も少し持つから」

 

「つぐちゃん……まじやさしー。ほら、お前らもつぐちゃんを見習え!この優しくてスーパーつぐってるつぐちゃんを!!」

 

「お兄ちゃん、つぐってるの使い方間違ってるよ〜」

 

「え、まじ?」

 

「あの、つぐってるって?」

 

説明しよう。つぐってるとは。モカが考えた頑張るのつぐちゃんバージョンだ。多分これであってるはず。知らないけど。

 

「男のくせに泣き言言うなんて、恥ずかしくないの、ラテ?」

 

「買う物全部俺に持たせるような鬼女に言われたくねえよ蘭」

 

「でもまぁ、流石に持たせすぎたな。アタシも少し持つよ」

 

「ありがとう巴!」

 

流石に見るに堪えなかったのか。俺も正直辛いところもあり、荷物の半分を巴とつぐちゃんが分けて、俺から受け取った。え、モカの荷物?もちろん俺が持ってるぞ。モカの荷物が盗まれたら大変だからな。俺が肌身離さず持っていることにした。

 

「ねぇねぇラテさん!私気になることがあるんです!」

 

「なんだ?」

 

しばらく次の店を探しつつ歩いていると前を歩くひまりちゃんがクルッと俺の方を向いた。後ろ向きで歩くのは危ないと思うんだが……

 

「ラテさんって、モカを除いた私達4人だったら誰が1番好みですか?」

 

「モカ」

 

「モカを除いたって言ったでしょ!も〜!」

 

いや、モカを除くっていう選択肢とか俺の中にないんだけど。俺に好みの女性を聞くなら普通に聞くといい。全部モカって答えるから。

 

「ひまり、このシスコンに何を言っても無駄だよ。頭の中の8割がモカで埋まってるんだから」

 

「おい蘭。俺のこと褒めてんのか?」

 

「んなわけないでしょ、キモい」

 

てっきり褒め言葉かと思って勘違いしてしまった。

 

「お兄ちゃんはホントあたしのこと好きだよね〜」

 

「モカもでしょ」

 

「とーぜん〜。ラブ〜♡だよ〜」

 

「俺もモカのこと、ラブ〜♡だぞ〜」

 

「「「「……………………」」」」

 

「ごめんなさい。冗談ですから。モカのことは確かに好きだけど、今のラブは冗談だからそんなに引かないでくださいお願いします」

 

俺がモカの真似をすると、モカを除く4人が俺の事を蔑んだ目で見ながら、遠ざかって行った。まさかつぐちゃんまでそんな顔をするなんて……

 

「ま、まぁいいです!では、もう1度聞きます。ラテさんは私達の中で誰が1番好みですか?」

 

「そう言われてもなぁ………」

 

蘭は気が強いけど、デレたら可愛いし。何より自分の言ったことでたまに自爆するところが面白い。プレゼントとか照れながらも渡してくれそう。

ひまりちゃんはムードメーカー的存在で感情豊か。一緒にいると絶対退屈しない。一緒に出かけると、行き当たりばったりになりそう。

つぐちゃんは頑張り屋さんでいつもその頑張る姿を見て癒されることができる。デートプランとか必死に考えてくれそう。

巴は俺よりしっかりしているし、年上の俺でも頼りたくなる何か持っていて、かっこいい。年上でも率先して引っ張ってくれそうだな。

ついでに言うとモカは…………いや、説明すると収まりが効かないからやめておこう。

 

「誰か1人、だなんて無理だな。選べない。みんな魅力的で可愛いから。俺にはもったいない存在だよ」

 

「つっ……!!」

 

「ふえぇっ!?」

 

「ちょ、ちょっとラテ君!?」

 

「ま、まさかシスコンのラテの口からそんな言葉が出るなんて……」

 

蘭、ひまりちゃん、つぐちゃん、巴の順でそれぞれ違った反応を見せている。でも1つだけ同じ点があった。

 

「おぉ〜、みんな顔真っ赤だ〜」

 

「本当だ。トマトみたいになってる」

 

そう。4人とも顔を真っ赤にしていたのだ。そんな変なことを言ったつもりはないんだが、何か間違っていたのだろうか?

 

「ひ、ひまりちゃん!今度はあっちの服屋に行こ!あの服なんかひまりちゃんにとっても似合いそうだよ!」

 

「へっ?あ、うんそうだね!行こうつぐ!」

 

「あ、アタシ達も行こうぜ蘭!ほら、そこに気になるアクセサリーがあるんだよ」

 

「う、うん、そうだね。あたしも欲しいのがあったんだ」

 

俺とモカを除く4人がそれぞれ分かれて違う店に入って行った。

 

「なぁ、モカ?」

 

「ん〜?」

 

「俺なんか変なこと言ったか?」

 

「知らなーい。お兄ちゃん、あたしたちも行きましょー」

 

「あぁ…………ってなんで腕組むんだ?」

 

「なんとなくだよー。いや〜?」

 

「いや、全く。むしろ歓迎する」

 

何を思ったのか、モカは俺の荷物を持つのを邪魔にならない程度に俺の腕を取って歩き出した。本当にどうしたんだろう、みんな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、まさかラテ君の口からあんな言葉が出てくるなんて」

 

「だなー。あの返しは流石に予想外だったよ」

 

「ラテさんってもしかしたら天然のタラシなのかも!」

 

「そんなわけないでしょ。だってあのシスコンだよ?」

 

ショッピングの休憩中。俺たち6人はひと段落して近くにあったカフェで休憩していた。何故か、俺とモカ以外の4人が隣のテーブル席に座り、俺とモカが2人でテーブルをもう1つ使うという事になった。みんなで一緒に座った方が楽しいのに。

 

「ねぇ、お兄ちゃん。あーんして〜」

 

「ん?いいぞ。ほら、あーん」

 

「あーん。ん〜、おいし〜」

 

モカに俺の頼んだケーキを食べさせてあげる。側から見たらこれはカップルに見えるのだろうか。いや、絶対見えるな。だってほら、周りからの視線が痛いもん。あそこにいる男性店員なんて唇から血が滲むほど歯をくいしばってるし。

 

「あんな事平気でしてるんだよ?モカ以外の女の子に興味あるわけない」

 

「でも気にならない?私達の中の誰かがラテさんを誘惑したらどうなるかって」

 

「それは………気になるね」

 

「あぁ。確かに気になる」

 

隣の席で一体何をこそこそ話してるんだ?物凄く気になるんだけど。まぁいいか。モカが隣にいてくれるだけで俺は幸せだ。

 

「はいお兄ちゃん。あーん」

 

「あーん。んー、うまいぞモカ。ありがとな」

 

「えへへ〜」

 

お返しに俺にケーキを食べさせてくれたモカの頭を撫でると、唇から血を滲ませていた男性店員が走って飛び出して行った。

 

「でも、その役って誰がするの?」

 

「それは………じゃんけん?」

 

「それ、無理やりやらされる感じになるからヤダ。ていうか、あたしはやりたくない」

 

「じゃあ、蘭は抜きねー。巴はどうする?」

 

「んー。アタシもパスかな。そういうのって苦手だし」

 

「じゃあ私かつぐだね。どうする?」

 

「えっと、私もどうやって誘惑すればいいかわからないから、ひまりちゃんに任せるよ」

 

「何言ってんだつぐ。ラテを誘惑する方法なんて簡単だぞ」

 

「えっ?」

 

「だって、あいつに……………………」

 

「ええぇっ!!??」

 

なんだ?隣でつぐちゃんが大声をあげて叫んでるぞ?なにかあったのかな?

 

「む、無理無理。私には無理だよ」

 

「大丈夫。つぐならできるよ!」

 

「なんで私がする事前提に……ひまりちゃんがやってよ〜」

 

「今回はつぐに譲ってあげる。蘭も巴もそれでいいよね?」

 

「いいんじゃない、別に」

 

「あぁ。つぐならきっと上手くできるさ」

 

「う、うーん……わ、わかった!私頑張ってみるね!」

 

今までこっそり話し合っていたのに、いきなりつぐちゃんが席を立ち、俺の向かい側の椅子に座った。

 

「えっと、つぐちゃん?どうかした?」

 

「すー、はー。すー、はー」

 

なんでこの子は深呼吸してるんだ?一体俺の目の前で何をするつもりなんだ?

 

「つぐ〜?どしたの〜?」

 

「モカの言う通り。一体『よし!』えっ?」

 

何か掛け声をあげて、フォークを持つと、ケーキを一口サイズに切ってそれを刺し、俺の口の方に持ってくる。

 

「お、おい。つぐちゃん?一体何を……」

 

「…………お、」

 

「お?」

 

「お兄ちゃん……あーん」

 

「え………………」

 

目を潤ませ、必死な顔で俺の口にケーキを食べさせようとしてくれるつぐちゃん。そんなつぐちゃんを見て、心臓がドキッとするのと同時に俺は口を開けていた。

 

「あ、あーん」

 

口を開けた俺につぐちゃんはゆっくりケーキを口の中に入れた。食べたケーキを咀嚼すると、口の中いっぱいに生クリームの甘い味が広がる。

 

「ど、どうかな、お兄ちゃん?」

 

「え、あ、えっと。すごく美味しい、です」

 

「そ、そっか。よかったー。あはは……」

 

とっさの不意打ちだったが、今の一口のケーキ。めちゃくちゃ美味しく感じた。理由は何か。つぐちゃんが食べさせてくれたから?つぐちゃんが一生懸命だったから。否、つぐちゃんが俺の事をお兄ちゃんと言いながら食べさせてくれたから!

 

「つぐちゃん!」

 

「は、はい!?」

 

「俺の妹になってください!」

 

「えっ?」

 

……ってしまった!!何言ってんだ俺は!これじゃあただの変態じゃねえか!!!

 

「うわー、これは予想以上の反応」

 

「つぐだったからこの反応だったのかもな」

 

「うん。あたしとか巴だったらこうはいかなかった」

 

「お、お前ら!つぐちゃんになんて事させてんだ!おかげでちょっと……いや大分ときめいたじゃねえか!」

 

やばい。想像以上にやばかったぞ今の。もう理性が崩壊寸前なくらい!つぐちゃんもいきなり俺が変なこと言うから顔真っ赤にしてるし!

 

「ねぇねぇ、お兄ちゃん〜?」

 

「は!しまった!俺とした事がモカ以外の女の子にときめくなんて!!」

 

「お兄ちゃんの妹はあたしだけだよ〜?」

 

「うん。もちろんだ!わかってるぞ!」

 

「じゃあ他の子にうわきなんかしたらダメだよね〜?」

 

「え、いや、今のは浮気とかじゃなくて」

 

「うわきだよね〜?」

 

……あれ?モカもしかしなくても怒ってる?

 

「お兄ちゃん、ちょっと正座して〜」

 

「いや、ここ、カフェ……」

 

「正座して〜?」

 

「…………はい」

 

俺は靴を脱いで、テーブル席の椅子の上でモカの方を向いて正座した。

 

「うーん……結論。モカの目の前でやっちゃダメだったね」

 

「うん。あんなに怒ってるモカ見たことない」

 

「いつもと変わらないようにしか見えないんだが」

 

「妹……私が……ラテ君の妹……」

 

「つぐもいきなり言われて壊れちゃった」

 

「とりあえず水飲ませてあげよう」

 

「だな。すいませーん、お冷1つくださーい」

 

テーブルの椅子の上で正座してる俺とそれに対して俺に説教するモカ。顔を真っ赤にして壊れた機械のようになったつぐちゃんとそれは介抱する3人というなんともカオスな状況が出来上がってしまった。てか、元はと言えばこんなことしようとしたこいつらが悪い!

 

「お兄ちゃん、聞いてるの〜?」

 

「はい、聞いてます!ごめんなさい!」

 

それから1時間。俺はモカの説教を聞き続けることとなり、罰として1週間、モカの部屋でモカと一緒に寝ることになった。……罰というかご褒美じゃね?




つぐちゃんが妹というのも全然ありな気がします!
あと、今回からAfterglow面々の一人称をゲーム通りにしました。
これより前の話は時間があるときに直します
感想と訂正があればお待ちしております。

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