て事で今回はハロハピのあの女の子の話です。
休日。モカのバイトの日に俺は相変わらず街をブラブラ歩いて暇を潰す事にした。べ、別に友達がいないなんてわけじゃないぞ!
「うーん暇だ。つぐちゃんの家にでもお邪魔しに行こうかな」
そう決めた俺はつぐちゃんの家へと足を向けようとした。
「ふえぇ……」
「ん?」
「ふえぇ……ど、どうしよう」
何か聞き覚えのある声が聞こえたような。というかこの独特の鳴き声。忘れるわけがない。
「ま、また迷子になっちゃったよ〜……」
声の方に近づいてみると案の定その子はそこに立っていた。
「松原さん松原さん」
「え…あ、青葉君!」
青葉君、と俺を苗字で呼んでくれるこの子は松原花音さん。前にモカとひまりちゃんが俺の彼女と勘違いした女の子である。
「どうしたの?……って聞く必要もないか。また迷子?」
「う、うん、そうなの。つぐみちゃん家のカフェに行こうとしてたんだけど、ここがどこなのかわからなくて」
彼女は極度な方向音痴である。実際今いるところもつぐちゃんの家とは逆方向であるのに、なぜこっちに来てしまうのか。
「そしてなぜ俺は迷子の松原さんとよく会うのだろうか」
「青葉君?」
「あ、いや。なんでもない。つぐちゃん家なら俺も今から行こうかなって思ってたんだけだ。良かったら一緒に行く?」
「ご、ごめんね。もうここがどこなのかわからなくて」
「全然気にしなくていいよ」
こうして俺の暇な暇な休日に松原さんを連れて行くという役目をする事となった。
「そういえば青葉君は何してたの?」
「おれ?俺は……暇だから街を1人でブラブラしてただけだよ」
「そ、そうなんだ……あれ?でも、今日って休日だよ。友達と遊んだりしないの?」
「うぐっ……」
痛いところを突いてくる松原さん。別に友達がいないというのをバラしてもいいが、自分で言うとそれは悲しくなってくるのであまり言いたくない。
「まぁ……あれだ。たまには1人でこうしてブラブラしたいなって思う事があるんだよ」
たまにはではない。いつもである。
「そっか……あ、ごめんね!1人でブラブラしたいのに私の用事につき合わせちゃって」
「気にしなくていいよ。1人より2人でいる方が楽しいしね」
むしろここで松原さんと会えたのはラッキーである。モカのバイト終わりまで楽しく過ごす事ができる。
「ありがとう、青葉君。青葉君ってとっても優しいね」
「そうか?そんな事ないと思うけど」
「ううん、そんな事あるよ。私が迷子で困ってる時、青葉君はいつも私を助けてくれるんだもん」
「そりゃそうだよ。困ってる女の子を見過ごす方がどうかしてるって話だし。それに松原さんってなんかほっとけない感じだし」
「ほっとけない感じ?」
「うん。なんていうか……困ってる時の姿が捨てられそうになっている子猫や子犬みたいな感じで」
それにあんな風にふえぇ、と困ってるような鳴き声を言われたら流石にどうにかしてあげたいと思うのか人間というものだろう。他の人は知らないけど。
「子犬……そんな風に見えるのかな?」
「少なくとも俺にはね」
「そうなんだ………なんだか自分ではよくわからないかも。……そういえば。青葉君はつぐみちゃんの幼馴染なんだよね?」
「そうだよ。まぁ、つぐちゃんだけじゃなく、蘭やひまりちゃん。巴も幼馴染だぞ」
「う、うん。それでね、青葉君から見てつぐみちゃんってどんな子なのかな?」
「つぐちゃん?んー………何事も一生懸命頑張ってて、困ってる時はいつも相談に乗ってくれたり、助けてくれたりしてくれる凄く頼りになる女の子だと思うよ」
「そうだよね。私もつぐみちゃんに相談とかのってもらってて、いつも助けてもらってるの。私より1つ歳下なのに凄いよね?」
実際つぐちゃんはかなりしっかりしてるだろう。Afterglowの中でもあの子と巴は周りをよく見て行動してくれている。
「まぁそれがつぐちゃんの良さだからね」
「確かに……じゃあ、モカちゃんは?」
「モカか………」
俺から見るモカのいいところ。ありすぎるな。それを絞って少ない言葉で話すこと………
「無理だな」
「え?」
「モカの良さを二言三言で語ることなんて不可能だ。端的にまとめようとしても二十言くらいは必要になる」
「へ、へぇ〜。そうなんだ〜」
「うん。モカは魅力的な妹だからな……って、あれ?心なしか松原さん、少し俺から離れてない?」
「う、ううん、そんな事ない、よ?」
「なぜ疑問形……」
そういえば松原さんには俺がとてつもないシスコンという話をした事がなかったような。だから少し引いてるのか?
「ま、まぁいいや。その辺の話はつぐちゃん家のカフェでゆっくりしよう。もうすぐ着くしね?」
「う、うん。そうだね」
(も、もしかして、青葉君って凄いシスコンなのかな?)
「いらっしゃいませー!あ、ラテ君。と、花音さん?」
「こ、こんにちは、つぐみちゃん」
「ここに向かおうとしていた迷子の松原さんを拾ってきた。席2つ空いてる?」
「え、あ、うん。空いてるよ。案内するね」
普段見ない組み合わせにまたついていけてないのか、つぐちゃんは戸惑いながらも席に案内してくれる。
「花音さんとラテ君が一緒って見た事ないからびっくりしちゃった……あ、ご注文は?」
「私はミルクティーと後……苺のショートケーキで」
「俺はカフェラテとチーズケーキ。後、つぐちゃんのさいっこうに可愛いスマイルで」
「もぅ。ラテ君、そればっかりだよ?すぐ作るから待っててね」
いつもの俺の冗談にクスッ、と微笑んでくれたつぐちゃん。今日もつぐちゃんはとてもつぐっているみたいだ。
「仲、いいんだね?」
「ん?そりゃもちろん。幼馴染だから」
「いいな〜。青葉君とつぐみちゃんが羨ましくなっちゃう」
「そうかな?」
「うん!幼馴染って関係になんだか憧れちゃうかも」
目をうっとりさせながら俺と少し遠くにいるつぐちゃんを交互に見る松原さん。
「別に幼馴染って事にこだわらなくてもいい気がするけど。幼馴染じゃなくても、松原さんとつぐちゃんは仲良いし、俺と松原さんも仲良くなれたでしょ?」
「それはそうなんだけど……でも、青葉君は私の事を松原さんって呼ぶからなんだか少し寂しいかも」
「あー、それは………」
少し前にあってからというものの、もう松原さんと呼ぶのに慣れてしまっていた。同い年なのにさん付けで呼ぶのもおかしな事かもしれないな。
「うーん……じゃあ、松原ちゃん?いや、なんか違う。でも、呼び捨てっていうのも微妙な感じだし」
「青葉君の好きなように呼んでくれて大丈夫だよ」
「そう?それじゃあ………花音ちゃん、でどう?」
「ふえぇ!?」
「あ、ごめん。嫌だったかな?」
「う、ううん、違うの!いざ名前で呼ばれちゃうと恥ずかしかった…から」
モジモジしながら顔を赤くして俯いてしまう花音ちゃん。これは少し面白いかも。
「ねぇ、花音ちゃん?」
「な、なーに?」
「呼んでみただけ〜」
「ふえぇぇぇ……」
「……花音ちゃん」
「ふええぇぇ」
「あはは。やっぱり反応が面白い」
「も、もう!からかわないでよ〜!」
ぷくー、と頬を膨らませて睨んでくる。うん、怖くない。むしろ可愛い。
「ごめんごめん。もうしないから」
「ラテ君、あんまり花音さんを困らせたらダメだよ?」
花音ちゃんの反応を見て面白がっていると、つぐちゃんがミルクティとカフェラテをそっと置いてくれた。いつの間に席に来てたんだろう。気づかなかった。
「ごめんなさい花音さん。ラテ君が花音さんを困らせてるみたいで」
あれ、なんでつぐちゃん俺の保護者みたいになってるの?
「う、ううん、大丈夫だよ。青葉君っていつもこんな感じなの?」
「そう…ですね。多分いつも蘭ちゃんやひまりちゃんにからかわれてるから、その影響なのかも」
「そんな事ないぞ!確かに蘭やひまりちゃんにはからかわれる事多いけど、でも、それとこれとは話が別!!」
「そうなの?」
「そうだよ。多分……おそらく…」
「青葉君、だんだん自信がなくなってきてるよ」
別にあいつらにからかわれる事が俺のストレスになっているわけではないはずだ。うん。絶対に。
「そ、それはそうと。俺も花音ちゃんって呼ぶわけだし、花音ちゃんも俺のことを好きに呼んでくれてもいいよ?」
「あ、うん。それじゃあ…………ラテ…君でいいのかな?」
「うん。それで大丈夫!」
「ラテ君……ラテ君。な、なんだか改めて名前で呼ぶのって恥ずかしいね」
少し頬を赤らめながら俺の名前を呼んでくれる花音ちゃん。うん、可愛い。花音ちゃんは俺の癒しの人第3号になるかもしれない。
「そのうち慣れると思うから大丈夫。じゃあ改めて。これからもよろしくね、花音ちゃん」
「こ、こちらこそ。よろしくね、ラテ君!」
改めて花音ちゃんと仲良くなれて気がした。いやー、よかったよかった。
「……2人とも、私の事忘れてないですか?」
「「あっ……」」
別につぐちゃんの事を忘れていたわけではないけど、なんだか恥ずかしい思いをさせて、申し訳なくなった俺達は追加で飲み物を頼んだ後、つぐちゃんも交えて3人でお茶しながら楽しんだ。
最近モカと同じくらいつぐちゃんがお話しに出てくる気がする。
つぐちゃんって書きやすいんですよね(言い訳)
感想と訂正があればお待ちしております。