のんびり口調の可愛い妹   作:ブリザード

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夏といえば!
ホラーや怪談だと思うんです。今冬だけど。

という事でお久しぶりです。
投稿はずっとしたいと思ってても、リアルが忙しい&ネタが思いつかないブリザードです。
相変わらず更新速度は遅いかもですがこれからも頑張ります。



第14話 ホラー映画にビビる3人と怪談にビビる4人

「あー、1人って本当に暇だな。今日はモカが泊まりでつぐちゃんの家に行っちゃったし、どうしよう……」

 

現在、夜の10時。今日はバイトもなく、モカ達幼馴染5人もお泊まり会をするらしく男である俺がそんな中に混じれるわけもないので家で1人で暇していた。

 

「んー、久しぶりにゲームでもするかな。それとも読書するか。どちらにしろあんまり時間は潰れないか」

 

特にやりたいゲームがあるわけでもないし、読みたい本があるわけでもない。本当どうしよう。暇すぎる。

 

「あー、暇だー。もう寝るか?………っと、モカからメールだ」

 

ベッドの上に転がろうとした瞬間、携帯に着信が入った。送ってきたのはモカである。

 

「えっと……?」

 

『お兄ちゃん、ヘルプミ〜』

 

「………なんだこれ?」

 

要件がよくわからないので、モカに電話をしてみた。すると、2コールも待たないままに繋がった。

 

『あ、お兄ちゃん?いまからつぐの家にきて〜』

 

「はぁ?いきなり何を?てか、今から!?」

 

『そー。いまから〜。それじゃあよろしく〜』

 

「あっ、おい!まて…………切れた」

 

一体なんなんだ?今すぐにつぐちゃんの家にきてくれだなんて……

 

「とりあえず向かうか。暇してたし」

 

着替えた後、必要最低限のものだけ用意して、家を出て、途中コンビニに寄ってお菓子を買った後つぐちゃんの家へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つぐちゃんの家に着くと、夜遅いと言うのにつぐちゃんのお母さんが家に入れてくれて、そのままつぐちゃんの部屋に向かった。

 

「モカー。つぐちゃんー?いるかー?」

 

『あ、お兄ちゃん。どうぞはいって〜」

 

つぐちゃんの部屋のドアをノックして声をかけると、扉の向こうからモカの声が聞こえたので中に入る。

 

「失礼しまーす。って、モカ。ここはお前の部屋じゃない…………何この状況?」

 

部屋に入ると、気になるものが目に入った。つぐちゃんの整頓された綺麗な女の子らしい部屋より、俺の愛しのモカがパンを食べる姿より、困った顔をするつぐちゃんより何より、つぐちゃんのベッドの上でうずくまる蘭、巴、ひまりちゃんの3人の姿が。

 

「どうしたんだあれ?」

 

「えっとね〜…………なんだっけ?」

 

「忘れるなよ!!」

 

「えへへ〜。あむっ」

 

「いや、パン食べてないで何があったか話してくれ。後こんな夜遅くにパン食べるな。太るぞ」

 

「だいじょーぶ〜。ひーちゃんにカロリー送ってるからモカちゃんは太らないんだよ〜」

 

「んなわけあるか!!」

 

ダメだ。話が全然進まない。パンを食べるモカは一旦放置して、今度はつぐちゃんに向き直った。

 

「ごめんつぐちゃん。何があったの?」

 

「え、えっとね。最初はみんなで楽しくお喋りしてたんだけど、途中でひまりちゃんが家から持ってきたホラー映画をみんなで見ようってなっちゃって」

 

「ホラー映画?」

 

「お兄ちゃんこれだよ〜」

 

モカがポチッとリモコンの電源ボタンを押すと、テレビ画面いっぱいにホラー映像が映った。

 

「うぉっ。びっくりした」

 

「やめてモカ!消して!すぐに消して!!」

 

「はーい」

 

ビクビクしながら震える蘭に注意されたモカは再び電源ボタンをポチッと押した。

 

「なるほどな。見ようって言って見だしたのはいいけど、3人がビビりまくってベッドでうずくまって動けなくなったと」

 

「そーだよ〜。3人とも無理しなくても良かったのにね〜?」

 

「だ、だって。これそんなに怖くないって店員さんに言われたから持ってきたのに」

 

「ひまりの言葉を信じたアタシ達が悪かったんだよ…………」

 

「もうやだ。絶対夢に出る……」

 

確かに持ってきた本人であるひまりちゃんがビビってるのも変な話だ。

 

「でも意外だな。モカはともかくつぐちゃんはこういうの苦手じゃないのか?」

 

ひまりちゃんや蘭がここまで怖がるのは納得だ。巴は流石にちょっとびっくりだったけど。でも、それよりも普通にしているつぐちゃんの方が予想外だった。

 

「確かに怖かったけど、泣きそうになったりする程ではなかったかな」

 

「へぇ……っと、話が脱線しちまった。結局のところ、俺はどうしたらいいんだ?」

 

「お兄ちゃんは今夜ここで泊まるの〜」

 

「…………へっ?」

 

モカさんや。今私になんて言ったのでしょうか?

 

「…………聞き間違いだよな。泊まるって?」

 

「聞き間違いじゃないよ〜」

 

「………誰が?」

 

「お兄ちゃん〜」

 

「どこに?」

 

「ここ〜」

 

「お前らと一緒に?」

 

「そ〜」

 

「…………帰るわ」

 

「「「ダメ!!!」」」

 

「うぇっ!!」

 

踵を返して部屋から出ようとしたところ、うずくまっていた3人が俺の肩を掴んだ。

 

「帰ったら絶交します、ラテさん!!」

 

「帰ったら一生ラテの事許さない」

 

「アタシ達のために一肌脱いでくれ!」

 

巴はともかく他2人は懇願ではなくただの脅しではないのだろうか。

 

「ふざけるな!!妹であるモカが一緒に寝るのはいつでも歓迎するけど、お前らは流石に厳しい!!」

 

「なんでですか!こんなに可愛い美少女5人と一緒に寝られるんですよ!!私だって好きでこんな事言ってるんじゃないんですから!」

 

「だから厳しいって言ってるんだよ!!俺の理性持たなくなっても知らねえぞ!あと、好きで言ってるんじゃないなら俺呼ぶな!てか、帰らせろ!」

 

「どうせラテはただのチキンだから理性持たなくなってもあたし達に何も出来ないでしょ」

 

「チキン言うな!!」

 

「蘭。ラテはチキンじゃなくてヘタレだぞ」

 

「どっちも一緒だよ!」

 

ていうか、ボソッという蘭の言葉って結構心に刺さるんだよな。チキンとか言わないでほしい。巴までヘタレとか言ってくるし、泣きそう……

 

「大体この部屋で6人で寝るってどうやって寝るんだよ」

 

「2人がつぐのベットで寝て、他4人が床に布団敷いて寝たらいけるんじゃないか?」

 

「よし。だったらその2人の方は俺とモカで決定だな」

 

兄妹で同じところで寝る。何もおかしいことはない。

 

「お兄ちゃん、ここあたし達の家じゃなくて、つぐの家だよ〜」

 

「わ、私もちょっと遠慮して欲しいかな。モカちゃんはともかくラテ君が私のベッドで寝るのは流石に……」

 

「ていうか、今のラテさんの発言、普通にセクハラですよね」

 

「あぁ、今のはひどいな」

 

「ラテ、サイテー」

 

「たった一言でここまで貶められるってお前ら酷くね?」

 

顔を真っ赤にして言うつぐちゃんに賛同するように他3人が俺の事を罵ってくる。いやまぁ確かに今の発言はどうかと思ったけども。

 

「じゃあもし俺がここに泊まって、俺が床で寝るのは確定だとして、俺が寝る位置は?」

 

「「「真ん中」」」

 

「俺に今日寝るなって言ってんのか?」

 

真ん中に横にさせられて可愛い美少女2人に挟まれて寝ろと?寝れるわけがねえだろーが。せめてモカを俺の抱き枕にさせてくれれば話は別かもしれない。

 

「だって怖いんですもん!」

 

「ホラー映画持ってきたひまりちゃんが悪いんだろ」

 

「だってほら、夏にお泊まりといえばホラー映画でしょ!」

 

「そのホラー映画見て自爆したのもひまりちゃんだからな」

 

「うぅ………」

 

「てか、別に俺がいなくてもお前らが固まってねれば怖くないだろ?床で寝るみんながぎゅーっとくっついて寝れば大丈夫だろうし。俺必要ないだろ?それに俺着替えもないしまだ風呂も入ってねえしな。うん、俺は帰る方がいいに決まってる」

 

まだ風呂も入ってない男とこの子達は寝たくないだろ。モカはどうか知らねえけど。

 

「……ラテさんガード固いね。風呂だってつぐの家の借りたらいいのに」

 

「あぁ。仕方ない。使いたくなかったけど、この手しかないな」

 

「うん。そうしよう」

 

ホラー映画にビビっていた3人はモカに耳打ちをする。なんだか嫌な予感がする。

 

「モカ、いい?」

 

「いいよ〜。かわりに、今度パンおごってね〜」

 

「あぁ。10個でもそれ以上でも奢ってやる」

 

「モカ、お願い」

 

「は〜い」

 

持ってきていたパンを全て食べきったモカがのそのそと近づいてくる。本当に…嫌な予感しかしない。

 

「お兄ちゃん〜?」

 

「な、なんだ?」

 

「もし今日お兄ちゃんがここに泊まってくれないなら、明日からお兄ちゃんと一緒にいる時間10分削っちゃうけど、いい〜?」

 

「泊まります!青葉ラテは本日つぐちゃんの家に泊まらせてもらいます!!」

 

結局、モカに頼みごとや条件を出されたら断れないのが俺なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後。俺はつぐちゃんの家でシャワーだけ貸してもらい、体を洗ってから部屋に戻って来た。部屋に戻ると就寝の準備が完了したのか、布団が4つほど並んでいた。

 

「……で、どうやって寝るんだ?言っとくけど俺は真ん中は絶対無理だぞ。絶対身がもたない」

 

「ぶーぶー!幼馴染なんですからそんな事気にする必要ないと思います!」

 

「いや、逆にお前らが気にしない方がおかしいだろ。妹であるモカはともかく」

 

「あたしはお兄ちゃんの隣で寝られるならなんでもいいよ〜」

 

「それだといつもと変わらないでしょ」

 

「ならじゃんけんだな。とりあえず勝ったやつがラテの両隣を独占できるって事でいいだろ」

 

「そうしよう!」

 

「わかった」

 

…………あれ?いつの間にか俺が真ん中で寝るのが確定している。おかしいな。俺の意見は全員無視なんだろうか?

 

「わ、私は別に自分のベッドで寝るから大丈夫だよ。じゃんけんはみんなでしてくれたらいいから」

 

「よし、ライバルが1人減った!!」

 

つぐちゃんの事をライバルというひまりちゃん。この子はどれほど俺の隣で寝たいのだろうか。もしかしてひまりちゃん、俺の事を…………いや、そんな事あるわけないか。

 

「つぐ〜、いいの?お兄ちゃんの隣で寝られるまたとない機会だよ〜?」

 

「だ、だってラテ君の横で寝るなんて……想像しただけで恥ずかしくて寝られないよ」

 

俺も恥ずかしいから絶対却下。でも俺に断る権利はない。理不尽な話だよ……

 

「でもお兄ちゃんって抱き枕にするとすごく寝心地いいんだよ〜。あったかいし、いい匂いがするし、ぐっすり眠れるよ〜?」

 

「そ、そうなの?」

 

「うん。あれは体験しないと後悔すると思うよ〜。例えるなら……モカちゃんが数量限定のパンを食べる時の至福のひとときくらいに……!」

 

「………………」

 

「つぐちゃん?別に考え直さなくても大丈夫だと思うよ?」

 

変なことを言うモカの話を聞いて考え直すつぐちゃん。

 

「それなら………いや、やっぱりダメ!私は参加できないよ!モカちゃん、変なこと言わないで!」

 

「えー。つぐ、もったいないよ〜」

 

「もったいなくないの!」

 

「しょうがないな〜。それじゃあ始めるとしますか〜」

 

「だな」

 

「うん」

 

「いくよー!最初はグー、じゃんけん……」

 

「「「「ポンッ」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、こうなったわけか」

 

電気を消した部屋の中で、ひまりちゃん、蘭、俺、モカが床に敷いた4つの布団の中で寝転び、つぐちゃんと巴がベッドの上で寝ることになった。今でもじゃんけんに勝った時の蘭の顔が俺の中で消えない。

 

「ラテ。離れたら怒るから」

 

蘭はくっつく、とまではいかないが俺の寝巻きの服の裾を掴んで離そうとしない。モカとくっついて寝ようにも蘭が手を離してくれない限り俺は寝る体制も変えることができない。

 

「理不尽だ……なぁ、いいだろ?蘭がひまりちゃんとくっついて寝たら。俺はモカとくっついて寝るからさ」

 

「あたしは別に蘭とくっついて寝てもいいよ〜。ひーちゃん、交代する〜?」

 

「えっ、いいの!?」

 

なるほど……モカとひまりちゃんが入れ替わってモカが蘭とくっついて、俺がひまりちゃんと…………って!!

 

「待て。それだけはダメだ」

 

「えぇっ!どうしてですか!!」

 

「そーだよ〜。お兄ちゃんのケチ〜」

 

「いや、だって…………」

 

俺は蘭の隣で寝転ぶひまりちゃんを見つめる。ひまりちゃんがダメである理由。それはあの高校1年生とは思えない破壊的までな胸。そう、胸である。ひまりちゃんとくっついて寝るということはあの破壊的まで胸が俺の体に押し付けられるということ。

 

「本当に。絶対に俺の理性がもたない。ひまりちゃんが隣に来るというならばその間に何か置こう。鞄でもなんでもいいから」

 

「理性?それって………………あっ」

 

「わかってくれた?」

 

「はい………そう思うと私もラテさんの隣で寝るのは少し恥ずかしくなってきました」

 

ひまりちゃんも自分で言って気づいたようだ。

 

「みんなももっと自分を大切にしないと。みんな可愛い女の子なんだから」

 

「かわっ!?」

 

「ラテ。そうやってたまに不意打ち言ってくるのやめて」

 

「あぁ。こっちまで恥ずかしくなる」

 

「私も、ちょっとずるいと思うかな?」

 

「お兄ちゃんのタラシ〜」

 

「なんで全員そんな否定的なんだよ。ていうかモカに言われた言葉が一番心に傷ついたぞ」

 

モカにそんな酷い事を言われるなんて思っていなかった。タラシじゃないのに。俺はモカ一筋なのに。

 

「モカ。心配するな。みんな可愛いとは思ってるけど、俺がこの世で1番愛してるのはモカだけだぞ」

 

「うわっ、ラテ、キモっ」

 

「ラテさん、気持ち悪いです」

 

「お前ら俺から離れろよ。キモいとかいうなら俺から離れろ」

 

「なんで今ここで愛の告白してるの?ラテ、大丈夫?」

 

「ラテさんって……モカのためなら世界の壁まで乗り越えてしまいそうですね」

 

「なんだそれ?俺たちはあくまで兄妹だぞ。彼女ではないし、結婚もできない。というわけで、ほら、モカ。手繋いで寝てやるから機嫌直せよ」

 

「別に怒ってないよ〜。でも、そういうことなら遠慮なく〜」

 

モカが俺の手をぎゅっと握ってくれる。うん。暖かくて柔らかいいつもの手だ。

 

「あくまで兄妹って感じが全然しない。普段からこんな生活してるんだ、この2人って」

 

「なんていうか、あたし達の感覚が麻痺してる感じだよね」

 

「なんでだ?兄妹が一緒に寝るときに手握り合うのって当たり前のことだろ?」

 

「まず世間一般の兄妹は一緒に寝るなんてことはない。普通部屋が別のはずだろ」

 

「何言ってんだよ巴。俺たち部屋は別じゃねえーか」

 

「そーだよトモちん。あたし達は寝るときだけ一緒の部屋にいるんだよー?」

 

「………ダメだ。何を言っても通じない」

 

「あはは。本当いつも通りだよね」

 

はぁ、とため息をつく4人。なんだ?俺たちなんか変なことでも言ったっけか?

 

「あぁ、もうこの2人見てたらお化けなんてどうでもよくなったかも。ラテ、もう離れてもいいよ」

 

「そーだね。私達ももう寝よっか」

 

「だな」

 

「そうだね」

 

蘭の方から服の裾離さなかったくせにその言い方はどうかと思うんだけど…………ちょっと腹立ったから仕返ししてやろう。

 

「…………そういや、蘭。この前クラスメイトが話してた話なんだけどさ?」

 

「何?」

 

「こうやってみんなで一緒の部屋で寝るとさ。生前で友達がいなくて1人ぼっちだった幽霊が現れるって話をしてたんだよ」

 

「はっ?何言ってんの?」

 

「ただの気になった話さ。楽しそうにしてる人たちの部屋によく現れるんだよ」

 

気になった話なんかではない。俺の即興で作った話だ。夏にホラー映画もありだろう。でも、やっぱり夏といえば寝る前の怪談に限る。

 

「じょ、冗談ですよねラテさん?」

 

「そいつの話だと、その幽霊は遊んでいる奴らが楽しそうにしているのを、その部屋の窓からずーっと見てるんだってさ。そんな幽霊はこう思ってる。『あー。楽しそうだな。僕も混ぜてほしいな。僕も死ぬ前にあんなに楽しそうなことをしたかったなー』って」

 

「や、やめろよラテ。冗談だよな?」

 

「その幽霊は遊んでいた奴らが寝静まったのを見計らって部屋に入るんだ。窓からスーッとすり抜けるようにしてな」

 

「ら、ラテ君。私まで怖くなってきた……」

 

つぐちゃんまで巻き込んでしまったみたいだ。申し訳ないけどここまできた以上全部話させてもらおう。

 

「幽霊はみんなの寝顔をずーっと見てるんだ。上からも、横からも。そして正面からもじーっと。幸せそうな顔をして眠るみんなの姿をじーっと見つめるんだってさ」

 

「やだ。本当やだ。ラテ、やめて!今すぐやめて!」

 

蘭が泣きそうな声で俺に懇願してくる。もちろんやめない。何故なら今の蘭を見るのがとても楽しいから。

 

「やがて幽霊は寝てるやつの耳元でこう囁くんだって。『ねぇ。僕も一緒に混ぜてよ。僕とも一緒に遊ぼう』って」

 

「ひぃっ!!」

 

「もちろん寝てるから返答はできないよな?でも、幽霊はそうは思わないらしくて。『遊んでくれないんだ。酷い……酷いよ。みんなはよくて僕はダメなんだって』

そのまま幽霊はいなくなるらしいんだけど。そいつらが朝起きたら」

 

「起きたら〜?」

 

「話しかけた人間のうちの1人が、部屋から消えてしまうんだってさぁぁぁ!!!!」

 

「「「「いやああぁぁぁぁ!!!!」」」」

 

俺とモカ以外の4人全員が叫びながら布団の中に潜り込んでしまった。

 

「ラテのバカ!バカ!大バカ!なんで今その話するの!!」

 

「うぅ……もう今日絶対眠れない……」

 

「信じないぞ。アタシ絶対信じないから!」

 

「モカちゃん……今からでもいいから私と場所変わって……私、怖くなってきた」

 

「みんな大袈裟だよ〜。そんな事あるわけないじゃん〜」

 

「まぁ、それもクラスメイトから聞いた話だし、本当かどうか知らないけどな」

 

もちろん嘘である。そんな話聞いてない。ただの作り話である。

 

「うぅ……もうやだ……」

 

「ラテさん……私怖いです〜……」

 

布団からひょっこり顔を出した蘭とひまりちゃん。やばい、2人とも涙目で超可愛い。

 

「なぁ、つぐ。アタシ達も床で寝ないか?」

 

「私もそうしたい。流石に怖くって」

 

「えっ、ちょっと待って。そんな2人まで床に来たらぎゅうぎゅう詰めになるってうわっ!」

 

俺が最後まで言う前に巴がひまりちゃんと蘭の間に。つぐちゃんが蘭と俺の間に寝転がった。結果、ひまりちゃん、巴、蘭、つぐちゃん、俺、モカの順番で床に寝転ぶことに。

 

「みんなでくっついてねればきっと怖くないよな」

 

「そうだね……元はと言えばラテさんの所為ですからちゃんと付き合ってくださいね」

 

「いや、それより狭い……モカ、そっち詰められるか?」

 

「はーい」

 

「ひまりももうちょいそっちに行けるか?」

 

「だ、だいじょーぶだよ」

 

1番端っこにいるひまりちゃんとモカが壁の方によっていて場所を広げる。うん、少しはマシになった。

 

「うぅ……ラテ君?」

 

「つぐちゃん?どうしたの?」

 

「わ、私も手握っていい?なんだか怖くって」

 

……そんなに涙目で見つめないでほしい。無理なんて到底言えなくなってしまうから。

 

「………はい」

 

「ありがとう、ラテ君!」

 

つぐちゃんが俺の手を両手で優しく握ってくる。わざわざ両手で握る必要はないと思うんだけども…………まぁいいか。

 

「さてと。じゃあそろそろ寝るとするかな」

 

「あ、ラテさんずるい!あんな話自分からしといて先に寝ようとするなんて」

 

「いやだってそろそろ眠たくなって来たし。モカもそうだろ?」

 

「そーだね〜。モカちゃんはそろそろ眠たくなって来たかも〜」

 

モカの方を向くと目をとろんとさせている。本当に眠たくなっている合図だ。

 

「ほら。あの話はまぁ冗談だとしても早く寝ないと。俺明日バイトあるし」

 

「そんなの関係ない。あたし達が寝るまでラテも起きてて」

 

「理不尽だろそれ。とにかく俺は寝る」

 

「あたしも先に寝るね〜。おやすみなさーい」

 

そう言ってから数十秒後にはモカの方から寝息が聞こえだした。相変わらず寝つきがいいな、モカは。

 

「俺も寝ないと……」

 

「あ、あの、ラテ君」

 

「ん?」

 

「私ももうちょっとラテ君とおしゃべりしてたいの。だから、もう少しだけ起きててもらってもいいかな?」

 

…………だからそんな目で見つめないでほしい。まるで捨てられた子犬のような目で。はいとしか言えなくなってしまう。

 

「ひまりちゃん達と話してたらどうだ?」

 

「えっと……ラテ君の手を両手で握ってるから、ラテ君の方にしか向けなくて。ダメ……かな?」

 

俺の手を離せばいいだけなのでは?と思ったが、こんなつぐちゃんも珍しいのであえて突っ込まない事にした。

 

「……わかった。その代わり、向こう側の3人が寝てからだよ?」

 

「……!ありがとう、ラテ君!」

 

その後。蘭、ひまりちゃん、巴が寝静まったのを見た後、俺たちは朝方までずっと話をしてて寝ることができなかった。まぁ、つぐちゃんといっぱい話せたからよしとしよう。




どうでしたか?
感想もお願いしますと言ってるくせに感想返せてなくて申し訳ないです。
引っ越しって案外大変なんですね。

最近モカだけでなくつぐみに物凄くハマってます。
でも、誕生日は間に合わなかった。つぐちゃんごめんなさい!!!

以上です。
感想と訂正があればお待ちしております。

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