できはよくわからん
平原は枯れ草で茶色く、背景のように向こうには大きな山が見える。
その山は普通の山と違い、頂上に大きなビスマスの結晶のような七色の固体が見える。
結晶は大地のところどころにある煌きと雰囲気というか色が似ていた。
大地のそれは大地から小さく噴き出していて雪の結晶のようにふんわりとしていて、ほとんどは何かに触れるわけでもなく、空気中で解けてなくなっていく。
そんなものが漂うサバンナに二人はいた。
一人はここにやって来た者、一人はここに住む者。出会い頭、追われる来訪者、娯楽的に追う者。
二人はギクシャクしながらもなんとかお互いを知ろうと努力を試みる。
僕がここにきてそんなに経ってない。
ここにはときより遠くで何かの鳴き声が聞こえる。
それはゾウか、キリンか、シマウマか、ハイエナか、とにかく動物の鳴き声が聞こえる。
僕はその声が聞こえるたび、怖さがやってきて辺りを見渡していたが、今は目の前の猫人間に声をかけられ、僕はビクッとして猫人間の言葉になんとなく警戒しつつ、そちらを向いた。
「ごめんね…私、狩りごっこが大好きで…!!」
猫耳少女の耳は反省して折れこむ。
「あなたは狩りごっこがあまり好きじゃないんだね…。」
猫人間の尻尾が揺れる。
「…うっ…え。」
人間の目が振れる。
「えーと…その。」
お互いがお互いを気遣って微妙な空気。そして静寂。
「「……。」」
不安な静寂にあると思い出されるあの光景、ネズミがバッタを咥えていた光景と、この猫人間の牙の鋭さが、人間の中で嫌な想像を掻き立てフラッシュバックさせる。
「…たっ…」
僕はいつまでも恐怖から逃げてるだけじゃダメだと思い。首を振り、恐怖を振り切って、しっかりと相手を見ようと相手の顔に目を向ける。
「…う?」
人間が顔を上げてみると猫人間の大きな耳が風に触れているのに気づく。その揺れは毛一本まで、細かく複雑に揺らして、綺麗に見える。
「あぁすごい…。」
思わず感嘆を漏らす人間。
「あっちょっと元気になったかな?」
「いえ、あの…その…大丈夫です。」
人間は表情を読まれまいと、無意識に口をきつく結んだ。
しかしこのままではいけない。
「あの…。」
「なになに?」
猫人間の顔が近い。
「あなたはここの人ですか?ここはどこなんでしょう。」
「えーと、ここはね、ジャパリパーク!この辺は私のナワバリなの!」
大地を示すように両手を広げる。
「あとえーと、私はサーバルキャットのサーバルだよ。」
猫耳少女サーバルはそれを示すように猫独特の招くような、招き猫のようなポーズをする。
「サーバルさんですか…。」
僕は名前を確認すると質問を続けた。
「サーバル…さん、そのお耳と尻尾はなんでしょう?」
「…お耳?尻尾?それがどうしたの?」
「いや初めて見たので…。」
「そんなに珍しい?あなたこそ尻尾と耳のないフレンズは珍しいね。」
「フレンズ…?」
「どこからきたの?ナワバリは?」
「わかりません。覚えてないです。気づいたらここにいて。」
「もしかして昨日のサンドスターで生まれた子かな…?」
「サンドスター?」
すると猫耳少女サーバルは何か確信したようにみえた。
「昨日あの山から吹きだしたんだよ。まだ周りもキラキラ、虹みたいに七色に輝いてるでしょ?」
「あの七色のやつ、サンドスターっていうんですか?」
「そうだよっ。そして何のフレンズか調べるには…」
「みゃ!鳥の子ならここに翼!!」
「え?」
僕の頭をもって頭の後ろや横を確認するサーバルさん。
「あれ?ない?おかしいな…。」
「服にフードがあれば蛇の子!!」
「あれーない?ない?」
なんだかよくわからないけどサーバルさんが困ってる。僕に何かできることはあるだろうか。
「あのー…。」
「あれ?これは?」
サーバルさんが何かに気づいたようだ。
「これ?」
これとは僕の背負ってたかばん?だった。
「…かばんかな?」
「え?か…ば…ん…?かばん!かばん!」
「ヒントになりますか?」
「うーん…」
悩むサーバルさん。
「わかんないや。」
「…。」
「これは図書館にいかないとわからないかも?」
「図書館…。」
図書館っていう場所に何かあるかも。
「わかんない時は図書館にいって教えてもらうんだ!」
「図書館…そこで僕が何の動物か聞けば…。」
「…。」
「ありがとうございます。サーバルさん、図書館ってどっちの方にいけばいいですか?」
「途中まで案内するよ。」
「あ、すみません…よろしくお願いします。」
「あっ、でも何の動物かわかるまでなんて、呼べばいんだろう?うーん…。」
「名前ですか?」
「どんなのがいいかなぁ…。やっぱりわかりやすいのがいいからぁ…。」
名前を貰えるなんて嬉しいな。どんな名前になるのかな?
「じゃあねー…かばんちゃんで!」
「どうお?」
「ありがとうございます。」
サーバルさんの名づけのセンスは気にしないでおこう。
次回へつづく