やはりぼっちとコミュ障のボーダーは間違っていない   作:癒しを求めるもの

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比企谷八幡の外出は間違っていた

みーんみーん

蝉とは楽な存在なのだろうか。残り僅かな命を子孫の繁栄をすべく炎天夏の中で鳴く。

別にその行為が悪いとは言わない。寧ろ自らの使命を全うするその有志は尊敬に値する。故に比企谷八幡は考えた、

 

「小学生の楽しい楽しい体験学習を俺みたいな腐り目が邪魔をしてはいけない。短い夏だ。日曜の朝から始まるアニメの視聴率を少しでもあげるべく家にいた方がいい気がしてきた……」

 

「もう、何言ってるのごみぃちゃんは………そんなことより、早く荷物持って!遅れちゃうよ?」

 

「小町ちゃん?さりげなくお兄ちゃんに荷物を預けるのやめてくれる?」

 

「だってお兄ちゃんボーダー隊員でしょ?それに木崎さんとかとトレーニングしてるから余裕じゃん!」

 

「そうだがなぁ……」

 

 

駄々をこねる八幡だが左右にボストンバッグを二種類持って家の鍵をかけた。

兄としての宿命故、妹の命令は絶対なのだ。

 

 

「はあーーーっ、あっちーなぁ」

 

「もう、お兄ちゃん!これからバイトなんだからしっかり!」

 

「………まぁ、そうだな。五万入るんだ。夜とか肝試ししてみろよ。俺と三輪の目で世界一の怪奇スポットになるぜ?」

 

「そこで三輪さんをいれる?」

 

「だってアイツの目、怖くね?たまに俺も冷や汗でるぞ?」

 

「じゃあお兄ちゃんの目は皆のやる気を腐らせるのかな?」

 

「……………否定できん」

 

「まぁ、お兄ちゃんだからねぇー………およ?あれはもしかして遥お姉ちゃんでは!?」

 

 

夏の暑さ+妹の冷たさという爆発をおこす真逆の現象がぶつかり合い、八幡の目は更に濁る。

そんな兄の様子を見慣れた小町は先の方に見えた人影を凝視し、大声でその人物の名前を呼んだ。

 

 

「おい、やめろ小町。近所迷惑だろ?」

 

「あっ、そうか。ごめんごめん。それよりも遥お姉ちゃん、今日からよろしくお願いします!」

 

「うん、楽しみだね、小町ちゃん」

 

 

小町の声に反応した幼馴染の遥は八幡たちを見かけると歩く足を止め、静かに挨拶をした。

体験学習のための動きやすい服装だが清潔感があり、日除けの大きめの帽子は彼女の魅力をより増していた。そして腕には八幡が渡したブレスレットが付けられていた。

 

 

「遥お姉ちゃんの私服久しぶりにみたなぁ!ね、お兄ちゃんどう思う?」

 

「……………別に」

 

「むー、その回答は望んでないんだけどなぁ。私には可愛いって言ったのに」

 

「あはは……私、あんまりセンスないから」

 

 

そう言って遥は帽子をより深く被った。

 

────そうだろうか?いつも大人っぽい遥だから夏だということで開放感ある服で似合っていると思う。寧ろ綺麗だと思うが」

 

 

「へっ!?……あ、あの…えーっと………//」

 

「おー!それだよお兄ちゃん!小町が求めていたのはそんな感想だよ!」

 

 

────感想?俺は言ったつもりないんだが………あっ

 

 

「………もしかして声に出てたか?」

 

「う、うん……あ、ありがとう、綺麗だって//」

 

「………す、すまん」

 

”やってしまったああぁぁっ!”と心ではそのまま地面に数十メートルの高さからダイブしてゴロゴロと地面に転がりたかった八幡だが必死で顔の赤みを隠す。

 

「いや〜朝からおもし……じゃない、微笑ましい光景を見れて良かったよ!」

 

「いや、今面白いって言おうと「おっと!時間がないし行きましょう!遥お姉ちゃん!」…………お兄ちゃんは無視ですか」

 

「こ、小町ちゃん?わかったからあんまり押さないでね?」

 

 

先に歩いていったmyシスターは遥を連れて先に言ってしまった。

溜息を吐きながらも八幡はその後にしっかりついて行くのだった。

 

 

 

***

 

 

 

集合場所に到着すると一台の大型車が2台止まっていた。人数が人数だ。車が2台は必要だろうと思っていたのだが………

 

 

「に、二宮さん、東さんよろしくお願いします」

 

「…………」

 

「あぁ、行きだけは任務が入っていないから安心してくれ。帰りは別の人がくるかもしれないが」

 

 

それぞれの車の前には不機嫌ではないはずだが静かに目をつぶっている二宮さんと、爽やかなノリで場を悪くしないよう話しかけてくる東さんがいた。

東さんさんはわかる。しかし、二宮さんが来るか普通?

 

ボーダー隊員ではない小町が俺が持ち合わせていないコミュ力を使って東さんと二宮さんに挨拶をしている間、八幡はずっと考え込んでいた。

 

 

「二宮さんが来るなんて意外だったね、八幡君」

 

「あ、ああ。てっきり暇そうな諏訪さんあたりがただ働きで来るかと思ってた」

 

「あ、あはは」

 

 

遥は苦笑いしているが小町の挨拶を返した二宮さんがずっと睨んできて怖いんだよ!ってか誰か他にいないのかよ!?

睨まれてなにかに取りつかれたように動かなくなった八幡の代わりに意図を理解した遥が二人に質問する。

 

 

「他の皆はどうしたんですか?」

 

「ああ、三輪に奈良坂、米屋、出水は来ていないが小南に宇佐美、那須、熊谷、篠崎はコンビニでお菓子を買っている」

 

「最初の四人は米屋の寝坊を起こしに行っている筈だな」

 

「全く、遅いヤツらだ」

 

 

────いや、多分、二宮さんが送るなんて知ってたら1時間前には来ていたと思います。

後でどういう意味なのか問われそうだったため絶対に口に出さない八幡であった。

つまり今後は九人………いや、あと二人聞いていない。

 

 

「すみません、十和と三上は………」

 

「…………アイツらは奥だ」

 

「え、奥ですか?」

 

 

ムスッとして答えた二宮さんが指で指した方向は車によって分からない。遥と一緒に後ろを見ると………

 

 

「あのー、歌歩さん?僕、そろそろコンクリートの上での正座はきついんだけど……」

 

「じゃあなんでさっき同じクラスの女の子から話しかけられてデレデレしていたの?」

 

「い、いや、その子とはオタ友で頼んでいた限定のフィギュアを高めの値段だけど売ってくれるって………あっ」

 

「ふーん、またフィギュア買うんだ」

 

「ま、まだ買ってない!フィギュアは買わないから!」

 

「別に私は十和君がフィギュアをいくつ持っていたってもいいと思うよ?」

 

「目、目のハイライトが………」

 

 

 

 

 

 

──────スッ

 

 

無言で修羅場をみた八幡は静かにその様子を車で見えなくした。

 

 

「………なんだか夫の隠していた他の女性の名刺を妻が見つけて事実確認をしている現場にしか見えなかった……」

 

「………奇遇だな、俺もだ」

 

何故、三上が十和のフィギュアの所持を許さないのかというと以前、コミュ障の十和が大量に買わされたフィギュアの山が部屋に散乱していたのを見て激怒したかららしい。

多少のフィギュアに対する嫉妬もあるだろうが好意を向けている相手が騙されて買わされた物をまだ集めようとすることに反対なのだろう。

 

「ふぁ〜、ハッチおはー……って、二宮さん!?」

 

「………遅い。米屋、寝坊か?」

 

「す、すみませんしたァっ!!」

 

「………気をつけろ」

 

 

十和を哀れに思っていると横から一人のうるさい声と一人の殺気が伝わった。寝癖がついた状態の米屋が九十度腰を曲げて謝り、残り三人と女子組も合流したようだった。

 

 

「あ、皆さん、今日は小町も一緒によろしくお願いします!」

 

「おう!楽しみだな!」

 

「宜しくね、小町ちゃん」

 

「よろしく」

 

 

出水、那須、熊谷と小町は全員に挨拶をし終えるとこちらに近づいてきた。

 

 

「お兄ちゃん、十和さんと歌歩さんはどうしよう?」

 

「大丈夫でしょ、トワがどうせ機嫌とるから」

 

「同感だ」

 

 

俺の代わりに答えた優菜に頷く。

三上の怒りがピークだったようだし、もうすぐ顔を真っ赤にした三上が戻ってくるだろう。

 

「ご、ごめんなさい。遅れました//」

 

「ほ、本当に怒ってない?顔まだ赤いけど………」

 

 

ほらな、どうせ十和に無意識にされた行為が恥ずかしくて許したのだろう。

勘違いをしているだろう十和は顔を青くしていたが三上は若干嬉しそうである。

 

 

「…………ったく、リア充め」

 

「「「「「「比企谷(くん)が言うな(わない)!」」」」」」

 

 

何故かぼっち特有の独り言に十和と三上、遥、二宮さん、東さんを除いた全員からダメ出しをくらった。

 

どういう意味だよ、解せぬ。

 

 

 

***

 

 

 

目的地である千葉村まで数時間の道のりだった。

 

俺は窓際で遥の隣に座っていた。朝からの疲れで寝てしまった俺を遥が起こしたのだが

 

 

「おい十和、なにやってんの?」

 

「え?アニメ鑑賞だけど?マンガ原作の」

 

「あ、際ですか………」

 

 

 

俺が乗っていた車には比企谷隊に那須隊の二人、そして遥と奈良坂と静かなメンバーだった。静かだと思っていたが十和はスマホにイヤホンをつけて片方を自分に、そしてもう片方は三上がつけていた。

真剣にアニメを鑑賞なされていた。

 

 

「仲直り早すぎだろ………」

 

「………でも、なんで志神君は歌歩ちゃんのことをさん付けで呼ぶのかな?」

 

「ああ、それは………」

 

 

俺の言葉を遮るかのように一台の車が同じ駐車場に停められた。

普通の車だ。しかし、八幡の動体視力は一番会いたくない人を見つけてしまった。

 

 

「…………最悪だ」

 

「どうしたの?八幡君?」

 

 

遥が心配してくれるが問題ない。寧ろ問題なのはその車から出てくる俺がよく知る人達だ。

 

 

「あら、にげが谷くんじゃない」

 

「ヒッキー!?」

 

 

冷たい目でこちらを見る雪ノ下とただ純粋に驚く由比ヶ浜を見て八幡は気づかれないように溜息を吐いたのだった。

 

 

 

 


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