霧隠れの黄色い閃光   作:アリスとウサギ

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橋上決戦!写輪眼再び!

再不斬とカカシの戦闘から一週間が経過し、ナルトの修行成果を確認する時がやってきた。

 

「で、ナルト。術の方は会得できたのか?」

 

という再不斬の一言に、ナルトは少しバツの悪そうな顔で言った。

 

「う……それが、もう一歩のところです……でも、でも、今でも十分使えるんだってばよ! だからサスケは……」

「わかった……お前もオレ達と一緒に来い」

「だから、サスケは……って、いいのか? まだ術、マスターしてないのに!?」

 

まさか許可が下りるとは思っていなかったナルトは、再不斬に目をキラキラさせながら問う。

 

「ふん、そもそもそんな術なんかなくたって、お前はオレ達が鍛えてきたんだ。サスケとかいう小僧に負けるわけがないだろう?」

「イエス、イエス、イエス! よくわかってんじゃねぇか、再不斬!」

 

参戦できることに喜ぶナルトに、ハクも一言。

 

「よかったですね、ナルトくん」

「ああ! ハクもずっと修行に付き合ってくれて、ありがとうな!」

 

ナルトの参戦が決まり、再不斬達は決戦へと向かう。

 

「それじゃあ、行くか!」

 

 

タズナが毎日橋に来ていることは知っていたので、再不斬達は待ち伏せも兼ねて、小舟で直接橋まで移動することにした。

濃い霧の中を進み、橋まで来たはいいが、チラホラと大工の姿は見えるものの、肝心のタズナがいない。

ターゲット以外は無駄に殺すつもりもなかったのだが、闘いの場にいられると邪魔になる。

手っ取り早く、橋にいた大工達を蹴散らす再不斬。

 

「ひ〜、化け物!」

 

一目散に逃げて行く大人達。

 

「手加減してやってるのに酷い言いぐさじゃねぇか。なぁ、ハク、ナルト」

「まぁ、仕方ないですよ再不斬さん」

「そうだな……」

「お前達まで酷いな……」

 

そんな無駄話をしていた時、漸く目当ての連中がやってきたのを再不斬はその優れた聴力で聞き取る。

 

「ハク、ナルト。カカシ達が来た……まずはオレから仕掛ける」

「「了解!」」

 

言うや否や、再不斬が印を結び、術を発動する。

 

「忍法・霧隠れの術」

 

ただでさえ濃い霧に加えて、再不斬は更に周囲の視界を白く染めていく。

そして、水分身を発動し、いつものようにやって来たカカシ、サスケ、サクラ、サイ、タズナを囲むように待機させる。

どれくらい相手が強くなったかを確める作戦だ。

 

「ん? この霧! サスケ、サクラ、サイ来るぞ!」

「カカシ先生! この霧って!」

「あぁ、どうやらお出ましのようだ!」

 

カカシ達が卍の陣でタズナを守るように立つ。

 

「待たせたな、カカシ。相変わらずそんな餓鬼を連れて……また震えてるじゃないか、可哀想に……」

 

再不斬の水分身達が、そこでカカシ達の視界に入る。

様子を伺う再不斬。

それにサスケは……好戦的な顔を浮かべる。

 

「ふん」

「ん?」

「武者震い……だよ」

「やれ、サスケ」

 

カカシの合図のあと、再不斬の水分身が一斉に襲いかかるが、初めての時とは違い、この一週間修行してきたサスケにはその動きが全て見えていた。

周囲を囲んでいた全ての水分身をサスケはクナイで切り裂き、水へと還す。

 

「ほお……水分身を全て見切ったか……あの餓鬼、結構成長したな。さすがお前のライバルと言ったところか、ナルト」

 

再不斬、ハク、ナルト、カカシ、サスケ、サイ、サクラ、タズナ。

全ての役者が勢揃いする。

 

「あ〜らら、ナルト、お前はやっぱりそっち側につくのね」

 

開口一番のカカシの発言に、何言ってんだ? コイツ? と思ったナルトは、

 

「当たり前だってばよ! 変な髪型しやがって、何言ってんだ? お前!」

 

そのまま言葉を口にした。

が、それに今度はサクラが言い返す。

 

「何言ってんだはこっちの台詞よ! ナルト!

あんた里を抜けたりなんかして、なにしちゃってんのよ! いたずらじゃあ、すまないわよ!」

「サ、サクラちゃん……」

 

カカシ相手にはすぐに反発したが、サクラには今だに少し弱いナルトであった。

そんなやりとりのあとサスケはふん、と鼻を鳴らし、

 

「このウスラトンカチが、そっち側についたからには覚悟はできてるんだろうな?」

「はあ? 覚悟?」

「オレがてめぇのライバルだと? 里を抜けて頭までおかしくなったか?」

 

余裕の態度で対応するサスケ。

だが、それはナルトも同じであった。

 

「サスケ、お前の方こそ覚悟はできてんだろうな! アカデミーにいた頃のオレと一緒だと思ってたら大怪我するぞ〜」

「ふん、ウスラトンカチが相変わらずデカイ口たたきやがる」

 

サスケはカカシの方へと目線を向ける。

始めていいか? と……

それに頷きで返事を返すカカシ。

 

「カカシ、そんな餓鬼にまで闘わせるつもりか?」

「餓鬼だ餓鬼だと、うちのチームを舐めてもらっては困るねぇ。こう見えてもサスケは木の葉の里のNo.1ルーキー、サクラは里一番の切れ者、そしてもう一人は現ルーキー、一番のダークホース・サイ。悪いけど、うちのチームがたかが抜け忍の寄せ集めに負けるとは思えないねぇ」

 

再不斬を挑発するカカシ。

その挑発にのるかのように、再不斬はナルトへ顔を向ける。

力強い自信に満ちた目で、それに応えるナルト。

 

「ふん、いいだろう! ナルト行け!」

「あぁ、暴れてやるぜ!」

 

次の瞬間。

ナルトとサスケが同時に駆け出す。

 

ナルトが拳を握りパンチを繰り出すが、サスケはそれを片手で防ぎ、空いた片方の手で殴り返そうとする。

しかし、ナルトはそれを避け、さらにサスケが突き出した手を足で踏み、後方へジャンプしながら手裏剣を投げつける。

サスケはその攻撃を全てクナイで弾き、そのままお返しとばかりに、今だ空中にいるナルトへクナイを投げつける。

そこで、

 

「影分身の術!」

 

ナルトは身動きのとれない空中での攻撃に対応するため、影分身を二体作り出し、そのうちの一体でクナイを防ぐ。

そして、その分身に起爆札を張り付け、そのままサスケへと投げ、

 

「分身・大爆破の術!」

 

サスケはそのナルトの攻撃を一度見ていたため、避ける必要があるとすぐに判断し、修行の成果を思い出す。

 

(足にチャクラをためて一気に放つ!)

 

スピードを上げたサスケはナルトの爆破攻撃を避けた……ように見えたが、それは煙に紛れながらサスケに近付いて攻撃するためのナルトの布石であり、爆破を逃れたところを本体のナルトと分身ナルトが襲いかかる。

何とか分身ナルトの方は撃退したサスケだが、その時に隙が生まれ、

 

「くらいやがれ!」

 

ナルトの蹴りがサスケの顔面に入り、サクラやタズナのいる方へと蹴り飛ばされる。

 

「ぐっ!」

「サスケくん!?」

「超反撃されて、攻撃がヒットしたわい!」

 

再不斬はその攻防を見て、ハクに指示を出す。

 

「よし、あのサスケとかいう餓鬼はナルトに任せる。ハク、お前はあの絵描き野郎の相手をしろ」

「わかりました。再不斬さん」

 

サイはサスケが蹴り飛ばされたのを見て、援護に向かおうとしていたところ、

ザッ ザッ ザッ、と千本の洗礼を受ける。

サイは、ハクに投げつけられた複数の千本を回避するため、逆に距離を取らされながら、

 

「僕の相手はあなたということですか?」

「ええ……悪いですが、あなたにナルトくんの邪魔はさせません」

「悪いと思っているのなら退いて欲しいなぁ」

 

というサイの言葉には返事をせず、ハクは自分のとっておきの印を結ぶ。

 

「あなたはなかなか厄介な術を使いますからね……最初からこちらも全力で行きます!」

 

ハクの体からどんどん冷気が溢れ出し、彼だけに許された奥の手を発動する。

 

「秘術・魔鏡氷晶!!」

 

鏡の世界。

突如現れた無数の氷の鏡が、ハクとサイをドーム状に囲む。

 

 

その術を見たカカシは驚きの声をあげる。

写輪眼を持つがゆえに忍術はそこそこできる方だと自負していたカカシでさえ、見たことも聞いたこともない術であった。

それに再不斬が薄く笑みを浮かべ、

 

「あの術が出たからには、もうあの餓鬼は終わりだな。ナルトの方もこちらの方が一枚上手と見て間違いないだろう。ククククク、どうやら舐めていたのはそっちの方だったようだな、カカシ!」

「くそっ!」

 

(ハクって子の術はオレでさえ得体が知れない上に、ナルトの実力はサスケと同等……いや、再不斬のいうとおりナルトの方が僅かに上か……どうする……)

 

カカシが思考を巡らしている間に、ハクとサイの戦闘も始まる。

 

「う、ぐわああああああ」

 

だが、それは戦闘と呼べるものではなく、一方的な闘いだった。

サイの悲鳴が響き渡り、どんどん傷ついていく。

 

「この術は僕だけを写す鏡の反射を利用する移動術。僕のスピードから見ればキミは止まっているかのよう……」

「まさか、これほどとは……キミ、再不斬より下手したら強いんじゃないのかな?」

 

口調は余裕を残しているが、サイの体は全身がこの短時間で傷だらけになっていた。

 

 

「くっ!? やはりあの術! 血継限界か!」

「ククククク、その通りだカカシ」

 

カカシの疑問に、再不斬が自慢気に応える。

そこにサクラが、

 

「血継限界って何なの? カカシ先生?」

「オレの写輪眼と同種の物だ……」

「それじゃあ!?」

「そうだ! このオレをもってしても、あの術はコピー不可能。破る方法も皆無!!」

「そんな……それじゃあ、どうすればいいのよ! カカシ先生!」

 

サクラの質問に応えながら、思考を巡らすカカシ。

 

(あの術に対応するにはオレが行くしかないが、そうすれば再不斬はタズナさんを狙うだろう。サクラ一人ではどうしようもない。影分身を使っても再不斬の水分身で抵抗され、チャクラの無駄使いに終わる……)

 

「カカシ、さっさと再不斬を倒してサイを助けに行け!」

「サスケくん!」

 

顔を袖で拭いながらサスケが立ち上がる。

その瞳は真っ直ぐナルトを見据えながら……

 

「漸く立ち上がったか、サスケちゃん」

「ナルト……どうやら甘く見ていたのはオレの方だったようだな!」

「へっ! やっとその気になりやがったか!」

「ふん……」

 

決して口には出さないが、互いの力を認め合い、敵対するナルトとサスケ。

が、そこで。

その二人の間にサスケが蹴られたことに憤慨していたサクラが割って入る。

 

「ナルト! あんたさっきはサスケくんに何てことしてくれたのよ! 里を抜けただけならまだしも、周りにまで迷惑かけて! 本当に親がいないからって、いつも好き放題して!」

 

その一言をサクラが発した瞬間。

ナルトとサスケの体から、ハクの冷気とは違い、心から冷たさを感じさせる凍てつくチャクラが溢れ出し、周囲の者へと解き放っていた。

サクラにとってはいつものように何気ない一言だったのかも知れない。

だが、ある日、突然自分以外の一族全員が目の前で殺されるのを見たサスケ。

そして、自分や里のために命をかけた四代目火影とクシナの最後を知っているナルト。

この二人に、その一言は絶対に言ってはならない禁句であった。

 

「「………………………………」」

 

サスケがゆっくりサクラの方へ向き、殺気を込めた目で睨みつける。

その瞳は朱く染まっていた。

 

「……孤独」

「えっ?」

「親に叱られて悲しいなんてレベルじゃねぇぞ!」

「サ、サスケくん……?どうし……」

「サクラ……お前ウザイよ!」

 

サクラはあまりの殺気に震えてただ立ちすくんでいた。

 

「……サクラちゃん」

「ナ、ナル……ト!?」

 

ナルトは瞬身の術でサクラの目の前に一瞬で移動し、僅かに九尾のチャクラが漏れ出した……縦に割けた眼で相手を睨みつけ、

 

「今、サスケと闘ってんだ。お前は邪魔だってばよォ!!!」

 

思い切りサクラに拳を叩き込んだ。

先ほどのサスケに与えた蹴りよりも強い力で……

 

「グホっ!」

 

数メートル吹き飛んだ後、その体は地面に叩きつけられ、サクラは気絶した。

 

「サ、サクラ!?」

 

カカシが慌ててサクラのもとへ駆け寄ろうとするが、すぐさま再不斬に足止めされる。

 

「おっと、カカシ。お前が下手に動けば無防備になったタズナを殺るぜ!」

「くっ、くそっ!」

「全く、木の葉の奴らはナルトから聞いていた通り余程のクズらしい(まぁ、うちの国はもっと酷いがな)」

「なんだと!?」

「平和ボケしているくせに、その平和が誰のお陰で維持されてきたのかすら理解していない」

「…………くっ!」

「その結果、ナルトは里を抜けた。まぁ、オレにとっては感謝すべきことなんだろうがな……」

「再不斬……貴様!!」

「ククククク、まぁ、そう怒るなよ、カカシ」

「どうやら、一瞬でけりをつけてもらいたいようだな……」

 

カカシは額あてに手をあて、写輪眼を出そうとした時。

 

「…………!」

 

その一瞬の間。

再不斬が一気に駆け、カカシをクナイで突き刺そうとする。

が、カカシはそれを寸前のところで、掌で血を流しながらも防ぎ、

 

「余裕をかましても、やはり写輪眼は怖いか? 再不斬!」

「忍の奥義ってのはそう何度も見せるもんじゃねーだろ? カカシ」

「光栄に思え! この眼を二度も拝めるのはお前ぐらいだ……そして」

 

再不斬とカカシは互いに一歩距離を取る。

 

「三度目はない!」

「ククククク、三度目はないか……カカシ、仮にお前がオレを倒せたとしても、お前じゃあ、ハクには勝てねぇよ!」

「なに!?」

「アイツは子供の頃から忍の技を磨き、オレの持てる全てを伝え、そして奴自信の術をも磨き上げた。その結果アイツはいかなる状況でも成果をあげる忍という名の戦闘機械となった。アイツはオレの最高の道具だ!」

「……その道具に、ナルトも含まれているという訳か?」

「ククククク、さあな? だが、アイツもここ数週間ではあるがオレとハクが鍛えあげてきたんだ。お前の連れてるスクラップとは出来が違う」

 

カカシが再び額あてに手をあて、

 

「他人の自慢話ほど退屈なものはないな。そろそろ行かせてもらおう!」

 

写輪眼。カカシの朱い瞳が煌めいた。


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