「あっ! カカシ先生、目を覚ましたのね!」
再不斬との闘いの後。
倒れていたカカシが起きたのにサクラが気付き、サスケとサイも部屋へとやってくる。
「あ〜、すまなかったな、お前達……」
「全くよ! 写輪眼って凄いけど、使った後、こんなに寝込んじゃうんだったら考えものよね……」
「サクラみたいに、24時間いつでも役に立たない犬の糞のような人間よりはカカシ先生の方がよっぽど心強いけどね」
「サイ! あんた誰が役立たずですってぇ! っていうか、レディーに向かってなんてこと言うのよ!」
「あはははは……」
と、すっかりお気楽ムードだが、いつまでもこのままではいけない。
「カカシ、これからどうする?」
今まで黙っていたサスケが口を開く。
再不斬にナルト、カカシが寝込んでいる現状などなど今回の任務の問題は山積みである。
「ん〜、そうだな〜取り敢えず、お前達には今から修行をしてもらう」
と言うカカシの発言に、サクラは信じられないという声音で、
「修行ですって! 何言ってるのよカカシ先生! 相手は写輪眼のカカシ先生が苦戦するほどの忍者なのよ! 私達が修行なんかしたって勝てるわけないじゃない!(私達を殺す気か!
しゃんなろーー!!)」
「サクラ、そのオレを救ったのは誰だ?」
「そ、それは……」
と、カカシ、サスケ、サクラの三人がサイを見る。
「いやーこれで僕も一躍、第七班のヒーローですかね?」
「ちっ!」
「誰がヒーローよ! 誰が!」
はしゃぐ部下達を見ながら、カカシはサイに単刀直入に尋ねる。
「サイ、お前はアカデミーに通っていなかったが、火影様の推薦もあり、急遽第七班に加わった。だが、ただのガキがそんな推薦を受けるわけがない。お前は元暗部の忍だった……そう考えていいのか?」
「えっ!?」
「暗部だと!?」
今度は戸惑いも含んだ視線がサイに向けられる。
「いやー、それは少し違いますよ、カカシ先生」
「なに?」
「確かに僕は暗部に入るため、ダンゾウ様から手解きを受けていましたが、あくまでも手解きまでです。実際、僕のレベルは精々が中忍クラス。嘘だと思うなら帰ったあと火影様にでも聞いて下さい」
「なるほど……ダンゾウ様に手解きを受けていたわけか……どおりで初めての実戦であそこまで動けたわけだ……(そうなるとサイはダンゾウの手の者ということになる。狙いはナルトの九尾か、それともサスケか?)」
カカシとサイの話を横で聞いていたサスケとサクラはサイが中忍クラスだと聞いて驚いている。
だが、カカシはサイが真っ先にナルトを攻撃したのを思い出し、まだ裏があるなと考えていた。
「今回、オレ達の任務は橋造りを終えるまでのタズナさんの護衛だった……ここまではいいが、今は更にもう一つ問題が発生している」
「ナルトか……」
「そうよ、カカシ先生! 何でナルトの奴が再不斬達と一緒にいたのよ!」
「んー、本来なら極秘事項だったのだが姿を見てしまった以上仕方ない。実はな、ナルトは先日里を抜けていたんだ……」
「里を抜けただと?」
「どうしてナルトが里を抜けたりなんかするのよ!」
「ん〜、そこは色々あるのよ、色々ね!」
「色々って!」
カカシはサクラの追及をかわし、第七班に任務の追加を命ずる。
「そして、ここからが重要な話だが、できれば今回の任務でタズナさんの護衛だけでなく、ナルトの捕縛もしておきたい。木の葉の里に連れて帰るためにな……」
と、いうカカシの言葉に、サスケとサクラは、
「ふん、あのウスラトンカチが」
「本当に面倒な奴ね! アイツ!」
カカシは最後にサイを見ながら、
「サイ、お前もそれでいいな……」
「わかりましたカカシ先生」
と任務を言い渡した。
話し合いの後、第七班の四人はタズナの家から少し離れた森まで来ていた。
「それでカカシ、どんな修行をやるんだ?」
「ん? それはな……木登り」
サスケの問いに答えたカカシに、今度はサクラが首を傾げる。
「はぁ? 木登り?」
「ま、お前達に今さらチャクラがどうのこうのの説明は必要ないだろうから、まずはオレが手本を見せる」
そう言ってカカシは、まだ松葉杖が取れない体で木に登って行く。
手を使わず垂直に。
「「なっ!?」」
それを見て少し驚くサスケとサクラ。
「足の裏は一番チャクラコントロールが難しい箇所だと言われている。つまり、この修行を極限までに極められればどんな忍術でも会得できるようになるわけだ……理論上はな……」
木にぶら下がったままカカシは三人の足下にクナイを投げつけ、
「初めは走って勢いをつけて登ってみろ! 限界だと思ったらそこにクナイで目印をつける。そして次はその目印より上へ登れるようにしろ!」
こうして第七班の決戦へと向けた修行が開始された。
深い森の中。
再不斬達のアジトでは、カカシとの戦闘で傷を負った再不斬をベットに寝かし、ハクとナルトが看病していた。
「再不斬さん、お身体の方は大丈夫ですか?」
「あぁ、問題ない。あと二、三日もすれば動けるようになるだろう……」
「それは良かったです。ですが、今回はあなたでも、僕とナルトくんがいなければ殺されていた可能性が高かったですね……」
「ふん……」
「次はいけますか?」
「あぁ、次なら写輪眼を見切れる」
と、そこで、
「あのさ、あのさ、次もあいつ等と戦うことになるんだよな?」
今まで珍しく静かにしていたナルトが会話に加わる。
再不斬は目線だけをナルトの方に向け、
「あぁ、間違いなくそうなる。ハクから聞いたが知り合いがいたんだってな。まさか今更怖じけずいたか?」
「……違うってばよ」
「だったらなんだ?」
「サスケ……」
「あ?」
「サスケの相手はオレに任せてくれ!」
「なんだと!?……あの弱い黒髪の奴か?」
「サスケは……あいつは弱くないってばよ! たぶん次に会う時は今より強くなってる……あいつはオレが倒さなきゃいけねーんだ!」
「…………」
再不斬はナルトの話を聞きながら、お互いの戦力を考える。
「何か訳ありか?」
「あいつはオレのライバルなんだってばよ! あいつはオレがやる!」
少し悩む素振りを見せてから、再不斬はハクの方に顔を向け、
「…………ハク、お前はナルトの意見をどう思う?」
「僕は再不斬さんの道具です。あなたの意見に従います」
「そうか……いいだろう。ナルトやってみろ!」
再不斬の返事を聞き、ナルトは顔を喜ばせる。
アカデミーの時とは違う自分をサスケに見せつけることができる。
そう思いナルトはガッツポーズをして、
「さすが再不斬! よくわかってるじゃねぇか!」
「ふん、鼻息を荒くするのはいいが、ちゃんと勝算はあるんだろうな?」
「へへへへ、あるんだな〜これが♪」
「ほうー、どんな勝算なんだ?」
「それはまだできてないから内緒だってばよ! でも今凄い新術を覚えているところなんだ!」
「新術だぁ?」
何だそりゃあ? という顔をする再不斬。
だが、ハクはそこで一つのことを思い出し、
「それって、昨日の水風船が関係しているのですか?」
ナルトは昨日から九尾にアドバイスを受けた通りに螺旋丸の修行に入っていた。
ハクにも詳しくは説明していないが、術の修行に必要な物だけを頼み、手伝ってもらっていたのだ。
「ふん、ちゃんと使える忍術なんだろうな?」
「そこは心配ねぇよ再不斬! 何せ、とうちゃんの術だからな!」
「なんだと!?」
「ナルトくん、そんな術の修行をしていたのですか!?」
「えへへへへ」
四代目火影の遺産忍術だと聞き、再不斬とハクは驚く。
まさか、飛雷神以外にも奥の手を隠し持っているとは思ってもいなかったからだ。
まだ、どちらも会得していないので、正確には奥の手には数えられないのだが。
「いいだろう……ナルト、一週間お前にやる。その間に新術を会得しろ! もしできなければ、今回の任務はオレとハクだけで行く」
「へっ! 余裕だってばよ! 新術何かあっという間にマスターしてやる!」
「言ったな餓鬼!」
「まっすぐ、自分の言葉は曲げねぇ! それがオレの忍道だ!」
ハクはそんな二人のやりとりを微笑みながら見ていた。
こうして、再不斬達も決戦へと準備を始めていった。