霧隠れの黄色い閃光   作:アリスとウサギ

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忍の道

川を渡り切り、更にそれなりに歩いた森の隠れた場所。

深い森の中に、一軒の家が建っていた。

中に入ると、

 

「…………」

 

一人の男が椅子にもたれ掛かるように座っていた。

口を布でぐるぐるに巻いてあり、少し強面の男。

霧隠れの抜け忍……桃地 再不斬。

再不斬はナルトに一瞬視線を向けた後、ハクに顔を向け、

 

「ハク、何だその餓鬼は?」

「申し訳ありません、再不斬さん。行く宛がないというので連れてきました」

「この前、兎をやっただろう。捨ててこい」

「いえ、ペットが欲しいわけでは……」

 

どう再不斬に説明しようかハクが悩んでいた時、横にいたナルトが再不斬にビシッと指さし、

 

「オレの名前は、うずまきナルト! いずれ火影になるおと……じゃねぇや! いずれ歴代火影を越えて最強の忍になる男! 覚えておけ!」

「はぁ? 火影だぁ? ってことは木の葉の下忍ってところか?」

「うっ……試験に落ちちまったから、下忍にはなれてないってばよ……」

「「……………」」

 

下忍にすらなれてないという言葉に、再不斬だけでなく、隣で聞いていたハクまで固まる。

ハクもてっきりナルトは下忍だろうと思っていたからだ。

下忍ならまだ少なからず、と判断できたかもだが、流石にただの一般人は邪魔者でしかない。

 

「ふん、やっぱりただの餓鬼じゃねぇか! 出ていけ!」

「オレってばガキじゃねー! 何だったら今この場でてめぇをぶっ飛ばして証明してやるってばよ!」

「面白い……表に出ろ餓鬼! テメーが少しぐらいは見所のある奴なのか見極めてやる!」

 

ナルトと再不斬は家の外に出て、すぐに戦闘態勢に入る。

再不斬は自分よりデカイのでは? というほどの大剣を背中越しに片手で持ち、

 

「ほら、かかってこい!」

「行くってばよ! 多重影分身の術!」

 

ボン!

白い煙とともに、術が発動する。

ナルトお得意の影分身。

再不斬の周囲をぐるっと囲む20人はいるナルト達を見て、再不斬とハクが目を開く。

 

「ほう……影分身か、ただの分身とは違い実体のある影分身をここまで……意外と悪くねーじゃねーか!」

「行くってばよ!」

 

ナルト達が一斉に襲いかかる

戦場で数に勝る力はないという。

だが、再不斬とナルトには数程度では覆しようのない力の差があった。

 

「が、やっぱり甘い!」

「「ぐわぁああ」」

 

その大剣を振るうや否や、一刀のもとに全てのナルトを吹き飛ばす。

圧倒的な実力差を見せつけながらも、再不斬はナルトの評価を少し改めていた。

影分身は本来、上忍クラスの忍術。

使えるだけでも凄いのに、あの数は異常である。

だが、ナルトはそんな再不斬の心境など知るよしもなく……

 

(くっそー、全然歯がたたないってばよ……

このままじゃ、また独りぼっちになっちまう! そんなのはゴメンだってばよ!)

 

ナルトはホルスターから父のクナイを取り出す。

 

(ぶっつけ本番だが、やるしかねぇ!)

 

「ん? なんだそのクナイは? 見覚えがあるような……?」

「くらえ!」

 

再不斬にクナイを投げつける。

当然避けられるが、それはナルトも計算のうち。

そして、ここからが見せ所……

 

「見せてやる! 飛雷神の術」

「っ!? なっ? 黄色い閃光だと!?」

 

構える再不斬の後ろをクナイは普通に真っ直ぐに飛び、普通に木に突き刺さり止まる。

何事もなく。

 

「「「…………」」」

 

三者はお互い気まずそうに顔を合わせた。

一番気まずいのはいうまでもないが……

 

「あはははは、あー、今のなし!」

「……坊主……そのクナイはどこで手に入れた?」

「え? これってば、オレのとうちゃんのクナイだってばよ!」

「とうちゃん?」

「オレのとうちゃんは四代目火影だってばよ!」

「「!?」」

 

驚く再不斬とハクの横を通り、ナルトは木に刺さったクナイを取りに行く。

 

「ハク、どうやらオレはつくづく良い拾い物をしたようだ。やっぱりお前は最高だ!」

「ありがとうございます。再不斬さん」

 

こうしてナルトは再不斬達に歓迎されることになった。

 

 

三人は再び家に戻り、ナルトはこれまでの経緯を再不斬とハクに話していた。

自分が里の者達にずっと嫌われていたこと。

卒業試験に落ちたこと。

里の忍達に殺されかけたこと。

自分に九尾が封印されていること……

 

ナルトの話を聞き、ハクはますます自分の境遇とナルトを重ねていた。

そんなナルトの頭に再不斬は手をおき、くしゃりと撫でて、

 

「ナルト、貴様は忍として見所がある。確かにすぐには戦力にはならんが、それはお前が今までちゃんとした修行をさせられていなかったからだ。こんな逸材を放っておくとは、木の葉は余程のバカらしい」

「眉なし……」

「…………」

 

再不斬はナルトの頭を鷲掴みにし、手に力を込めながら、ナルトの体を持ちあげる。

 

「痛いってばよ!」

「再不斬さん、落ち着いて下さい。相手は子供ですよ!」

 

ハクが慌てて止めに入るが、再不斬はそれに構わず、話を続ける。

 

「そういやーお前もつい先ほどまで、その木の葉の一員だったな! 敬語使えなどと貴様に不可能なことは求めないが、名前ぐらいは覚えろよ、クソ餓鬼!」

「お、押忍! 再不斬さん!」

「よし……では早速貴様を鍛える。ハク、ナルトに木登り修行を教えてやれ」

「わかりました」

 

 

再び、外に出る三人。

 

「なぁなぁ、再不斬! 木登り何かがどうして修行になるんだってばよ?」

「ふん、こいつはただの木登りじゃない。手を使わずに足のチャクラをコントロールすることで登る忍の基礎を鍛える修行だ」

「基礎! オレってばそんなんじゃなくて、もっと凄い術とか教えて欲しいってばよ!」

「チャクラコントロールができていないお前には、どんな術を教えても無意味だ。現にお前の話を聞く限り、発動ぐらいしてもよさそうなのに、そのクナイはうんともいわなかっただろう?」

 

再不斬はナルトが手に持つ四代目火影のクナイを指さす。

 

「でも、オレってば多重影分身を一日で覚えたってばよ! 実際に使えるし!」

「それはたまたまお前が人並み外れたチャクラを持っていたからだ。九尾を抜きにしてもな。だが、そんな戦い方では強くなれない」

「強く……なれない」

「そうだ、忍とは地道な努力の積み重ねがものをいう。どんな状況でも任務を遂行する力、それは一朝一夕で身に付くものではない」

「うん……それは何となくだけどわかる気がする……」

「よし、なら行け!」

「押忍!」

 

ハクに手本を見せてもらってから、オレもやるってばよ! と走り出すナルト。

だが、その体は木に足をつけた一歩目で止まり、地面に叩きつけられる。

 

「いってぇええ〜」

 

打ち付けた頭を押さえ、地面にゴロゴロと転がるナルト。

 

「ハク……あいつ本当に使い物になると思うか?」

「再不斬さんが忍の才能があると認めたのです。何とかなりますよ……」

「……そうか」

「それに彼は忍にとって一番大切なものをわかっている。きっと強くなる」

「…………そうか」

 

再不斬とハクはしばらくの間、ナルトの修行を静かに見守るのであった。

 

 

5日後。

ナルトはついに、手を使わずに木のてっぺんまで登ることに成功する。

 

「登り切ったてばよ、ハク、再不斬!」

「ふん、いいだろう。ではこのまま修行の第二段階に入る」

「第二段階?」

「そうだ……次の修行はハクとの組み手だ」

「おぉー! やっと忍者らしくなってきたってばよ」

「まずはオレとハクが手本を見せる。ハク、いけるな?」

「はい、再不斬さん」

 

二人はナルトから少し距離をとり、組み手を始める。

組み手自体はアカデミーでも散々やってきたナルトだが、再不斬とハクがやっているそれは、アカデミー生のそれとはレベルが違っていた。

ナルトは二人の組み手を食い入るように見ていた。

 

「と、まぁ、こんな感じだ。チャクラコントロールができるようになってきたお前は、以前よりスピードも技のキレも格段に上がっているだろう。あとはそれを実戦で使えるようにしなければならない」

「よ〜し! やってやる! ハク、よろしくお願いするってばよ!」

「はい、こちらこそ、よろしくお願いしますね。ナルトくん」

 

それからナルトの修行漬けの毎日が始まった。

今までは一人で巻物を読んだり、ただチャクラを練ったり、丸太相手の練習しかして来なかった。

そんな事情もあり、最初は人との修行に慣れていなかったので苦戦を強いられていたが、ナルトはそれ以上に楽しさを感じていた。

途中からは鬼兄弟の業頭と冥頭も修行に加わり、ナルトは一週間で水面歩行も何とかできるようになるという急成長を遂げていた。

 

 

今日のナルトの修行を終え、再不斬、ハク、業頭、冥頭、ナルトの5人は全員で食卓を囲んでいた。

食事の用意などは、全てハクが一人で行っていたが……

 

「オレってば、こんな大人数で食事したことなんて殆んどないから、なんか嬉しい!」

「お代わりもありますので、ゆっくり噛んで食べて下さいね」

「おい、ハク! ナルトの肉だけ大きいじゃねぇか! オレが食ってやる!」

「あぁー、オレの肉返せってばよ再不斬!」

「ふん、世の中、弱肉強食! 食卓は戦場なんだよ!」

「ナルト、我等鬼兄弟のおかずをわけてやる」

「お前は今一番修行しているからな。」

「ありがとうだってばよ! 業頭に冥頭!」

「あの……皆さん……お代わりあるので、普通に食べて下さいね」

 

わいわい食事をしていた時に扉が開け放たれ、三人の男達が入ってきた。

 

「おい、邪魔するぞ! 再不斬」

「ガトー!」

「ガトーショコラ? デザートだってば?」

「ナルトくん、今は静かにしておいて下さい」

 

ハクの真面目な声にナルトは口を閉じる。

様子を見る限り、真ん中のちっこい男がガトーで、再不斬達の雇い主だなと一人で考えていた。

ガトーはそんなナルト達を見て、

 

「ふん、いつからここは保育園になったんだ? 再不斬」

「そんな事はどうでもいい……仕事の依頼だろ? さっさと内容を話して出ていけ!」

「相変わらずせっかちな奴だ。まぁいい、タズナが木の葉の忍を雇った」

「ほう……」

「今までは見逃していたが、これは明らかなガトーコーポレーションへの反発である! 殺せ!」

 

そう言って、金の入った袋を再不斬に投げ渡し、

 

「それは前金でちゃんとした報酬は任務成功の後に渡す」

 

再不斬は袋の中身を確かめた後、

 

「いいだろう……この依頼、霧隠れの鬼人・桃地再不斬が請け負った」

 

と、依頼を請け負うことになった。

 

 

ガトー達が出ていった後、四人はナルトの方を見る。

ターゲットが木の葉の忍を雇ったということは、木の葉の者達と戦闘になる可能性が出てきたからだ。

 

「ナルト、この依頼はオレとハク、それと鬼兄弟の4人でやる。お前は留守番……」

「再不斬、オレは木の葉の里では忍者になれなかったけど、いつまでもガキのままじゃねぇ! 相手が木の葉の里だからって、仲間外れはゴメンだってばよ!」

 

再不斬の言葉を途中で遮り、ナルトがそう言った。

 

「ナルトくん……」

 

ハクや鬼兄弟達も心配そうにナルトを見ている。

再不斬はナルトの発言に少し思案した後、

 

「わかった、ナルトにも今回から参加してもらう」

「再不斬さん!?」

 

ハクが疑問の声を上げる。

が、再不斬にも考えがあってのことであった。

 

「ハク。忍には遅かれ早かれこういう場面は出てくる。特にナルトはな……修行もいいが、実戦がやはり一番成長に繋がるのは間違いない……ただし、オレの指示には従ってもらうぞ、ナルト!」

「押忍!」

 

ナルトの返事に頷き、再不斬が部下達に指示を出す。

 

「よし! では、鬼兄弟の二人、お前らは先に先行して相手を確かめに行け! 殺れそうならタズナを殺れ! ただし、無理そうなら引き返せ。あと定期的に連絡もオレと取るように」

「わかった! ナルト、悪いが我等、鬼兄弟が先行するからには、今回お前の出番はないと思え」

「大人しく修行でもしておくんだな」

 

という二人の言葉に、ナルトは笑って返す。

 

「業頭と冥頭も下手して木の葉の奴等に負けんじゃねぇってばよ!」

「「無論だ!」」

 

こうして、再不斬率いる部隊と木の葉の小隊が激突する運命が決まったのであった。

 

 


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