霧隠れの黄色い閃光   作:アリスとウサギ

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ヒナタ赤面 八班瞬殺! ナルトの新術

一次試験を通過したナルト達はその後、窓を突き破って登場した派手な試験官、みたらしアンコに連れられて、第二試験会場前まで移動していた。

死の森。

そこは広く大きな森で、フェンスの外からもあり得ない大きさのムカデや猛獣達が闊歩しているのが見えた。

当然人の手が行き届いた様子はなく、ただ中に入り歩くだけでも命懸けの場所であった。

 

「なんだ、ここ……」

 

ナルトが唾を飲み込み、目の前の森を見る。

試験官のアンコは腰に手をあて下忍達に説明を始める。

 

「ここが第二の試験会場、第44演習場……別名「死の森」よ」

「な、なんだか凄く、不気味なところですね……」

 

ナルトの横にいた長十郎が少し青ざめた表情をする。

それを見たナルトがふん、と鼻を鳴らし、

 

「こんなのオレ達にとってはへっちゃらだ。怖くなんかねーってばよ!」

 

と、アンコに指を突きつけ空元気をする。

そんなナルトにアンコはニコッと人の悪い笑顔を向け、

 

「そう……キミは元気がいいのね」

 

そう言い終わった後。

直後。

アンコは服の袖からクナイを取り出し、ナルト目掛けて放ってきた。

ナルトはその動きを見切り、右へ跳んで避ける。

明らかに手加減はされていたし、仮に当たったとしてもそれほどの怪我はしなかっただろうが、いきなり攻撃されたことにナルトは怒る。

 

「なにするんだってばよ!」

 

ナルトはクナイを手に取り、ハクは千本を抜き、長十郎は刀に手をあて、いつでも抜ける態勢を取る。

第一班は本気の殺気をアンコに向けた。

一度、木の葉の忍に殺されかけたナルトはもちろん、その話を聞いていたハクと長十郎も同盟の話が出ているとはいえ、木の葉を完全には信用していなかった。

アンコからすればちょっとした脅しをかけたつもりだったのだが、まさかナルトがクナイを避け、あまつさえチームの三人ともが反撃の態勢をとるとは思ってもいなかった。

 

「へ〜、あなた達結構やるわねぇ……でも!」

 

と、言い切ると同時にアンコは第一班の背後に回る。

ナルトだけはその速度に体がついていけなかったが、ハクと長十郎は完全にアンコの動きを予測していた。

長十郎は横へ跳び、ハクはナルトを片手で突き飛ばし、自身の後ろに回っていたアンコに複数の千本を投げつける。

 

キンッ! キンッ!

 

アンコはそれをクナイで難なく弾くも、今度こそその顔は驚愕に満ちていた。

動けなかったナルトでさえ、目だけはアンコを追っていたところから考えて、どう見ても第一班の実力は下忍レベルではなかったからだ。

アンコは見開いていた目を笑顔にする。

 

「あなた達、本当にやるわね。ふふふ、かなり私好みだわ。まあ本当はちょっと脅すつもりだったんだけど、どうやらあなた達は問題ないようね……では」

 

今だにアンコを睨みつける第一班達を意にも介さず、涼しい顔で説明に戻る。

 

「それじゃ第二試験を始める前にアンタらにこれを配っておくわね!」

 

第一試験と同じようなプリントの束を下忍達に見せる。

だが、この試験はどう見ても筆記試験ではなく、何の紙なのか疑問を頭に浮かべる受験者達。

そんな様子を見ながら、アンコは意地の悪い笑顔で話す。

 

「同意書よ。こっからは死人も出るからそれについて同意を取っとかないとね! 私の責任になっちゃうからさー」

 

同意書が全員に配られる。

 

「まず、第二の試験の説明をするから、その後にこれにサインして班ごとに後ろの小屋に行って提出してね」

 

と、小屋を指差す。

 

「じゃ、試験の説明を始めるわ。早い話ここで極限のサバイバルに挑んでもらうわ。まずこの演習場の地形から順を追って説明するわ」

 

巻物に描かれた地図をみんなに見せる。

 

「この第44演習場はカギのかかった44個のゲート入口に円状に囲まれてて、川と森、中央には塔がある。その塔からゲートまでは約10キロメートル……この限られた地形内であるサバイバルプログラムをこなしてもらう。その内容は各々の武器や忍術を駆使したなんでもありありの巻物争奪戦よ!」

 

アンコは懐から「天」と「地」の二つの巻物を取り出して受験者達に説明を続ける。

 

「天と地、この二つの巻物をめぐって闘う。ここには72人つまり24チームが存在する。その半分の12チームには天の書、もう半分の12チームには地の書を、それぞれ1チーム一巻ずつ渡す。そしてこの試験の合格条件は天地両方の書を持って中央の塔まで三人で来ること。ただし時間内にね。期限は96時間、ちょうど4日間でやるわ!」

 

4日間という言葉にご飯はどうするの! とシカマルと同じ班のチョウジが声をあげた。

 

「自給自足よ、森は野生の宝庫。ただし人食い猛獣や毒虫、毒草には気をつけて」

 

ここまで聞いて漸くこの試験の難題さを思い知る受験者達。

まず、12チーム全員合格なんてほぼありえない。

紛失や他の参加者を邪魔しようと余分に巻物を集める者達が出てくるからだ。

さらに日を追うごとに行動距離は長くなり、回復に充てる時間は逆に短くなる。

おまけに辺りは敵だらけ、うかつに寝ることさえままならない。

死ぬ者も出るだろう……

 

「続いて失格条件について。まず一つ目が時間以内に天地両方の巻物を塔まで三人で持って来れなかったチーム。二つ目、班員を失ったチーム又は再起不能者を出したチーム。ルールとして途中ギブアップも一切なし! そして三つ目、巻物を塔に着くまでに開けたチーム。中忍ともなれば極秘文書を扱うことも出てくる、信頼性を見るためよ。説明は以上! 同意書3枚と巻物を交換するから、その後、ゲート入口を決めて一斉にスタートよ!」

 

アンコはそこで言葉を区切り、真剣な顔で言い渡す。

 

「最後にアドバイスを一言……死ぬな!!」

 

 

各々のチームが同意書を提出し、巻物を貰っていく。

 

霧隠れ第一班

ナルト ハク 長十郎

「かたっぱしから、ブッ倒してやる!」

「いえ、この試験は色々と危険です。派手な行動はやめておきましょう」

「ぼ、僕もハクさんに同意です……」

 

木の葉隠れ第八班

キバ ヒナタ シノ

「ひゃほおお! サバイバルならオレ達の十八番だ! ヒナタ、甘えは見せんじゃねーぜ!」

「う、うん」

「…………」

 

木の葉隠れ第十班

シカマル チョウジ いの

「命懸けかよ……めんどくせーがやるしかねーな……ナルト狙いで行きたかったんだが……さてどうするか……」

「お菓子に、ポテチ……」

「アンタらねぇ……」

 

木の葉隠れ第七班

サスケ サイ サクラ

「ここからが本番だな……」

「最近カカシ先生に勧められたイチャイチャパラダイスには、こういう極限の状況で男女は恋に目覚め易いと……」

「アンタなに読んでんのよ!」

 

音忍

ドス ザク キン

「公然と我々の使命が果たせるチャンスが来ましたね」

「ふん、雑魚どもを消し飛ばすだけか」

「ちょろい試験だ」

 

砂隠れ

我愛羅 カンクロ テマリ

「…………」

「敵チームもそうだが、我愛羅と4日間もいるのが怖いぜ」

「……ふん」

 

木の葉隠れ

リー ネジ テンテン

「ガイ先生! 僕は頑張ります! 必ず勝ち抜いて見せます!」

「ふん」

「まったく……」

 

 

全員がゲート前に立ち、試験開始の時間が訪れる。

アンコは全員に届くように声を張り上げて宣言する。

 

「これより中忍選抜試験第二の試験を開始する!」

 

試験開始の合図とともに、それぞれのチームが一斉にゲートをくぐり走りだした。

 

駆け出す。

霧隠れ第一班のナルト達も木を蹴り、森の中を走りながら、今後についての話し合いをする。

ハクが人差し指を立てて、ナルトと長十郎に作戦を説明する。

 

「この試験ですが、時間が経てば経つほど巻物は減り、合格の条件も厳しくなっていきます。ですから僕達が持っている天の書ではなく地の書を持っている敵チームを見つけたらすぐに奪い、そのまま塔を目指して合格しましょう。できれば今日中に合格するのが一番いいです」

 

その説明を聞いたナルトが異を唱える。

 

「巻物一つしか奪わねえのか? 他のチームをできるだけ倒さねえの?」

「たしかにそれも作戦の一つですが、どうやら今回の受験者達は粒揃いらしく、複数のチームを敵に回すのは得策ではありません。それに予想外の強敵や事件に巻き込まれても対処がとりにくいです。ですから今回は早くクリアすることに重点をおきましょう」

 

ハクは第一の試験会場で今回の受験者達を観察し、どれほどの者がいるのか探っていた。

その結果、明らかに例年の下忍より強い奴らがちらほら見えたため、極力戦闘は避ける作戦を提案したのだ。

ナルトと長十郎はハクの説明に頷く。

 

「わかったってばよ!」

「僕もその作戦に賛成です」

「ありがとうございます。ナルトくん、長十郎さん……では」

 

ナルト達は少し太い木の枝に足を止める。

なぜなら数メートル先にナルト達が来るのを察知して、待ち構えていた敵がいたからだ。

相対する六名と一匹。

第一班を待ち構えていたのは木の葉隠れ第八班のチーム。

キバ、ヒナタ、シノと赤丸であった。

目の前に来たナルト達を見て、キバ達が声をあげる。

 

「ひゃほおお、ラッキー! 匂いでわかったがやっぱりナルトのチームか! アイツらになら確実に勝てるぞ赤丸!」

「ワン!」

「ナ、ナルトくん……その……ごめんね……キバくんが……」

「……どんな相手だろうとなめてかかるのはオレのポリシーに反する。しかもこのように正面か「話しがなげぇーよ、シノ!」」

 

キバ、ヒナタ、シノの話から察するに、チームメイト達をキバが殆んど無理矢理連れてきたようだ。

どうやらナルト相手なら余裕で勝てるとの自信からきた戦略のようだ。

だが、見つけたからにはナルト達の方も当然逃がすつもりはない。

互いのチームは睨み合い、戦闘準備に入る。

ナルトは術を発動する前に、先ほどから言われっぱなしで頭にきていたのもありキバ達に言い返す。

 

「テストの時にもヒナタは隣だったし、正直あんま闘いたくなかったけど、向かって来たからには容赦しねー! 三人とも覚悟はいいな!」

 

と、ナルトの上から目線の挑発に、今度はキバが乗り、

 

「強がってんじゃねーよ、ナルト! てめぇが里を抜けてどれだけ強くなったかは知らねーが、このオレに勝てるわけねぇだろ! 巻物を渡すって言うんなら、知り合いのよしみで見逃してやってもいいんだぜ!」

「ワン! ワン!」

「何言ってんだキバ? 巻物をお前達なんかに渡すわけねーだろ……バーカ!」

「そうかよ……なら、せめてもの情けだ、キレイに一発でのしてやる!」

 

ナルトはキバのその言葉を開戦の合図と受け取り、十字に印を結ぶ。

 

「オレの新術で終わらせてやる。多重影分身の術!」

「「「!?」」」

 

キバ達は突如現れた20人のナルトに囲まれる形となる。

ヒナタは今だにおどおどしていたが、シノはナルトの分身を見て、手から大量の虫を出し、キバも好戦的な笑みを浮かべ、

 

「へぇ〜、マジでちょっとはやるようになったじゃねーの、ナルト!」

「「「変化!」」」

 

ナルトはキバの話に取り合わず、そのまま新術を繰り出す。

分身達が全て変化の印を結び、煙が晴れて姿を現したのは……

 

「「「うっふ〜ん」」」

 

20人のあられもない格好をした紅であった。

 

「ぐはっ!」

「クゥ〜ン」

「…………」

「……くっ」

「ナ、ナルトさん……ナイス…ハレンチ……」

 

木の葉に到着してから、一楽へ行く前にヒナタと一緒にいた紅を見ていたナルトだからこそできた新術であった。

キバは鼻血を吹き出し、赤丸はあまりの事態に尻尾が垂れ下がり、ヒナタは赤面しながらうろたえ、シノは気絶するかのようにその場で倒れた。

三人と一匹が戦闘不能になったのを確認し、ナルトが術を解く。

決めポーズをとり、術の名を高らかに宣言する。

 

「名づけて ハーレムの術! 紅の姉ちゃんバージョン!」

 

鼻から血をドクドクと流しているキバに近づき、ポーチを漁るとすぐに天の書が見つかった。

 

「やっぱりキバが巻物持ってたってばよ! う〜ん、でも同じ天の書か……まあ一応貰っておくか……」

 

巻物を無事に奪ったナルトはハクと長十郎のところに戻る。

なぜか長十郎までもが鼻血を出しているが、気にせずナルトは二人に巻物を見せ、

 

「ハク、長十郎、巻物取って来たってばよ。早く逃げるぞ!」

 

戦闘が終わったら即離脱。

ナルトからすれば当然の提案だったのだが、その提案にハクも長十郎も頷く様子はなく……

どうしたのかと尋ねようとした時、満面の笑みを浮かべたハクがナルトの方を見て、

 

「ナルトくん……以前言いましたよね? 僕……」

「ん?」

「この術は禁止だと、あれほど言いましたよね……」

 

それはまだナルト達が波の国にいた頃の話だった。

再不斬とナルトが組み手をしていた時、あまりにも手も足も出なかったナルトが一泡吹かせてやろうと、お色気の術を使ったところを見られてしまい、氷使いのハクが烈火のごとく怒ったことがあったのだ……

 

「いや、あれは……お色気の術であって……」

「ふふふ、ナルトくん? まさか言い訳をされるのですか? ふふ、 ふ ふ ふ ふ……」

「…………」

 

ナルトを凍りつかさんばかりの冷気がハクの体から溢れ出す。

森の中なのに、さながら吹雪を浴びるかのごとく……

それでも、なんとかナルトは口を開き、

 

「だって、だって、言ったってばよ! 再不斬もハクも、忍なら相手の意表を突けって!」

「味方の意表を突いてどうするんですか! 長十郎さん、鼻から血を流していますよ!」

「それってば、オレの責任じゃ……」

 

なぜかスムーズにはいかなかったが、取り合わず巻物を奪ったナルト達はキバ達が目覚める前にその場を離脱した。

 

 

その1分後。

ヒナタと赤丸の呼びかけもあり、キバとシノが目を覚ます。

二人が目を覚ましたことに安堵するヒナタと赤丸。

 

「よ、よかった……キバくんもシノくんも目が覚めて……」

「ワン!」

 

キバは頭を振りながら立ち上がり、

 

「ヒナタ……オレは……はっ! 巻物がねえ!」

 

慌ててポーチだけでなく、他のポケットも探るが当然巻物は見つからない。

その様子を見たシノがヒナタに問いかける。

 

「ヒナタ、巻物はナルト達が持っていったのか?」

「う、うん……」

「……そうか」

 

淡白とした二人の会話に文句を言うキバ。

 

「そうかじゃねぇぞ! シノ、てめぇまでいったい何やってたんだ!」

「オレが動けないのは無理もない。なぜならオレもハーレムの術とやらをくらっていたからだ……」

「カッコつけて言うことかよ、シノ! ったく、さっさとナルト達を追いかけるぞ!」

 

シノとヒナタが何かを言おうとしたが、巻物を取られたことに焦っていたキバは聞く耳を持たなかった。

先を行くキバをほっとけるわけもなく、二人もその後を追うのであった。

 

 

 


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