もしも生き残りが1人じゃなかったら   作:嗤う鉄心

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いつの間にかお気に入り数が100件を超えていて歓喜乱舞しております。
テストが終わったばかりの嗤う鉄心です。

初っ端から原作と異なっていますがそれでも良ければどうぞ!(前回も色々変わってたような……)


特異点F 炎上汚染都市 冬木
二話 開戦


特異点F 炎上汚染都市 冬木

 

「キュウ……キュウ。フォウ……フー、フォウ……」

 

また、頬を舐められたような……ん?また?

 

「先輩。起きてください、先輩……。ここは正式名称で呼びかけるべきでしょうか……?マスター、起きてください。起きないと殺しますよ」

 

この声は聞き覚えがある……。

でも、マスターって……?

 

沈んでいた意識が徐々に戻ってくる。

目を開く。

炎の街と、白いモフモフと、黒い鎧と大きな盾を持った紫の少女がいた。

 

「って今殺すとか言ってなかった!?」

「すみません、正しくは殺されますよ、でした」

「殺される……?マシュ、体は大丈夫なのか?それにその姿は一体……」

「その話は長くなるので後で、敵性体を撃破します!」

 

言うや早いや、マシュはその盾を持って走り出す。向かった先には骨でできた生き物……のようなものがいた。

 

「先輩、指示を!」

「え、し、指示って言ったって何をしたら……!?」

 

混乱するのも仕方ない。

気が付いたら炎の海から炎の街へ、そして少女は生きている上に何やら破廉恥な姿で盾を振るっている。そして挙句の果てには少女に「マスター」と呼ばれ、謎の骨でできた生き物のようなものに襲われる。

今彼らに足りないのは情報だ。

情報を集めるためにもまずは――

 

「……っ、マシュ!そいつらを倒してくれ!!」

「了解、マスター!」

 

襲いかかってくる以上敵と考えるべきだ。

敵がいる限りゆっくり話し合う事も出来ないだろう。

 

 

マシュは果敢に挑んでゆく。

盾の大きさを生かし衝突。そのまま横に薙ぎ払う。その勢いを使って背後からの攻撃を防ぐ。高く跳び、叩きつける。

自分の背丈ほどもある盾をいとも簡単に操り、数分の後に戦闘は終了する。

 

「敵性体、撃破しました。先輩、お怪我はありませんか?」

「あ、ああ。でも……強かったんだな、マシュ」

「え、と。それは……その……」

 

妙に歯切れが悪い。何か言ってはいけないことを言ってしまったのかと不安になる。

しかし、それはすぐ解消された。

 

「デミサーヴァントか。カルデア第六の実験は成功……。あまり嬉しくはないけどな」

 

男性の声。

声のする方に二人は顔を向ける。

 

「士郎!!」

「桜さん!!」

 

「無事だったみたいだな、立香」

「マシュさん、その姿は……?」

 

そこには、白衣ではなく制服のようなものを着て、更に紅い射籠手を右腕に着けた士郎と、同じく制服のようなものを着た紫の女性がいた。

 

マシュが淡い紫ならば、彼女は深い紫。立香は、なんとも言えぬ思いを抱いた。

 

彼女とは初めて会った気がしない。何故かそう思ったのだ。

 

「士郎、その人は……?」

「先輩のお知り合いなんですね。私は間桐桜。マシュさんと同じ、Aチームに所属しています」

「ロマニとかが時々言ってた、レイシフト適性100%を持つもう一人の人間だ」

 

深い紫の女性、間桐桜。

彼女の操る虚数魔術が影響し、レイシフト適性が100%となっていた。

そして、あの爆発が起きると同時に強制レイシフトされ、あの場にいて生き残った数少ない人間となった。

 

「士郎さんがいなかったのはもしかして……」

「ああ、桜を探しに行ってた。一人だけレイシフト完了済みだったからな」

 

おそらく、強制レイシフトが起こったのもそれに桜が選ばれたのもやはり持って生まれた魔術特性だろう。それほどまでに、虚数魔術は異常なのだ。

いや、もしかするとそれだけではないのかもしれないが。

 

「ところでマシュ、その姿は?それになんで俺がマスターなんだ?」

「あ、そうでした。先ほど、士郎さんが仰っていたとおり、私はデミサーヴァントです。デミサーヴァントというのは、人間とサーヴァントの融合したものという認識で構いません。」

 

突然のことになんとも間抜けな顔をしている。

 

「デミ……サーヴァント?えっと、サーヴァントって確か……」

「過去、現在、未来、そして平行世界の可能性。この星の記憶に刻まれた英雄達。その力の一片だ。……マシュ、確認したいことがある」

 

立香の言葉を引き継いだ士郎は、しかしそれだけに留まらなかった。

 

「ここは、いや、今いるこの時間は……本当に2004年なのか?2004年の、1月30日――冬木市で、間違いないのか?」

 

士郎の隣で桜も不安そうな表情を浮かべている。

それもそのはず。彼らにとってこの冬木市は故郷なのだから。

何より、2004年。1月30日。記憶違いでなければ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

つまり、現在目の前で燃え盛る街が自分たちの街とは、考えられないのだ。

士郎にとっては、特に信じ難い……信じたくないものだ。

 

「……はい。2004年、1月30日の冬木市で間違いありません」

 

けれど現実は残酷で。マシュから突きつけられた事実は受け入れ難いものだった。

自分たちの住んでいた街が、燃えている。高校生だった自分たちがいた、冬木市が。

 

そして街の様子は――

当時からして十年前の、大災害の様子と酷似していた。

 

「そん、な。ここが……本当に冬木?だって、始まってさえいないはずなのに……?いえ、それ以上にこの魔力の濃度は……」

「――生存者は、きっといない。探すだけ無駄だろう。探すなら霊脈だ。ここから近いのは……俺の家だ」

 

二人は囁くように言った。気をつけていないと聞こえないほど小さな声。

しかし、立香とマシュに大きな打撃を与えていた。

 

「士郎、ここは……」

「桜さん、もしかして……」

 

「ああ。ここは、2004年1月30日の冬木市は」

「高校生だった私達が住んでいた街、です」

 

重い沈黙が満ちる。

しかし、ただ立っていても何も変わらない。

 

「……カルデアと連絡をとろう。きっとロマニが指揮を執っているはずだ」

 

あくまで冷静に、士郎は告げる。

 

何年経っても消えない記憶。

炎。街を覆い尽くす炎。両親を、家族を焼き尽くした炎。多くの人を焼き殺した炎。

その中で彼は生き残った。

助けを求める声に顔を背け。動かぬ肢体に鞭打って歩き続け。黒い太陽に気付かぬ振りをして。

あの時の光景は、臭いは、音は、熱さや痛みは、その全てを覚えていた。

心に刻み込まれていた。

 

同時に。

『生きててくれて、ありがとう……!!』

一人でも助けられてよかったと、自分を救って救われた人の顔も覚えている。

 

そして。

『―――問おう。貴方が私の、マスターか?』

運命が回り出したあの夜の光景も。その時から始まった、恐ろしい戦いのことも。

自分自身と決着を付けた、あの日のことも。

 

何一つ欠けることなく覚えている。

 

その時だった。

 

―――ヒュン

 

風を切る音。

目を向ければ、百を超える矢がどこからか飛んできていた。何者かが放ったであろうそれは、全てに魔力が込められていた。

そしてそれを見た瞬間、士郎と桜は同時に叫ぶ。

 

「「サーヴァント!!?」」

 

さっきの骨の怪物なんて可愛いものだ。

この矢は、いや、()()全てに宝具級の神秘が眠っている。故に、その正体を彼らは知っている。

 

「アーチャー……!でも、姉さんが召喚したのは1月31日の筈です!!」

「けれどこれが現実だ。街が燃えている以上、俺たちの知っている歴史とは変わっているんだろう……!」

 

言いつつ、皆を守るように立つ。

 

「……投影、開始(トレース、オン)

 

それは彼にしかできない迎撃。

 

……着弾までまだ時間はある。

久々なんだ。きちんと六拍踏んでやろう。

 

「想像理念、解明。

基本骨子、解明。

構成材質、解明。

制作技術、解明。

成長経験、解明。

蓄積年月、解明」

 

士郎が言葉を紡ぐ度、宙に矢が現れる。正しくは剣を矢にしたものだが、それを知っているのは桜だけだ。

そしてそれらは、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

行程完了(ロールアウト)全投影、待機(バレット、クリア)

 

マシュと立香は動けなかった。士郎が何をしようといているのか分からない。それ以上に、矢を放った者が放つ敵意に、殺意に、恐怖を抱いてしまったからだ。

 

故に、士郎に託す他なく。

 

停止解凍(フリーズアウト)全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)

 

一気に射ち出したそれは、寸分違わず同じものとぶつかり――弾けた。

比喩ではない。相手の放った矢はぶつかり合った瞬間爆発したのだ。そして士郎の放った矢も同時に爆発した。

風が吹き荒れる。

 

「くっ……」

一つだけならまだしも、100以上、それも連鎖的に二倍の数となると流石に衝撃がとんでもない……!

でもあいつの事だ。これで終わりのはずが――ない。

 

確信していた。

だから、マシュが前に立った時咄嗟に行動が取れなかった。

 

「なっ……マシュ!?」

 

 

偽物でもいい、先輩を、士郎さんを、桜さんを、みんなを守る力が欲しい……!!

 

「やぁああああああああああああ!!!!」

 

 

士郎の位置からは見えなかったが、既に第二射は放たれていた。そしてそれは、先ほどの物より強い神秘が込められていた。

マシュは、守りたいという一心で動き―――宝具を、展開してみせた。

 

盾を中心として巨大な結界が張られた。それは、何者にも侵されない神秘。

 

そして、第二射を見事防ぎきった。

 

「完全に防ぐ、か……」

あの盾の強度はきっと、使い手の心の強さが反映されるんだろう。今のはきっと、真名が分からずとも皆を守りたいと思って解放した――擬似宝具の展開だ。

 

士郎の見解は正しい。

そして士郎は、盾の分析を行った。

 

……本来は盾じゃ無いな。これ自体が英霊の触媒か。なるほど。それなら融合した英霊はきっと――。

 

答えに辿り着く。

 

幸いにも、追撃はなかった。

 

「なんとか……なったのか?」

「ああ。マシュのおかげだ。ありがとう」

「私はただ皆さんを守りたいと思っただけで……」

「その想いが、擬似的でも宝具を展開するに至ったんですよ。ところで先輩?」

「桜、今はよしてくれ。……頼む」

 

……桜の表情に闇が見えるのは気のせいだろうか。

 

対する士郎はかなり疲弊していた。

十年以上フル稼働していなかった魔術回路で100以上の数を一気に投影したのだ。そうなるのも仕方ないことだろう。

 

 

「きゃぁああああああああ!!!」

 

 

「悲鳴!?」

「あちらの方角からです!!」

 

立香とマシュはすぐに駆け出す。

だが、こういう時真っ先に飛び出すであろう人物は青ざめた顔をしたまま立ち尽くしている。

 

「先輩?顔色が良くないです……。無茶、してないですよね?」

「あ、ああ。大丈夫だ。心配するな。……行こう」

 

数拍置いて士郎と桜も駆け出した。

 

 

……少し、無理しすぎたな。

ほんの少しだけ、自身の行動を反省する。

そして左手の甲に目を向ける。そこにあるのは、令呪。

――セイバーと交わしたものがそこにはあった。




物凄く中途半端な終わり方……。
どこまで書いて止めるのかわからなくなったので一旦ここで。


ということで桜ちゃん登場です!

そして戦闘描写難しい……(ほとんど書いてない)
次回は皆さんご存知救われないあの人が登場です。


うーむ、書くのむつかしい。


バレバレかも知れませんが作者は士郎がかなり好きです。
無意識に贔屓してるかもしれないのでそこは悪しからず伝えてください。

今回なんか色々やってましたけどアーチャーとの対決があった時空ですので、戦いの最中にその技術を投影したという感じです(語彙力足りない)


どうでもいいですけど、パールヴァティーちゃん来ました!これ書いてたら!

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