Fate/Apocrypha 英雄王と鈴の花   作:戒 昇

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すまない…投稿が一週間も遅れて…すまない(ジークフリート風)

という訳で三話です、どうぞ!


第三話 始まる運命

 外に出て最初に花鈴が気付いたのは自分のバッグが無くなっていたことだった。バックの本体はともかく中に入っている十万ちょっとの現金と作ったばかりのクレジットカードが入っていて、それが全く見当たらないのだ。

 

「……最悪」

 

 ただ一言そう呟くしかなかった、唯一の救いはズボンのポケットに入れていた携帯電話が無事だっただけで、彼女の落胆は目に見えていた。それに気付いたのは少し遅れて廃屋から出てきた「サーヴァント・アサシン」であった。

 

「肩を落としているが、どうかしたのかマスター?」

 

「あ…え、えっと…」

 

 大事な物が入ったバッグを落とした旨を伝えると、右手を顎に添えて考え事をし始めた。ほんの数秒考えた後こう切り出した。

 

「なら私に任せてくれ、すぐに持ってこよう」

 

「え…? でも今から探しても見つかるか…」

 

「いや、探したりはしないよ?」

 

 一瞬だけ思考がフリーズしてしまった…持ってくると言ったばかりなのに探さないと言われてしまった、しかもすごく不思議そうな顔をしている姿に彼女は少し苛立ちを覚えてしまう。

 

「…じゃあ、どうするの?」

 

「こうするのさ」

 

 右手を花鈴の目の前に差し出す。するとその手が僅かに光ったように見え…微かな声で呟く。

 

「『  』」

 

 視界が防がれるほどの光が出て、思わず目を瞑ってしまったがそれも一瞬だった。次に見る光景は彼女の常識を覆すほどのものであった。

 時間にしても数秒しかないはず…だが、差し出された右手には確かに()()()()()()が握られていたのだ。最初は目の錯覚と思ったが、どこから見ても自分の初任給で買った黒皮でできたバッグであった。

 

「す、凄い…」

 

「ほら、中身も見てみなよ」

 

 渡されたバッグを開け、中を確認する。財布…ある、中身も手をつけられておらず真新しい新札が顔を覗かせていて、それ以外も家を出た時のままであった。

 

「ねぇ、もしかして今のが『宝具』なの?」

 

「その通り、諸事情で詳しくは明かせないけどね」

 

 そこまで聞いた花鈴は改めて目の前にいる男性が『サーヴァント』であることを実感する。だがしかし…実際はあまりの見掛け倒しだなと思ってしまう。

 灰色の髪は風に揺られる度にその長さを表している、整った顔立ちは身に着けているローブではなく高級スーツであったら間違いなくイケメンと言える…いや、テレビや雑誌に出ている有名人にも引けをとらないほどであった。

 

 しかし、そんな彼がみすぼらしく見えるのは前述したローブだろう、長年着ていたのか所々皺が目立ち色あせも確認できるほどのものである。

 

「その服はどうにかならないの?」

 

「これか? 着替えがあればいいが、生憎手持ちがないからどうしようもないな」

 

 困った表情をするアサシンに花鈴は何か閃いたのか、手を叩く仕草をする。

 

「ならバックのお礼をさせて、お金なら私が出すから問題ないし!」

 

「いや、施しを受けるのは…」

 

「命もバックも両方守ってくれたから、お礼も無いなんて私が納得できないよ」 

 

 断るつもりだったアサシンはあまりの押しの強さにたじろいでしまい、仕方がなく申し入れを受けてしまった。彼女は嬉しそうにして、「絶体に似合う服を選ぶから!」と意気込みを語ってくれた…その姿に苦笑いをするしかなかったのは言うまでもないだろう。

 

 その後、今の時間が深夜の一時過ぎに気付いて服選びは明日にして、途中で拾ったタクシーで花鈴の家まで帰ることにした。

 

 

 

 

 翌日、六畳一間の部屋で雑魚寝していた花鈴が目覚めると、ガスコンロの方から良い香りが漂ってきた。そちらに目をやるとローブを纏ったアサシンが器用にフライパンを振っていたのだ。

 

「おはよう御座います、少し台所を借りていますね」  

 

「お、おはよう…」 

 

 一人暮らしを始めてから誰も入れたことがない部屋に男がいる状況は慣れていなかった為か、少し戸惑ってしまう。それと同時に昨夜の出来事が夢でないことが実感できた。

 自分がくるまっていた毛布を畳んで、ボロボロの襖を開けて中に放り込む。

 

「出来ましたよ」 

 

 そう言ってアサシンが持ってきたのは近所のスーパーで安売りしていたので買ってきたキャベツともやし、そして好物であるソーセージの炒めたものだった。ペッパーガーリック味特有の香りが食欲をそそったのか、お腹がグゥと鳴った。

 

「…美味しそう」

 

 トースターに入れていた食パンが焼き上がり、山岡製パンでやっていたキャンペーンにて貰った白い皿に乗せて持ってきてくれた。

 

「ありがとう」  

 

「どういたしまして、さぁ食べましょう」

 

 フォークが無いため箸を使って炒めものを一口分を掴み口へと運ぶ、しゃっきりてしたキャベツの歯ごたえとソーセージのパリっとした食感が楽しく、塩味が薄くも濃くもなく良い加減であった。トーストもきつね色に焼けており、普段食べているより一層美味しく感じられた。

 ふとトーストを持っている右手を見ると、その甲には赤い痣のようなものがあるのが分かる。

 

 “これが『令呪』か…”

 

 花鈴は四年も遠ざかっていたが魔術師のはしくれである為、その痣から魔力を感じ取れていた。

 

「東京でも『聖杯戦争』が起こるなんてね…」

 

 そんな言葉が漏れる…かつて噂程度に聞いたことがあるだけで、今では行われていないと言われている「聖杯戦争」に自分が参加して、これから熾烈な戦いが待っていると思うと身震いがしてしまう。

 

「そのこと何だが…」

 

 アサシンが何やら歯切れの悪くある事実を切り出す。

 

「実はただの『聖杯戦争』ではないんだ」

 

「……え?」

 

「本当の舞台は、ルーマニアのトゥリファスと呼ばれる場所らしく、それに1サーヴァントが七対七も参戦するチーム戦…らしいのだ」

 

 トーストを持つ手が止まる。サーヴァントが14騎?…聞いていたものより倍もある数に今度は言いようのない不安にかられ、脚が震えていた。

 それを察してくれたのか、アサシンが優しく声をかける。

 

「大丈夫、マスターの身は私が守る…これは絶体に嘘にはさせないよ」

 

 しかし、それでも意図していない大規模な聖杯戦争に参加してしまった。それは純粋な魔術師ではない花鈴にとっては荷が重すぎたか、弱々しく言葉が出てしまう。

 

「で、でもチーム戦だから一騎ぐらい参加しなくても…」

 

「不審に思われて、捜索する為の人物が来るだろう…もし彼の死亡が分かったら、君の命が狙われるかもしれない」

 

 血の気が引くとは正しくこの事だろう。ルーマニアに行っても戦争に巻き込まれる、行かなければアサシンの言う通り相良が所属している所から狙われてしまう…魔術師の性質を知っている花鈴はそれがどんな結末を生むかは容易に想像できた。

 

「…どうしよう、戦うなんて…出来ないよ」 

 

「…」 

 

 無理もない話だ、四年も魔術から離れていた事やそもそも名家の家柄に生まれながらも能力が平凡である彼女に戦闘する為の魔術は習うことはなかった。精々使えるのはようやく形だけものにした「強化魔術」と花園家だけが持つとある魔術だけである。

 

「一つだけ手があります。ただそれまではマスターに頑張っていただくしかありませんが…」 

 

 俯いてしまった花鈴にアサシンがある提案をする…彼自身もこれがマスターを守る最良にして唯一の手段であり、これが断られたら他に手立てが無くなるので、ある意味では賭けのようなものであった。

 

「…何?」

 

「『監督役』の元まで行くのです。そこで保護をしてもらえば一先ず安心ですから」

 

 「監督役」とは「聖杯戦争」を円滑に遂行する役割を担う存在する人のことである。具体的には敗退したマスターの保護、戦闘によって起こった事件の隠蔽などを行う、なお中立の立場を守るため選ばれるのは「聖堂教会」から派遣されることがある。

 それに辞退の旨を伝え「令呪」を返上すれば、晴れて戦争とは無関係となった上で終結まで教会から保護を受けられるので、身の安全が保障される為一石二鳥となるのだ。

 

 僅かに考えた後、花鈴は顔を上げた。

 

「分かった、だけど…その『監督役』て人までの所までだから…」

 

「マスター…!」 

 

 花鈴は参加したくはなかった…しかし、迷っていてはいつかは誰かを巻き込む事態になってしまう。ならば一層のこと進んだ方がマシであった。それは諦めにも似たようなものであるが、彼女は決断をした…運命は確かに近付きつつあった。

 

「…あ!」 

 

「…? どうしましたか?」 

 

「服を買う約束が…」 

 

「…向こうでも買えるから、問題ないよ」 

 

 まだ緊張感がないようであるが、アサシンは優しく笑みを浮かべ、まだこれでいいと思った。

 

 

 

 

 ブカレスト市内にある紳士用高級スーツを専門に扱う店にて一つの人影があった。しかしその風貌は決して綺羅やかな店内とは相反しており、来店から店員の視線が背中に刺さっていた。

 そんな中、次々にスーツを手に取っては戻している作業をしていた獅子劫は霊体化しているセイバーに念話で話しかけていた。

 

 “これはどうなんだ…?”

 

 “ふむ、まぁまぁである…しかし(オレ)の肌を覆うには至らないがな”

 

 “ダメって事か…”

 

 若干肩を落としながら手にしたスーツを元の場所へと戻し、また次のを手にする。

 それは薄い生地で色は濃紺、ボタンにはライオンをモチーフにしたデザインで、全体はかなりシンプルな部類に入るものであり、またダメだと思いながらセイバーに見せる。

 

 “ほう…良いものであるな”

 

 予想外にも気に入ったらしく、思わずセイバーが立っている右側に目をやってしまう…霊体化している為、誰もいないが不幸にも視線の先に店員がいたらしく軽い悲鳴をあげて隠れてしまった。

 その後、これを会計する時も少し涙目になっていた店員を見て悪いことをしたなと思いつつ、店を後にした。

 

 

 所は変わり、スーツに着替えたセイバーと獅子劫は市内の喫茶店にて茶を嗜んでいた。その道中にあった昼営業のバーに入ろうとしたが、それは止められたのだった。

 

「そう言えば、マスターの願いとは何だ?」

 

「急にどうしたんだ」

 

 セイバーが飲んでいたブルーマウンテンのコーヒーを置いて、尋ねてくる。

 

「何、暇潰しの問答みたいなものだ」

 

「ま、そう言うことなら…俺の願いは『一族の繁栄』だ」

 

「ほう…それはお前自身の為か? それとも別の誰かの為か?」

 

 『別の誰か』…そう唐突に言ったセイバーの言葉にサングラスの奥の瞳が開かれる。

 

「まさか…俺の過去を知っているの…か?」

 

「知らぬよ、初めて会った者の過去など知るよしもない」

 

 では何故知っている風な事を聞いたのか…それを言いたかったが別段知られても良い事で、せっかくの関係に亀裂が生じるのは得策ではないと自分に言い聞かせた。

 

 

「ただ、その願いが凡庸であるかを確かめただけの話よ」

 

「どういう事だ?」

 

「例えば、『金持ちになりたい』と願うのは『自分の欲を満たしたい』からと、『恵まれない誰かに施しを与えたい』と願うのでは、まるで意味が違うだろう?」

 

 確かに、一方は自己満足の為に願いもう一方は正義の味方のような願いであると感じていたが、獅子劫は何かもやがかかるような気分がした。

 

「しかし、相反しているように見えてその実は表裏一体なのだよ」

 

「その二つの意味がか?」

 

「然り、どちらも『自己満足の為』になりえる凡庸で陳腐な願いよ。

 『誰かに施しを与えたい』などと言うのは『その行いを実施している自分に酔っている』ことになる、真に救済を行うのならば、己の身を呈して初めて成立することだからな」

 

「自己陶酔、てことか…確かにそりゃあな」

 

 自分では行わず、第三者の手助けを借りることは果たして「救済」となりえるのか、先ほど感じていたもやが晴れた気分になった。獅子劫はこれまで一人で様々な戦場を渡り歩いている過去を持つ、そんな彼が誰かに頼ることはしなかったから、あの願いに気分を良くしなかったのは必然だったであろう。

 

「そう言った理由で聞いたことだ、答えはあるのか?」

 

「悪いが、それはナイーブな事でな…今はまだ話せんが、凡庸ではないことは保障するぜ!」

 

「では後の楽しみにしておくが…その言葉を忘れるなよ」

 

 妖しい笑みを浮かべるセイバーに怯まず、歯を見せて笑う獅子劫の元に一羽の鳥が近付き、何か紙を置いていった。

 

「何だ、それは?」

 

「呼び出しだ、先に来ていた魔術師―いや、『監督役』にな」

 

 

 手紙に記されていた場所に向かうと、そこに白壁の教会が見えた。そこに近付くと木製の入口から神父が着るカソックを纏う少年にも見える男性が出てきた。

 

「―ようこそ」

 

 にこやかに話しかける青年に、僅かな警戒心を抱きながら応答する。当のセイバーは霊体化して獅子劫の後ろにいる。

 

「呼んだのはアンタで間違いないな?」

 

「はい、こちらへどうぞ」

 

 促されるままに中へと入る。礼拝堂の中を進み左奥の扉を開けると、さらに真っ直ぐの通路があり右側にいくつかの扉が確認できた。監督役が常駐している割りにやけに汚いことに、引っ掛かったが今は何とも言えず、そのまま青年の後に続いた。

 

 通路の先には簡素なテーブルと椅子だけが用意された質素な部屋だった。椅子に腰掛けると軋む音がしたが、気のせいだと思うことにする。

 獅子劫の正面に青年が座る。

 

「初めてまして『シロウ・コトミネ』です。今回の聖杯戦争の監督役を務めて戴きます」

 

「『獅子劫界離』、自己紹介は省いても大丈夫だよな?」

 

「ええ、大丈夫です」

 

 終始笑顔を崩さない白髪で褐色の肌が特徴の青年「シロウ・コトミネ」に対し、獅子劫は言いようのない不気味さを感じており、警戒を気付かれないように強めた。

 

「おや、後ろにいるのは獅子劫さんのサーヴァントですか?」

 

 言われて振り返ると、先ほどのスーツを着込んだセイバーが入り口近くに佇んでいた。いつの間に霊体化を解除したのかと呆れつつ、再びシロウの方を見ると、何やら険しい顔をしていた。

 

「どうした?」

 

「あ…い、いえ何でもありません」

 

 話しかけた途端、直ぐに笑顔に戻る。何故だが同じ陣営のはずなのに今後、自分の背中を任せると思うと嫌な感じしかしなかった。

 

「では、私のサーヴァントもお見せしましょう」 

 

 そう告げると彼の背後から光が出て、徐々に人の形に成っていく。数秒もしない内にその全体像が現れる。

 それは艶やかな黒の長髪に髪と同じ色をしたドレスを着た女性であった。だが現れるまで全くと言っていいほど気配を感じることが出来なかった為、自ずとクラスは分かった。

 

「『アサシン』か、通りで気配を感じなかった訳だ」

 

「我は『赤のアサシン』、よろしく頼むぞ獅子劫とやら、セイバー殿もな」 

 

 赤のアサシンが話が終わるのを見て、シロウが本題を話始める。

 

「早速ですが現状報告です。

 ユグドミレニア一族は既に六騎のサーヴァントを保有しています」

 

「確認できたのは、『セイバー』、『アーチャー』、『ランサー』、『キャスター』、『ライダー』、『バーサーカー』、『アサシン』は合流は出来ていませんが、監督役の権限にて現界していることは確認済みです」

 

 「ふむ」と考えた後、口を開く。

 

「その中で、真名が分かったものは?」 

 

「残念ながら、一人も…」 

 

 すると机の下から六枚の紙を出してきて、獅子劫の目の前に置いた。

 

「しかし、ステータス程度なら確認は出来ています」 

 

 それに目を通していると、やはり三優と呼ばれるクラスのサーヴァントはどれも高かった…中でも「ランサー」のクラスはとりわけ高く、かつ真名も予測はつけられた。

 

「獅子劫さんは相手のサーヴァントの真名は予測はありますか?」 

 

「一人ぐらいなら…てか、アンタにも予想は出来ているんだろ?」 

 

 先行した魔術師の惨劇を鑑みて、さらにここがルーマニアであることから、国の英雄を呼び出さない手はない訳がない…かつてワラキアと名乗っていた時代にオスマントルコから国を護った英雄、しかしトルコ兵を残虐な方法で殺害し伝説の怪物の元となった悪名高き-「串刺し公」を。

 

「まぁ奴ら(黒のサーヴァント)の真名はともかく、こっちのサーヴァントはどうなんだ?」 

 

「問題はありませんよ、獅子劫さんのセイバーもとても優秀ですから」 

 

 「それに」とシロウが付け加える。

 

「こちらの『ランサー』と『ライダー』は黒の『ランサー』に匹敵する力を持つと言えます。

 ともあれ、獅子劫さんのセイバー召喚で全騎が揃いました。他のマスターの方達もすぐに紹介しますよ」

 

 一旦、息を整えて問う。

 

「では、セイバーの『真名』を教えて戴きますか?」 

 

「あ-…どうしても明かさなきゃ駄目か?」 

 

 渋る獅子劫に対しても、あくまで笑顔を絶やさないシロウはこう続けた。

 

「我々は共に戦う仲間であり、命を預ける事もあるので真名を明かしてもらえば有り難いのですが…」 

 

「そりゃそうだが…真名はなぁ」

 

 ふとセイバーを見るが、どこ吹く風の如く何も言葉を発しない…真紅の両目でただ獅子劫を見据えるばかりであった。

 

 “自由にしろってか…いや、これは試されているのか”

 

 獅子劫は悩む…確かに奴の言う通り互いに命を預けあう中で、隠し事は不信感を煽りかねない…だからと教えるのも、先ほどから見せる不可解な部分を考えて見ると、果たして信用しても大丈夫かと思ってしまう。

 

 逡巡させた後、彼はこれまで培ってきた直感に頼った。

 

 「良し分かった」と言い、椅子から腰を上げる。その行動にシロウが疑問を口にする。

 

「どちらへ…?」

 

「俺達は自由行動させてもらう、幸いセイバーだからな。単独で行動しても問題はないさ」 

 

「我々と共闘するつもりはないと?」 

 

「目的は同じなんだ、それで十分だろ」 

 

「同じ肩を並べたいと思っていましたが…残念です」  

 

 扉を開けると通路を進む、そして礼拝堂を通って外へと出るとすぐさま駆け出す。すると今まで黙っていたセイバーが念話で話しかけてきた。

 

 “ふっ、中々良いマスターに巡り会ったな”

 

 “…? どういう意味だ?”

 

 “あのような奸物の言葉に耳を傾けず、自分の意思に従った所が良いと言ったのだ”

 

 “おまっ! 奴が怪しいて気付いていたのか?!”

 

 “当然だろう、一目で気付かないとはお前もまだまだだな”

 

 気付いていたならば、少し教えても良いくらいだが…それを言っても仕方がないと諦め、市内に出るまで獅子劫は走り続けた。

 


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