SCHOOL IDOL IS DEAD 作:joyful42
趣味で釣りをたまにするので、単純に西伊豆の釣りの名所っていう事で、内浦からほど近い木負堤防っていう堤防で釣りをしました。
実はここ、サンシャインの版権絵に登場してますし、堤防の上から浦の星のモデルになった長井崎中学校が見えたりします。
で、そこでしばらく釣りをした後、別の場所に移動したんですね。
投げ釣り用の仕掛けを作って、沖に向かって大遠投。そして見事に失敗しました。
横の方に飛んで行ってしまったんですよ。
案の定他の人の仕掛けと絡まって、向こうからおじさんが怒ってやって来たんですね。
慌てて自分の仕掛けを回収するんですけど、ものの見事におじさんのカゴ釣り仕掛けが絡まってる。
すいませんすいませんって平謝りしながら、絡まった仕掛けをほどこうとするんですけど、まあ無理なんですよ。
やがておじさんが諦めて、「ああ、もうこの仕掛けお釈迦だわーお釈迦だわー」って言いながらハサミで仕掛けを切って、自分の道具だけを回収して去って行きました。
申し訳ない事したなって思いながら、自分の仕掛けを引き上げたら、なんか魚が引っ掛かってるんですよね。ほどいてる時は全然気づかなかったんですけど。
珍しい事もあるもんだって思いながら、何の魚か確認したら、ネンブツダイだったんですよ。
釈迦と念仏がかかってるなーと思いました。
外に出ると、暖かい風に吹かれて、桜の花びらが宙を舞っていた。今年は天気が崩れる事もあまりなく、花を散らす事なく満開を迎えた桜の木々は、今日から新しい生活を迎える人々の門出を祝っているかのようだった。
この日は近くにある浦の星女学院高校の始業式の日だった。つまり、新一年生は入学式という事になる。
「あ、居た居た、ルビィちゃーん!」
一人の少女が手を振りながら走ってくる。ルビィと呼ばれた少女も、手を振ってそれを迎えた。
「花丸ちゃん、おはよう!」
「ルビィちゃん、新しい制服、とっても似合ってるずら。」
「そんな事ないよ、花丸ちゃんこそ、とっても似合ってる。」
黒澤ルビィと国木田花丸は小学校からの親友だった。同じ高校に進学となり、今日から晴れて高校一年生となる。
「高校生かあ……友達出来るかなあ……」
「何言ってるずら、浦女に行くのはこの辺の子達がほとんどだから、みんな知ってる顔ずら。」
「でも、今年は珍しく別の中学校から来ている子がいるって言ってたよ。」
「本当に?珍しい子も居るもんだずら。」
「仲良くなれるかなあ……」
やがて二人は交差点に差し掛かる。学校の方向、左側に曲がると、丁度塀で死角になっていた場所に、別の少女が立っていた。電柱に寄りかかっている少女は、歩いてくるルビィと花丸に気付くと、にっこり笑顔で手を振った。
「ハァイ!」
「あ、鞠莉さん!おはようございます!」
ルビィの表情がぱっと明るくなった。よほどこの小原鞠莉に懐いているのだろうか、走って鞠莉の下まで向かう。
「ルビィちゃんに、花丸ちゃん……だったかしら?入学おめでとう!今日から同じ学校の生徒だね。」
「ありがとうございます!」
鞠莉は浦の星女学院の三年生だった。ピカピカの制服に身を包むルビィと花丸を目を細めて見ている。
「ところでルビィちゃん、ダイヤ知らない?」
「え?ルビィより先にお家を出てたけど……一緒じゃないんですか?」
ルビィの姉、黒澤ダイヤは、浦の星女学院の三年生で生徒会長を務めていた。鞠莉と仲が良く、ルビィと鞠莉が顔見知りなのも、それが理由だった。
「話したい事もあるのに、どこ探しても居ないのよ。」
「じゃあ、お姉ちゃんを見つけたら、鞠莉さんが探してたって伝えておきます!」
「別に構わないわ、どうせ学校に行ったら会えるんだし、私もそろそろ学校へ向かおうとしてた所だったから。」
「わかりました!じゃあ、ルビィ達も学校に向かいます!」
「気を付けてねー。」
「はい!」
小走り気味に去って行くルビィと花丸。それを電柱に寄りかかったままの鞠莉が見送る。風が吹くと共に太陽が雲に隠れ、周辺を影が覆う。その影のせいだろうか、鞠莉の顔が、微かに邪悪に微笑んだような気がした。