SCHOOL IDOL IS DEAD 作:joyful42
某所でラブライブ!サンシャイン!!のアニメの展開を予想しようっていう企画があって、それに私が提出したプロットが元です。
そこからSaint Snowのエピソードを追加したりして、だいぶ変わってる部分もあるんですが、基本はその当時のままなんですよ。
曜が千歌の事を「千歌」って呼ぶのも、その辺が理由です。それ以前からCDのドラマパートとかで「千歌ちゃん」って呼んでたとは思うんですが、キャラ設定上呼び捨ての方がしっくり来たので、まんまと改変しました。
で、プロット公開当時にまあ散々言われたわけですよ。「果南はこんなキャラじゃない。」って。
実際それまではこんなキャラじゃなかったんですけど、自分の中ではこういうサバサバした性格の果南の方がしっくり来てたし何より好きだったんで、思い切ってこういうキャラにしました。
そしたらTVアニメ始まった瞬間、果南がめっちゃサバサバした表情で「小原家でしょ……」って言い始めて笑った記憶があります。
この夢を見るようになったのは、もう半年以上前の話です。いつものように布団に入り、いつものように眠りにつくと、いつものように夢が始まります。
そこは列車の中でした。夢の中の私はがらんとした車内の椅子に座っているのですが、現代の電車の車両等ではなくて、古い木張りの椅子が並ぶ、まるで十九世紀のヨーロッパのような客車です。微かに聞こえるぼっぼっという排気音から蒸気機関車ではないかと考えているのですが、窓の外は吸い込まれそうな暗黒で、目視が出来ない為、今に至るまで確かめる事は出来ていません。
しばらく椅子に座ったままじっとしていると、段々と眠気が襲ってきます。夢の中で眠気に襲われるなど変な話と思われるかもしれませんが、実際にそうなるのです。客車内に取り付けられたランプの灯が、風や列車の振動を受けて揺らめく事も、その眠気に拍車がかかる要因でした。そのうち微睡の中でこれが夢なのか現実なのか、はたまた夢の中で見ている夢なのかがわからなくなっていきます。
中国の故事にある胡蝶の夢は、夢の中で蝶が飛んでいるという話でしたが、この夢で現れるのは蝶々ではなく、少女でした。
ガラガラと音がして、客車の後方の扉が開きます。そこから出てくるのはいつも一人の少女。少女なのはいつも一緒なのですが、夢の度に別の少女がやってくるのです。
少女は皆虚ろな目で、客車の中央にある通路をとぼとぼと歩いて行きます。そして目の前を通り過ぎる時、私は声をかけてしまうのです。
「こんばんは。」
少女は一様にこちらを見て頷くと、私の向かいの席に座ります。
「あなたは……何があったの?」
ここにやってくる少女達は、心に大きな傷を負っている事がほとんどでした。学校でのいじめ、両親からの虐待……中には本当に怪我をしている状態でやってくる子も居るほどで、いつからか私は必ず、ここにやってきた少女に何があったのかを聞くようになっていました。
「学校で、いじめられて……」
今日の少女は、長い髪の毛が印象的な、大人しい雰囲気の子でした。よく見ると少女の履いている白いニーソックスの左膝の部分だけが、赤黒く変色しています。少女は左膝は気にするそぶりも見せず、振り絞るようにいじめの体験談を話します。私はうんうんと頷きながら、それを聞いていました。しばらくすると、少女がこう言いました。
「あなたは、一体何者なんですか?」
この質問も、過去何度も受けた物なのですが、何と答えていいのか未だにわかりません。そもそも、この少女たちが何者なのか、この列車は何なのか、何故私がここに居るのかすらもわからないのです。
「私にもわからないわ。わからないから、とりあえずあなた達とお話してみる事にしているの。」
「そう……ですか……」
そこからは二人で取り留めの無い話をしました。学校の好きな教科、苦手な教科、好きな食べ物、芸能人、映画……
やがて少女の顔には笑みも浮かぶようになり、だいぶ打ち解けて来た頃、少女が不意に立ち上がります。
「もう、行くの?」
ここにやってくる少女たちは、しばらくすると、行かなければならない場所があると言い出します。そして決まって、入って来たのとは逆の扉、つまり客室前方の扉から去って行くのです。もう何人もの少女達が扉の奥に消えていくのを眺めながら、彼女達はもう二度と、ここに戻ってくる事はできないのだろうなと、漠然と感じていました。
「時間、みたいですから……」
目の前の少女は優し気ににこりと笑い、私に背中を向けます。そして、こんな事を聞いて来ました。
「あなたは、生きていて辛い事はありますか?」
数秒だけ間を置いて、私は答えました。
「あるわ、もう死にたいって思った事だって、何度も。」
少女はこちらに背中を向けたまま、そうですか、と呟きました。
「あなたは、とても素晴らしい人、とても優しい人。だから……」
少女はくるりとこちらを振り返り、もう一度にこりと微笑みました。
「絶対に、死なないでね。」
再びこちらに背中を向けて、扉へ向かって歩きはじめる少女。やがてその後ろ姿は、扉の向こうの暗闇の中へ消えていきました。
その少女と、夢の中で私が再会するのは、それからしばらく経ってからの事でした。