対魔法国家建国記/生存園を確保する為に国を作ります/   作:SimoLy

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なんだか土曜深夜に投稿するみたいになってますが、今回遅れたのは作者の体調不良の為です。
前回の謎改行の数々は大変申し訳ございません。今回は見直ししたので大丈夫だと思います。

今回も是非読んでいただければなと思います。
ではどうぞ!



st.3 戦う手段と神の加護

「ん...そろそろいい時間かな...?」

海月 冬夜はそう零すと、外へ出る為の準備を進めていた。

冬夜は、自身の寝起きの良さにうんざりしつつも、テントの外から光が差しているのを確認する。彼自身は数分前に起きていたのだが、周りの様子から日の出から大して時間が経っていない事を確認すると、暫くテントの中で時間を潰す事を決めたのであった。だがテントの中で出来る事など極限られており、最初は娯楽を中心にしたものだったが、最終的には考え事に落ち着いていた。彼の暇つぶしの成果もあり、時間もいい感じの時間かな、と思い始めた所で外から声がかかる。

 

「冬夜~?どうせ起きてるんでしょ~?相談...というか報告があるんだけど!」

 

テントの外から彼の事を呼んだのは、彼の姉分である空崎 詩織だ。彼女が相談を持ってくる事と言えば村...国の事が主な用件になるのだが、記憶違いだろうか、報告される様な案件を抱えていた記憶はないのだが...と記憶を漁ったのだが、努力虚しく報告を受ける様な案件を見つける事は出来なかった。

(というか「どうせ起きてるんでしょ」って...いやまぁ起きてますけどね)

冬夜は内心文句を吐きながらも返事を返しつつ、外へ出る。

 

「おはよう。しお姉。相談って何?」

「相変わらず早起きだね。相談についてなんだけど、今日の動きについてなんだよね」

「今日の動き?悪いけど今日は---」

「大丈夫、冬夜と志久はそっちの用件を済ませてくれればいいよ。他の皆でやるんだけど---」

 

彼女はどうやらメモ帳に予定を纏めているらしく、どこからともなく取り出したメモを読み上げる様に今日の予定を伝える。流石、民達の一部(冬夜含む)から『村の頭脳』と評されてることはあり、提示された予定を聞いていると、的確に、正確に今必要な事を実践してくれる予定だと言う事が伺えた。そんな予定を組んでくれた彼女に一言「ありがとう」と伝え、確認をしていく。

「昼には帰ってくるよね、報告待ってればいい?」

「報告したら現状の状態を纏めて、午後はそれに応じてって感じかな。」

「おっけー。じゃあそういう感じで」

 

冬夜がそう言うと、詩織は早速予定通りに動くのか、冬夜のテントを離れ、中心部へ向かっていった。その光景を見ていたらしく

 

「終わったか?」

「うん。別に出てきても良かったのに。」

「タイミングを逃がした。別に出て行った所で何か変わるわけでもないだろ。」

「そうだね。じゃあ始めよっか」

 

海月 志久がテントから顔を出す。昨晩(さっき)見た黒い剣は持っておらず、そういえば冬夜が出したと思われる剣もどこかに消えていた。そんな冬夜の思考を読んだのか

 

「まずは説明から入ろうと思うんだが大丈夫か?」

「うん。大丈夫」

 

その声を聞いた志久は、思い出す様な素振りを見せつつ、『剣技』についての説明を始めた。

 

 

 

志久は「説明から」と意気込んだものの、内心ではどう説明するか、今この瞬間も悩んでいた。ただ説明するだけと言えばそうなのだが、説明をする上でネックとなっている箇所が2箇所ある。それは、冬夜が見た神...志久は勝手に『内神』と呼んでいるが、それが何か、もしくは誰かが分からない事と、そもそも冬夜が神に対する信仰を失っていることだった。前者の問題は、最悪どうとでもなるので思考から勝手に除外する。だが後者は非常にまずい。言わば神を信じていない者に「神様の力が~」などと言っても良くて「そうだね」程度の感想しか返ってこないだろう。冬夜視点で考えればもはや裏切られていると言っても差し支えないはず。これどうするんだ?正直詰んでないか?そんな諦めにも似た声が心の奥で響き始め、特に何かを考え付く事無く数分が経過する。

 

「ねぇ、説明するんじゃないの?」

 

冬夜が痺れを切らして問いかける。

 

「あ、いや、うん。そうだな、説明だったな?悪い悪い」

「大丈夫、『神』は信じてないけど、『彼』は信じてるから」

 

どうやら悩みの種を察されたらしい。うちの弟は無駄に勘が鋭くて困るな。そんな事を思いつつ、志久はようやく説明を始める。

 

「『剣技』は、簡単に言えば『神の力を使い、神の技術を再現する』と言った所だな。もっと噛み砕いて説明するなら、神様の戦闘技術を借りるって感じ。例えば、俺が使った『斬鉄』は文字通り、鉄を切れる力を剣技として借りたって所かな」

「なるほど。どうやって借りるの?」

「さぁな。人と同じで神様にも色々いるんだろ。俺の場合は願えば貸してくれたが、そんな物好き他にはいないだろって言ってたからな。聞いてみればどうだ?」

 

そう返した志久は、内心ガッツポーズをしていた。成り行きではあったが、冬夜の内神についてと、信仰という2大問題を鮮やかに聞きだす一言を言えたのは自己評価では満点である。そんな思いを抱きながら、冬夜(の内神)の答えを待つ。少しして顔を上げた冬夜だったが、その表情は芳しくなく、どうやら失敗したらしい、と勝手に憶測を立てた志久だったが、冬夜の口からはそれ以上の言葉が放たれた。

 

「会えなかった」

 

...?待て落ち着けうぇいとうぇいと。一瞬弟様が何を言ってるのか分からなかったわ。

 

いや落ち着いても分かんねえよ!?「会えなかった」って何!?信仰が~とか内神が~とか言ってる場合じゃないしっていうか居ないって事!?想像してた答えの直角真上を行くかの様な答えありがとうございます!?え、もしや夜のは幻覚?うっわぁすげぇなぁ、繊細な幻ですこと。あ、でも幻だから当ぜ---

 

「いや、会えなかったって表現は適切じゃないかも。『居る』のは分かる、でも会ってくれなかった...?」

 

あ、そうですか。「あんな現実みたいな幻見せれるのが魔法だとしたらいよいよ殺される未来しか見えんわ」まで思ってたんですが違くて何よりです。志久には冬夜の言っている事が分からなかったが、本人の感覚ならその表現が正しいのだろう、と自身を納得させ、冬夜に続きを促す。

 

「どういう意味だ?」

「一つ答えて欲しいんだけどさ、しぃ兄は神様と対話なりなんなりしてるよね?」

 

質問に質問で返すなって子供の時習わなかったのだろうか、と言いたい気持ちを抑え、「してるけど」と短く返すと、冬夜は「そうだよね」と同じように短く返して続ける。

 

「実は、『彼』とは対話したわけではないんだ。剣を出した時も、「力を貸そう」とだけ言われて現実を見たら剣があった、みたいな感じだったからさ。だから、『彼』の力を借りるのは...今は無理だと思うかな。」

 

なるほど...冬夜の言ってる通りの状態であれば、『彼』とやらの剣技には期待できないか。「想定通りだな」と志久は小さく零した後、用意してあった手段を提示する。

 

「把握した。じゃあとりあえずは俺の剣技を使えるか試してみるか、出来るか?」

「出来るわけないです。出来たら既にやってます。」

「だよな、剣は出せるか?」

「よく分からないけどはい!」

「じゃあそれを好きに構えろ、その状態で少し待ってろ」

 

志久の言った通りに動いた冬夜、その構えはきっと志久自身を参考にしているのだろう、構えの所々に志久と似た様な雰囲気が感じ取られる。その構えの根幹を成す剣に手を沿え、一言呟く。

 

「汝に我が主神の加護があらんことを」

 

志久の声に応える様に、冬夜が構える白い剣身に光が集まる。その光は一層の刃を形成したのち、余剰分は剣の下部...柄の部分に集まり上部と同様に白い柄に刻印を形成した。その刻印は白銀の剣には余りにも似つかわしくないかの様に思えたが、むしろ一点の黒印が全体の白さを際立たせている様だった。

 

「その刻印があるうちは、俺と同じ剣技が使えると思う。試しに斬鉄でも使ってみたらどうだ?」

 

冬夜は言われるがままに使用しようとするが、何やら上手く言っていないらしい。一回目は難なく使う事が出来ていたが、2回目以降は苦戦してる様だ。

 

「やっぱり無理だったか...?そんな簡単に話が進むわけないか...」

 

志久はそう零しながらも、冬夜がなんとかしてくれるのを願ってただ眺めているだけなのであった。

 

 

 

 

この状況をなんとかしてしぃ兄に伝えられないだろうか、と考えるが「無理だな」との結論に至って『彼』の言うことに再び耳を傾ける。

 

「何故分からない!?これをこうした方がやりやすいだろ!?」

 

最初の遭遇よりもだいぶ饒舌になった『彼』の言い分はこうだ。「あんな非効率的な武装よりももっと効率的にやる方法がある」と。ちなみに冬夜に実現出来るなんて都合の良い未来などなく、『彼』の声を背景にさっき一度出来た斬鉄をもう一度と奮闘するだけなのであった。さっき出来たのも偶然...というよりは『彼』の助けがあったからであり、『彼』がもっと良い方法を模索している時点で「もう一度」など訪れないのだが、志久は勿論の事、冬夜にそんな事が分かるわけもなく、只管に時間を浪費するだけなのであった。

 

 

 

 

 

 

 

...?周辺調査から帰ってきた空崎 詩織は調査結果を報告しに村長代理である冬夜の元へ向かったのだったが、そこにあった光景は色々と想像の範疇を超えていた。

例えば...志久が岩に腰掛けたまま寝ていたり。

例えば...冬夜が何かをやり切った後の様な、色濃い疲労を表情に宿しながら、白銀の剣を抱いて地面に突っ伏してたり。

例えば...冬夜が突っ伏した先にあった『はず』の森林が、『何か』によって幹を真っ二つにされていたりなどだ。

詩織は「とりあえず起こそっか」と、最後のは見なかった事にして、昼間から幸せそうに寝ている男二人を叩き起こすのであった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。

次回は詩織の周辺調査をお送りする予定です。次回も是非読んでいただければなと思います。

1週1話を『目標』にしていきたいと思います。

次回もお楽しみに!

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