対魔法国家建国記/生存園を確保する為に国を作ります/   作:SimoLy

4 / 10
Ex-stは番外編かつ、本編に繋がりがある話につけています。
この話から閲覧している方は、よろしければ最初からの閲覧を推奨いたします。

注意:少しだけ過激な描写が入ります。(ほんの少しだけです)R-15程ではないと思いますが、流血表現が苦手な方はご注意ください。
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ここからどうでもいい作者のコメントなので、興味ない方や本編を読みたい方は流してもらって結構です。

次回の更新は来週中と前回書きましたが、パソコンの操作性の良さにテンション上がった結果一話分完成してしまいました。
スマホとは違うんですよスマホとは!

取り乱しました申し訳ございません。
投稿は朝ないし昼かと思いますが、これを書いてるのは深夜なもので、テンションがあらぬ方向に...って奴です。

今回はプロローグ前の逃亡劇のお話になっています。
ちょっと...いえ、個人的にはすごく重い話になっていますが、是非読んでいただければなと思います。




Ex-st.1 戦う手段と4回目の襲撃

「さて、何の用だ...って言っても「アレ」の件か。」

志久は笑いながら、断定を含んだ声色で冬夜に問う。

「うん。戦える手段があるんでしょ?それを教えて」

冬夜はここに来る前の事を思い出していた-----

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「------!」

魔法を使える奴ら、冬夜達は魔法使いと呼んでいるが、彼らの意味の不明瞭な声が闇夜の森林の中に響く。

冬夜は、その声の直後、光を放ちながら一瞬浮かび上がった文字...なのだろうか、円状の何かを確認、識別して叫ぶ。

「直線に来る!散開して射線から外れろ!」

これで4度目の襲撃になる。住んでいる集落が見つかり、奴らから逃げるのにはもう「慣れた」。

その副産物として、奴らの言語は分からないが、見た事ある魔法なら一瞬浮かび上がる円状の文字で分かる様になった。

その知識を利用して、民に当たらない様誘導するのにも「慣れた」。

そして....最終的にこうなる事も分かっている。

例えどれだけ既存の攻撃を読み切り回避した所で、根本的な対策を握ってない我々の生存戦略なんて新魔法一つで瓦解する。

そう、それだけだ。今回も「その時」が来ただけ。

「うわああぁぁぁぁぁぁぁ!」

左側面から男性の悲鳴が聞こえた。

駄目だ、まだ考えるな、今考えなければいけないのは今をどうするかだ。

雑念を振り払い、冬夜は悲鳴から得られる情報を整理する。

悲鳴が聞こえた、という事は即死系ではない、誘導系か?といった風に見えてもいない未知の魔法への考察を立てていると、正面から声が届く。

「冬夜!来てるぞ!」

その声を聞き、背後...「敵」の方を見ると、闇夜の森林には似つかわしくない白く発光している球体が冬夜を目指して飛んできていた。

速度が出ていない所を見ると、新魔法か?とあたりをつけ、少し横移動をしてみる。

すると、その球体は冬夜に引かれる様に方向を変えた。

決まりだな、と内心呟き声を上げる。

「右の一番手前に居る奴、俺と一緒に来い!今後のルートは空崎に従え!」

前方を走ってると思われる民達にそう伝え、光球の方を振り返る。

冬夜のその動作と同時、「右の一番前に居る奴」の指示で指定された一人の男性が「任せろ」と返す。

その声に少しの安心を覚えながらも、冬夜は、今も迫る光球の処理を考える。

まずは、誘導系攻撃のスタンダードな処理方法、「他の物に当てる」を試す。

光球と自身を一直線状上に置き、更に光球と自身の間に木を挟む様位置取る。

(これで止められればいいが...)

祈願に近い感情を抱きながら、光球が一本の木と衝突する瞬間を見届ける。

光球が丁度幹を中心にして衝突すると、光球は少しの硬直を見せた後、光の粒になり弾けた。

それを見た冬夜は、問題無いと結論付け、頭の片隅で思考していたもう一つの問題の解決を図る。

それは、協力者の男性と共に後ろの奴らが逃げるまでの時間稼ぎの方法...ではなく、相手を倒す方法でも無ければ、姿は見えないが目の前に居ると思われる魔法使いを撒く方法でもない。

冬夜が考えているのは、襲撃が来る度、「後で追いつく!」と言って敵陣に向かう海月 志久の救援だ。

いつもは、そろそろ合流して共に逃げ切るのだが、今回はどうも遅い。

それに、今回は何故かは分からないが追手がしつこいので、交戦開始地点から大きく離れている。

志久はいつも、「敵と味方に位置を知らせる為」歩いた時に「カツン、カツン」と音が鳴る靴を履いているのだが、交戦開始地点が離れ、志久との距離が離れたと思われる今は彼の生存の証とも言えるその足音は聞こえない。

更には、冬夜は次の集合場所を知っているが、志久には伝えていない。

これらの状況から、救援ないし合流が必要だと考えるが、その為の手段がない。

適度に敵の意識を引き付け、放たれる魔法を的確な判断により回避しながらも、次々と方法を列挙、検証し否定していると、冬夜と同じ様に注意を引き付けていた男性から声が届く。

「ただで死ぬ気は無い。一言命令をくれれば、突撃して志久を連れ戻してこよう。」

冬夜のリストのトップにその提案は躍り出たが、冬夜はそれを了承することが出来ない。何故ならそれは----

「お前には辛い決断かもしれない。でもお前も分かってるだろ?こんな事で志久を失う訳にはいかない。でもこの状況で連絡を取る手段なんて...って所か?」

「突撃して、接触する。でもその手段は!」

冬夜も分かっていた。この状況下での現実的な連絡手段なんて突撃くらいしか無い事は。でもその方法には決定的な問題があった。

「『帰還確率が低すぎる』だろ?幾ら奴らとの戦闘経験があって、生還を果たしている志久でも、足手まとい一人連れて逃げ切る程余裕があるかは分からないもんな。

仮に志久に余裕が無かった場合、囲まれて死ぬし、志久に会えなくても無駄死にだな。でも他に現実的な方法は無いだろ?あったら実践するはずだからな。

お前が考えても出てこないって事はきっと無いんだろう。」

最大級の冬夜への信頼と共に現状の説明をされた冬夜は、口を開く事が出来なかった。

どうやら彼らの魔法にも限界はあるらしく、今は飛んでくる気配はない。

それを一瞥して、男性は続ける。

「お前を失うわけにはいかない。これはお前以外の村民全員の意思だ。お前が居たから、過去3回...これで4回目か、奴らの襲撃にも最低限の被害で済んでいる。お前には辛い役割を押し付けているのは百も承知だ、何も出来ない自分が嫌になった事もある。だが同時に、お前や志久が居るから逃げて生き延びようって思う奴も少なからず居る。そんな風に、誰かに希望を見せることが出来るお前達『英雄』の為にこの命、どうせあいつらに無為に土に返される命を使えるなら、俺は喜んで使おう。

だから頼む、一言でいい。「志久を呼んで来い」と命令してくれ」

どこか懇願を感じさせるその声に冬夜は、『共に戦っていた仲間』ではなく、『一人の長』として、涙に声を震わせながらも一言、告げた。

「志久を...連れ戻してきてっ...ください...」

思わず素の口調が出てしまったが、それを気にすることなく男性は志久が居ると思われる方を見て呟く。

「まぁ心配すんな、まだ死ぬと決まったわけじゃないし、俺はこう見えても鼻には自信があるんだ。」

そう言いながら、男性はポケットの中から何かを二つ取り出し、片方を冬夜に渡す。

「それと同じ棒を志久が持っていたら、俺はしっかり任務を果たしたって事だ。」

それだけ言うと、男性は走り出す。

その様子を見た冬夜はすかさず自分に言い聞かせる。

(まだだ、まだ考えるな!今考えたら動けなくなる!)

そう心の中で繰り返しながら、目元に溜まった水気を腕で強引に拭って敵の方を見る。

が、奥の林の中に円状の光が見えるものの、こちらとは逆方向に魔法の光が向かっているのを見ると、「彼」はまだ生きてるみたいだ。

それに安堵していると、視界の端に先程まで散々見てきた光を捉えた。

光を捉えた方を一瞥し、円状に浮かぶ光を識別する。

(横方向に広がる奴!)

魔法の種類を判断し、それに合わせた回避行動...今回の場合は姿勢を落とす。

すると、冬夜の頭上を魔法が通り過ぎていく。

それを見送った冬夜は、再度体勢を整え、次の攻撃に備える。

1対1なら、攻撃が見える冬夜に負けは無い。

その事実を唯々実践するかの様に、魔法を回避し続ける冬夜。

幾らか一方的な攻防を繰り返し、そろそろ弾切れ...と言うのだろうか、インターバルを挟む時間だろうと考えていると、様子の変化に気付く。

今までは、絶え間なく、まるで逃げられたくないかの様子で魔法を繰り返していたが、次の魔法は、円状の文字列が発光している時間が長い。

その長さに警戒していると、相手の魔法使いの後ろに同種の光が灯り始める。

その光は次々に数を増やしていき、無数の光が森林を包むくらいにまで増えた。

(はぁ!?何人居るんだよ!?)

そんな冬夜の心の叫びに答える者はおらず、無数の直線型魔法攻撃が次々と発射されていく。

冬夜はそれを見て、木を盾にしながら逆方向へ駆ける。

どれくらい走ったのかは分からないが、なんとか弾幕攻撃を防ぎきった冬夜。

だが、長距離を走ったのだろう、息を切らしながらその場に座り込もうとすると、目の前に衝撃の光景が映る。

その視界に映っていたのは、先程よりは規模は格段に少ないが、暗闇によく映える円状の光。

よく見ると、外側から2列分の文字列が見た事無いものだった。

すぐさま対処法を練ろうと頭を働かせるが、思うように考えがまとまらない。

(考えろ考えろ考えろ!ここで死ぬ訳にはいかない!)

そうやって考えていると、魔法使いの一人が冬夜に近づいてくる。

(死なない方法、なんでもいい、ここを切り抜ける方法を!)

「------」

魔法使いは何かを声にして伝えようとしているが、言語形態が違うのだろう、冬夜には何を言ってるか分からなかった。

だが、差し出された魔法使いの右手に、ある一つの選択肢が過ぎる。

(降伏...死にはしない方法...)

その選択肢しか無い、と断定し、冬夜はその手を取ろうとするが、彼が冬夜の右手を取ることは無かった。

「あのおっさん、最期に良い物残してくれたなぁ」

魔法使いは鮮血を撒き散らせながら、地に倒れる。

魔法使いの手の代わりに差し出された手は、冬夜がよく知っている人の手で、具体的には、冬夜がさっき貰った棒を口に咥えている海月 志久の左手だった。

「冬夜、立てるか?」

その問いに行動で答える冬夜。

「しぃ兄!どうして...!」

「その話は後だ、お前は早く集合場所へ向かえ。あいつらは俺を放ってはおけないからお前を追うことは無いだろう。」

「分かった、場所は---」

「大丈夫だ。『こいつ』が教えてくれる」

そう言って志久が示したのは、彼が咥えている棒だ。

「どうやらお前が持っているのと引かれあうみたいでな、これのお陰でここにも来れたってわけだ。」

だがその説明を置き去りに、冬夜は叫ぶ。

「しぃ兄!前!」

どうやら先程の魔法使いが殺された衝撃から立ち直ったのか、円状の文字列を魔法として打ち出してくる。

冬夜は志久の背中に隠れていて、その魔法の全容を見ることが出来なかったが、志久が落ち着いた声色で呟くのが聞こえた。

「『剣技』...いや、『型』のがいいか、『無銘の型』...」

その呟きの直後、志久に新魔法が迫ったが---

志久の目の前で霧散した。

その様子を見た魔法使いは怯えた声で何か言っていたが、志久は靴の音を鳴らし、まるで挑発をしながら冬夜に伝える。

「この通り俺は大丈夫だ。分かったら早く集合場所に向かえ。」

「分かった、また後でね!」

冬夜はすっかり回復した体力を使い、事前に打ち合わせていた集合場所に一刻でも早く向かうのであった。

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「あの時呟いていた『剣技』、『型』』って何?」

「そうだな...簡潔に説明するなら、『俺が今まで生き残ってる理由』かな。」

 

 

 

 

 




ここまでお読みいただきありがとうございます。
今までとは違い、書きながら作っているので、誤字脱字などがあるかと思いますが、そこは暖かい目で見ていただければなと思います。
この話ですが、次回投稿予定のst.2に前後のシーン(襲撃以外のシーンです)が繋がっております。
すぐ出しますので...とは言いませんが、今週中には出したいと考えておりますので見かけたら是非閲覧していただければなと思います!
勿論感想、お気に入り登録などお待ちしておりますので是非是非送って(して)いただければなと思います!

再度明記しますと、次回の更新は今週中です。
次回もお楽しみに!

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