対魔法国家建国記/生存園を確保する為に国を作ります/   作:SimoLy

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文自体は4日前とかに完成していたのですが、寝落ちしたり寝落ちしたりしていて遅くなりました。

今回当社比ならぬ当作比2倍の量です。
どれくらいの量が好ましいのかは分かりませんが、是非読んでいただければなと思います!




st.1 作戦会議と彼女の思い

「うぅ...酷い目にあった...」

そう言って、キャンプ地の中心から少し離れた集合場所に向かっているのは、先程まで「人を無視するとは何事か!」と自身の姉分である空崎 詩織に怒られていた海月冬夜である。

彼は、一通りキャンプの設営を終え、一服を楽しんでいる大人達に適当な挨拶を送りながら大して舗装されていない道を歩く。

集合場所に関してだが、キャンプ設営地...建国予定地の外縁に位置していて、正確に場所を表すのであれば冬夜の居住テントの前である。

「何故中心地にしないのか?」と抗議したのだが、「聞かれたくない話もあるでしょ?」

と言い負かされてしまった。

ついさっきの出来事を思い出し、溜息を零していると背後から声がかかる。

「相変わらず幸薄そうな顔してんなぁ。大丈夫か?」

そう言いながら冬夜の肩を叩くのは、初老を迎えるだろう大柄の男性。

「大村さん...えぇまぁ大丈夫ではあるんですけど...」

「今日はなんだ?あいつに怒られでもしたか?」

「怒られた上、言いくるめられましたよ。

そのせいで今歩いてるんですし」

「実際お前の家は俺らで会議するには絶好の場所だからなぁ」

「諦めろ」と言う様な表情で笑う彼は 大村 竜也。

我々村民の中では比較的高齢で、面倒見が良い人で知られている。

その年功と性格から、冬夜や詩織が開く『村長会議』にも出席しており、今も詩織の召集で向かっている所だろう。

そんな彼と共に歩いて何分か経つ。

キャンプ地としてほんの少しだが整地をした中心部から離れ、所々緑の深さが目立ってきたな、という所で目的地に着く。

「ごめん、遅れました。」

集まってくれた何人かの村民...未来の国民代表に申し訳なく思ってそう伝える。

どうやら村長用の椅子は用意してあるらしく、円になる様な形で座っている彼らの間に、一席だけ即席の椅子が空いている。

空いている椅子の横の椅子に座っている者に「ここ、座っても良いですか?」と問うと「勿論」と返ってきたので遠慮せずに座る。

冬夜は心の中である事を確認して「大丈夫」と結論付けると口を開く。

「まずは、急な招集に応えてくれて感謝する。」

先程謝っていた気弱そうな少年の姿はそこにはなく、あるのは一人の長としての気迫に溢れ、強い意志を両目に宿した少年の姿だけだ。

少年はその両目で集まってくれた者を見回す。

(そうだったな...また一人犠牲になったんだな...)

また一つ空いた席に思いを馳せていると、同様に出席している 空崎 詩織 が声を上げる。

「始めますが、今回話し合いたい内容は、冬夜の宣言から察せるかと思いますが、建国についてと、魔法使いに関してです。

建国に関しては具体的な案...場所と手順でしょうか?魔法使いに関しては対策を練りたいと思います。」

「あいつらは俺が斬るのじゃ駄目なのか?」

他意なくそう問うのは、唯一戦闘経験があり、また、生還している 海月 志久...冬夜にとっては「しぃ兄」と呼び慕う少年だ。

冬夜は、その問いに強い語調で答える。

「駄目だ。一人で戦うのにも限界があるだろうし、相手だって人間だ。対策もされるだろう。」

「じゃあどうするんだ?」

勿論代案はあるんだろうな、と言わんばかりに再度質問した志久。

だがその質問に答えが返されることはなく、会議の場を静寂が包んだ。

「何も無いんじゃないか、今後も変わらず----」

「しぃ兄、話がある。終わったら来てくれ。」

この議題を流して、次に進めようとした志久だったが、食い気味に冬夜に遮られ、「お、おう」としか返せなかった。

「では次だが、国を作る、という事に関してだが、場所はそこの山を中心にしたいと考えている。

何か異論はあるか?」

冬夜が指し示すのは、キャンプ地のすぐ横に位置する山。

淡々と、まるで事務連絡を行うが如く議題の解決策を掲げる冬夜。

そんな様子を知ってか知らぬか、議会のメンバーの一人が質問する。

「『山』とは言いましたが、山本体...山岳部に居住区を作るのですか?」

「利便性が確保出来るのであれば。

ただ、確保出来ないのであれば、山の麓に作ろうと考えている。

この近辺には水源を確認しており、ここに住み、国を構える事自体は問題ないと確認済みだな?」

冬夜が視線を送った相手は 空崎 詩織。

彼女は思いがけないタイミングで話を振られ、少し驚きを見せながらも丁寧に説明する。

「は、はい。そこの山にはいくつか水源は存在していて、何本かの河川が付近を通っている事も確認しています。

また、付近の環境も我々の元いた村とあまり変わった所はなく、建国及び生存は充分可能かと思われます。」

彼女はまとめた書類を読み上げ終えたのか、「ふぅ...」と小さくため息を漏らす。

「引き続き付近の探索は行う。

山上に利便性及び生存圏が確保できると判断した場合は山上に居住区を移す。

それまでは現在の位置で準備を進める。

準備の手順はそっちで考えてくれ。」

的確にこれからの方針を示した冬夜に続く形で詩織も場をまとめる。

「何かなければ、冬夜が言った方針で進めますが...?」

「一つだけいいか?」

議会の中でも、冬夜達三人を除けば若いと言える青年が声を上げる。

「志久の働きによって、暫くは襲ってこないのかもしれない。

だが、仮に今この瞬間奴らが来たらどうする?」

「この瞬間に来たらまぁ無理だな」

あっさりと言い放った冬夜に「なっ...」と誰かが声を漏らす。

そんな事は気にしていないのか、表情を変えることなく冬夜は続ける。

「だが、『今』は来ていないからな、いつか来た時の対処法を解答にしよう。

仮に襲撃があった場合、山を盾にして逃げ切ろうと思う。

最悪山を崩落させ、防壁とする予定だ。

こちらの被害も甚大だが、命よりは安い。

まだ準備していない以上、今来られたら終わりだし、あくまでも最後の手段だ。

別の方法も用意する。」

「他に何かあるか?」と言う様な視線を7人に送る冬夜。

何も無い様なら、解散で問題ないな?」

再度詩織に視線を送ると、彼女は静かに小さく頷いた。

「という訳だ。明日からは近隣探索と建国に分かれて動く。

今日も色々あったが、その疲れを最大限に落として、明日からの生活に備えて欲しい。」

冬夜が言い終わると同時、志久と詩織を除いた5人は立ち上がり、各々のペースで中心部へ向かう。

彼ら全員の背中を見えなくなるまで見送った冬夜は、背もたれの存在しない椅子に大きくもたれ掛かろうとして、転びかけそうになりながらも溜息を吐いて吐露する。

「ああああ疲れたああああ‼︎」

冬夜は胸の奥から溢れる愚痴を溢れるがままに口にする。

「そもそもの話、別に俺の本性を知らない訳じゃないんだからわざわざ作らなくてもいいのでは!?

絶対議会の皆、「頑張ってるなぁ」

みたいな同情を心の内に秘めてるでしょ!

何で質問するの!?言わなくても分かったよね!?

俺が無理してるの知ってるなさては!?

....etc」

詩織は冬夜の愚痴を背景に、内心冬夜に対して尊敬に近い念を抱いていた。

冬夜は現在の村長代理とも言える立場に就いている。

と言うのも、私達が逃亡生活を送る前、村として定住してた頃、「村長」として村をまとめていたのは冬夜のお父さん...「海月」の名を冠する人だった。

彼は、最初の襲撃で他の皆を逃す時間を稼ぐ、と言ったっきりだ。

それ以来、冬夜が代理として皆をまとめているのだが、どうやら以前に村長の在り方を父親から教わったらしく

「民の前では弱さを見せるな。もう一人作るくらいの気概でやれ」

の言葉を元に、村長としての仕事に努める時は、会議中の様に強い物言いをする様に心掛けている。

元来の性格とは真反対とも言える性格を演じるのは、負担が生じるのだろう、仕事をした後は大抵いつも今みたいに騒いでいる。

他にも逃げる際には村長として苦渋の決断をしているはずなのだが、『それ』に関しては一切何も見せない所を見ると、本当に強い子だな、と尊敬を抱かざるを得ない。

と、詩織が冬夜に想いを馳せていると、どうやら今回も落ち着いたらしく、彼本来の優しい声色で話す。

「しお姉、しぃ兄と二人きりで話がしたいから、中心部の確認をしてきてもらっていい?」

自分の事を「しお姉」と呼ぶ彼は、本来であれば普通の、可愛げのある少年だ。

そんな年下の彼に重荷を任せきってる自分が嫌になるが、そんな内心を悟らせない様軽口を叩く。

「え?何?ホ○なの?」

「は?」と呆けている冬夜を冬夜を置き去りにして更に続ける。

「まぁ確かに?こんな時代だし、冬夜の心身ストレスも凄いものだと思うからさ、快楽を貪るのも止めはしないけど...

相手は選んだ方がいいと思うよ?」

「違う。変な誤解を勝手に抱くな。

会議中に言っただろ、あれだよ。」

志久が強い否定を示す。

「何だよ〜冗談だってば!」

笑顔でそう言いながら、中心部に向かって歩き始める。

多分だけど、志久と冬夜は戦うんじゃないかって勝手に想像する。

その想像が外れていることを願って、足を止めて一言告げる。

「頑張ってね」

冬夜は、きっと演技なのだろう、「?」を浮かべるように頭を傾げている。

志久は...「何で分かったんだ?」と動揺の色に顔を染めていた。

詩織は「もうちょっと演技をしようよ...」と心の中で呟き、再度歩き始める。

「それじゃ、私は建国についてまとめようかな!

二人も頑張ってね!」

二人がどうするのかは分からないが、自分に出来る事をして、彼らのやる事を信じて待っていようと決めた彼女は、脳内で明日の予定を描きながら、中心部へ向かうのであった。

 

 

「いやー、ドキっとしたなー!」

「しぃ兄はもう少し演技の練習をした方が良いと思う」

「は?」

「しぃ兄のせいでバレたでしょ」

「なぜ身内を騙す必要が?」

「騙すつもり無かったんだ...」

 




今回もお読みいただきありがとうございます。
最後の会話のシーンですが、気分次第で挿入されます。
次回の投稿予定日は....来週中に出せるかな...と言ったところで、次回はプロローグ前に何があったかを書く予定です!
次回もお楽しみに!

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