対魔法国家建国記/生存園を確保する為に国を作ります/   作:SimoLy

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お久し振りです。無事に帰ってきました。
今日からまた更新していこうと思いますのでよろしくお願いします。

※重要
この作品は旧名「国栄の英雄-----よりもちょっと前の話」です。
12/27を以て「対魔法国家建国記/生存園を確保する為に国を作ります/」に変更しました。


では今回もどうぞ!


st.7 運搬作業と戦闘準備

絢香に依頼され、とりあえず足回りの準備だけ終えた俺は、絢香に指定された集合場所である設営地中心の広場に辿り着く。俺が準備運動を兼ねて身体を動かしながら辺りを見渡していると、丁度広場の中心辺りに絢香らしき人影と、大きな荷物を背負った何人かの人影を見つける。俺に気付いたらしい絢香は、小さくこちらに手を振って、目の前の女性の方へ向き直る。

俺が少し小走りでそこに向かうと、どうやら二人は言い争い...と言うほどの物でもないが、何やら揉めている様だった。

 

「準備終わりましたよ。」

 

「冬夜、貴方だったらどうする?」

 

...?唐突な質問に、俺は首を傾けて静止する。何の話?と口に出そうとした所で絢香の前に立っていた皆と同じ様に大きな荷物を背負った女性が付け足す様に話し始める。

 

「今回の目的は、山上までへの道の確認と、拠点...ないしは集落などの設置用の設備や資材を運ぶ事なんですよ。ただ...」

 

「替えが利きにくい様な物もあるの。仮に何らかの問題が発生して損失したら大きな被害になる」

 

設備や資材ねぇ...。替えが「利きにくい」ってだけだし、良いと思うけど。それに---

 

「俺は置いておいても良いと思うよ。まず大きな布でも被せておけば動物に襲われる事は無いだろうし、それに、『索敵』として安全を確保できるなら命より大切な物は無いよね?後は、詩織姉に確認取らなくて大丈夫?」

 

現在の総指揮を執っているのは詩織姉だ。彼女ならスケジュール管理はしっかりしているだろうし、絢香の考えも織り込み済みの可能性は高い。絢香が詩織姉にどう伝えたかは分からないが、少なくとも皆が持っている荷物分の運搬くらいは伝えている筈だ。そもそも運搬役は詩織姉が選んだって言ってたし、詩織姉は多分準備として置いていく事を想定しているのではないかと思う。そういった事も含んだ意味での確認だったのだが...

 

「...そう。分かった。」

 

絢香は小さくそう呟くと、他の運搬役の者の所へ向かう。多分説明してるんだと思う。

 

「冬夜の言う事は聞くんですから...」

 

絢香が離れると同時に同じ様に呟く言い争っていた女性。そんな彼女に「そんな事無いと思いますよ」とだけ伝え、ついでに長が変わった旨を伝える。彼女の驚きを余所に、俺も絢香の所へ道の確認や目的、状況の確認などをしに行く。

様々な確認が済んだ後、俺達は本当の居住地帯を求めて出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達が出発した様々な事に利用される広場から例の山まではそんなに距離は無く、俺が話しながら先頭に向かう頃には既に先頭集団とも言うべき人々(と言ってもそこまで人数は居ないが)は登山道の入り口に差し掛かる所だった。

俺はそんな彼らの前に行くと、先程の調査で得た地図や、荷物の運搬役に選ばれた調査隊の者に尋ねながら彼らを先導する。俺の随伴の目的は彼らの先導だが、俺はもっと色々な事を警戒していた。例えば道が無かったりだとか、山に住む動物に襲われたりや、考えたくは無いが...人に襲われたりなどだ。道が無い場合用に多少の崖なら俺は上れるし、人や動物の撃退方法も考えてある。だが先程の過去形が示す通りに、警戒していたそれらが起こる事は無く、今のところ平和な登山で済んでいる。道は舗装されているとまでは言わないものの、充分人が歩ける物がずっと続いているし、動物や人に至っては姿はおろか気配すらも感じられない。それはこの山全体が「死んでいる」とかそう言った意味では無くて、ただ単純に俺達を襲う様なそれらが見えないだけである。警戒を解くつもりは無いが、それでも想像よりも楽な道のりを歩いている事は否定できなく、後ろに続く運搬役の彼らの中でも和やかな雰囲気が流れ始めている。これが続く事を祈りながらも、俺は目的の場所を目指す。

 

 

 

 

 

 

無事に目的の場所に辿り着いた俺が最初に思った事は、「運が良い」だった。何が危ない場面とかがあったわけではなく、純粋にここまで上手く事が運んだ事自体が運が良いと、そう思った。俺がそんな事を思っている間にも、運搬役の皆はそれぞれ自分の荷物を降ろし始める。

 

「絢香さーん!これらは何処に置いたらいいですかー?」

 

「それは...こっちかな。そっちはもう置けないし」

 

絢香や皆がそれぞれ用途毎?に荷物を分けてる中、俺はここからの景色を楽しむと同時、志久兄と詩織姉の二人は何してるかな、と見当違いな事を考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方冬夜に「詩織姉」「志久兄」と呼ばれる二人...空崎 詩織と海月 志久は志久の頼みであるとある目的の為の人材収集をしていた。

 

「最低限『これ』が見えなきゃ話にならない。一対多の戦闘になる事が多くなると思うからな。大人数を用意できるのであれば、武器に頼った人海戦術でも問題は無いが現実はそう甘くない。ここまではいいか?」

 

「うん。それで?見える人の当てはあるの?」

 

志久は私には見えない物を判定基準として使うらしいけど、私に見えないんだから協力も何もあったもんじゃない。私は一つの質問を投げる。

 

「『ある』。というか全員調べてある。これがそのリストだが、詩織にはここから二種類の条件を参考に人を絞って欲しい。」

 

そう言って渡された名簿に目を通した私が一番最初に抱いた感情は「圧巻」だった。私の知りうる全員の名前と、それぞれの対応が細かく記されていた。私はパラパラとそれをめくりつつ、内容を端的に頭に入れる。失礼だとは分かっているが、視線を向けながら再度質問を投げる。

 

「二種類の条件って?」

 

「まず『決められた役職を与えられてない者』。これは絶対だ。戦闘要員だからな、特定の仕事がある者は起用したくない。同様の理由で建設方面に詳しい者も省いてくれると助かる。

もう一つは『強い意志がある者』。なんでもいいんだ、誰かを守りたいだとか、復讐したいだとか。とにかく『やり遂げる』という強い意志と、『ある決断』を支える『精神』が必要になる。」

 

「ある決断?それってどんな----」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詩織との話し合いから数分が経過し、詩織にリストアップして貰った名簿を手に、俺は「戦闘部隊」の編成を始めていた。相変わらずの正確かつ速い仕事だ。条件に合致した人物は俺と冬夜を合わせて十五人、多く集まったほうだろう。俺は彼らに声を掛けて回り、説得なども挟みながらなんとか全員の賛同を得た所だ。まずはあの時の冬夜と同じ様に基本的な事項から教えていくが...まぁ冬夜のケースが特殊だっただけだな。一日二日で出来るなんて思ってはない。人に物事を教えるのは苦手なんだけどな、と零しながらも、俺は彼らを全員一定の場所に集めて、授業を始める----

 

 

 

 

 

志久の頼みを聞き終わり、私は絢香達の帰りを待っている間、ついさっき急を要する問題に格上げされた一つの問題について考える為、暇を持て余してる人に声を掛けて回っていた。

...暇なら人手不足の所に入って欲しいんだけどな。何をするにも人手は足りないし。でも今回は色んな意見が聞きたかったから、丁度良かったとも言える。

何について聞いて回ってるかというと、ここが襲われた時の防衛設備について。志久が戦闘部隊を作ってたみたいに、国の方でも考えて行かなきゃいけないのが襲われた時の事。これからは今までの様に逃げる訳にはいかないしね。

集まった意見は山上の場合と、このままここに建国する場合の二種類に分かれてる。これらを整理し、組み合わせて絶対不落の城(?)を建てるのが目標かな。ただ一つ、今すぐにでも取り掛かった方が良い意見が出たから、それは進めておきたいんだけど、これは絢香達待ちな要素が強い。人手的にも場所的にも。

それらを筆頭にした「やらなきゃいけない事」が記された手帳は文字でびっしりと埋まっている。私はそれを見て思わず溜息が零れそうになるものの、すんでの所で抑えて頬をパンパンと叩く。

 

(落ち着いて。今の私は皆の標と言うべき存在。私はしっかりしてないと駄目。)

 

冬夜は皆の前で弱音を吐いたことは殆どない。それは彼が作っていた人格の影響もあるかもしれないけど、多分彼の『強さ』はそういう所にあるんだろうなと思考が逸れる。彼ならきっと、『決断』も迷い無く出来るんだろうけど、それを簡単にやらせる訳にはいかない。それは私達年長者の義務でもあると考えてるし、第一しなくていい決断をさせる必要はない。

 

(頑張らないと。とりあえずは仮設家屋の設立が一番の急務か。)

 

私は気持ちに整理をつける。何時までもサボってる訳にもいかないしね。私は頭の中で設営地の地図を浮かべ、各場所の動きを考えながら人手の足りなさそうな所に向かう。

絢香達の遠征組が帰ってきてからは多くの案件が動き出す為、今出来る事はなるべく多く終わらせておきたい。

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。
評価、感想など待ってます。大変励みになります。

少し吹っ切れた所がありまして、とりあえず書く事にしました。
次回から本格的に動き出す予定です。(なんか毎回言ってる気がしますが)

次回の更新は一週間以内にはしたいと考えてますが、年末は何があるか分からないので明言は出来ません...申し訳ないです。
名前を見かけたら見てくれると嬉しいです。

次回もお楽しみに!

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