報われぬ決意   作:クロネコ蜜柑

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報われぬ決意

 本当ならば、このまま部屋に居たい。普段のように、好きなだけ遊び、好きなだけ寝ていたい。
 しかし、それはできない。
 なぜなら、今日学校をふけてしまうと出席日数が足りず、留年が確定してしまうからだ――そのことに気がついたのは本日の早朝、五時半頃だ。
 時間は刻々と過ぎていく。
 私はどうすればいいんだ。
 今更、どの面下げてクラスメイトや担任に会えばいいのかわからない。教室に入るなり、注目の的になり、居たたまれない気持ちになるのは明白だ。
 かといって、このまま留年し、後輩たちを同期になるのも嫌だ。
 あの微妙な距離感、腫れ物のような扱いは正直のところ耐え難い。
 心がひどくざわつき始める。あるはずのない喧騒がすぐ近くにあるかのような錯覚に陥る。
――行くか、行かないか
 たったそれだけのことを決めるだけなのに、自分の気持ちは右に左に大きく揺れ続ける。
 そして、時計の針が午前七時三十一分を回った頃――始業時間まであと一時間を切っている。
 私はついに覚悟を決めた。
――行こう、学校へ
 そうと決めたら後は早い。
 征服に着替え、鞄を持つと、朝食も取らずに家を飛び出した。
――決心が鈍る前に学校に着かないと
 学校までの道を遮二無二駆け抜ける。
 胸が痛み、息が切れ、頭を振るたびに汗が飛び、一歩踏み出すたびに汗がにじむ。
 それでも休まず駆けて、駆けて、駆け続ける。
 そうしているうちに、校舎が見えてきた。
――あと少し!
 私は力を振り絞り、足を早めた。
 校門を過ぎ、靴を履き替え、階段を駆け上がる。
 そして、ついに自分の教室にたどり着いた。
 息が整うのも待たずに扉に手をかける。
 開けたあとのことが脳裏にチラつき、胃が持ち上がるような感覚を覚える。
――ええいままよ、当たって砕けろだ!
 私は意を決して扉を開けた。
 しかし、飛び込んできた光景は想像を大きく裏切った。
 なぜなら、教室にはクラスメイトが誰一人としていなかったからだ。
 予想外の出来事で頭が真っ白になっている私に背後から声がかかる。
「おい! こんなところで何しとる」
 振り返ると、そこには声の主であろうジャージ姿の男性が立っていた。
「な、なな、何しにって、じ、授業を――」
「なに!? 授業だ!? お前は何をおかしなことを言うとるんだ?」
 大きく目を見開いて、信じられないというような顔をする男性。
――何か変なことを言っただろうか?
 私が不思議に思っていると、大きくため息を吐き、呆れた様子で男性が言った。
「今日は、休校日だぞ」
 
 






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