IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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負傷していないので、セシリアも鈴も参加出来ます


ペア決め

 昼休みになり、食堂ではペアマッチの話題で盛り上がっていた。

 

「簪は誰と組むんだ?」

 

「私は本音と組もうかなって思ってる」

 

「本音? アイツ参加するのか」

 

「理由はおりむ~やシノノンと一緒だよ~」

 

「何時の間に……」

 

 

 千冬や箒に気取られないように近づいて来ていた本音が会話に割って入る。セシリアたちは本気で驚いている様子だが、千冬と箒はさほど本気では驚いていない様子だった。

 

「そうなると私は鈴とペアを組むか。中近距離だと言っていたし、私は遠距離で鈴が近距離で良いだろ」

 

「なら私はセシリアと組むか。入学当初から見れば、私もセシリアもレベルアップしてるだろうし、結構いいところまで行けるかもしれない」

 

「ならボクはラウラと組もうかな。部屋も一緒だし、作戦会議もしやすいし」

 

「うむ。シャルロットなら私もやりやすいだろうし、お互いベストを尽くそうではないか!」

 

「私も本音と同じ部屋だし、作戦会議しやすい」

 

「そう考えると私は千冬と組んだ方が良いのかもしれないと思ってくるな……だが、一回千冬と本気で戦ってみたいと思うのも偽らざぬ本音だし……」

 

「おりむ~とシノノンが本気で戦ったらアリーナが壊れちゃうんじゃない?」

 

「一夏さんと姉さんが戦うわけじゃないんだから、そんなことあり得ないだろ」

 

「あの二人って戦うの?」

 

 

 簪の質問に、千冬と箒は苦笑いを浮かべる。なんで二人が苦笑いを浮かべたのかが分からない他のメンバーは、揃って首を傾げた。

 

「あれは戦いというより、一夏兄が束さんにお灸をすえていただけだろうな」

 

「あれ以降、姉さんが直接一夏さんのお風呂を覗くことはなくなったしな」

 

「……直接?」

 

「それ以降は衛星をハッキングして盗撮したり、超望遠レンズ付きカメラで盗撮したり、姉さんが開発した壁を透かして写真が撮れるカメラで盗撮したり――」

 

「全部盗撮じゃないですか!?」

 

「結局一夏さんに怒られてたがな」

 

 

 千冬と箒は気にしていない様子だが、篠ノ之束がただの盗撮魔だと知ってしまったメンバーは、どういう顔をすればいいのか頭を悩ましている。

 

「一夏教官の風呂を覗こうとするとは、篠ノ之博士はなかなかの命知らずだな」

 

「こういう時、ラウラの考え方が羨ましく思えてくるよ……」

 

「そうね……ある意味最強だって一夏さんが愚痴ってた理由が、なんとなく分かった気がするわ」

 

「それで、一夏教官と篠ノ之博士が戦った後、その場所はどうなったんだ?」

 

「姉さんがボタン一つで完全に直していたが、あれは酷かったな……」

 

「一夏兄を本気で怒らせちゃいけないと、子供ながらに思った」

 

「けど、アンタたち一夏さんに黙って花火で遊んだ件で、かなり本気で怒られてなかった? まぁ、あたしもだけど……」

 

「あの時の事は言うな……思い出すだけで震えが止まらないだろ」

 

 

 よく見れば箒も同様に震えているので、鈴は舌を出して片手を上げて謝った。

 

「あたしもかなり本気で叩かれたもんね……なんだか叩かれたところが痛くなってきた気がする……」

 

「うむ。一夏教官に叩かれた事は私もあるが、あれは痛かった……」

 

「私も入学早々やらかして叩かれましたが、かなり響きましたわ……」

 

「織斑先生を怒らせちゃいけないって、おね~ちゃんや楯無様が言ってたから、怒られないようにしてるけど、本当に痛そうだね、みんなの顔を見てると」

 

「織斑先生、優しい人だと思うんだけど」

 

「一夏兄は基本的には優しい人だが、怒らせるとかなり怖いんだ……簪は怒られることをしてないから分からないだろうが」

 

「うん、分かりたくも無いよ」

 

 

 簪の言葉に、全員が同意する。出来る事なら知りたくなかった一面なので、見たことがあるメンバーは簪を羨ましげに見ている。

 

「ボクも見たこと無いけど、織斑先生はただならぬ雰囲気の持ち主だってことは分かるよ。ボクの家庭環境を聞いた時の顔は、何だか怖かったし」

 

「一夏さんは基本的に大人が嫌いだからな。その中でも親の責任を果たしていない輩とか、偉そうな政治家とかが特に嫌いなんだ」

 

「そうだったんだ。政治家の方は聞いたことがあるけど、親の方は知らなかった。何か原因があるの?」

 

「………」

 

「千冬? どうかしたの?」

 

「シャルロットは知らないんだっけ? 千冬と一夏さんは、両親に捨てられたのよ。確か、千冬がまだ物心つく前だっけ?」

 

「あぁ……私は一夏兄に育ててもらったから良いが、一夏兄だってまだ中学に上がってなかったころだしな」

 

「そうだったんだ……あの人も苦労してきてたんだね」

 

「一夏さんは他の人間の何倍も苦労してると思うぞ……今も、姉さんの相手をしなきゃいけないという苦労が付いて回っているし……」

 

「束さんの相手は、私たちじゃ出来ないからな……」

 

 

 束の相手をする事がどれほどの苦労かを理解している千冬と箒は、一夏がいるであろう職員室がある方に視線を向け、静かに合掌したのだった。




問題なく終わるのかちょっと不安

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