IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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辻妻合わせが大変です


ルール変更

 普段HRは真耶が担当しているのだが、今日は一夏が教壇に立ち、真耶が脇で待機している。それを見ただけで、クラス中が何か重大な発表があるのだろうと察した。

 

「来週行われる予定だった学年トーナメントだが、本来の形での開催ではなく、ペアマッチとなった。既に参加表明をしている人間からペアを見つけてもいいし、まだ参加表明していない相手とペアを組んでも構わん。クラスが違うという事も気にする必要はないし、専用機持ち同士だろうと構わない。当日までにペアを見つけられなくても、当日抽選でペアを決める事になるから心配はいらんだろうが、連携訓練をするならなるべくペアを見つけておいた方が良いだろう」

 

「織斑先生、何故急にルール変更が行われたのでしょうか?」

 

「この間オルコットと凰が山田先生を相手に大敗したのを受けて、学長が決めたらしい。まぁ連携訓練などは必要だから構わないのだが、もう少し早くしてもらいたかったというのが、我々教員の偽らざぬ感想だがな」

 

「つまり、私と鈴さんが不甲斐なかったから、このようなルール変更が行われたと?」

 

「別にお前たちが悪いわけでもないし、ペアマッチになったからといって大幅なルール変更が必要なわけでもないし、当日は試合数が減って楽かもしれないからな。あまり気に病んで出場を見合わせるなんて事はしないように」

 

 

 セシリアが考えていたことを一夏が言い当てたことに、彼女は驚きの表情を見せたが、この二ヵ月弱で織斑一夏という人物がどれだけ自分の常識の範囲内にいないかを知らしめられたので、すぐに表情を改めて頷いた。

 

「今回は連携を重視するわけではないので、近距離主体の二人で組もうが、遠距離主体二人で組もうが構わない、もちろん、勝ち抜くつもりならば遠距離と近距離で組んだ方が有利なのは否定しないが、お前たちはまだ本格的な連携訓練を積んでいないので、さほど差は出ないだろう」

 

「織斑先生、質問があります」

 

 

 一夏の説明を聞いた千冬が、挙手をして発言を申し出る。一夏が視線で促してきたのを受け、千冬は立ち上がり質問をする。

 

「今回のトーナメントで、息の合った動きを見せれば、それだけ成績に加算されるのでしょうか?」

 

「評価に値する動きを見せられるのであれば、加算する事も考えなくはないが、その場合減点される可能性もあるという事を理解しているのか?」

 

「げ、減点されるんですか?」

 

「基本的には加算も減点も考えていないが、してほしいという声があるなら考えなくもない。だが、その場合は殆どが減点になるだろうが」

 

 

 一夏の言葉を受けて、千冬は考え込む。箒とペアを組めば、それなりに連携の取れた動きを見せる事が出来るだろうが、果たしてそれが加算に値する動きなのかどうか、彼女は自信が持てない。

 

「今回重点的に見るのは、戦闘中の動きや試合に挑む姿勢などだ。連携度は二の次三の次だからそれほど気にする必要はない。もちろん、気にしてほしいのなら別だが」

 

「いえ、気にしないでくださると助かります」

 

 

 結局千冬が出した結論は、連携度のチェックはしないでほしいとの事だった。

 

「ペア決めに関して、教師が口を挿むことはしない。この学年は候補生やそれに準じる実力者が多く在籍している。その相手と組むもよし、候補生同士のペアに何処まで戦えるか試してみるのもいいだろう。各自ペアが決まり次第職員室で参加に必要な書類にサインをしてもらう事になっている。これを怠ると、当日ランダムでペアを決められてしまうので注意するように。HRは以上だ。この後は二組との合同実習なので、急ぎ着替えてアリーナへ移動する事。あぁ、それからボーデヴィッヒはアリーナに向かう前に職員室に寄るように」

 

 

 伝える事を全て伝えた一夏は、早足で教室から職員室へ向かう。その後を追いかけるように真耶が職員室を目指すが、一夏の早歩きについていくことが出来ずに、到着したのは一夏が到着してから少し経ってからだった。

 

「織斑さんが気にしていたのは、一夏さんが気にしていた事と同じでしたね」

 

「アイツらが教師を満足させるような連携の取れた動きを見せられるわけがないからな。連携度は評価項目から外すべきだったからちょうど良かった」

 

「そうじゃないと全員赤点になっちゃいますもんね」

 

「そんな事になれば、俺やお前の給料査定に響きかねないからな。そもそも急にペア戦に変更して、そう簡単に息の合った動きが出来るペアが出来るとも思えん」

 

「オルコットさんと凰さんは、それなりに連携が取れていましたけどね」

 

「不慣れな連中が多い中で見れば、だがな。あんなの評価するに値しないだろ」

 

「厳しいですね」

 

「甘やかしても生徒は成長しないからな」

 

 

 バッサリと斬り捨てる一夏に、真耶は自分も見習わなければと決意するのだった。




真耶もゆっくりと成長していけば、一夏が楽できるかも

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