IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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普通の考え方をしてるのが一人しかいない……


妹の考え方

 一夏が嫌悪感を示した事と、薫子が正しい情報を流した事により、簪と一夏の噂は一日もたずに霧散した。ただ完全に消え去ったわけではないので、簪を見る上級生の目は、少し冷たく鋭かった。

 

「別に私が悪いわけじゃないのに……」

 

「まぁまぁかんちゃん。織斑先生とお近づきになれない先輩たちの嫉妬だと思えば可愛いものじゃないか~」

 

「本音は無関係だからそんな能天気な事を言ってられるだろうけど、実際に視線が突き刺さる私は、結構ダメージを負ってるんだからね」

 

「明日にはきれいさっぱりなくなってるだろうし、もし続いてたら織斑先生か楯無様に相談すれば一発で解決だから、気にするだけ疲れるだけだよ~?」

 

「織斑先生は兎も角、どうしてお姉ちゃん? 確かに生徒会長だけど、虚さんの方が影響力があると思うんだけど」

 

「なんでも黛先輩に『噂をどうにかしないと更識の全勢力を以て「イタズラ」する』って脅したらしいよ~?」

 

「お姉ちゃん、こんなことに暗部の力を使おうとしてるんだ……」

 

 

 自分の事を大事に思ってくれている事は嬉しかったが、そんなことに裏社会の力を使うのはどうなんだと、簪は楯無に対して呆れてしまう。

 

「簪、今日は大変そうだな」

 

「千冬がそれを言うの? 大変だと思ってるなら、その目やめてよ……私と織斑先生との間には何にもないんだからさ……」

 

「分かってはいるんだが、一夏兄に抱っこされるなど、妹の私でも数えるくらいしかしてもらった事がないからな」

 

「そうなのか? この間一夏さんの部屋に行ったとき、膝の上に座って抱きしめてもらってただろ?」

 

「あれは私からくっついて、そうせざるを得ない状況を創り出したからだ。一夏兄の方から抱きしめてくれたわけじゃないからな」

 

「そもそも、私は抱きしめられたんじゃなくて、抱き留められただけだから……」

 

「我が愚姉が申し訳ない……」

 

 

 事故の原因が束であることも知れ渡っているので、箒は本気で申し訳なさそうに頭を下げる。既に一夏が処断済みだと聞かされて幾分か気持ちが楽になっているのだが、簪に対する罪悪感は和らぐことは無かった。

 

「別に箒が悪いわけじゃないんだし、結局何にもなかったんだから、気にする必要は無いよ。それに、そんなに頭を下げさせてたら、私が強要しているように思われちゃう」

 

 

 簪の冗談に、箒は頭を上げて笑みを浮かべる。まだ多少ぎこちなさは見受けられるが、気にしないように努めているのだと簪には思えた。

 

「それで、本当に簪の専用機は完成しているのか?」

 

「事故があった後、織斑先生が原因を取り除いてくれたから、無事に完成したよ。ISに対する恐怖心も残ってないから、候補生としても頑張れるから」

 

「順調に行けば、次期代表は簪で決まりなんだろ? なんかそんな噂も流れてたが」

 

「お姉ちゃん……」

 

 

 そんな噂を流すのは楯無しかいないと、簪は本気で頭痛を感じて頭を抑える。そんな簪の背中を、本音が同情するように軽く叩いた。

 

「楯無様は本気でかんちゃんの事が好きだから、自慢の妹をみんなにも知ってほしかったんだよ、きっと」

 

「本音……同情するふりをして追い打ちをかけるのは止めてよ……」

 

「でも楯無様がかんちゃんが嫌がることをするはずないでしょ? この噂は黛先輩が誇張して流して、そこに尾ひれが付いて行った結果だし」

 

「それは分かってるけど、高校生にもなって妹自慢をする姉って、結構恥ずかしいんだよ?」

 

「そうかな~? おりむ~やシノノンはどう思う?」

 

「私は、一夏兄が自慢したくなるような妹になるのが目標だからな! あの人には呆れられたくないし、見捨てられたくはない」

 

「私は姉さんには兎も角、一夏さんに認めてもらえるなら嬉しいが」

 

「ほら~。こんなものだって」

 

「普通の妹がいないって事は問題にはならないの?」

 

 

 姉が大天災、国家代表の箒と簪、兄が世界最強の千冬では、一般的な意見では無いのではないかと簪が尋ねるが、誰一人のその問いには答えなかった。

 

「とりあえず、後で楯無様に会って話してみればいいんだよ。そうすれば万事解決だって」

 

「そううまくいくとは思えないけど……とりあえずお姉ちゃんには会って話す必要はありそうだね。もう整備室に篭ってIS製造に頭を悩ませなくて良くなったし」

 

「簪は訓練しないのか? 私たちはセシリアたちと訓練の予定だから、簪も誘おうと思っていたんだが」

 

「ありがとう。でも私はまだみんなの中に加わって訓練出来る程専用機に慣れてないから、まずは稼働時間を伸ばす事目標にしてるから」

 

「かんちゃん、努力してるところを見られるのが恥ずかしいだけなんだけどね~」

 

「~~~」

 

「わっ! だから無言で肩をポカポカするのは止めてよ~」

 

 

 簪の攻撃にも笑顔を浮かべる本音を見て、この二人は本当に仲が良いんだろうなと千冬と箒は顔を見合わせて頷いたのだった。




頑張れ簪、諦めちゃダメだ

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