IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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もう一種の病気ですね


それぞれの悪癖

 放課後になり、千冬たちは簪の事が気にはなったが、自分たちも訓練しなければ成績が危ない立場なので、本来の予定通り訓練に参加する事にした。

 

「あんたたちどうかしたの? さっきから向こうばっか見てるけど」

 

「どうやら簪の専用機が完成したようなんだ」

 

「そうなんだ。お目出度いことね」

 

「今日の動作チェックで問題が無ければ、政府に手続きをして正式に専用機持ちとなるようなんだが……」

 

「なにか不安でもあるわけ?」

 

「その動作チェックが行われるのは、第五アリーナらしい」

 

「第五? そこまであったかしら」

 

 

 首を傾げる鈴に、千冬は第五アリーナがある場所を告げる。

 

「第五アリーナは関係者以外立ち入り禁止区域、すなわち一夏兄の居住区にあるらしい」

 

「そりゃ普通の生徒は知らなくても当然ね……少しでも近づけばすぐに一夏さんがやってくるもの」

 

「そのチェックには一夏兄が付き添う事になっているのだが、簪が一夏兄の魅力に魅了されないか心配なんだ」

 

「えっ、そこなの?」

 

 

 千冬が心配していた理由を聞いて鈴は思いっきり呆れてしまった。てっきり簪の専用機が動作不備を起こさないかとか、また政府と一悶着あるのではないかという事を心配していたと思っていたところに、千冬のブラコン発言を受けたのだから、呆れてしまっても仕方ないと、二人の会話を聞いていた箒は思った。

 

「何をよそ見している? 私はそんなに手ごたえがないのか?」

 

「まさか。さすが一夏さんが鍛え上げた部隊の隊長だ!」

 

「一夏教官に鍛えられた以上、例え貴女だろうと無様に負けられない!」

 

「しかし! 一夏さんが鍛えた割には視線が素直すぎる!」

 

 

 ラウラの砲撃を寸でで躱して懐に飛び込み零落白夜を発動してラウラを行動不能にする。訓練とはいえこれほどあっさり負けるとは思っていなかったラウラは、自分のふがいなさを痛感していた。

 

「これが、一夏教官と同じ流派の技……」

 

「一夏さんはもっと的確に、かつ私以上に素早く決めるだろうがな」

 

「篠ノ之さんや織斑さんって、技の基準が織斑先生なの? ボクやオルコットさんも今の動き、見えなかったんだけど……」

 

「もし私との試合であの動きをされていたら、私は間違いなく負けていたでしょうね。あの時より零落白夜の発動がスムーズに出来ていますし、いずれ国家代表にという声が上がっても不思議ではないくらいの実力ですわよ」

 

「各国の候補生にそういわれるのは嬉しい限りだが、私や千冬は候補生や代表に興味はないからな。そもそも束さんがくれたこのISが無ければ、私たちはこの四人の訓練に付き合えるわけなかっただろうしな」

 

「謙遜も過ぎると嫌味にすら聞こえるのだろうが、貴女の言葉は嫌味には聞こえなかった。恐らく本心から思っている事を言っているから、私たちに嫌味だと捉えられなかったのだろう」

 

「ラウラさん、冷静に分析するのは構わないのですが、それはご自分の心の中だけに留めてもらえませんこと?」

 

「ん? 私はいま、いけない事でもしたのか?」

 

 

 何故セシリアに注意されたのかが分からなかったラウラが、首を傾げながらシャルロットに尋ねる。尋ねられたシャルロットも、苦笑いを浮かべながら理由を説明した。

 

「せっかく篠ノ之さんが本心で喋ってくれてるのに、ボーデヴィッヒさんも堂々と物事を言っちゃったからだと思うよ」

 

「うむ……昔一夏教官にも言われた事があったな……」

 

「一夏さんが? なんて言ったんだ?」

 

「確か『思っている事を素直に言える事は美点だが、時と場合を考えられないのは問題だ』と」

 

「まさに今の事ですわね」

 

 

 一夏がラウラに言った言葉に、セシリアは我が意を得たりと言わんばかりに頷く。箒やシャルロットも小さく頷いたのを見て、ラウラは自分がまた空気が読めなかったのかと反省する。

 

「空気を読むというのは難しいな……」

 

「目に見えないものだからな。それを読もうとするのは簡単ではない。気にし過ぎるのも良くないが、気を付けるべきものだから厄介だよな」

 

「気にしようとしているだけマシですけど、さっきのは気を付けてもらいたかったですわ」

 

「すまなかった。ついつい思った事を言ってしまうのが癖なのだ。直そうと思ってはいるのだが……」

 

「努力してるなら良いと思うよ。ボクだってこの一人称をどうにかしようと頑張ってるんだけど、今も普通に出ちゃったし……」

 

「お互い精進するしかなさそうだな……」

 

 

 ラウラとシャルロットが自分の癖を再認識して凹んでいる最中も、鈴と千冬は訓練をしながら何かを言い争っている。

 

「先ほどから何を言い争っているのでしょうか?」

 

「千冬の何時もの病気だから気にしないで良いんじゃないか?」

 

「病気というと、織斑先生絡みですわね……」

 

 

 セシリアもそれだけで通じるだけ千冬と仲良くなったのかと、箒は初対面の時を思い出して思わず笑ってしまったのだった。




みんなその言葉だけで理解出来るほど仲良くなってます

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